17 / 97
第一章 未知なる世界でスローライフを!
辺境伯現る
しおりを挟む
村人達は朝起きるとわざわざ礼を述べていった。
そんなに顔を合わせる度に言われる事でもないのにな。
そうした村人達との交流の中で、ある一つの要望というか、女神様の像が洞穴にあったらいいなぁ、という話を耳にした。
そこで敬虔なる信徒ではないが、一度見たものは忘れない特技のある俺は、村人達の期待に応えるべく洞穴のいちばん奥の真ん中でせっせと女神像を作成していた。
便利だよなぁ。
鍛治職や錬金職を極めれば、こんな事も出来るんだからさ。
コツコツとサブ職を鍛えてきた甲斐があったもんだ。
あらためて自分の先見の明に驚かされるぜ、あっははははは!
「ねえ、一回見ただけでそんなに上手く彫れるほど女神様に心を奪われたの。ねえ、ねえって、それっていけないんだよっ!」
真剣に作成している最中だというのに、両肩を強く握り揺さぶるのはやめてくれ。手元がブレるじゃないか。
「あほか。これは俺の心に残っている女神様のイメージを正確にスキルで彫っているに過ぎないんだぞ、誤解すんな!」
「ますますダメじゃん!」
今度は両肩を強く叩かれた。
まるでガキだ。いや、こいつはガキンチョだったな。
ほんとめんどくせぇ……
「レンジ様、本当にお上手ですね。大神殿の女神像にも引けはとらないかと」
「ありがとう。けど、まだ途中だからな。最後まで気を抜くことなく頑張るよ」
エルルーンが褒めてくれたので良しとしよう。
それにエルルーン達も名前呼びに慣れたみたいだし益々以ってオッケーだぜ。
「なあ、今更なんだけど。なんであんなに早くカーラから連絡がいったんだ?」
「あ、それは魔法のハトを使ったからですよ。ここからなら半日も掛かりません」
それは便利なものだ。
こっちの世界では魔法のハトで連絡を交わすのが当たり前なんだな。
さすがは剣と魔法の世界だ。
「いえいえ、これを使って連絡を交わすのは神殿だけです。結構大変なんですよ」
エルルーンは得意げに笑った。
うん、昨日とは違い、初対面の時と同じ感じに戻ったな。いいことだ。
「ねえ、念話は出来ないの?」
「念話、ですか?」
「うん。離れていても話が出来るやつ」
「そんな便利なものがあるのですか」
おい、自分で話を振っておいて俺に助けを求めるな。
俺はレンジャー職で取ったから持ってるけど絶対にやらないからな。
「レンジはそのスキルあるよね。僕も欲しいなぁ」
そんな上目遣いでかわいく見つめられても絶対にやらん。
そんなんで魅了されるほど、俺の雪奈への愛は軽くはないわ。馬鹿者めが!
「やらん。絶対にコピーして渡さん」
「ええぇ、いいじゃん。減るものでもないしさぁ。ケチケチしないで頂戴!」
また両肩を掴んで体を揺すりはじめたので、今度は手を払い女神像も完成したので立ち上がった。
「おまえに好きな人ができて、独り立ちしたらコピーしてやろう」
「そんなの永遠に来ないじゃん!」
リィーナの絶叫が洞穴内に響いた。
それを尻目に俺は外に出た。
◇
村人達に褒められおだてられた俺は調子にのって勧められるがままに広場で等身大女神像を作成していた。
今度は台座を含めるとかなりの高さと大きさだ。
そんな浮かれ気分で掘り進めていると村の入り口が騒がしくなった。
「我は辺境伯オースティンだ。皆は無事か!」
二十騎あまり騎士を引き連れて先頭を走る騎士が、そう叫びながら広場まで馬に乗って駆けてきた。
その辺境伯はとても弱々しい貴族とは違い、武人然としていて凛々しく精悍な顔立ちだった。歳はおそらく四十代前後と思われる。
「これは辺境伯様。こちらに居るレンジ様とリィーナ様のお陰で誰一人欠けることもなく無事であります。またポプラの神殿エルルーン様方にも多大なご支援をして頂きました」
村長が傅き、そう述べると、辺境伯は馬から降り俺の前まで来ると片膝をついて礼を述べた。
「レンジ殿。カーニ村を救って頂き誠に感謝致します」
「あの、顔を上げてください。たまたま通りかかっただけですから」
あまりの真摯さにかなり動揺し焦ってしまった。
あの馬鹿領主を見た後だと、どうにも調子が狂う。
「はい。それとエルルーン神官長殿、ご支援感謝する」
「礼には及びません。当然の事をしたまでです。それよりお話したいことがありますのでこちらへ来て頂いても」
「はい、構いません」
なんの話かは知らないがエルルーンが辺境伯を連れていった。
なんかあの接し方をみると本当に神殿は権力というか、立場が強いことが分かるな。
まあ、そんな恐ろしい世界には関わるつもりもないから関係ないけど。
しかしリィーナはどこに行ったんだ。
まさか不貞腐れて寝てないよな。
カーラ達も居ないし、なんか嫌な予感がする。
絶対にトラブルに巻き込まれる系なんじゃないか、これは。
まあ考えても仕方がない。
女神像を早く完成させよう。
そんなに顔を合わせる度に言われる事でもないのにな。
そうした村人達との交流の中で、ある一つの要望というか、女神様の像が洞穴にあったらいいなぁ、という話を耳にした。
そこで敬虔なる信徒ではないが、一度見たものは忘れない特技のある俺は、村人達の期待に応えるべく洞穴のいちばん奥の真ん中でせっせと女神像を作成していた。
便利だよなぁ。
鍛治職や錬金職を極めれば、こんな事も出来るんだからさ。
コツコツとサブ職を鍛えてきた甲斐があったもんだ。
あらためて自分の先見の明に驚かされるぜ、あっははははは!
