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第一章 未知なる世界でスローライフを!

親睦会だそうです

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 山のように積まれた食材と酒。そして生活用品をこれでもかとリィーナは購入した。
もちろん費用は俺持ちだ。

 すっかり疲れ切っていま俺は宿の食堂にいる。
 食堂はいつものように満席なのだが、いつもよりも賑やかだ。それも女神様のお告げのせいだった。
 どうやらあれは大陸全土に発せられたらしい。
 女神パワー恐るべしと認識をまた改めた。

 またセリーヌの話だと、俺達が去った後すぐに聖女はエルルーンに連れられて大神殿へ向かったらしい。
 なんでそんなに知っているのか尋ねると。

「私の固有能力です。動物などの目を借りて知ることができます」
「便利だねぇ。のぞき放題じゃん」

 おい、言い方。誤解されるような言い方はやめろ。

「なあ。ピンポイントになんで転移できたんだ」
「え、転移魔法は念話が通じる相手ならば相手のその場所に転移できますよね」

 え? まじで……

「ええぇ、レンジ知らなかったのぉ。僕は知ってたよ」

 嘘つけ。おまえ絶対知らなかっただろ。

「ところでレンジ様。聖教国王都にもいかずちが落ちたのは聞きましたか」
「いや、初耳だ」
「そうですか。城は完全に崩れ落ちて、あの女王が建てた神殿も否定されたかのように破壊されました」
「うわっ、こわいね。クロノアたんもこわいけど、女神様もやるときはやるタイプなんだね」

 おい、クロノアたん、とは失礼だろ。
 次会った時に怒られんぞ。

「で、今後どうなりそうだ」
「聖教国は終わりでしょうね。裏でかなり非道なこともしていたらしいですし、今回ばかりは大神殿自ら討伐すると思います」
「一国を相手にできるほどの力があるのか」
「レンジ様。大神殿、というかフレイヤ神殿の神官達こそが最強集団なのです。あそこの神官のルーツは伝承にある戦乙女なんですよ」

 戦乙女って、ワルキューレの事だろ。
 なるほど、だからエルルーン達はあんなに強かったのか。

「そうか。なら大丈夫だな」
「レンジ。ひょっとして戦いたかったの」
「んな訳あるかい。それに俺は平和主義者だ」
「え、荒くれ者ではなかったのですか。私なんていきなり首を絞められましたし」

 なななんてことを言うんだよ。
 やめろよ、リィーナがおもいっきり睨んでるじゃねぇか。

「レンジ、女の子にそんな乱暴な事をしたの。僕には挨拶だけって言ってたよね」
「駆け引きの一環だ。ガキンチョには分からないだろうがな。それにセリーヌは二百年近く生きてる先輩だからな」
「女性の歳を口外するのは駄目なんだよ。それに僕はガキンチョじゃない!」

 セリーヌがオロオロしだしたので、リィーナのご機嫌をとるべく素直に謝った。

「悪かったな。言い過ぎたよ」
「……わかってくれたらいいよ」

「あの、お二人はいつもこんな感じなのですか。まるで夫婦みたいですね」
「ふう、夫婦ってもう、セリーヌったら。ほんとセリーヌの目はごまかせないよね」

(セリーヌ、俺が愛してるのは亡くなった妻の雪奈だけだ。あまり変なことは言うなよ)
(あ、はい、気をつけます)
(うむ、頼んだぞ)

「しかしセリーヌちゃんはどっかの元聖女と違って魂も心も綺麗だよね。僕達の関係もちゃんと見抜くし」
「あははは、お褒めに預かり光栄です」
「もうそんなに堅苦しくしないでよ。僕達友達なんだから」

 リィーナはそう言ってセリーヌにくっついてもたれ掛かった。

 なんかこいつがこんなに人に甘えるの初めて見たな。
 よっぽど気に入ったんだな。

「セリーヌは忙しいんだから、あんまり連れまわして迷惑掛けんなよ」
「あ、大丈夫ですよ。多少私がいなくても政はまわりますから」
「だよね。優秀なトップは人に任せるのが上手いんだよ。知らないの、レンジ」

 このあほ娘が。調子に乗りやがって。
 あとでお仕置き確定だな。

「復興は大丈夫なのか」
「はい、問題ありません。建物なんて魔法ですぐに出来ますから」
「壊した本人に心配されてもだよね。いいよ、セリーヌちゃん。レンジに文句を言うことを今夜は僕が許すよ」
「リィーナ様。私はレンジ様に感謝しています。確かにやり方は荒っぽいかもしれません。けれど、ああでもしなければ魔族の目を覚ますことなどできませんから」

 ほらな、力を示した方がいいんだよ。魔族にはな。
 どうだ、悔しいだろう。

「まあ、セリーヌちゃんがそう言うならいいよ」

 ふっ、すっかり拗ねたな、お子ちゃまめ。

「食事中にすまない。あなたがレンジ殿だろうか」

 その声のする方を向くと輝く金髪の長い髪に透き通るような青い瞳の美しい女性がいた。
 なによりもそこに居るだけで景色を一変させる。高貴でありながらも切れ味の冴えた美しい宝剣のような佇まい。

 一目でわかる。この人がただ者ではないと。

「そうですが、厄介事なら間に合ってますので、どうぞお帰りください」
「厄介事ではありませんが、外で少し話を聞いてください」
「ここでは駄目なのか」
「はい」

 リィーナ達を残し、俺一人で彼女と話をする為に外へでた。

 いきなり仕合いなんて挑まれないよな。
 まっ、そんな感じもしないし大丈夫だろ。たぶんだけどな。
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