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呪われた誕生日 2
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「魔法は? 魔法は使えないの?」
月花は何度か、無意識にだけれど魔法を使った。だからシオンたちにルーインだと思われていた。
「魔法もそこそこ使えるんじゃね? たぶん」
そこまで答えて、初めてシオンはしげしげと月花を見下ろす。
「異世界からきたのに、『エルの歌姫』のことももう耳に入ってるのか。イファンが教えてくれたのか?」
「あっ……うん、そうなの」
やばい、不審に思われただろうか。シオンは顎に手を当てながら、考えるようにつぶやく。
「しかし……アイ、か。ゆうべおまえが言ってたやつ」
「アイがどうかしたの?」
もしかして、アイへの手がかりを彼は知っているのだろうか。食いつく月花に、シオンは「いや」と頭を振る。
「いまのところ夢の中での神からのお告げもないし、アイってやつがルーインとは思えねーってこと。なのになんであの歌のことまで知ってたのか……」
「あの歌……? あの歌って、愛しい君がどうのっていう?」
「ああ」
アイがルーインでないとしたら、アイは一体何者なのだろう。
魔法のように消えたり現れたり、頭の中に話しかけてきたり。
それに、アイは最初月花に「ルーインを辞退するな」と言った。アイは月花のことを「エルの歌姫」であるとは言わずに、ルーインのまま、誤解させたままでいた。あれもなぜなのだろう。そのすべてを考えても、なんだか確実にアイが月花をどこかへ導いているような気がしてならない。
「神子になるために、ルーインたちはへたすると殺し合いもするって聞いた」
セイルーンの風呂場でアイに聞いたことを、月花は口にする。
「そんなにまでして、どうしてみんな神子になりたがるの? 神子になると、なにかあるの?」
するとシオンは、淋しそうな、どこか哀しそうな表情をした。
「──神子になると、ひとつだけ。どんな願い事でも叶えられるんだよ」
だからだ、とシオンは言う。
「……どんな願い事でもって、──たとえば世界を平和にしたりも?」
「ああ。逆に、世界を滅ぼすことも」
どんな願い事でも叶えられる神子。ひとつだけだとしても、なんでも願いが叶うならなってみたいと、誰でも思うのかもしれない。
イファンは、どんな願い事を持っているのだろう。
月花が「エルの歌姫」であることを秘密にしているのは、間違いなく他のルーインにとられないため。シオンにとられないためであると考えていいだろう。だとしたら。
イファンには必ず叶えたい願い事があるのだ。シオンを出し抜いてでも。そこまでして叶えたい願い事とは、なんなのだろう。
「──シオンとイファンは、殺し合いなんてしないんだね」
ぽつりと言うと、シオンは苦笑する。
「一応、幼なじみだからな。お互いルーインになったとき、どっちが神に神子に選ばれても恨みっこなしってことにしてる。他にルーインが現れたら、そいつは始末するって決めてるけど」
だから「他のルーイン」と認識されていた月花を、シオンは最初抱こうとしたのだ。相手がシオンだったから大丈夫だったものの、最初月花を見つけたのがイファンだったら、その場で殺されていたかもしれない。
けれど、イファンもまた月花を抱こうとしなかった。恐らくドレスをはだけられたあのとき、月花の胸にある涙のしずくの形のあざを見られたから──。
「イファンもはじめはあんなやつじゃなかったんだぜ」
淋しげに、シオンが言う。顔を上げると、彼は遠い目をしていた。なにかを、思い出すかのような。
「あいつには生まれたときからの婚約者がいた。ルーシィって言ってさ、お互い愛し合ってた。俺とルーシィとあいつと三人で、毎日のように遊んでた」
ずっと誰かに聞いてほしかった、そんな口調でシオンは続ける。
「ヤンはそのころ、荒んでた。盗賊たちがはびこってて、ヤンの王……イファンの父親はそいつらの処置に毎日追われて、頭を悩ませてた」
それでも俺たちは幸せだった、とシオンは言う。けれどいまよりも必ず幸せになろう、そう三人で約束し、誓っていたのだと。
「そんなとき、ルーシィがルーインになった。ルーシィが12歳のときだ」
ほかにルーインがいるとは知っていたが、ルーシィはイファンとシオンに言ったそうだ。
必ず自分が神子になる。神子になって、三人がもっと幸せになれるように願い事をする。そう言ったそうだ。
