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42-正当なる後継者
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「……しの! 北篠!!」
激しく揺さぶられる不快感に陽向は眉を寄せる。ゆっくりと目を開けると、そこには心配そうな顔で陽向の顔を覗き込む松葉がいた。彼は陽向が目を覚ましたのを見て、ほっと安堵のため息をついた。
「松葉?」
「起きた? びっくりしたで? 寝室に運んだはずなのに戻ってきたらここで倒れてるし」
水飲める? そう言いながら松葉が冷えたペットボトルの水を差し出してくれる。陽向はそのペットボトルが間違いなく新品であると確認してから口を付けた。
「ありがと。どうやって中に?」
「防犯的に心配やったけど、ここ出るときに鍵開けたままにしててん。そのおかげでここで倒れてる北篠をすぐ介助できたん」
何が功を奏するかわからんね。そんなことを言いながら松葉は苦笑した。当然のように玄関の中にいて陽向の心配をしている彼を見て、ここまで隠す気がないとなるといっそ清々しいもんだなと陽向は思った。
陽向が松葉の不法侵入に気付いていると気取られるのはリスクが高い。今は解らぬふりをしてやり過ごすべきだと陽向は判断した。
「心配かけてごめん……」
「気にせんで。昨日今日と大変やったもんな、北篠」
「今、何時?」
「15時ごろやね」
「……そか。お礼になんか作るわ。上がって」
「いや、ええよ。まだやらなあかんことあるし」
「やらなあかんこと?」
松葉が立ち上がる。陽向は玄関に座り込んだまま松葉の動きを目で追った。
「今な、集会所で土地もん集めてくゆりのこと話おうとるねん。警察に突き出すのも大切やとは思うんやけど、それだけじゃ問題解決せんやろ?」
「問題……」
「彼女の場合、妊娠に加えやっと授かった赤ちゃんを中絶せなあかんストレスでの精神耗弱が認めらえてまう可能性が高い。昨日言い合いしてるのも合わせたら民事不介入で無罪放免なんてこともあり得る。でも、それではあんまりにもやろ? やから、私刑にはなるけれど、松葉の座敷牢に3年くらい繋ぐ案が出てる」
「座敷牢……」
閉鎖的な土地であるとはいえ、まさか松葉の家にそんなものがあるなんて思いもしなかったし、なんなら組織的にそこに押し込められる下地があるなんて思いつきもしなかった。現代社会においてそれができてしまう松葉の家の権限に恐怖が募る。
陽向は思わず眉を寄せ、松葉から目をそらした。下手に動けば、陽向自身、眠っている間に座敷牢に拉致される可能性もあるということだ。
「その協議と並行して、あちらに渡ってもらう子供の供出を花桃一族の傍系に呼びかけとる」
「……!」
陽向が再び松葉を見上げる。
松葉は、苦しそうな顔で目をそらした。
「わかって、るの、か?」
「ん?」
陽向は立ちあがり、松葉の胸元に縋り付いた。本当は胸ぐらを掴みたかったのだが、調子の整わない今の体調では縋り付くのでやっとだったのだ。
「あっちに、神の、後継として、連れていか、れたら、その子は、生きてはも、どれない、んだぞ」
「そう。それも伝えた。そのうえで、な」
松葉が陽向に視線を戻す。
悲しげなその瞳が雄弁に説得の結末を語る。
「山路由良は、受け入れてくれたよ」
「……!」
やはりか、と、陽向は心のどこかで納得した。と同時に、幻聴か、おぎゃあ、おぎゃあと赤ん坊が泣く声が聞こえた気がする。
山路のじーさんが由良を連れてきた時点でおかしいとは思ったのだ。わざわざ孫1人だけを連れてきて神社を見せるという行為も、彼女のどこか思いつめた表情も。
昨日、騒ぎが起きる前の時点で、すでに山路のじーさんは由良を異世界に送ることを考えていたのだ。理由は解らない。ただ、由良が説得を受け入れている時点で昨日今日の決定ではなかったのだろう。
「子供やで……?」
「子供やから、やね」
「なんで……?」
「伝承を読み解いた結果、あっちに渡るのは14歳以下がふさわしいという結論に至ったんよ。傍系の中で該当する子供のは何人かおったんやけどな」
「ん」
「そんなかで、由良ちゃんが自分が行く、言うてくれてん」
「そんな……」
「一族の中で一番劣化品やからちゃんと神様出来るかわからへんけど、他の子供が犠牲になるよりは自分のほうがええて。……立派な子やろ? やからな?」
松葉はそっと陽向の両肩に手をかけた。真っ直ぐに目を合わせ、告げる。
「連れて行く日が来たら、由良ちゃんのこと褒めたって?」
松葉は泣きそうな顔で微笑んだ。陽向は眉を下げた。
「知ってた……のか?」
「何となく? お前がそうなんだなって」
伝承では子供は行方不明になった、とだけ記述されていたはずだ。だが、口伝では伝わっていたのかもしれない。よそ者が何らかの手段を使って花桃一族の子を異世界に連れて行くという事実を、松葉や花桃は知っていたのだ。
「なんとか犠牲出さずにいけんかとも思とった。でも、どないもならんならせめて、納得ずくで送り出したかった」
「……」
「悲しいかな条件はそろてもた。そろってもた以上、四川の末裔一族の長として、ちゃんと責務は果たすよ」
「一族の、長」
「生まれついた者の負う責務やな」
「そか……」
「だから、そちらの受け入れ状況とかの情報教えてくれん? いつがええとかあるんかな?」
「……解らない。あっちは、あっちで、最悪、の、状況」
「そこまで悪いのか……」
「ん……」
「んじゃあ、早いほうがええな。くゆりの中絶の件もあるし、一週間以内くらいに準備が整うように調整するわ」
「……」
呆然とした陽向の頭の上で話が決まっていく。
これでいい。
花桃の人間連れて行くことが陽向の負った責務で、その責務は現代日本の村社会がバックアップしてくれたおかげで最良の形で果たされようとしている。
こちらの側の人間も、連れて行かれる子供も、みんな納得してくれている。
これ以上の条件があるだろうか?
……解ってはいても、どこか陽向は受け入れられないでいた。
(どうして?)
由良を連れて行けば、志蔵は犠牲にならなくて済むのに?
神の後継となる由良本人が受け入れているのに?
何が、受け入れられない?
耳の奥で赤ん坊のなく声が聞こえた気がした。
(……赤ん坊……? そうだ、あの胎児は?)
夢の中で泣いていた無脳症の赤ん坊。あの子の運命は、中絶により役目を終えるのが正しいのだろうか。
「あの」
「ん?」
「くゆり……」
「くゆり? ああ、長老勢にボロカス言われて頭が冷えたみたいだ。今は俺の家で反省しとるよ」
「会いたい」
「えっ?」
松葉が目を見開いた。
「会いたい、会える?」
「え? あ、ああ。そうやね」
突然の申し出に松葉は驚いていたが、やがて何かに納得したように苦笑した。
「そやね。牢に繋ぐ前にちゃんと謝罪させなあかんね。今日は無理かもやけど」
そうじゃない。くゆりに謝罪してほしいんじゃない。
陽向が会いたいのは、くゆりの胎児。あの子がいなくなってしまう前に助け出さなきゃいけないのだ。
(ああ煩わしい)
説明したくとも口が動かない。松葉は与一と違って陽向の難解な言葉をかみ砕けない。話せば話すほどきっと混乱させるだけだろう。
なら。
全部すっ飛ばして。最短距離で、同じ意味の行動になるように。
陽向が誘導すればいい。
「連れてきて」
「え?」
「なるはやで、きゅゆりを、ここに」
「え? でも、くゆりはついさっき君を殺そうとした奴やで? 今は落ち着いとるけど、北篠の姿を見てまた興奮して襲い掛かるかもしれんのやで?」
「大丈夫、だから」
松葉は難しい顔をしていた。
が、陽向が一切目をそらさずいると、やがて松葉は溜め息をついて目をそらした。
ぴぴぴ、と、松葉の携帯端末が鳴った。
彼は失礼と一言断り、陽向に背中を向けて携帯端末を取り出し耳に当てる。
「どした? ……解った、そうしてくれ。……え?」
「……?」
松葉が厳しい声で通話相手とやり取りする。声がどんどん剣呑なものになっていく。
通話を終えた松葉が陽向を振り返った。
「悪い知らせがある」
「?」
「……くゆりが逃げた。渉が逃がしたらしい」
「……そっか」
「まだお前のことを狙ってくるかもしれない。なあ北篠」
「はい」
「一度、うちに避難してくれないか?」
陽向がピクリと震える。
くゆりが逃げた。陽向への憎しみを抱えたまま。
今どこにいるのか解らないのかもしれない。となると、また陽向が狙われる可能性がある。
……松葉の言うことが本当ならば、だ。
「うちな、仕事がら離れをスタジオにしてて、その2階のセキュリティめっちゃ厳ししてるねん。そこに隠れとってほしい。くゆりを捕まえて安全確保出来るまで」
松葉がさも心配してますという顔で陽向に提案する。その提案が松葉の本心から厚意で出ていたとしたら、陽向が松葉の偽装工作に気付いていなかったら、陽向は心からの感謝と共に彼の提案に乗っていただろう。
だが。そうはならないのだ。
何故なら、松葉が通話していたのは「そうしてくれ」の部分まで。その後、電話を切ってからも通話をし続けているふりをしていたのが陽向からは解ってしまったからだ。
通話偽装に社務所の鍵を持っている件も合わせて考えても解る。松葉は陽向に害意がある。
松葉は自分の家の離れに隠れてくれと陽向に言っているが、提案に乗れば待っているのは死ぬまで監禁される運命だろう。それができるだけの権力も財力も松葉にはあるということだ。
「いかない」
「北篠?」
「いかない」
陽向ははっきりと宣言して立ち上がった。
「松葉、帰って」
「北篠、危ないんやで? 今度こそ殺されるかもせーへん。今は意地を張らず……」
「送る」
陽向は松葉の言葉を遮り靴を履いた。彼を急かして2人で社務所から追い出す。鍵、鍵は……もういい。かけたところで松葉は合い鍵を持っているのだ。かける意味がない。
陽向は松葉の背中を押して駐車場へ向かわせる。松葉は戸惑って陽向を何度も振り返ろうとした。
「北篠! 冗談じゃないんだ本当に……」
「松葉」
「?」
鋭い陽向の声に松葉が眉を寄せ立ち止まる。陽向は松葉から離れて睨みつけてハッキリと言い切った。
「嘘つきは嫌いだ」
「……え?」
「電話、途中、切れてた、そのあと、演技。くゆり、逃げてな、い。嘘!」
「……」
松葉の顔から表情が抜け落ちていく。好青年の仮面を外した彼は、底冷えがするほどに冷たい顔をしていた。
「そっか」
松葉が薄ら笑いを浮かべる。陽向はその表情から次の行動を予測し松葉から大きく距離を取った。距離を取らなければ陽向は松葉に殴り倒されていた。
「ああ、すごいなお前。避けられるとは思ってなかった。どっかで格闘技やってた?」
(現在進行形で致死者と戦ってますもので!)
松葉は世間話でもするような軽い態度で容赦なく陽向に殴りかかってくる。陽向はなんとかかわしながら逃げ回る。
(大丈夫、徒花よりは弱い)
松葉の筋力ならボーガンごと腕をへし折るなんてことはできない。速度も戦闘訓練を受けてた山岳戦隊の隊員たちよりは遅い。落ち着けばいなせる。
松葉の攻撃を避けているうちに松葉の表情が歪んでくる。心底うっとうしそうに松葉が陽向を睨んだ。
「邪魔くさいな、ええからさっさと捕まれや? 守ったるいうとんねんよ?」
「殺そうとしとるの間違いちゃうんけ」
「そんなわけないやろ?」
「!」
じゃり、と、足元が砂利にとられる。陽向が咄嗟に倒れまいとバランスを取ろうとした瞬間、一瞬の隙をついて松葉が陽向の胸ぐらを掴んだ。焦る陽向、嗤う松葉。
「伝承のままであれば、異世界に渡れる奴らは気絶はさせられても簡単には殺せへんらしいやん」
「知らんがな」
伝承にはそんなことも書かれていたのか。一度見に行っておくべきだったかなと陽向はチラッと思った。
陽向はごく一般的な人間だ。そんな特性ない。……ないはずだ。
「やから、現れたら閉じ込めて飼い殺しにせぇって伝わってんねん。花桃の子を連れて行かれる前に、な」
「放せ!!」
松葉に腕一本で胸ぐらを掴まれているのに、陽向が必死でもがいても外せない。油断した、細身な日本人だから自分と同じでそこまで鍛えていないと思い込んでいた。
松葉はバチバチに鍛えている。細身なのは無駄な肉を付けないために走り込みもしているからだろう。
「あのな、北篠」
「ああん?」
せめてもの虚勢で陽向は必死に反抗する。そんな陽向に松葉が向けるのは愛おし気な微笑みだった。
「くゆりも由良ちゃんも、渡せへんよ。異世界? 別世界? には神の供給を諦めてもらう」
浮かべた笑みと裏腹に、その瞳は笑っていない。
「もちろんお前も守る。こちらの世界の人間を、別世界のための犠牲にすることはもうないんやと彼らには理解してもらわんとな。やから安心してうちにおいで? あいつらが諦めるまで」
松葉の腕が陽向の腰に回る。陽向を抱き寄せて落ち着かせようとしているのかもしれない。実際、彼は子供を落ち着かせるかのように陽向の背中をポンポンと叩いた。
松葉の好意と裏腹に、陽向は全身から血の気が引いていく音を聞いていた。
(そんなこと……したら……)
花桃の供出をやめる。それはいい。もういい。供出してもらえない状況なのは陽向だってわかっている。
でも。
(せめてオレが行かないと)
志蔵が。
杼ねの後代として志蔵が連れて行かれてしまう。たった10年、いやもっと短いかもしれないわずかな安寧のために、彼が殺されてしまうのだ。
(いやだ、いやだいやだ!!)
それだけは嫌だ。志蔵を犠牲にするくらいなら、陽向が犠牲になるほうがいい。
志蔵は南支部に必要な人だ。陽向は別にいらない子だ。
どちらが神の後継になるべきか、明白なのだ。
陽向は必死に松葉の腕の中で暴れた。
「放せ! 放して!! 放せぇぇぇ!!」
もがいてももがいても松葉が放してくれない。だが松葉も暴れ出した陽向を取り押さえきれていない。2人はもみ合った末、先に折れたのは松葉だった。
「説得は後でええか」
松葉がポツリと呟いた。同時に松葉の手が陽向の背中側のベルトにかかる。わずかに松葉と陽向の身体の間に空間ができた直後、陽向は咄嗟に腹を庇った。その腕に容赦なく松葉の拳が叩きこまれる。
「!!」
まさか防御されるとは思わなかったのだろう、松葉が息をのんだ。陽向は松葉の手首を掴んでねじり上げた。松葉に抱きこまれていた体勢から、松葉に背中を向けさせる。
陽向は松葉の背中を思い切り押した。松葉がふらついて前のめりに倒れる。
完全に松葉と身体が離れる。と同時に、陽向は走り出した。
(逃げなきゃ! どこに?)
社務所に入っても仕方ない。
拝殿? 開けるのに時間がかかる。
舞殿、手水屋、何ができるというのか。
となるともう逃げ込む先はあそこしかない。
陽向は必死に走った。直後を松葉が追ってくる。幻覚か、もう1つ足音が付いてくる。
拝殿、その傍に立つ巨木のウロ。異世界に繋がるポータルがそこにある。現代日本では松葉と陽向は対等でも、あちらに行けば陽向のほうが圧倒的に強い。はずだと信じて。
陽向がやみくもに逃げているわけではないと松葉も気づいたようだ。
「行かせるか!!」
その言葉が陽向の背中に突き刺さる。陽向は背筋を走る悪寒に気付かないふりをして必死にウロに向かった。
追いつかれる前にたどり着く。陽向はしゃがみ込んでウロを潜ろうとした。
その足首を松葉が掴んだ。ウロに上半身を突っ込んだばかりだった陽向は何かに捕まることもできず引きずり出されてしまう。
松葉は陽向を仰向けに寝かせ腰の上に馬乗りになった。陽向の両手を頭上でまとめて押さえつける。
全ての抵抗を封じたのち、松葉は片手を振り上げた。がら空きになった陽向の腹に一撃加えるつもりなのだ。
「ちょっと寝とき!!」
「君まで何やってるんだ!!」
だが手が振り下ろされることはなかった。松葉の手首を掴んだのだ。
「!!」
松葉と陽向が腕の主を見る。彼は必死の形相で松葉の手の動きを止めている。
渉だった。
陽向も松葉も、なぜここに、という思いを一瞬抱く。
正気に戻るのは松葉のほうが早かった。状況を読むのがうまいのは陽向だ。
「渉くん! こいつを拘束する。手伝え!!」
「あなたこそ落ち着いてください松葉さん! 何されてるんですか!!」
渉は松葉を陽向の上から退かせる。解放された陽向は木のウロを背中で隠した。松葉と渉が木に何かをする可能性を疑ったのだ。
「このタイミングで悪習を絶たんと!! 今、こいつをあちらの世界に渡してもたら、またいずれかのタイミングで花桃の子供を奪われるんやぞ!! 渉君はそれでもええんか?」
「そ、それは嫌です!」
「せやろ! あっちにコイツを渡すくらいやったらここで殺してでも止めるべきなんや! 君なら解るやろ!!」
「……っ」
渉の決意の揺れが振るえとなって表れた。自分の子供を盾にとられて動揺しない親などいない。
渉が俯いた。彼は何も言わなかったが、どちらの陣営に着いたかは解る。松葉がまるで陽向に勝利宣言するように悪い顔でニヤリと笑った。
(まずい)
松葉は目の前にいる。この距離ではウロを潜りきれない。引き戻されて気絶させられるのが関の山だ。
目の前にいる2人は陽向を拘束する方向に考えている。最後の1人がどう動くかを見極めたうえで、どう逃げるかを考えねば。
「こいつを拘束する。手伝ってくれ、渉君」
「……」
松葉が改めて命令する。渉はコクンと頷くと、狙いを定めるかのようにすっと陽向を見た。
そんな渉の肩を、細い手がポンと叩いた。
「その必要はないわ」
「!」
「!!」
(やっぱり、いた)
松葉がギョッとして渉の後ろを見た。彼は渉を味方につけることに気がいっていたせいで、後ろから歩いてくる存在を見落としていた。
松葉は、渉がいるなら当然、渉が自宅に連れ帰ろうとしていたくゆりも来ているということを失念していたのだ。
「くゆり……」
「守ろうとしてくれてありがとう。でも、もういいのよ」
「もういいって、どういう……」
「私が行くから」
「!!」
松葉と渉が息をのんだ。くゆりは2人を陽向の前から退かせると陽向の前に腰を下ろした。さすがに昨日の今日だ。陽向は近づかれた恐怖から逃げ腰になる。
「与一君と渉君から聞いたわ。あなたの真意」
「?」
「私を守ろうとしてくれたんだよね。お腹の子を産んだら、私は死んじゃうから」
陽向は首を縦に振った。その反応に、くゆりは少し疲れた笑顔で頷いてくれた。
「子供がお腹に来てくれたのに、その子は産んではいけない子供だった。そう聞いて頭に血が上ってしまったの。きっとあなたが何かしたんだって。自分が死ぬのに私が幸せになるのが赦せなかったから子供に何かしたんだって。落ち着いて考えたら、そんなはずないのにね」
くゆりがスッと頭を下げる。綺麗な土下座だった。
「本当に、申し訳ありませんでした」
「……」
陽向は何も言えなかった。ただオロオロしてくゆりの様子を見ているしかなかった。
「花桃としてのお役目を全うすべく、異世界へ渡ります。どうぞワタクシめをおつれくださいませ。必ず、新たな神としてあちらの世界に根付きましょう」
「あ、の、……」
「はい」
「あたま、あげ、て」
「仰せのままに」
くゆりがスッと姿勢を正す。彼女の眼にはしっかりと意思の光が宿っていて異世界に渡る覚悟ができていることを物語る。むしろ陽向のほうがどうしていいか戸惑ってしまっていた。
「ただ2つ、お願いがございます」
「ん」
「1つ。渉君との離婚の手続きをさせていただきたいのです。私はいなくなりますが、さりとて死亡届を出せません。死亡が確定には行方不明から7年が必要となります。その間、渉君を縛り付けるのは嫌なのです」
「……ん」
正直、そんなことを言われてもそれはくゆり夫婦が話し合って決めることで陽向からしたら知ったことではない。曖昧にぼかして返事をするにとどめた。
「もう1つ。この子を、置いていきたいのです」
くゆりが自分の腹を撫でた。
彼女のお腹はまだぺったんこだ。妊娠が解るほど膨らんできてはいない。陽向が言わなければ彼女だってまだ妊娠の兆候に気付きもしてない頃だろう。
「私は異世界に渡ります。でも、この子はこの世界の子としてこちらに置いていってあげたいのです。どうか、お腹の子とお別れするまで待っていただけませんでしょうか?」
おぎゃあ、おぎゃあ、と、陽向の耳に赤ん坊が泣く声が聞こえた気がした。くゆりが胎の子供をこちらに置いていくといったタイミングでだ。
(あれ?)
最近よく赤ん坊の声が聞こえる気がする。
先ほどのくゆりの子供の中絶の件しかり。
由良を生贄として連れて行く話題のとき叱り。
(いつが発端だ?)
くゆりの店を訪れた時は白昼夢を見せてきた。
その直前、店に行くと決まった日の夢の中でくゆりの葬儀を見た。
その映像の中に共通して、無脳症の胎児がいた……?
「……あっ」
陽向が目を見開く。くゆりは小首を傾げた。
幻覚でも幻聴でもない。赤ん坊は、母体の中にいる状態ですでに陽向に運命を捻じ曲げるよう要請してくるほどの力を有しているのだ。
何故か。
くゆりの腹にいる無脳症児こそが、杼ねが待ち続けた杼ねの後代、正当なる神の後継だからだ。
根拠は夢だ。杼ねは夢を通じて陽向に何かを伝えてくることがあった。
そして、くゆりに会いに行く前にくゆりの葬儀を見せた夢と、店に入った時に見たくゆりの死因を示す白昼夢。あれらがくゆりのお腹の中の子供が見せたものだというのなら、杼ねの能力と共通する能力を持っているということになる。
対して、由良と初めて会った時にそれらしき前兆はなかった。単純に陽向が眠れなかったというのもあるが、杼ねもくゆりの赤ん坊も視界に強制的に割り込んででも見せてくる能力を持っていることを考えると、それらの能力を持たない由良は神の後継としては論外なのだ。
一応、わずかな可能性としてくゆりがその能力を発動した可能性もあるにはあるが、くゆりは生贄としては年嵩だ。くゆりが候補に上がるくらいなら胎児のほうがまだ信ぴょう性がある。
そして先ほども。
中絶の話しが出た途端、陽向の頭の中で泣き声を聞かせてみせた。
自分べきが候補なのだと能力を見せつけるように、陽向の心をたきつけた。
それほどの能力を持つ者が神の候補ではないなら、何だというのだ。
赤ん坊があちらに渡るためにはくゆりの中から生きて出てこなければならない。
(だから、オレが選ばれた)
陽向には、母体から子供を取り出す術があることは庵手の出産のときに判明済みだ。
陽向の術すらくゆりの胎にいる神の後継を無事取り上げるためにあったのだとしたら、もうそれは偶然でもなんでもなく、必然と立証でしかないのだ。
まして貸与スキルで陽向はポータルを使える。無脳症児の短い生存限界時間の間に、杼ねのもとに連れて行くことができる。
「あの、陽向さん?」
「だめ。子供、残して」
「え?」
「異世界、いく、おまえじゃない。お前の、子供、が、正しい後継者」
「ええ?」
「何だと?」
「どういうことだ」
くゆりが、松葉が、渉が、それぞれ動揺して声を上げる。だが陽向に言葉にする能力はない。
説明は全部端折る。何もわからぬまま子供を差し出す気持ち悪さを陽向を危険に晒した松葉達3人への罰とすればいい。
陽向はそう決断すると、くゆりの手を取った。
「くゆり」
「え?」
「お腹の子供、オレ、ここ、取り出す。オレ、に、は、それが、できる」
「え??」
くゆりがますます混乱した声をあげる。
「子供、もしかしたら、生きられる、かもしれない」
「そ、それは知ってるけど……」
陽向が首を横に振った。
「こっち、ちがう。あっち。神様になる、肉体は死ぬ、けど、魂は生きる。お前の子供、神様として、あっちで、生きられる、かもしれない」
「!!」
今度はくゆりが目を見開く番だった。
「私の子が……生きられる可能性……」
陽向が首肯した。
「お腹から、生きて、取り出せる。オレだけ。信じて、くれる?」
「……!」
「そ、そんなこと……」
渉が口を挟もうとする。陽向はギラリと睨んで黙らせた。
「決める、の、は、くゆり」
「……はい」
くゆりの瞳が揺れる。口を押え、目を忙しなく動かし、内心の動揺に耳を傾けて考えている。難しい決断を前に、くゆりの身体が震え慄く。
やがて。
しばらくの後、くゆりの震えが止まった。くゆりは一度ぎゅっと目を閉じて、それからすっと目を開けた。
「この子が生きられる可能性があるなら」
「くゆり?」
「この子が生きる道があるなら」
私はこの子を、異世界に託します。
くゆりははっきりと陽向に告げた。
激しく揺さぶられる不快感に陽向は眉を寄せる。ゆっくりと目を開けると、そこには心配そうな顔で陽向の顔を覗き込む松葉がいた。彼は陽向が目を覚ましたのを見て、ほっと安堵のため息をついた。
「松葉?」
「起きた? びっくりしたで? 寝室に運んだはずなのに戻ってきたらここで倒れてるし」
