体育館ラブスーサイダル

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「ねぇ奏(ソウ)、時間ある?」



上層部の彼、尋くんにそう聞かれて、
断れるほど身分の高くない僕はもちろん



「うん、大丈夫だよ」



平気なふりをしてそう答える。


それはあくまでふりで。
平気なわけがない。


僕が何か気に触ることでも
してしまったのかなあと
思い返していると


ぐっと胸を引かれて
体育用具室に連れ込まれた。



そして、



目の前に突きつけられたのは


紛れもなくBL本で。


僕の好きな屈辱系。


最近買ったはずなのに
なくなってしまったと
思っていたものだった。


本が見つかったことへの
安堵が生まれた瞬間、



ドンッ



肩への突然の衝撃。



何事かと目を開ければ、
僕はやわらかめのマットの上に
腰を抜かすように埋まっていた。



「尋くん…?」



行動の目的を全く理解できない僕は
彼の名前を呼んだ。
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