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第一章

第一章9「繰り返し」

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 二人は西の町から南東に進み、最初に草原に当たった。
 その平原を超えると、背の高い木が見えてきた。
 どうやらジャングルのようだ。
 ジャングルに入るのはなんとなくマズイと感じたので少し左に逸れ、ジャングルを避けて進むことにした。

 このジャングルは相当大きいらしくどれだけ迂回してもジャングルを抜ける気配がしない。

「リア、このジャングル。デカすぎねえか。」

「40分くらい歩いてるけど一向に越えられる気がしないね。しかもずっと見覚えのある景色ばかりで飽きちゃう。」

 それは本当に見覚えのある場所なのかもしれない。
 ここは異世界だ。ループする何かがあってもおかしくはない。
 
 もう10分ほど歩いたが、越えられる様子はなく、ジャングルを超えるのは諦めることにした。

「今は地図上で言うと下に向かっていて、場所は中央の下ぐらいだと思う。これから左に向かって、東よりの南に行くのがいいと思うんだが、それとも中央に行っちまうか?」

「急に何?ぶっ壊れた?急にリスクのあることしようとするじゃん。」

「たまにはいいだろ。で、どっちなんだ。」

「前者一択だね。東寄りの南に行こう。」

 再び歩き出す。
 その二人の後ろに物影がいることには気づかずに。

 少し歩いたところで違和感を感じた。
 ここは町を出てすぐの草原にとても似ている。
 気のせいだといいんだが、

「なあリア、ここって見覚えないか?」

「ここ?ある訳ないでしょ、ん?あれこの草原って、町を出たところの草原では?」

「俺もそう思う。で、もう一つ気づいたんだが、太陽が出発の時から一切動いていない、気がする。」

「―――セイナ!あれ!」

 小声で指をさす。
 その先にはあのゴブリンがいた。
 数は相変わらず3体。
 場所は俺達と町の間にいるという厄介な場所だ。

 どうしようか。魔法をぶっ放すのもいいがあいつらが何者かも知りたい。
 1体だけ捕まえて問い詰めるのもありだが、そんなに優勢ではないことは前の戦闘でわかる。
 劣勢と言っていいほどだと思う。

 こんな朝からいるのかよ、と思いつつ、作戦を考える。
 ここをあの草原と考えるのか、それとも別の場所と考えるかによって作戦がかなり変わってくる。

 しかも、あの草原だと考えると、本当にループ現象が起きていることになる。
 そんなことができそうなのはあのゴブリンしかいないが、ゴブリンがそんなことできるとは思わない。
 いや、あのスライムの動き、もしかしたら、ゴブリンにも何か能力があるのかもしれない。

 あの時魔法というものと関係がありそうな現象だが、受付の人は使える人はいないと言っていた。
 ただ、それは人であり、モンスターとは言っていない。
 ますます、可能性が増してきて、不安になる。

「今すぐ町に戻るぞ!」

「どうやって?!」

「なんとかスタンさせてから右に逸れてあの町に戻る。多分だが、あの町は相当近いところにある。」

「こんなに歩いてるのに近いわけないでしょ!」

「聞け。俺達は永遠にループしてたかもしれない。だってそうだろ?ジャングルはいつまでたっても越えられないし、今いる場所が最初の場所に以上に似ているし、そもそもここは異世界だ。十分に可能性がある。」

「じゃあ場所自体にループさせる効果があったってこと?」

「多分、あのゴブリンが何かしらのループ魔法とやらを使っていると思う。昨日会った時に使ってこなかったってことは何か条件があるのかもな。」

「分かった。とりあえず納得するよ。で、スタンっていうのは?」

「俺かリア、どっちでもいいが上級魔法を使う。昨日使った光はやめておいたほうが良い。今は太陽が出ていてあまり意味がなさそうだ。ということは闇が有効かもしれない。今日は俺が撃つか?」

「うん。じゃあ私は何とかサポートするね。」

 見たところ、ゴブリンは2キロほど先にいて、こちらに向かってきている。
 隠れようにもここは草原であり、草の背は低い。
 この闇魔法がどんな能力か分からないが、デバフ系の魔法だと助かる。あと、距離が離れていても撃てるものなのか。
 光はなんとなく遠距離でも行けそうだが、闇と聞くとそんな感じはしない。
 もう少し近づいてから撃つことにしよう。

 徐々に近づいていく。
 なぜ、あのゴブリンたちが俺たちのことを追っているのだろうか。
 転生者ということがバレてしまったのか。
 ただ戦いがしたいだけの種族なのか、いやそれは違うだろう。こんなにもしつこく追ってくるのは異常だ。
 敵は3体だけという油断はしてはならない。昨日は連携して徐々に増えてきた。早めに安全なところに行きたい。 
 そして、あのゴブリンについての情報が欲しい。

 残り1キロくらいになると、ゴブリンたちの容姿がはっきり見えてきた。
 身長は130センチくらいだろうか。いかにもゴブリンって感じがする。
 体型は3体とも痩せ型。
 装備は特にないと思われるが腰の位置に何かが付いている。たまに光が反射してくるので金属であることは間違いないだろう。

 すると、不意を突くように、

「イプ・フラマ。」

 決めつけていた。
 ゴブリンが魔法を使うわけない、と。
 故に反応が遅れ、俺達は。

「グラシエス!セイナ!ぼーっとしないで!」

 咄嗟の判断でリアは目の前に氷の壁を生成する。
 この判断がなかったら今頃燃え、死んでいたかもしれない。
 これでわかった。あいつらは俺達を殺しに来ている。

 二人対ゴブリンの命懸けの戦闘が勃発する。
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