悲劇はそこで起きた。
なんとか神への道が開かないかとひとりで鍵の遺跡に行ったルーシィが、殺された。
殺したのは、同じ目的で鍵の遺跡に来ていた男のルーインだった。
女のルーイン相手には、ただ殺すだけでもよかったのにその男は、ルーシィを犯したあとに首を絞めて殺した。
「わざわざ犯す必要なんてなかったのに……!」
シオンが頭を抱える。いまにも泣きそうなその声に、月花も涙があふれた。
12歳の女の子に、そんなことをする男の気がしれなかった。
ルーシィはどれだけ苦しんだだろう。叫んだだろう。それを知ったイファンは、シオンは。どれだけつらかっただろう。
「──それからだ。イファンがあんなふうになったのは」
イファンはその男を探し出した。男は、盗賊のリーダーだった。
ほかにはもうルーインがいないというのに、イファンはその男を自らの手で殺した。首を、切り落とした。
ルーインでない者がルーインを殺すのは、ある意味ルール違反だ。なのに、イファンにはなんのためらいもなかった。
12歳の男の子が、血も涙もなくそんなことをした。神殺し、イファンはそう言われた。
盗賊も以来なりをひそめ、すっかりおとなしくなった。結果的にヤン国にとってはいいことだったのかもしれない。
けれど、それからだ。
イファンは微笑みの仮面をつけるようになった。決して笑わない瞳とは相反して。
血も涙もない神殺し。
それが、まだ子供のイファンにつけられたあだ名だった。
ルーインがいなくなれば、またすぐ次のルーインが神によって選出される。奇しくも次のルーインとなったのは、イファンだった。半年遅れて、シオンがルーインとなった。
イファンは自分の手で神の座をもぎとろうとした、世間ではそう言われている。ルーシィのことはイファンが彼女のためを思って、なるべく伏せるようにしたという。だからこそ、そんなふうにイファンが言われてしまったのかもしれない。
「待って、……それじゃ」
月花はふと、気がついた。
「それじゃ、イファンもシオンも……もう10年も前からルーインでいるの?」
「──ああ」
シオンは顔を上げ、淋しそうに月花を見下ろした。
月花は、胸がつまる思いだった。
そんなに長い間、ルーインでいる。神子が決まっていない、ということだ。だとしたら。
10年もの間、イファンは。シオンは。ずっと過去にとらわれているのだろうか。願い事を、ずっと胸に抱えているのだろうか。
他のルーインがいつくるかと怯えて、気をはって。毎日、どんな思いでいるのだろうか。
「泣きそうだな。まだ続くけど……聞く勇気、あるか?」
にじむ視界に、心配そうにシオンが顔を覗き込んでくる。目尻に盛り上がった涙を手の甲でぐいと拭い、月花はうなずく。
「聞く。続けて」
シオンもちいさくうなずき、再び口を開いた。
「ルーインがルーインを殺すのは黙認されてるけど、ルーインでもない人間がルーインを殺すのは、重罪なんだ。それでイファンはしばらくのあいだ、王子らしからぬ扱いを受けていた」
まず、重罪であることに加え、父王シュターヌからは「世間の恥」とも言われ、完全に外の世界から隔離された。投獄されたのだという。
シュターヌは元から、イファンとの関係がうまくいっていなかった。微笑みをはりつけてばかりいるイファンのことが、気にくわなかったらしい。
けれど微笑んでばかりいたのは、「王子たるもの常に笑顔でいなければならない」との母の教えからだった。まだ物心つく前からそう教えられたイファンは、父王の前では特に緊張しながらも微笑んでばかりいた。
「おまえの微笑みが気に入らぬ」
母のいないところでそう言われ、人払いした部屋で顔以外のところを殴られたこともあった。
けれどシュターヌがイファンを気に入らないのは、イファンが微笑んでばかりいるからだけではなかった。
イファンが生まれ、乳母にも任せず手ずから育てた王妃ミレイン。彼女の愛を息子に奪われたのだと、シュターヌは思ったのだ。
「俺は親父から、それを聞いたんだけどさ。うちの親父は、シュターヌ陛下と仲が良いから。……うちの親父とはまた違った意味で、シュターヌ陛下も子供だなと思ったぜ。もちろん、世間では愛妻家で息子を愛する父王、だけどな」
シオンは吐き捨てるように言う。
そんな親子関係もあったため、イファンが拠り所をシオンとルーシィに求めたのも無理はなかった。
シオンとルーシィには、嘘がなかったから。シオンとルーシィだけは、等身大でイファンと接していたから。
