邪神様に恋をして

そらまめ

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新婚編

邪神様、地獄からの天国でした

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「ヘカテー、今、なんて言ったの」
「ですから、あの島は結界が弱まり、今とても危ない状況なのです」

 わたしは驚きのあまり二度も尋ねてしまった。
 ヒルデ達を見渡すと一様に険しい表情をしていた。
 さらに、わたしの肩に座るクロノアも緊張と怒りで体を強張らせているのが手に取る様に分かった。また、その事をヒルデだけは察していた。

「それで、再度結界を張りなおすことはできるの。弱まった原因は掴めてるの」
「あの駄犬どもの出現などを考えると、おそらくハデスの干渉が原因かと。ならば、また再び奴を退けなければ結界を張りなおすことは不可能です。お姉様、力不足で申し訳ありません」

 ゼウスが滅んだ事で、欲がでてきたのか、それとも復讐しにきたのか。たぶん、後者なのだろう。

「アルヴィド。他の女神にもこの件について警戒するよう、至急使者を送りなさい。そしてこの街にロザミア、マチルダ、セリーヌ、ミツキ、クオンは残ってください。ロザミア、彼女達の事はお願いしますね」

 悠太くんが島に行ってから三日か。まだ、たぶん大丈夫だろう。けど、巻き込まれ体質だから少し心配だな。

「それと、全ワルキューレは完全武装で一度ここに集合させたのちに、最悪を想定してきっちり編成すること。ブリュンヒルド、指揮をあなたに一任します」

「はっ、仰せのままに」

「スクルド、ロータ、エイルは、わたしとヘカテー共に先行します。至急、準備を整えてください」

 皆が急いで散っていく中、クロノアだけが残っていた。

「クロ、そんなに心配しなくても大丈夫。今回はわたしも一緒なんだから。わたし達二人なら無敵でしょ」
「そうだよね。フレイヤと一緒なら無敵だよね」

 思い出したくない。二度と同じ思いはしたくない、そんな気持ちは痛いほど分かっているから。

「それにね。わたしの戦乙女達は、あの頃よりすごく強くなったんだよ。アテーナイでのあの戦いぶりをクロにも見せてあげたかったよ。だから、安心して大丈夫だからね」

 わたしはクロを掌に乗せて、安心させるように自信たっぷりな表情で明るく語りかけると、彼女の額にキスをした。


「もう、わたしが子供みたいじゃない、やめてよね」



 ◇



 凛子の手料理を久々に堪能して、その後は和やかに昔話に花を咲かせていた。のだが、恐怖は忘れた頃にやってくる。
 小屋の窓から外を見れば、白く淡い人の姿をした者達が、ふわふわと宙を彷徨っていた。

 俺達は肌を寄せ合い、もとい、身を寄せ合って震えていた。

「佐藤くん、あれは、あれって、」
「言うな、言ってはいけない。俺達は夢の中にいるんだ、そうだろ、凛子」
「そうだよ、ね。そう、夢、夢だよね。あははは」

 なんてことだ。こんなでか虫ゾーンより恐ろしい世界は。
 凛子とこんなに近づいているのに、温もりどころか背筋がどんどん寒くなる。

「よし、俺が排除してこよう。俺が凛子を必ず守るからな」

 あああああ、なんて馬鹿な事を言うのかな、俺は!

「佐藤くん一人には決してしない。わたしはそう誓ったの。死ぬ時も生きる時も一緒だから」

 震える足で必死に立ち上がる彼女を見て、俺の紳士パワーが全開になる。

「大丈夫だよ、凛。俺を信じてくれ」

 彼女のその気持ちに男として応えなければいけない。
 男には死ぬと分かっていても立ち上がる時があるのだ!

 俺はマルディールを手に外へ飛びだすと、一気に幽霊を斬った。
 あああああ、手応えがないんですけどおぉー!

 ん、でも消えたな。やったのか、俺。

 少し冷静になって、襲い掛かる幽霊を斬り払った。
 おお、さすがはマルディールだ。これに斬れぬものはない。
 調子に乗った俺は次々と幽霊を仕留めていった。


「佐藤くん、もう全部やっつけたみたいだよ」
「うん、俺と凛子の愛の勝利だ!」

 俺達は抱き合って勝利を喜び、熱い口づけを交わした。
 そして、そのままベッドで、はじめての愛を交わした。
 とても胸の鼓動が高まり、そして少し戸惑いながらも、不器用にお互い何度も愛し合った。

「佐藤くん、不慣れでごめんね」
「そんな事はないから。凛子はとても素敵だったよ」
「そうかな、そうだと嬉しいな」
「本当だよ。なら、もう一度、証明するよ」

 俺はまた凛子を優しく愛おしく抱きしめた。
 本当に長い付き合いを感じさせる、俺の全てを何も言わずに分かってくれるのだから。
 俺達は眠る事を忘れて、ただ愛して求めあった。


 そして次に目が覚めた時は、何故か夕方だった。

「今夜もここで野営だよな、仕方がないよな」
「うん、そうだね。なにか食べるものでも作るよ」

 布一枚もまとわない凛子を見て、俺はまた後ろから抱きしめた。

「ごはん作れないよ」
「ごはんより、俺は凛子とこうしていたい」
「もう、しょうがないなあ」

 そう言って、彼女は優しくキスをしてくれた。

「じゃあ、一緒にお風呂に入ろうよ。わたし夢だったんだ、佐藤くんの背中を流してあげるのが」

 彼女は笑顔で俺の手を引いて、お風呂場まで連れていった。それはとても嬉しそうに。
 凛子とこんな日が来るなんて夢にも思ってなかったけど、凛子と結ばれて心から良かったと思った。

 これからも、たくさん恋をしような、凛。
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