水飲める? そう言いながら松葉が冷えたペットボトルの水を差し出してくれる。陽向はそのペットボトルが間違いなく新品であると確認してから口を付けた。
「ありがと。どうやって中に?」
「防犯的に心配やったけど、ここ出るときに鍵開けたままにしててん。そのおかげでここで倒れてる北篠をすぐ介助できたん」
何が功を奏するかわからんね。そんなことを言いながら松葉は苦笑した。当然のように玄関の中にいて陽向の心配をしている彼を見て、ここまで隠す気がないとなるといっそ清々しいもんだなと陽向は思った。
陽向が松葉の不法侵入に気付いていると気取られるのはリスクが高い。今は解らぬふりをしてやり過ごすべきだと陽向は判断した。
「心配かけてごめん……」
「気にせんで。昨日今日と大変やったもんな、北篠」
「今、何時?」
「15時ごろやね」
「……そか。お礼になんか作るわ。上がって」
「いや、ええよ。まだやらなあかんことあるし」
「やらなあかんこと?」
松葉が立ち上がる。陽向は玄関に座り込んだまま松葉の動きを目で追った。
「今な、集会所で土地もん集めてくゆりのこと話おうとるねん。警察に突き出すのも大切やとは思うんやけど、それだけじゃ問題解決せんやろ?」
「問題……」
「彼女の場合、妊娠に加えやっと授かった赤ちゃんを中絶せなあかんストレスでの精神耗弱が認めらえてまう可能性が高い。昨日言い合いしてるのも合わせたら民事不介入で無罪放免なんてこともあり得る。でも、それではあんまりにもやろ? やから、私刑にはなるけれど、松葉の座敷牢に3年くらい繋ぐ案が出てる」
「座敷牢……」
閉鎖的な土地であるとはいえ、まさか松葉の家にそんなものがあるなんて思いもしなかったし、なんなら組織的にそこに押し込められる下地があるなんて思いつきもしなかった。現代社会においてそれができてしまう松葉の家の権限に恐怖が募る。
陽向は思わず眉を寄せ、松葉から目をそらした。下手に動けば、陽向自身、眠っている間に座敷牢に拉致される可能性もあるということだ。
「その協議と並行して、あちらに渡ってもらう子供の供出を花桃一族の傍系に呼びかけとる」
「……!」
陽向が再び松葉を見上げる。
松葉は、苦しそうな顔で目をそらした。
「わかって、るの、か?」
「ん?」
陽向は立ちあがり、松葉の胸元に縋り付いた。本当は胸ぐらを掴みたかったのだが、調子の整わない今の体調では縋り付くのでやっとだったのだ。
「あっちに、神の、後継として、連れていか、れたら、その子は、生きてはも、どれない、んだぞ」
「そう。それも伝えた。そのうえで、な」
松葉が陽向に視線を戻す。
悲しげなその瞳が雄弁に説得の結末を語る。
「山路由良は、受け入れてくれたよ」
「……!」
やはりか、と、陽向は心のどこかで納得した。と同時に、幻聴か、おぎゃあ、おぎゃあと赤ん坊が泣く声が聞こえた気がする。
山路のじーさんが由良を連れてきた時点でおかしいとは思ったのだ。わざわざ孫1人だけを連れてきて神社を見せるという行為も、彼女のどこか思いつめた表情も。
昨日、騒ぎが起きる前の時点で、すでに山路のじーさんは由良を異世界に送ることを考えていたのだ。理由は解らない。ただ、由良が説得を受け入れている時点で昨日今日の決定ではなかったのだろう。
「子供やで……?」
「子供やから、やね」
「なんで……?」
「伝承を読み解いた結果、あっちに渡るのは14歳以下がふさわしいという結論に至ったんよ。傍系の中で該当する子供のは何人かおったんやけどな」
「ん」
「そんなかで、由良ちゃんが自分が行く、言うてくれてん」
「そんな……」
「一族の中で一番劣化品やからちゃんと神様出来るかわからへんけど、他の子供が犠牲になるよりは自分のほうがええて。……立派な子やろ? やからな?」
松葉はそっと陽向の両肩に手をかけた。真っ直ぐに目を合わせ、告げる。
「連れて行く日が来たら、由良ちゃんのこと褒めたって?」
松葉は泣きそうな顔で微笑んだ。陽向は眉を下げた。
「知ってた……のか?」
「何となく? お前がそうなんだなって」
伝承では子供は行方不明になった、とだけ記述されていたはずだ。だが、口伝では伝わっていたのかもしれない。よそ者が何らかの手段を使って花桃一族の子を異世界に連れて行くという事実を、松葉や花桃は知っていたのだ。
「なんとか犠牲出さずにいけんかとも思とった。でも、どないもならんならせめて、納得ずくで送り出したかった」
「……」
「悲しいかな条件はそろてもた。そろってもた以上、四川の末裔一族の長として、ちゃんと責務は果たすよ」
「一族の、長」
「生まれついた者の負う責務やな」
「そか……」
「だから、そちらの受け入れ状況とかの情報教えてくれん? いつがええとかあるんかな?」
「……解らない。あっちは、あっちで、最悪、の、状況」
「そこまで悪いのか……」
「ん……」
「んじゃあ、早いほうがええな。くゆりの中絶の件もあるし、一週間以内くらいに準備が整うように調整するわ」
「……」
呆然とした陽向の頭の上で話が決まっていく。
これでいい。
花桃の人間連れて行くことが陽向の負った責務で、その責務は現代日本の村社会がバックアップしてくれたおかげで最良の形で果たされようとしている。
こちらの側の人間も、連れて行かれる子供も、みんな納得してくれている。
これ以上の条件があるだろうか?
……解ってはいても、どこか陽向は受け入れられないでいた。
(どうして?)
由良を連れて行けば、志蔵は犠牲にならなくて済むのに?
神の後継となる由良本人が受け入れているのに?
何が、受け入れられない?
耳の奥で赤ん坊のなく声が聞こえた気がした。
(……赤ん坊……? そうだ、あの胎児は?)
夢の中で泣いていた無脳症の赤ん坊。あの子の運命は、中絶により役目を終えるのが正しいのだろうか。
「あの」
「ん?」
「くゆり……」
「くゆり? ああ、長老勢にボロカス言われて頭が冷えたみたいだ。今は俺の家で反省しとるよ」
「会いたい」
「えっ?」
松葉が目を見開いた。
「会いたい、会える?」
「え? あ、ああ。そうやね」
突然の申し出に松葉は驚いていたが、やがて何かに納得したように苦笑した。
「そやね。牢に繋ぐ前にちゃんと謝罪させなあかんね。今日は無理かもやけど」
そうじゃない。くゆりに謝罪してほしいんじゃない。
陽向が会いたいのは、くゆりの胎児。あの子がいなくなってしまう前に助け出さなきゃいけないのだ。
(ああ煩わしい)
説明したくとも口が動かない。松葉は与一と違って陽向の難解な言葉をかみ砕けない。話せば話すほどきっと混乱させるだけだろう。
なら。
全部すっ飛ばして。最短距離で、同じ意味の行動になるように。
陽向が誘導すればいい。
「連れてきて」
「え?」
「なるはやで、きゅゆりを、ここに」
「え? でも、くゆりはついさっき君を殺そうとした奴やで? 今は落ち着いとるけど、北篠の姿を見てまた興奮して襲い掛かるかもしれんのやで?」
「大丈夫、だから」
松葉は難しい顔をしていた。
が、陽向が一切目をそらさずいると、やがて松葉は溜め息をついて目をそらした。
ぴぴぴ、と、松葉の携帯端末が鳴った。
彼は失礼と一言断り、陽向に背中を向けて携帯端末を取り出し耳に当てる。
「どした? ……解った、そうしてくれ。……え?」
「……?」
松葉が厳しい声で通話相手とやり取りする。声がどんどん剣呑なものになっていく。
通話を終えた松葉が陽向を振り返った。
「悪い知らせがある」
「?」
「……くゆりが逃げた。渉が逃がしたらしい」
「……そっか」
「まだお前のことを狙ってくるかもしれない。なあ北篠」
「はい」
「一度、うちに避難してくれないか?」
陽向がピクリと震える。
くゆりが逃げた。陽向への憎しみを抱えたまま。
今どこにいるのか解らないのかもしれない。となると、また陽向が狙われる可能性がある。
……松葉の言うことが本当ならば、だ。
「うちな、仕事がら離れをスタジオにしてて、その2階のセキュリティめっちゃ厳ししてるねん。そこに隠れとってほしい。くゆりを捕まえて安全確保出来るまで」
松葉がさも心配してますという顔で陽向に提案する。その提案が松葉の本心から厚意で出ていたとしたら、陽向が松葉の偽装工作に気付いていなかったら、陽向は心からの感謝と共に彼の提案に乗っていただろう。
だが。そうはならないのだ。
何故なら、松葉が通話していたのは「そうしてくれ」の部分まで。その後、電話を切ってからも通話をし続けているふりをしていたのが陽向からは解ってしまったからだ。
通話偽装に社務所の鍵を持っている件も合わせて考えても解る。松葉は陽向に害意がある。
松葉は自分の家の離れに隠れてくれと陽向に言っているが、提案に乗れば待っているのは死ぬまで監禁される運命だろう。それができるだけの権力も財力も松葉にはあるということだ。
「いかない」
「北篠?」
「いかない」
陽向ははっきりと宣言して立ち上がった。
「松葉、帰って」
「北篠、危ないんやで? 今度こそ殺されるかもせーへん。今は意地を張らず……」
「送る」
陽向は松葉の言葉を遮り靴を履いた。彼を急かして2人で社務所から追い出す。鍵、鍵は……もういい。かけたところで松葉は合い鍵を持っているのだ。かける意味がない。
陽向は松葉の背中を押して駐車場へ向かわせる。松葉は戸惑って陽向を何度も振り返ろうとした。
「北篠! 冗談じゃないんだ本当に……」
「松葉」
「?」
鋭い陽向の声に松葉が眉を寄せ立ち止まる。陽向は松葉から離れて睨みつけてハッキリと言い切った。
「嘘つきは嫌いだ」
「……え?」
「電話、途中、切れてた、そのあと、演技。くゆり、逃げてな、い。嘘!」
「……」
松葉の顔から表情が抜け落ちていく。好青年の仮面を外した彼は、底冷えがするほどに冷たい顔をしていた。
「そっか」
松葉が薄ら笑いを浮かべる。陽向はその表情から次の行動を予測し松葉から大きく距離を取った。距離を取らなければ陽向は松葉に殴り倒されていた。
「ああ、すごいなお前。避けられるとは思ってなかった。どっかで格闘技やってた?」
(現在進行形で致死者と戦ってますもので!)
松葉は世間話でもするような軽い態度で容赦なく陽向に殴りかかってくる。陽向はなんとかかわしながら逃げ回る。
(大丈夫、徒花よりは弱い)
松葉の筋力ならボーガンごと腕をへし折るなんてことはできない。速度も戦闘訓練を受けてた山岳戦隊の隊員たちよりは遅い。落ち着けばいなせる。
松葉の攻撃を避けているうちに松葉の表情が歪んでくる。心底うっとうしそうに松葉が陽向を睨んだ。
「邪魔くさいな、ええからさっさと捕まれや? 守ったるいうとんねんよ?」
「殺そうとしとるの間違いちゃうんけ」
「そんなわけないやろ?」
「!」
じゃり、と、足元が砂利にとられる。陽向が咄嗟に倒れまいとバランスを取ろうとした瞬間、一瞬の隙をついて松葉が陽向の胸ぐらを掴んだ。焦る陽向、嗤う松葉。
「伝承のままであれば、異世界に渡れる奴らは気絶はさせられても簡単には殺せへんらしいやん」
「知らんがな」
伝承にはそんなことも書かれていたのか。一度見に行っておくべきだったかなと陽向はチラッと思った。
陽向はごく一般的な人間だ。そんな特性ない。……ないはずだ。
「やから、現れたら閉じ込めて飼い殺しにせぇって伝わってんねん。花桃の子を連れて行かれる前に、な」
「放せ!!」
松葉に腕一本で胸ぐらを掴まれているのに、陽向が必死でもがいても外せない。油断した、細身な日本人だから自分と同じでそこまで鍛えていないと思い込んでいた。
松葉はバチバチに鍛えている。細身なのは無駄な肉を付けないために走り込みもしているからだろう。
「あのな、北篠」
「ああん?」
せめてもの虚勢で陽向は必死に反抗する。そんな陽向に松葉が向けるのは愛おし気な微笑みだった。
「くゆりも由良ちゃんも、渡せへんよ。異世界? 別世界? には神の供給を諦めてもらう」
浮かべた笑みと裏腹に、その瞳は笑っていない。
「もちろんお前も守る。こちらの世界の人間を、別世界のための犠牲にすることはもうないんやと彼らには理解してもらわんとな。やから安心してうちにおいで? あいつらが諦めるまで」
松葉の腕が陽向の腰に回る。陽向を抱き寄せて落ち着かせようとしているのかもしれない。実際、彼は子供を落ち着かせるかのように陽向の背中をポンポンと叩いた。
松葉の好意と裏腹に、陽向は全身から血の気が引いていく音を聞いていた。
(そんなこと……したら……)
花桃の供出をやめる。それはいい。もういい。供出してもらえない状況なのは陽向だってわかっている。
でも。
(せめてオレが行かないと)
志蔵が。
杼ねの後代として志蔵が連れて行かれてしまう。たった10年、いやもっと短いかもしれないわずかな安寧のために、彼が殺されてしまうのだ。
(いやだ、いやだいやだ!!)