けれどそのルーシィが殺され、イファンがシュターヌの制止を振り切って復讐を果たすと、投獄されたイファンのそばには、誰もよりつかなくなった。
魔法を使って脱獄するなんて方法は、まだ魔法をコントロールできないイファンには無理だった。シオンも、何度もイファンに面会を求めたけれど認められなかった。
半年後シオンがルーインとなっても、シオンもまた魔法をコントロールできない。唯一、魔法の鏡を習得して、イファンの様子を知ることはできた。
牢の中でも一番汚いところへおしこめられ、ろくに陽もささない場所でイファンは過ごした。壁に鎖で手足を縛られ、自由さえも失われて。
食事すら、ろくに持ってきてはもらえなかった。たまに持ってこられても、虫の沸いたパンひときれといった具合だった。
それでもイファンは食べた。
「神子になるまで、私は生きなければいけないんです」
後に彼はシオンに、そう言っていた。その生への執念が、当時の彼を生かしたのだろう。
不衛生な牢獄では、風邪をこじらせて流行病にもかかった。けれど、誰も手を貸してはくれなかった。
彼は、「神殺し」だったから。自らの欲のためにルーインを殺し、自分がルーインとなった。そう言われていたから。
「王子様。もう死んだのかい?」
ある冬の日、わざと開けられた窓からの風にがたがたと震えているイファンに、見張りの兵士がからかいの眼差しを向けた。
イファンは答える元気もなく、黙っている。
するとその兵士は、もうひとりの兵士とともに鍵を開け、中へと入ってきた。
「きれいな顔してるのに、くせぇな。もったいねぇ」
「仕方ねぇよ、風呂に入れてやってねぇんだし」
ふたりの兵士は、息切れをしているイファンの顔を覗き込んだ。イファンは、こんなときだというのに微笑んでいた。
「気持ち悪いな……笑ってるぜ」
「笑うのやめろよ」
兵士は、鎖につながれているイファンの手を取る。親指の爪を、思い切りよく剥がした。血は溢れたが、イファンは表情を変えない。
「まだ笑ってる」
「もう一枚剥がしたら、泣くんじゃねぇの?」
今度は、人差し指。中指、薬指と爪を剥がされても彼は微笑み続けている。
「なぁ」
片方の兵士が、目を輝かせて仲間に耳打ちする。
「いいのか? 王子だぜ?」
「かまやしねぇよ、シュターヌ陛下は王妃と、新しいお世継ぎ作りに精を出してる」
「それもそうか。ばれることはまずねぇよな」
兵士の手が、イファンの服にかかる。ぼろきれのようだったそれは、兵士の手にかかると、あっけなく散って床に落ちた。
「鎖を外せよ、邪魔だ」
「待ってろ、いまやる」
兵士が鎖を外したとたん、イファンは暴れ出した。病気にかかっているとはいえ、抵抗する気力はまだあったらしい。それでも力でかなうはずはなく、兵士たちに組み伏せられる。
「髪が長いから、ほんとに女みてぇだな」
「おい、おまえなんでこんなに長く髪を伸ばしてるんだ?」
イファンは答えない。けれど、それを鏡で見ていたシオンは知っていた。
うまれた時から、王妃の好みで髪を伸ばし続けたイファン。その髪をルーシィは、よくほめていた。
「イファンの髪、わたし好きよ。女のわたしよりも、きれいだもの」
最初は母のいいなりだったイファンは、ルーシィのために髪を伸ばし続けた。髪を伸ばしていれば、母が、ルーシィが、髪をとかしてくれるから。自分に、触れてくれるから──。
「切っちまおうか」
兵士がそう言ったとたん、イファンが彼に噛みついた。初めて微笑みが消え、目には怯えと獰猛な光が混在している。怯えながらも、威嚇しているのだ。追い詰められた子猫のように。
「おもしれぇ。やっちまおうぜ」
兵士たちはイファンから微笑みが消えたことを面白がり、当初の目的を果たし始めた。裸のイファンに馬乗りになり、彼らは力ずくでイファンを犯した。泣かないイファンの肌を短剣で裂き、腰の動きをわざと激しくしてどうにかして泣かせようとする。
拷問の時間は、あまりにも長く続いた。シオンが目を背けている間に、何度も行為は行われたようだ。
しばらくしてシオンが目を戻すと、彼らはイファンの髪に手をかけていた。
「やっぱり髪か。さっき反応見せたのが、これだからな」
「ばっさりやっちまえ、きっと泣くぜ」
イファンの顔が、こわばる。短剣が閃き、イファンが叫ぶ──。
べちゃりと音がした。シオンは最初、何が起きたのかわからなかった。
牢の中には、イファンの姿しかなかった。あとには、──ふたつの肉塊しか。
追い詰められたイファンは、魔法で彼らの身体を吹き飛ばしたのだ。
「あ……あぁ……」
イファンが、さっきよりも大きな声で叫び声をあげる。その瞳からは涙は流れなかったけれど、まるで泣き叫んでいるかのように。
たまらなくなって、シオンは父に心願した。どうかヤンへ行かせてほしい、イファンに会わせてほしいと。
けれど、それをしたら母がどうなるかと脅されて、行くことはかなわなかった。
ヤンへ行くことができないのならば、イファンのそばに行くことができないのならば、せめてイファンの周りで起こることから、目を背けてはいけない。
シオンはそう思い、また鏡を使ってイファンを見た。
そこでは、シュターヌが王妃ミレインを連れて、イファンと面会していた。その場にいる誰もが、腐臭に顔を背けていた。
イファンは、なぜ兵士たちを呼び寄せて殺したのかを問い詰められていた。
けれどイファンは恐慌状態に陥っていて、口をきくことができずにいた。それで、「イファンは色目を使って兵士たちを呼び寄せ、脱獄しようとした」と勝手に理由がつけられた。
イファンのために、新しい牢獄がつくられた。窓すらない、人ひとりぶんが入るだけの地下の牢獄。牢獄の床を掘っただけのその穴に、イファンは閉じ込められた。
「神よ、この子をお許しください」
王妃はそう祈ったが、イファンのしたことが罪ではないといいはることも、しなかった。誰もイファンのしたことを正しいことだと、当然の感情だと言わなかった。
神殺し、人殺し。イファンは罪を重ね続ける王子。城内ではもっぱら噂になり、自然とそれは城下でもささやかれるようになった。
シオンが空間移動というすべを身につけたのは、実にそれから数年後のことだった。
彼はその魔法を習得すると、真っ先にイファンを助けに行った。イファンは何度目かの流行病で、瀕死の状態だった。
シオンは、ただひとりの理解者である乳母に準備させた城下町の部屋で、イファンの看病をした。時間を縫っては空間移動を使い、イファンのところへきて寝ずの番をした。幸い乳母に医学の知識があったため、イファンは息を吹き返した。
「イファン、……ごめん!」
イファンが意識を取り戻したとき、シオンの口から飛び出した言葉はそれだった。
「ごめん、イファン……助けてやれなくて。傍にいてやれなくて……!」
「──なん、の、ことですか」
かすれきった声で、イファンはそう言った。冷たい微笑みを浮かべて。
それを見てシオンは思ったのだ。
ああ、──手遅れだった。イファンの心はもう、凍りついてしまった──。
シオンのおかげで外の世界に出たイファンの存在を、ヤンでも隠しておけなくなった。イファンはいままでは「旅に出ていた」として急きょ国に戻ったとされ、ようやく王子としての生活を手に入れるようになったのだ。
それでもしばらくは、「神殺し」とされ社交界でもまともに相手をしてもらえなかった。誰も彼に寄りつこうとしなかったのだ。
「あの王子と言葉を交わせば呪いが起きる」
そんな根も葉もない噂が、いくつも立った。
もう婚姻を結んでもいいころになって縁談がきても、相手のほうがその前に自殺をしてしまう始末だった。
「呪われた王子に嫁ぐくらいなら、死にます」
と。
それを世間では、「娘はイファン様に殺された、呪い殺された」と言う。イファンの罪は「神殺し」から一人歩きをしていったのだ。
「なんであんたが泣くんだよ」
月花の頬を流れる涙を、シオンの長い指が優しく拭う。
胸がつまって、返事すらできない。
イファンの受けてきた仕打ちは、月花の想像をはるかにこえていた。あまにも凄惨で、哀しく苦しい過去。
イファンの仮面が、そう簡単にはとれないはずだ。心が凍てつくはずだ──。
それでもなにかを言おうとした、そのとき。
ざわざわと、城内のざわめきが聞こえてきた。慌ただしく走り去る足音も、いくつか。今日はイファンの誕生会が開かれているはずだ、なのにこの騒ぎはどういうことなのだろう。
「ちょっと見てくる」
シオンが立ち上がる。ルカが飛び込んできた。
「シオン様!」
泣きそうな、ルカの顔。
「イファン様が、お倒れになりました!」
「どういうことだ?」
厳しいシオンの口調に、ルカは涙をあふれさせる。
「宴で、イファン様のお飲み物に毒が盛られたらしくて!」
「毒……!?」
シオンの顔色が変わる。月花の心臓が、どくんとはねる。ルカは、がたがたと震えながら声を絞り出した。
「いまお医者様が診ていらっしゃいますけど──今夜もつかどうか、だそうです……!」
月花は何度か、無意識にだけれど魔法を使った。だからシオンたちにルーインだと思われていた。
「魔法もそこそこ使えるんじゃね? たぶん」
そこまで答えて、初めてシオンはしげしげと月花を見下ろす。
「異世界からきたのに、『エルの歌姫』のことももう耳に入ってるのか。イファンが教えてくれたのか?」
「あっ……うん、そうなの」
やばい、不審に思われただろうか。シオンは顎に手を当てながら、考えるようにつぶやく。
「しかし……アイ、か。ゆうべおまえが言ってたやつ」
「アイがどうかしたの?」
もしかして、アイへの手がかりを彼は知っているのだろうか。食いつく月花に、シオンは「いや」と頭を振る。
「いまのところ夢の中での神からのお告げもないし、アイってやつがルーインとは思えねーってこと。なのになんであの歌のことまで知ってたのか……」
「あの歌……? あの歌って、愛しい君がどうのっていう?」
「ああ」
アイがルーインでないとしたら、アイは一体何者なのだろう。
魔法のように消えたり現れたり、頭の中に話しかけてきたり。
それに、アイは最初月花に「ルーインを辞退するな」と言った。アイは月花のことを「エルの歌姫」であるとは言わずに、ルーインのまま、誤解させたままでいた。あれもなぜなのだろう。そのすべてを考えても、なんだか確実にアイが月花をどこかへ導いているような気がしてならない。
「神子になるために、ルーインたちはへたすると殺し合いもするって聞いた」
セイルーンの風呂場でアイに聞いたことを、月花は口にする。
「そんなにまでして、どうしてみんな神子になりたがるの? 神子になると、なにかあるの?」
するとシオンは、淋しそうな、どこか哀しそうな表情をした。
「──神子になると、ひとつだけ。どんな願い事でも叶えられるんだよ」
だからだ、とシオンは言う。
「……どんな願い事でもって、──たとえば世界を平和にしたりも?」
「ああ。逆に、世界を滅ぼすことも」
どんな願い事でも叶えられる神子。ひとつだけだとしても、なんでも願いが叶うならなってみたいと、誰でも思うのかもしれない。
イファンは、どんな願い事を持っているのだろう。
月花が「エルの歌姫」であることを秘密にしているのは、間違いなく他のルーインにとられないため。シオンにとられないためであると考えていいだろう。だとしたら。
イファンには必ず叶えたい願い事があるのだ。シオンを出し抜いてでも。そこまでして叶えたい願い事とは、なんなのだろう。
「──シオンとイファンは、殺し合いなんてしないんだね」
ぽつりと言うと、シオンは苦笑する。
「一応、幼なじみだからな。お互いルーインになったとき、どっちが神に神子に選ばれても恨みっこなしってことにしてる。他にルーインが現れたら、そいつは始末するって決めてるけど」
だから「他のルーイン」と認識されていた月花を、シオンは最初抱こうとしたのだ。相手がシオンだったから大丈夫だったものの、最初月花を見つけたのがイファンだったら、その場で殺されていたかもしれない。
けれど、イファンもまた月花を抱こうとしなかった。恐らくドレスをはだけられたあのとき、月花の胸にある涙のしずくの形のあざを見られたから──。
「イファンもはじめはあんなやつじゃなかったんだぜ」
淋しげに、シオンが言う。顔を上げると、彼は遠い目をしていた。なにかを、思い出すかのような。
「あいつには生まれたときからの婚約者がいた。ルーシィって言ってさ、お互い愛し合ってた。俺とルーシィとあいつと三人で、毎日のように遊んでた」
ずっと誰かに聞いてほしかった、そんな口調でシオンは続ける。
「ヤンはそのころ、荒んでた。盗賊たちがはびこってて、ヤンの王……イファンの父親はそいつらの処置に毎日追われて、頭を悩ませてた」
それでも俺たちは幸せだった、とシオンは言う。けれどいまよりも必ず幸せになろう、そう三人で約束し、誓っていたのだと。
「そんなとき、ルーシィがルーインになった。ルーシィが12歳のときだ」
ほかにルーインがいるとは知っていたが、ルーシィはイファンとシオンに言ったそうだ。
必ず自分が神子になる。神子になって、三人がもっと幸せになれるように願い事をする。そう言ったそうだ。
悲劇はそこで起きた。
なんとか神への道が開かないかとひとりで鍵の遺跡に行ったルーシィが、殺された。
殺したのは、同じ目的で鍵の遺跡に来ていた男のルーインだった。
女のルーイン相手には、ただ殺すだけでもよかったのにその男は、ルーシィを犯したあとに首を絞めて殺した。
