230 / 345
SugarCat 6
しおりを挟む「嫌だ!!何っ……………」
「敬吾さん」
癇癪を起こした子供のような声を上げ、敬吾は弾かれたように腕を立てて逸から離れようとした。
その稚拙な抗議に左腕を回して宥めつつ、それでも逸は耳を貸しはしない。
その冷たさ、慣れない人工的な感触に敬吾が首を振り続けても。
「やだってば!!最悪っ、…………!!!」
いくら拒んでも、良く慣らされたそこは捩じ込まれれば嫌がりながらも受け入れた。
完全に入れられてしまうのだけは絶対に避けたかったが、あとはもう、幾つかあった起伏の残り一畝を残すばかり。
敬吾はもはや泣きに泣いていた。
が、それもやはり逸を諌められない。
逸から見るとそれはもう完全に埋めきったのと変わらないように見え、敬吾が暴れる間に膝下で不機嫌そうな弧を描いていた。
それがもう、敬吾の懇願も涙も凌駕するほど──
「たまんね……」
「…………!!!」
陶酔したように低まった逸の声に、敬吾は絶望したような顔を上げた。
こんなに嫌なのに、頼んでいるのに聞かないどころか愉しんでいるのか。
それがどうしようもなく胸の中を冷たく濡らして、また泣きたくなってしまう。
真っ直ぐ自分を見据えたまま呆然と涙を零されて、さすがの逸も我に返った。
「け、っ敬吾さん?」
「……やだって、言ってるだろもぉ……っ気持ち、わるい……………!」
しゃくり上げるようにそう訴えられ、逸はひとまず敬吾を抱きしめて耳元に唇を寄せる。
「気持ち悪くなんかないです、すごい可愛い……」
囁きながら背骨を撫で下ろして尾骨を撫で、半端に飲み込ませているその縁をなぞると敬吾がびくりと硬直した。
その先の硬い感触を隔てた柔らかな毛皮を優しく握り込むと逸は嘆息を漏らす。
滑らかな谷間がそのままその感触に繋がっていたらと夢想して、また押し込もうとして敬吾に断固抵抗された。
「やだってばぁっ………あぁ!」
「っあ、敬吾さん……」
──もう少し。
無理に捩じ込むたび敬吾が悲痛な嗚咽を漏らすが、逸はやはり取り合わない。
自分勝手な欲求が、そもそも第一要項であるはずの敬吾を度外視するという本末転倒な有様になっていた。
「……敬吾さん、ちゃんと見せて………」
疲れ果ててしまい、もうろくな抵抗も出来ない敬吾はいとも容易く横倒しに転がされてしまった。
肩の向こうから恨めしく睨めつけられて、頓珍漢なことに逸は昂揚したように笑う。
「………可愛すぎる」
「………………」
右脚の上に緩く重なっていた左脚の腿を押し上げると、充血してしまったそこが直接尾筒に繋がっているのが良く見えた。
逸は更に盛大ににやけるが敬吾は忌々しげに眉根を寄せる。
逸がその垂り尾をすくい上げ、手首に巻きつけるように弄ぶとそのうねりが響いて──敬吾は一層悲痛に顔を歪めた。
「……っ最、悪っ……お前ほんとにっ──」
また鼻の奥が痛んできて、敬吾は逸を振り返るのをやめ枕に顔を押し付ける。
逸は思うがままでれでれと感想を述べているが腹立たしくて聞きたくない。
諦めから悲しくなってしまっていた胸中がまた怒りに燃え始める。
「……っ気持ち悪い、……!」
「あぁ、ダメですって──」
そう言って逸は敬吾を諌めるが、今や自分から生えているそれを半泣きで引き抜こうとしている様は妙に淫靡だった。
「もう嫌だ!いい加減にしろよお前っ………」
「う………でも、」
そんなに怒らなくてもと逸が眉を下げる。
変態じみているのは承知しているが、それは自分のことであって敬吾が異常なわけではないし、細身でしなやかな敬吾の体つきに本当に良く似合う。
思ったほどいやらしくはないなと逸ですら思うほどに。
だからと言って落胆しているわけではないのは無論だが。
逸があれこれ考えている間も怒りで細く強く荒れていく呼吸もまた猫のようだった。
「……っほんとやめろ、手離せっ………」
「なんでそんな……」
いっそ悲しくなってしまって小さく問うと、逸が掴んでいる拳にも肩にもぎりりと力が篭もる。
敬吾には愚鈍なほど呑気に聞こえたその問いが、嫌というほど神経を逆撫でした。
似合っていようがいなかろうが、逸が喜ぼうがなんだろうが関係ない。
どうしてこんな、固くて冷たい得体の知れないものに体を開かなければならないのか。
「抜けよ早くっ!」
「敬吾さん…………」
「お前以外のもん入れられんの、すげぇ嫌だ……………っ!!」
「────────」
冷たい尻尾を握る手と、それを動かすまいと握る手と、その持ち主達はしばし、微動だに出来ずにいた。
「っあ……!!」
配慮など欠片もない滑らかさで突然それを引き抜かれ、敬吾が鋭く引き攣れた声を上げる。
自らの手でそうしたくせに逸はどこか不愉快そうな顔で呼吸を荒げる敬吾を見下ろしていた。
「……本当だ。俺の以外で敬吾さんが感じてるの……すげえやだ」
「っ………」
未だ強烈な衝撃の残滓を引きずっている敬吾は否定も肯定も出来ない。
その切なげな谷間に指を添わせて擽ってやると、敬吾は小さくも溶けてしまいそうな声を漏らした。
「ごめんなさい、敬吾さん………嫌でしたよね。ごめんなさい」
「ぁ、……ん……………っ」
逸は真摯に心の底から侘びたが、歓喜がそれを凌駕するので指が這うのを止められない。
そのせいで敬吾にはその謝罪がほとんど届いていなかった。
届いたところで許してやれるほど寛大な気分にはなれないが。
ほんの少し食い込む指先が、狂おしいほど欲しいのに腹立たしい。
「……っや、っん────………」
「敬吾さん………」
「っあ、…………!」
根本まで飲み込ませた中指が締め付けられるのを存分に楽しんでから、逸はそれをまたゆっくりと抜いていく。
それに伴い熱を帯びる敬吾の呼吸が、震える腰が、背中の曲線がたまらなく腹の底を熱くした。
「……じゃあ、俺──敬吾さん、入っていい?………」
「っやだ」
「えっ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる