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第一章 未知なる世界でスローライフを!
おかしな五人組
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村人達を洞穴で寝かせ、俺達は洞穴の入り口近くにテント張って見張り番をする事にした。
まあ、俺達とはいってもエルルーン達、三人の神官衆と一緒なのだが。
「ねえ、レンジ。僕にもエール頂戴」
「駄目だ。酒の弱いおまえに飲ませたら寝ちまうだろうが。ほれ、これでも食ってろ」
ポプラの街に戻った時にシェフリーさんから貰ったポプラ牛の串焼きを手渡した。
「あ、ありがと。しかしさぁ、シェフリーさんも気前が良いよね。ここの話を聞いて大量のお肉を用意してくれたんだから。ほんと良い人だよね」
「だな。ポプラ牛や、美味しい豚肉や鶏肉。これをタダでくれるなんて感謝しかないな」
焚き火で焼かれている串焼きを眺めながら、遠くのシェフリーさん達に感謝した。
「レンジ様。このお肉全部、有名なお肉ですよ」
「ん、なんで分かるんだ」
「包を見れば分かります。かなりの金額ですよ、これは」
「カーラ、たぶん皆んなこれを無償で分けてくれたんだと思うよ」
善意の塊か。本当に女神様の世界は優しい世界だな。
でもそんな世界でも魔族という危険な奴等が存在する。
なんか優しい女神様の事を考えると、それは不自然さを感じるな。
しかしほんと綺麗だったな。
神殿で見た女神像は。
「なあ、神殿の女神像は本当に女神様をそのまま写した物なのか」
「ええ、本当の御姿をそのまま、だそうです。もちろん絵画なども」
「なに、どうしたのレンジ。そんなに気になるほど綺麗だったの」
「ああ、絶世の美女、いや美神か。あんなに目も心も奪われる綺麗な像は見たこともない」
その言葉を聞いてリィーナが俺の頬を抓るが、あまり痛くもないので好きなようにさせる事にした。
「ところで勇、いやレンジ様。本当に時の大精霊クロノア様と最初にお話しされたのですか」
「ええ。けどあんな暴力妖精が本当にそんなに偉大なんですか。まったくもって信じられん」
「だよね。話をちゃんと聞けってボコボコ殴られたし」
思い出すだけで寒気がする。
口に出すのも嫌な存在だ。
「女神フレイヤ様のいつもお側におられる偉大な時の大精霊様ですよ。それに、いちばんの理解者であり、友だと云われております。万物を見通す、そんな唯一無二の時の大精霊様にお会いしたなんて羨ましい限りです」
あん、あれがか。
たしかに美しい精霊だったのは確かだが……
あれか。俺、嫌われてんのかなぁ。
「それで本当に女神様からは何も使命などは託されてはいないのですか。クロノア様は何か仰っていませんでしたか」
「別になにも。僕達にこの世界をざっくり説明してお金と武器を渡して、さっさと帰ったしね。ね、レンジ」
「だな。ほんと不親切極まりない。俺が聞かなきゃ街の場所も教えてくれなかったしな」
「だよね。しかも、あっち、って指差されただけだしさぁ。それにだよ、僕の青薔薇の杖はどうしてくれなかったのさ。あれを作るのにどれだけ苦労して素材を集めて、お金を注ぎ込んだと……」
隣でリィーナはガックリと肩を落とした。
だよなあ。
あれ、課金武器で。しかも最大強化して初めて使える武器だしな。
途方もない労力と、手に入れるお金を考えると少し切ないよな。
いや、本当に同情するよ。
「なあ、マジック袋に入ってないのか」
「入ってないよ。ちゃんと確かめたもん」
「そっか。
……でもよ、剣と杖って同時に使わないよな?」
「用途が違うのに同時に使う訳ないじゃん。青薔薇の細剣は武器、青薔薇の杖は飾りなんだから」
「おい、飾りって……」
「あれは僕が聖女である証なの。だいたい魔法を使う上で必要無いし」
確かに。仰る通りですな、大聖女様。
まあ、リィーナからすれば効果上昇も微々たるもので見た目だけの飾りでしかないのかもしれん。
けど、なんか引っ掛かるんだよな。
あの親切な女神様に限って忘れるか?
「ちょっとリィーナ、剣見せてみろ」
俺はリィーナから剣を受取り鑑定した。
はん、やっぱりな。
「おい、抜け作。これ、杖にもなるぞ」
リィーナ剣を返して、やってみろと促した。
「え、えええぇ、はんとに言ってるの」
「ほんとだ。ちゃんと鑑定してみろ」
リィーナは剣を鑑定し、恐る恐る鞘に納まったままの剣を軽く掲げ、何かを囁いた。
「うわっ! ほんとに変化した⁉︎」
リィーナの左手には美麗なあの青薔薇の杖があった。
「どこぞの不親切な暴力妖精と違って、あの親切で美しい女神様に限って忘れることなどあり得ん。ほれリィーナ、ちゃんと女神様に謝れ」
「うん! 女神様、疑って本当にごめんなさい!」
俺とリィーナは天を仰ぎ、女神様に謝罪と感謝の意を示した。
もちろん、敬虔な信徒などではない。
「ねえ、ミスト。あの剣、杖に変わったけど、私の見間違いじゃないよね」
「たぶん。私にもそう見えたよ。ね、エルルーン」
「はい。私にもそう見えました。今、女神フレイヤ様の偉大さを改めて実感しています」
なぜか、三人の神官達も祈りを捧げていた。
おそらく、傍から見ればおかしな五人組に見えるだろう。
でも構わない。感謝することは大切な事だ。
まあ、俺達とはいってもエルルーン達、三人の神官衆と一緒なのだが。
「ねえ、レンジ。僕にもエール頂戴」
「駄目だ。酒の弱いおまえに飲ませたら寝ちまうだろうが。ほれ、これでも食ってろ」
ポプラの街に戻った時にシェフリーさんから貰ったポプラ牛の串焼きを手渡した。
「あ、ありがと。しかしさぁ、シェフリーさんも気前が良いよね。ここの話を聞いて大量のお肉を用意してくれたんだから。ほんと良い人だよね」
「だな。ポプラ牛や、美味しい豚肉や鶏肉。これをタダでくれるなんて感謝しかないな」
焚き火で焼かれている串焼きを眺めながら、遠くのシェフリーさん達に感謝した。
「レンジ様。このお肉全部、有名なお肉ですよ」
「ん、なんで分かるんだ」
「包を見れば分かります。かなりの金額ですよ、これは」
「カーラ、たぶん皆んなこれを無償で分けてくれたんだと思うよ」
善意の塊か。本当に女神様の世界は優しい世界だな。
でもそんな世界でも魔族という危険な奴等が存在する。
なんか優しい女神様の事を考えると、それは不自然さを感じるな。
しかしほんと綺麗だったな。
神殿で見た女神像は。
「なあ、神殿の女神像は本当に女神様をそのまま写した物なのか」
「ええ、本当の御姿をそのまま、だそうです。もちろん絵画なども」
「なに、どうしたのレンジ。そんなに気になるほど綺麗だったの」
「ああ、絶世の美女、いや美神か。あんなに目も心も奪われる綺麗な像は見たこともない」
その言葉を聞いてリィーナが俺の頬を抓るが、あまり痛くもないので好きなようにさせる事にした。
「ところで勇、いやレンジ様。本当に時の大精霊クロノア様と最初にお話しされたのですか」
「ええ。けどあんな暴力妖精が本当にそんなに偉大なんですか。まったくもって信じられん」
「だよね。話をちゃんと聞けってボコボコ殴られたし」
思い出すだけで寒気がする。
口に出すのも嫌な存在だ。
「女神フレイヤ様のいつもお側におられる偉大な時の大精霊様ですよ。それに、いちばんの理解者であり、友だと云われております。万物を見通す、そんな唯一無二の時の大精霊様にお会いしたなんて羨ましい限りです」
あん、あれがか。
たしかに美しい精霊だったのは確かだが……
あれか。俺、嫌われてんのかなぁ。
「それで本当に女神様からは何も使命などは託されてはいないのですか。クロノア様は何か仰っていませんでしたか」
「別になにも。僕達にこの世界をざっくり説明してお金と武器を渡して、さっさと帰ったしね。ね、レンジ」
「だな。ほんと不親切極まりない。俺が聞かなきゃ街の場所も教えてくれなかったしな」
「だよね。しかも、あっち、って指差されただけだしさぁ。それにだよ、僕の青薔薇の杖はどうしてくれなかったのさ。あれを作るのにどれだけ苦労して素材を集めて、お金を注ぎ込んだと……」
隣でリィーナはガックリと肩を落とした。
だよなあ。
あれ、課金武器で。しかも最大強化して初めて使える武器だしな。
途方もない労力と、手に入れるお金を考えると少し切ないよな。
いや、本当に同情するよ。
「なあ、マジック袋に入ってないのか」
「入ってないよ。ちゃんと確かめたもん」
「そっか。
……でもよ、剣と杖って同時に使わないよな?」
「用途が違うのに同時に使う訳ないじゃん。青薔薇の細剣は武器、青薔薇の杖は飾りなんだから」
「おい、飾りって……」
「あれは僕が聖女である証なの。だいたい魔法を使う上で必要無いし」
確かに。仰る通りですな、大聖女様。
まあ、リィーナからすれば効果上昇も微々たるもので見た目だけの飾りでしかないのかもしれん。
けど、なんか引っ掛かるんだよな。
あの親切な女神様に限って忘れるか?
「ちょっとリィーナ、剣見せてみろ」
俺はリィーナから剣を受取り鑑定した。
はん、やっぱりな。
「おい、抜け作。これ、杖にもなるぞ」
リィーナ剣を返して、やってみろと促した。
「え、えええぇ、はんとに言ってるの」
「ほんとだ。ちゃんと鑑定してみろ」
リィーナは剣を鑑定し、恐る恐る鞘に納まったままの剣を軽く掲げ、何かを囁いた。
「うわっ! ほんとに変化した⁉︎」
リィーナの左手には美麗なあの青薔薇の杖があった。
「どこぞの不親切な暴力妖精と違って、あの親切で美しい女神様に限って忘れることなどあり得ん。ほれリィーナ、ちゃんと女神様に謝れ」
「うん! 女神様、疑って本当にごめんなさい!」
俺とリィーナは天を仰ぎ、女神様に謝罪と感謝の意を示した。
もちろん、敬虔な信徒などではない。
「ねえ、ミスト。あの剣、杖に変わったけど、私の見間違いじゃないよね」
「たぶん。私にもそう見えたよ。ね、エルルーン」
「はい。私にもそう見えました。今、女神フレイヤ様の偉大さを改めて実感しています」
なぜか、三人の神官達も祈りを捧げていた。
おそらく、傍から見ればおかしな五人組に見えるだろう。
でも構わない。感謝することは大切な事だ。
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