それだけは嫌だ。志蔵を犠牲にするくらいなら、陽向が犠牲になるほうがいい。
志蔵は南支部に必要な人だ。陽向は別にいらない子だ。
どちらが神の後継になるべきか、明白なのだ。
陽向は必死に松葉の腕の中で暴れた。
「放せ! 放して!! 放せぇぇぇ!!」
もがいてももがいても松葉が放してくれない。だが松葉も暴れ出した陽向を取り押さえきれていない。2人はもみ合った末、先に折れたのは松葉だった。
「説得は後でええか」
松葉がポツリと呟いた。同時に松葉の手が陽向の背中側のベルトにかかる。わずかに松葉と陽向の身体の間に空間ができた直後、陽向は咄嗟に腹を庇った。その腕に容赦なく松葉の拳が叩きこまれる。
「!!」
まさか防御されるとは思わなかったのだろう、松葉が息をのんだ。陽向は松葉の手首を掴んでねじり上げた。松葉に抱きこまれていた体勢から、松葉に背中を向けさせる。
陽向は松葉の背中を思い切り押した。松葉がふらついて前のめりに倒れる。
完全に松葉と身体が離れる。と同時に、陽向は走り出した。
(逃げなきゃ! どこに?)
社務所に入っても仕方ない。
拝殿? 開けるのに時間がかかる。
舞殿、手水屋、何ができるというのか。
となるともう逃げ込む先はあそこしかない。
陽向は必死に走った。直後を松葉が追ってくる。幻覚か、もう1つ足音が付いてくる。
拝殿、その傍に立つ巨木のウロ。異世界に繋がるポータルがそこにある。現代日本では松葉と陽向は対等でも、あちらに行けば陽向のほうが圧倒的に強い。はずだと信じて。
陽向がやみくもに逃げているわけではないと松葉も気づいたようだ。
「行かせるか!!」
その言葉が陽向の背中に突き刺さる。陽向は背筋を走る悪寒に気付かないふりをして必死にウロに向かった。
追いつかれる前にたどり着く。陽向はしゃがみ込んでウロを潜ろうとした。
その足首を松葉が掴んだ。ウロに上半身を突っ込んだばかりだった陽向は何かに捕まることもできず引きずり出されてしまう。
松葉は陽向を仰向けに寝かせ腰の上に馬乗りになった。陽向の両手を頭上でまとめて押さえつける。
全ての抵抗を封じたのち、松葉は片手を振り上げた。がら空きになった陽向の腹に一撃加えるつもりなのだ。
「ちょっと寝とき!!」
「君まで何やってるんだ!!」
だが手が振り下ろされることはなかった。松葉の手首を掴んだのだ。
「!!」
松葉と陽向が腕の主を見る。彼は必死の形相で松葉の手の動きを止めている。
渉だった。
陽向も松葉も、なぜここに、という思いを一瞬抱く。
正気に戻るのは松葉のほうが早かった。状況を読むのがうまいのは陽向だ。
「渉くん! こいつを拘束する。手伝え!!」
「あなたこそ落ち着いてください松葉さん! 何されてるんですか!!」
渉は松葉を陽向の上から退かせる。解放された陽向は木のウロを背中で隠した。松葉と渉が木に何かをする可能性を疑ったのだ。
「このタイミングで悪習を絶たんと!! 今、こいつをあちらの世界に渡してもたら、またいずれかのタイミングで花桃の子供を奪われるんやぞ!! 渉君はそれでもええんか?」
「そ、それは嫌です!」
「せやろ! あっちにコイツを渡すくらいやったらここで殺してでも止めるべきなんや! 君なら解るやろ!!」
「……っ」
渉の決意の揺れが振るえとなって表れた。自分の子供を盾にとられて動揺しない親などいない。
渉が俯いた。彼は何も言わなかったが、どちらの陣営に着いたかは解る。松葉がまるで陽向に勝利宣言するように悪い顔でニヤリと笑った。
(まずい)
松葉は目の前にいる。この距離ではウロを潜りきれない。引き戻されて気絶させられるのが関の山だ。
目の前にいる2人は陽向を拘束する方向に考えている。最後の1人がどう動くかを見極めたうえで、どう逃げるかを考えねば。
「こいつを拘束する。手伝ってくれ、渉君」
「……」
松葉が改めて命令する。渉はコクンと頷くと、狙いを定めるかのようにすっと陽向を見た。
そんな渉の肩を、細い手がポンと叩いた。
「その必要はないわ」
「!」
「!!」
(やっぱり、いた)
松葉がギョッとして渉の後ろを見た。彼は渉を味方につけることに気がいっていたせいで、後ろから歩いてくる存在を見落としていた。
松葉は、渉がいるなら当然、渉が自宅に連れ帰ろうとしていたくゆりも来ているということを失念していたのだ。
「くゆり……」
「守ろうとしてくれてありがとう。でも、もういいのよ」
「もういいって、どういう……」
「私が行くから」
「!!」
松葉と渉が息をのんだ。くゆりは2人を陽向の前から退かせると陽向の前に腰を下ろした。さすがに昨日の今日だ。陽向は近づかれた恐怖から逃げ腰になる。
「与一君と渉君から聞いたわ。あなたの真意」
「?」
「私を守ろうとしてくれたんだよね。お腹の子を産んだら、私は死んじゃうから」
陽向は首を縦に振った。その反応に、くゆりは少し疲れた笑顔で頷いてくれた。
「子供がお腹に来てくれたのに、その子は産んではいけない子供だった。そう聞いて頭に血が上ってしまったの。きっとあなたが何かしたんだって。自分が死ぬのに私が幸せになるのが赦せなかったから子供に何かしたんだって。落ち着いて考えたら、そんなはずないのにね」
くゆりがスッと頭を下げる。綺麗な土下座だった。
「本当に、申し訳ありませんでした」
「……」
陽向は何も言えなかった。ただオロオロしてくゆりの様子を見ているしかなかった。
「花桃としてのお役目を全うすべく、異世界へ渡ります。どうぞワタクシめをおつれくださいませ。必ず、新たな神としてあちらの世界に根付きましょう」
「あ、の、……」
「はい」
「あたま、あげ、て」
「仰せのままに」
くゆりがスッと姿勢を正す。彼女の眼にはしっかりと意思の光が宿っていて異世界に渡る覚悟ができていることを物語る。むしろ陽向のほうがどうしていいか戸惑ってしまっていた。
「ただ2つ、お願いがございます」
「ん」
「1つ。渉君との離婚の手続きをさせていただきたいのです。私はいなくなりますが、さりとて死亡届を出せません。死亡が確定には行方不明から7年が必要となります。その間、渉君を縛り付けるのは嫌なのです」
「……ん」
正直、そんなことを言われてもそれはくゆり夫婦が話し合って決めることで陽向からしたら知ったことではない。曖昧にぼかして返事をするにとどめた。
「もう1つ。この子を、置いていきたいのです」
くゆりが自分の腹を撫でた。
彼女のお腹はまだぺったんこだ。妊娠が解るほど膨らんできてはいない。陽向が言わなければ彼女だってまだ妊娠の兆候に気付きもしてない頃だろう。
「私は異世界に渡ります。でも、この子はこの世界の子としてこちらに置いていってあげたいのです。どうか、お腹の子とお別れするまで待っていただけませんでしょうか?」
おぎゃあ、おぎゃあ、と、陽向の耳に赤ん坊が泣く声が聞こえた気がした。くゆりが胎の子供をこちらに置いていくといったタイミングでだ。
(あれ?)
最近よく赤ん坊の声が聞こえる気がする。
先ほどのくゆりの子供の中絶の件しかり。
由良を生贄として連れて行く話題のとき叱り。
(いつが発端だ?)
くゆりの店を訪れた時は白昼夢を見せてきた。
その直前、店に行くと決まった日の夢の中でくゆりの葬儀を見た。
その映像の中に共通して、無脳症の胎児がいた……?
「……あっ」
陽向が目を見開く。くゆりは小首を傾げた。
幻覚でも幻聴でもない。赤ん坊は、母体の中にいる状態ですでに陽向に運命を捻じ曲げるよう要請してくるほどの力を有しているのだ。
何故か。
くゆりの腹にいる無脳症児こそが、杼ねが待ち続けた杼ねの後代、正当なる神の後継だからだ。
根拠は夢だ。杼ねは夢を通じて陽向に何かを伝えてくることがあった。
そして、くゆりに会いに行く前にくゆりの葬儀を見せた夢と、店に入った時に見たくゆりの死因を示す白昼夢。あれらがくゆりのお腹の中の子供が見せたものだというのなら、杼ねの能力と共通する能力を持っているということになる。
対して、由良と初めて会った時にそれらしき前兆はなかった。単純に陽向が眠れなかったというのもあるが、杼ねもくゆりの赤ん坊も視界に強制的に割り込んででも見せてくる能力を持っていることを考えると、それらの能力を持たない由良は神の後継としては論外なのだ。
一応、わずかな可能性としてくゆりがその能力を発動した可能性もあるにはあるが、くゆりは生贄としては年嵩だ。くゆりが候補に上がるくらいなら胎児のほうがまだ信ぴょう性がある。
そして先ほども。
中絶の話しが出た途端、陽向の頭の中で泣き声を聞かせてみせた。
自分べきが候補なのだと能力を見せつけるように、陽向の心をたきつけた。
それほどの能力を持つ者が神の候補ではないなら、何だというのだ。
赤ん坊があちらに渡るためにはくゆりの中から生きて出てこなければならない。
(だから、オレが選ばれた)
陽向には、母体から子供を取り出す術があることは庵手の出産のときに判明済みだ。
陽向の術すらくゆりの胎にいる神の後継を無事取り上げるためにあったのだとしたら、もうそれは偶然でもなんでもなく、必然と立証でしかないのだ。
まして貸与スキルで陽向はポータルを使える。無脳症児の短い生存限界時間の間に、杼ねのもとに連れて行くことができる。
「あの、陽向さん?」
「だめ。子供、残して」
「え?」
「異世界、いく、おまえじゃない。お前の、子供、が、正しい後継者」
「ええ?」
「何だと?」
「どういうことだ」
くゆりが、松葉が、渉が、それぞれ動揺して声を上げる。だが陽向に言葉にする能力はない。
説明は全部端折る。何もわからぬまま子供を差し出す気持ち悪さを陽向を危険に晒した松葉達3人への罰とすればいい。
陽向はそう決断すると、くゆりの手を取った。
「くゆり」
「え?」
「お腹の子供、オレ、ここ、取り出す。オレ、に、は、それが、できる」
「え??」
くゆりがますます混乱した声をあげる。
「子供、もしかしたら、生きられる、かもしれない」
「そ、それは知ってるけど……」
陽向が首を横に振った。
「こっち、ちがう。あっち。神様になる、肉体は死ぬ、けど、魂は生きる。お前の子供、神様として、あっちで、生きられる、かもしれない」
「!!」
今度はくゆりが目を見開く番だった。
「私の子が……生きられる可能性……」
陽向が首肯した。
「お腹から、生きて、取り出せる。オレだけ。信じて、くれる?」
「……!」
「そ、そんなこと……」
渉が口を挟もうとする。陽向はギラリと睨んで黙らせた。
「決める、の、は、くゆり」
「……はい」
くゆりの瞳が揺れる。口を押え、目を忙しなく動かし、内心の動揺に耳を傾けて考えている。難しい決断を前に、くゆりの身体が震え慄く。
やがて。
しばらくの後、くゆりの震えが止まった。くゆりは一度ぎゅっと目を閉じて、それからすっと目を開けた。
「この子が生きられる可能性があるなら」
「くゆり?」
「この子が生きる道があるなら」
私はこの子を、異世界に託します。
くゆりははっきりと陽向に告げた。
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