「わざわざ犯す必要なんてなかったのに……!」
シオンが頭を抱える。いまにも泣きそうなその声に、月花も涙があふれた。
12歳の女の子に、そんなことをする男の気がしれなかった。
ルーシィはどれだけ苦しんだだろう。叫んだだろう。それを知ったイファンは、シオンは。どれだけつらかっただろう。
「──それからだ。イファンがあんなふうになったのは」
イファンはその男を探し出した。男は、盗賊のリーダーだった。
ほかにはもうルーインがいないというのに、イファンはその男を自らの手で殺した。首を、切り落とした。
ルーインでない者がルーインを殺すのは、ある意味ルール違反だ。なのに、イファンにはなんのためらいもなかった。
12歳の男の子が、血も涙もなくそんなことをした。神殺し、イファンはそう言われた。
盗賊も以来なりをひそめ、すっかりおとなしくなった。結果的にヤン国にとってはいいことだったのかもしれない。
けれど、それからだ。
イファンは微笑みの仮面をつけるようになった。決して笑わない瞳とは相反して。
血も涙もない神殺し。
それが、まだ子供のイファンにつけられたあだ名だった。
ルーインがいなくなれば、またすぐ次のルーインが神によって選出される。奇しくも次のルーインとなったのは、イファンだった。半年遅れて、シオンがルーインとなった。
イファンは自分の手で神の座をもぎとろうとした、世間ではそう言われている。ルーシィのことはイファンが彼女のためを思って、なるべく伏せるようにしたという。だからこそ、そんなふうにイファンが言われてしまったのかもしれない。
「待って、……それじゃ」
月花はふと、気がついた。
「それじゃ、イファンもシオンも……もう10年も前からルーインでいるの?」
「──ああ」
シオンは顔を上げ、淋しそうに月花を見下ろした。
月花は、胸がつまる思いだった。
そんなに長い間、ルーインでいる。神子が決まっていない、ということだ。だとしたら。
10年もの間、イファンは。シオンは。ずっと過去にとらわれているのだろうか。願い事を、ずっと胸に抱えているのだろうか。
他のルーインがいつくるかと怯えて、気をはって。毎日、どんな思いでいるのだろうか。
「泣きそうだな。まだ続くけど……聞く勇気、あるか?」
にじむ視界に、心配そうにシオンが顔を覗き込んでくる。目尻に盛り上がった涙を手の甲でぐいと拭い、月花はうなずく。
「聞く。続けて」
シオンもちいさくうなずき、再び口を開いた。
「ルーインがルーインを殺すのは黙認されてるけど、ルーインでもない人間がルーインを殺すのは、重罪なんだ。それでイファンはしばらくのあいだ、王子らしからぬ扱いを受けていた」
まず、重罪であることに加え、父王シュターヌからは「世間の恥」とも言われ、完全に外の世界から隔離された。投獄されたのだという。
シュターヌは元から、イファンとの関係がうまくいっていなかった。微笑みをはりつけてばかりいるイファンのことが、気にくわなかったらしい。
けれど微笑んでばかりいたのは、「王子たるもの常に笑顔でいなければならない」との母の教えからだった。まだ物心つく前からそう教えられたイファンは、父王の前では特に緊張しながらも微笑んでばかりいた。
「おまえの微笑みが気に入らぬ」
母のいないところでそう言われ、人払いした部屋で顔以外のところを殴られたこともあった。
けれどシュターヌがイファンを気に入らないのは、イファンが微笑んでばかりいるからだけではなかった。
イファンが生まれ、乳母にも任せず手ずから育てた王妃ミレイン。彼女の愛を息子に奪われたのだと、シュターヌは思ったのだ。
「俺は親父から、それを聞いたんだけどさ。うちの親父は、シュターヌ陛下と仲が良いから。……うちの親父とはまた違った意味で、シュターヌ陛下も子供だなと思ったぜ。もちろん、世間では愛妻家で息子を愛する父王、だけどな」
シオンは吐き捨てるように言う。
そんな親子関係もあったため、イファンが拠り所をシオンとルーシィに求めたのも無理はなかった。
シオンとルーシィには、嘘がなかったから。シオンとルーシィだけは、等身大でイファンと接していたから。
けれどそのルーシィが殺され、イファンがシュターヌの制止を振り切って復讐を果たすと、投獄されたイファンのそばには、誰もよりつかなくなった。
魔法を使って脱獄するなんて方法は、まだ魔法をコントロールできないイファンには無理だった。シオンも、何度もイファンに面会を求めたけれど認められなかった。
半年後シオンがルーインとなっても、シオンもまた魔法をコントロールできない。唯一、魔法の鏡を習得して、イファンの様子を知ることはできた。
牢の中でも一番汚いところへおしこめられ、ろくに陽もささない場所でイファンは過ごした。壁に鎖で手足を縛られ、自由さえも失われて。
食事すら、ろくに持ってきてはもらえなかった。たまに持ってこられても、虫の沸いたパンひときれといった具合だった。
それでもイファンは食べた。
「神子になるまで、私は生きなければいけないんです」
後に彼はシオンに、そう言っていた。その生への執念が、当時の彼を生かしたのだろう。
不衛生な牢獄では、風邪をこじらせて流行病にもかかった。けれど、誰も手を貸してはくれなかった。
彼は、「神殺し」だったから。自らの欲のためにルーインを殺し、自分がルーインとなった。そう言われていたから。
「王子様。もう死んだのかい?」
ある冬の日、わざと開けられた窓からの風にがたがたと震えているイファンに、見張りの兵士がからかいの眼差しを向けた。
イファンは答える元気もなく、黙っている。
するとその兵士は、もうひとりの兵士とともに鍵を開け、中へと入ってきた。
「きれいな顔してるのに、くせぇな。もったいねぇ」
「仕方ねぇよ、風呂に入れてやってねぇんだし」
ふたりの兵士は、息切れをしているイファンの顔を覗き込んだ。イファンは、こんなときだというのに微笑んでいた。
「気持ち悪いな……笑ってるぜ」
「笑うのやめろよ」
兵士は、鎖につながれているイファンの手を取る。親指の爪を、思い切りよく剥がした。血は溢れたが、イファンは表情を変えない。
「まだ笑ってる」
「もう一枚剥がしたら、泣くんじゃねぇの?」
今度は、人差し指。中指、薬指と爪を剥がされても彼は微笑み続けている。
「なぁ」
片方の兵士が、目を輝かせて仲間に耳打ちする。
「いいのか? 王子だぜ?」
「かまやしねぇよ、シュターヌ陛下は王妃と、新しいお世継ぎ作りに精を出してる」
「それもそうか。ばれることはまずねぇよな」
兵士の手が、イファンの服にかかる。ぼろきれのようだったそれは、兵士の手にかかると、あっけなく散って床に落ちた。
「鎖を外せよ、邪魔だ」
「待ってろ、いまやる」
兵士が鎖を外したとたん、イファンは暴れ出した。病気にかかっているとはいえ、抵抗する気力はまだあったらしい。それでも力でかなうはずはなく、兵士たちに組み伏せられる。
「髪が長いから、ほんとに女みてぇだな」
「おい、おまえなんでこんなに長く髪を伸ばしてるんだ?」
イファンは答えない。けれど、それを鏡で見ていたシオンは知っていた。
うまれた時から、王妃の好みで髪を伸ばし続けたイファン。その髪をルーシィは、よくほめていた。
「イファンの髪、わたし好きよ。女のわたしよりも、きれいだもの」
最初は母のいいなりだったイファンは、ルーシィのために髪を伸ばし続けた。髪を伸ばしていれば、母が、ルーシィが、髪をとかしてくれるから。自分に、触れてくれるから──。
「切っちまおうか」
兵士がそう言ったとたん、イファンが彼に噛みついた。初めて微笑みが消え、目には怯えと獰猛な光が混在している。怯えながらも、威嚇しているのだ。追い詰められた子猫のように。
「おもしれぇ。やっちまおうぜ」
兵士たちはイファンから微笑みが消えたことを面白がり、当初の目的を果たし始めた。裸のイファンに馬乗りになり、彼らは力ずくでイファンを犯した。泣かないイファンの肌を短剣で裂き、腰の動きをわざと激しくしてどうにかして泣かせようとする。
拷問の時間は、あまりにも長く続いた。シオンが目を背けている間に、何度も行為は行われたようだ。
しばらくしてシオンが目を戻すと、彼らはイファンの髪に手をかけていた。
「やっぱり髪か。さっき反応見せたのが、これだからな」
「ばっさりやっちまえ、きっと泣くぜ」
イファンの顔が、こわばる。短剣が閃き、イファンが叫ぶ──。
べちゃりと音がした。シオンは最初、何が起きたのかわからなかった。
牢の中には、イファンの姿しかなかった。あとには、──ふたつの肉塊しか。
追い詰められたイファンは、魔法で彼らの身体を吹き飛ばしたのだ。
「あ……あぁ……」
イファンが、さっきよりも大きな声で叫び声をあげる。その瞳からは涙は流れなかったけれど、まるで泣き叫んでいるかのように。
たまらなくなって、シオンは父に心願した。どうかヤンへ行かせてほしい、イファンに会わせてほしいと。
けれど、それをしたら母がどうなるかと脅されて、行くことはかなわなかった。
ヤンへ行くことができないのならば、イファンのそばに行くことができないのならば、せめてイファンの周りで起こることから、目を背けてはいけない。
シオンはそう思い、また鏡を使ってイファンを見た。
そこでは、シュターヌが王妃ミレインを連れて、イファンと面会していた。その場にいる誰もが、腐臭に顔を背けていた。
イファンは、なぜ兵士たちを呼び寄せて殺したのかを問い詰められていた。
けれどイファンは恐慌状態に陥っていて、口をきくことができずにいた。それで、「イファンは色目を使って兵士たちを呼び寄せ、脱獄しようとした」と勝手に理由がつけられた。
イファンのために、新しい牢獄がつくられた。窓すらない、人ひとりぶんが入るだけの地下の牢獄。牢獄の床を掘っただけのその穴に、イファンは閉じ込められた。
「神よ、この子をお許しください」
王妃はそう祈ったが、イファンのしたことが罪ではないといいはることも、しなかった。誰もイファンのしたことを正しいことだと、当然の感情だと言わなかった。
神殺し、人殺し。イファンは罪を重ね続ける王子。城内ではもっぱら噂になり、自然とそれは城下でもささやかれるようになった。
シオンが空間移動というすべを身につけたのは、実にそれから数年後のことだった。
彼はその魔法を習得すると、真っ先にイファンを助けに行った。イファンは何度目かの流行病で、瀕死の状態だった。
シオンは、ただひとりの理解者である乳母に準備させた城下町の部屋で、イファンの看病をした。時間を縫っては空間移動を使い、イファンのところへきて寝ずの番をした。幸い乳母に医学の知識があったため、イファンは息を吹き返した。
「イファン、……ごめん!」
イファンが意識を取り戻したとき、シオンの口から飛び出した言葉はそれだった。
「ごめん、イファン……助けてやれなくて。傍にいてやれなくて……!」
「──なん、の、ことですか」
かすれきった声で、イファンはそう言った。冷たい微笑みを浮かべて。
それを見てシオンは思ったのだ。
ああ、──手遅れだった。イファンの心はもう、凍りついてしまった──。
シオンのおかげで外の世界に出たイファンの存在を、ヤンでも隠しておけなくなった。イファンはいままでは「旅に出ていた」として急きょ国に戻ったとされ、ようやく王子としての生活を手に入れるようになったのだ。
それでもしばらくは、「神殺し」とされ社交界でもまともに相手をしてもらえなかった。誰も彼に寄りつこうとしなかったのだ。
「あの王子と言葉を交わせば呪いが起きる」
そんな根も葉もない噂が、いくつも立った。
もう婚姻を結んでもいいころになって縁談がきても、相手のほうがその前に自殺をしてしまう始末だった。
「呪われた王子に嫁ぐくらいなら、死にます」
と。
それを世間では、「娘はイファン様に殺された、呪い殺された」と言う。イファンの罪は「神殺し」から一人歩きをしていったのだ。
「なんであんたが泣くんだよ」
月花の頬を流れる涙を、シオンの長い指が優しく拭う。
胸がつまって、返事すらできない。
イファンの受けてきた仕打ちは、月花の想像をはるかにこえていた。あまにも凄惨で、哀しく苦しい過去。
イファンの仮面が、そう簡単にはとれないはずだ。心が凍てつくはずだ──。
それでもなにかを言おうとした、そのとき。
ざわざわと、城内のざわめきが聞こえてきた。慌ただしく走り去る足音も、いくつか。今日はイファンの誕生会が開かれているはずだ、なのにこの騒ぎはどういうことなのだろう。
「ちょっと見てくる」
シオンが立ち上がる。ルカが飛び込んできた。
「シオン様!」
泣きそうな、ルカの顔。
「イファン様が、お倒れになりました!」
「どういうことだ?」
厳しいシオンの口調に、ルカは涙をあふれさせる。
「宴で、イファン様のお飲み物に毒が盛られたらしくて!」
「毒……!?」
シオンの顔色が変わる。月花の心臓が、どくんとはねる。ルカは、がたがたと震えながら声を絞り出した。
「いまお医者様が診ていらっしゃいますけど──今夜もつかどうか、だそうです……!」
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追記2:ひとまず完結しました!
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