「ねえ、一回見ただけでそんなに上手く彫れるほど女神様に心を奪われたの。ねえ、ねえって、それっていけないんだよっ!」
真剣に作成している最中だというのに、両肩を強く握り揺さぶるのはやめてくれ。手元がブレるじゃないか。
「あほか。これは俺の心に残っている女神様のイメージを正確にスキルで彫っているに過ぎないんだぞ、誤解すんな!」
「ますますダメじゃん!」
今度は両肩を強く叩かれた。
まるでガキだ。いや、こいつはガキンチョだったな。
ほんとめんどくせぇ……
「レンジ様、本当にお上手ですね。大神殿の女神像にも引けはとらないかと」
「ありがとう。けど、まだ途中だからな。最後まで気を抜くことなく頑張るよ」
エルルーンが褒めてくれたので良しとしよう。
それにエルルーン達も名前呼びに慣れたみたいだし益々以ってオッケーだぜ。
「なあ、今更なんだけど。なんであんなに早くカーラから連絡がいったんだ?」
「あ、それは魔法のハトを使ったからですよ。ここからなら半日も掛かりません」
それは便利なものだ。
こっちの世界では魔法のハトで連絡を交わすのが当たり前なんだな。
さすがは剣と魔法の世界だ。
「いえいえ、これを使って連絡を交わすのは神殿だけです。結構大変なんですよ」
エルルーンは得意げに笑った。
うん、昨日とは違い、初対面の時と同じ感じに戻ったな。いいことだ。
「ねえ、念話は出来ないの?」
「念話、ですか?」
「うん。離れていても話が出来るやつ」
「そんな便利なものがあるのですか」
おい、自分で話を振っておいて俺に助けを求めるな。
俺はレンジャー職で取ったから持ってるけど絶対にやらないからな。
「レンジはそのスキルあるよね。僕も欲しいなぁ」
そんな上目遣いでかわいく見つめられても絶対にやらん。
そんなんで魅了されるほど、俺の雪奈への愛は軽くはないわ。馬鹿者めが!
「やらん。絶対にコピーして渡さん」
「ええぇ、いいじゃん。減るものでもないしさぁ。ケチケチしないで頂戴!」
また両肩を掴んで体を揺すりはじめたので、今度は手を払い女神像も完成したので立ち上がった。
「おまえに好きな人ができて、独り立ちしたらコピーしてやろう」
「そんなの永遠に来ないじゃん!」
リィーナの絶叫が洞穴内に響いた。
それを尻目に俺は外に出た。
◇
村人達に褒められおだてられた俺は調子にのって勧められるがままに広場で等身大女神像を作成していた。
今度は台座を含めるとかなりの高さと大きさだ。
そんな浮かれ気分で掘り進めていると村の入り口が騒がしくなった。
「我は辺境伯オースティンだ。皆は無事か!」
二十騎あまり騎士を引き連れて先頭を走る騎士が、そう叫びながら広場まで馬に乗って駆けてきた。
その辺境伯はとても弱々しい貴族とは違い、武人然としていて凛々しく精悍な顔立ちだった。歳はおそらく四十代前後と思われる。
「これは辺境伯様。こちらに居るレンジ様とリィーナ様のお陰で誰一人欠けることもなく無事であります。またポプラの神殿エルルーン様方にも多大なご支援をして頂きました」
村長が傅き、そう述べると、辺境伯は馬から降り俺の前まで来ると片膝をついて礼を述べた。
「レンジ殿。カーニ村を救って頂き誠に感謝致します」
「あの、顔を上げてください。たまたま通りかかっただけですから」
あまりの真摯さにかなり動揺し焦ってしまった。
あの馬鹿領主を見た後だと、どうにも調子が狂う。
「はい。それとエルルーン神官長殿、ご支援感謝する」
「礼には及びません。当然の事をしたまでです。それよりお話したいことがありますのでこちらへ来て頂いても」
「はい、構いません」
なんの話かは知らないがエルルーンが辺境伯を連れていった。
なんかあの接し方をみると本当に神殿は権力というか、立場が強いことが分かるな。
まあ、そんな恐ろしい世界には関わるつもりもないから関係ないけど。
しかしリィーナはどこに行ったんだ。
まさか不貞腐れて寝てないよな。
カーラ達も居ないし、なんか嫌な予感がする。
絶対にトラブルに巻き込まれる系なんじゃないか、これは。
まあ考えても仕方がない。
女神像を早く完成させよう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
292
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる