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再襲 5
しおりを挟む「えっ、え……………っ!」
「………………」
「嘘………、────!」
信じられないように敬吾が息を呑み、口元にスウェットを掻き寄せて握り込んでいる間に逸は物も言わず滑らかに割り入って行った。
その、背徳感。
和やかな午前中の日が差す中で、そこだけを露出させ、他には用がないとでも言いたげに粗雑なやり方で──敬吾を抱くなんて。
「ぁ……………っ」
けれどそれを、敬吾も甘受するからいけない。
どこまでも調子に乗ってしまう。
大きく抵抗することなく受け入れた敬吾を、安堵のような満ち足りきった表情で逸は見下ろした。
余裕のないそこを細かに緩やかに奥を突き上げ続けると、それに合わせて敬吾が声を漏らし始め逸の表情は歪む。
「敬吾さん………可愛い」
逸が言うと、力んだ瞼が涙を押した。
ころころと転がり落ちていくそれを凝視して、逸は敬吾の目元に唇を寄せる。
勝手に穿ち続ける腰を意識して止めると敬吾が安心したように体を弛緩させた。
「……敬吾さん、つらい?」
敬吾の呼吸が落ち着くのを待つ間髪を撫でキスを落とすと、その腕が開き逸の首に回る。
見えずとも漏れた呼吸が嬉しげだ。
「……もうちょっと、ゆっくりがいい………」
「ん、」
敬吾の腕がゆっくりと解け、逸が体を起こすと縋るように濡れきった瞳で見上げる。
二人きりのーーいや、抱いているときにしか見られないこの瞳が逸はたまらなく好きだった。
いつまででも見ていたい──が。
「あ……………っ」
その瞳はもっと蕩けるのだ。
今日は、何度でも。
粘ついた音を立てて、自分の精液を引きずりながら逸のものが抜ける。
そこにティッシュを充てがってやると敬吾はたまらないようにひくりと痙攣したが、その口から次々溢れたのはやはり悪態だった。
「すっ、すみません………」
「謝る……んなら、最初っからっゴホッ、……っんなばか……………っ」
「う……、はい………」
逸が項垂れるとその頭を鷲掴みに掴み、手すりよろしく体重を掛けて敬吾が起き上がる。
服を着たままだったせいですっかり汗ばんでしまっているし、襟元を引いて風を入れる敬吾はこの上なく不機嫌そうだ。
が、頬の赤さとわざとらしい眉間の皺が可愛らしくて、気づくと逸は勢い良く抱き戻してしまっていた。
「う……!」
「敬吾さん………」
「……………っ本っ当にお前はー……!」
本当に、ずるい。
名前を呼ぶその声ひとつで何もかも許させる。
誠実な弁明よりも歯の浮くような台詞よりも、真っ直ぐなくせに盛り沢山なのだ。
──何かが。
(何なのかは分からん………)
もう諦めて溜め息をつき、頭突きしながら擦り寄ってくる猫のような逸の頭を撫でてやる。
「……!敬吾さぁん……!」
「うるせーよもう!黙れ!」
「えー……」
拗ねたようにそうは言うもののやはり嬉しげに笑って、逸は敬吾を抱き直した。
「シャワー浴びましょっか………」
「………………」
敬吾は相変わらず、機嫌悪そうに眉根を寄せていた。
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