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もなか

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酔いどれ狼 5

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ベッドの上、自分の肩を押す逸の顔を敬吾は掬うように見つめていた。

やはり酔ってはいるのだろう、逸の表情は余裕がなく既に興奮しきっている。

「岩井、お前大丈夫…………んっ!!」

不調法に指で割り入っておいて、敬吾が鋭く声を上げ肩を縮めても悪びれもしない。

「っあ、…………っちょ、っと岩井、…………っ」

苦しく敬吾が諌めても形ばかりに小さく返事をするだけで、少々乱暴な濡れた音のほうが大きいくらいだった。

「なに、いきなりすぎる、だろっ──んっ!」
「ん……すみません、もう……入れたくて」
「!」

苦笑しながら、逸は久しぶりに敬吾の顔を見る。
それが、限界まで興奮しているくせに優しげで、切なそうで──

敬吾は言葉を飲む他なかった。
どうしてこうこの男は判断力を鈍らせるのだと、胸中に悪態をつきながら。

その不服そうな敬吾の顔が、自分を甘やかしてくれている時のものだと朧げながら逸は確信していた。
嬉しくて愛しくて爆発してしまいそうだが──
そのたおやかな喜びを、毒々しい征服欲が侵食していく。

この人にそんな表情をさせられるのも、我儘を聞いてもらえるのも、快楽を刻みつけてやれるのも自分だけだ──。

「ん…………っ」
「敬吾さん、かわいい……」

強引ではあるがそうしていつものように囁く逸に、敬吾は眩しそうに目を細めた。
怖いようで、やはり安心するようで、心がさざめく。
どういう気持ちでいれば良いのか分からない。
かと言って逸に預けてしまうのは──

──きっと溺れてしまう。


「……敬吾さん、入れていい?」

掠れた声で呼ばわれるとやはり背中が震えた。
ほとんど触れられていないだけに、更の肌に熱が走る様を嫌と言うほど自覚させられて敬吾は歯を食いしばる。

「…………っ、どうせ、聞かねえくせに……………っ」

必死に声を引き絞る様子が、どうしようもなく逸の腹の底を掻き立てた。

どんな表情も可愛いが、こうして快楽に抗おうとする顔は格別に好きだ。

「……敬吾さんに、いいよってゆってほしいの」

──それが、完全に溺れて淫らに歪んだところは、もっと好きだ……………。

「…………敬吾さん?」
「っ……………」
「入れていい?」

敬吾の唇を啄みながら、逸は熱い先端をひたひたと押し当てる。
鼻薬でも嗅がせるように。

「………っやだ、」
「あれー」

興醒めしたように顔を引き、逸は指の背で敬吾の頬を撫でる。
くしゃくしゃに引き攣った顔は無論、本心から言っていないことの証左でしかないが。

意地を張られるとやはり────

「またそんな嘘ついて」

────いじめたくなる。

結局敬吾の了承もなくその中に押し入って、逸はゆさゆさと思い知らせるように敬吾を揺すぶった。

「あ……………っ」
「敬吾さん、入れちゃいましたけど……」

仰け反った敬吾の顔を見下ろし、楽しげに笑いながら逸が言う。

「イヤがってたのに、気持ち良さそうですね」
「っうるさい!」

厭味ったらしく言い聞かせられ、腹は立つのにその間も容赦なく擦られ、敬吾は泣きたくなった。

この情けなさも恥ずかしさも既に顔馴染みの付き合いだが、それを逸に煽り立てられるとなるともう、本当に顔から火が出そうなほど居た堪れない。

けれど今日は逸が妙に駆け足だ。
あまり敬吾に構わずただ性急に突き上げていて、これなら早いところこの羞恥から解放されるかもしれない。
それだけが救いだった。

実際そうしていつもとかけ離れたーーしかし冷たくない逸の抱き方は、敬吾の絶頂も近めていた。
ただ簡潔な快感だけが、順調に加熱していく。

結局は何も考えられなくなって身を任せてしまっている敬吾を見下ろす逸の瞳だけが、ただ剣呑だった。

「………敬吾さんって」
「う、………?」

少なくとも表面上は優しい逸の声に敬吾が視線を向けると、やはり優しくはあるがその皮一枚下がどうも怪しい逸と目が合う。

敬吾がピクリと強張ると、今度は心底嬉しげに逸が笑った。


「いじめられるの好きですよね?」
「好きじゃねえよ!!!」





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