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2話
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「よーし!それじゃあ今から魔戦実習を始める!」
翌日、グラウンドに俺らは集まった。
みんなが来ているのは、体操着……なんだが、その体操着の下に、なにやら不可思議な文様の書かれたアンダーシャツが見える。
中学の頃に何回か校内イベントできたことはあるが、やっぱり"自分の"というのは気持ちがいいもので、気分が舞い上がっている。
それはみんな同じようで、まとっているオーラは、早くやってみたい、という感情そのものだった。
「まぁ待てみんな。
今回実習に映る前に、魔戦に必要な道具の復習をしてから移ろうと思う!」
椚先生も、はしゃぐみんなの気持ちを分かっているのか、宥めてくる。
だが、俺らがそれで静まるわけではなく、ぶーぶーと文句が出始める。
「おいおい……」
椚先生は、大げさなアクションで、額に手を当て、緩慢な動作で俺らの方を向き、
「死ぬぞ?」
ぞわり。
肌を撫でる感触とともに、感じる不快感。
"支配"された。
"支配"
それは魔力の特性の一つ。
魔力はよく水に例えられるので、その例に乗っ取ると、人間は各々が自分だけの水を持っている。
これは姿形が自由自在に変えることが出来、かつ物に染み込ませることが出来る。
染み込ませた物は、水を介して操ることが出来る。
という様に習うのだが、これだけ聞くのならば、支配したらずっとそれは支配されたままだ、と思うだろうが、そうは問屋が卸さない。
咄嗟に展開する支配。
俺より早いヤツがいたっぽいが、そんなことを気にしている余裕はない。
とりあえず、支配の空間……支配領域を広げ、この自分以外が支配された空間という、嫌な状況を何とかしたい。
その瞬間、また支配が展開された。
しかしそれは、後ろから。
「っ?!……。
なかなかやるな」
「負けるのは、癪」
その一言とともに、後ろからの支配領域は広がり、椚先生の支配領域を押し返していく。
この様に、支配に対しては支配が有効なのだ。
一度染み込んでしまったのなら、上書きしてしまえばいい。
そして、支配同士がぶつかると、お互いの魔力が混ざりあい、魔力混同が起こり、使えなくなる。
よく言われるのは、緑色の水と赤色の水を足したら、全く別物に見えて、分からなくなる、とか俺は言われた。
「はぁっ、今はそういうことをしたいのではなくて」
椚先生は、ため息をついたと思ったら、支配領域をいきなり小さくする。
支配に晒されていたほかの生徒達は、腹の底から息を吐き出していた。
さらに張り合いがなくなったのか、後ろからの支配もなくなる。
一気に弛緩した空気だったが、椚先生は一言、
「分かったか?お前らはまだ素人だ。
だからやることは、まずは知る、ということだ」
その言葉と共に、椚先生の来ているスーツに、淡い光の筋が張り巡らされた。
「これが、お前らも体操着の下に着ているだろう、防魔服だ。
ということで、南部!説明してみろ!」
そこで、俺らの後ろから支配領域を広げた張本人……南部は、
「魔法とは本来自然の事象とは異なり、支配されている分、多分に魔力が含まれている。
そのため、魔力をぶつけると、魔法は相殺することができます。
そのことから開発された防魔服は、魔力を魔力線に流すことによって、常時魔法の相殺ができる防具です」
「そうだ!
今言ったように、防魔服はお前らの命を預かる物だ。
軽視してるとさっきみたいに一瞬でやられるぞ!」
椚先生の言葉に、俺らはウンウンと頷いて返す。
やっぱり実践をくぐり抜けた人は凄いんだな、とか感心していると、椚先生はしばらく考え込んで、
「…………うーん、あんまりここに来て座学、というのも芸がない……」
と呟き始めた。
俺らは少し顔を青くして、もしかして先生と模擬戦……?などと考え始めている。
「雑木!南部!」
すると、椚先生は、二人の生徒の名前を呼んだ。
「え?」
「はい」
その二人は、全く違うリアクションを取った。
そして、俺らも全員疑問符を思い浮かべていた。
南部小雪(みなべこゆき)
おそらく一年生にして最強と言われる実力、魔力の持ち主。
雑木研(そうきけん)
一年生での魔力保有が、最下位。
しかし座学が一位の、いわゆる研究職に尽きたそうな人。
そんな二人が、なんで呼ばれたのか……?
「二人で模擬戦できるだろ?」
その言葉に俺らは何を言っているのか分からない、というような状態になった。
基礎魔法実習でも、魔力を使い切りそう、とかぼやいていた人間と、水でグラウンドを多い尽くせるほどの魔力を持った人間が、模擬戦?
「いや、え、俺でき「八ヶ岳……」うっ」
当然のごとく、雑木は反論するが、椚先生が、うちの愛のマッスル保険医こと、八ヶ岳次郎丸(やつがたけじろうまる)さんの名前を出した途端、苦い顔をした。
「南部は……不服そうだが、まぁやれば分かる」
「……はい」
表情は変わってはいないものの、つまらなさそうな顔をしている。
そんな二人は、トコトコとグラウンドの中心に行き、俺らは被害を受けないよう離れる。
椚先生は、俺らに被害が来ないように近くにいてくれている。
「それじゃあ、始めるぞ!」
椚先生は、大声で二人に叫び、カウントダウンを始めた。
「3!」
二人は正反対な行動をとる。
「2!」
南部は魔力を体から漏れ出させ、
「1!」
逆に雑木からは一切の魔力を感じられない。
「始め!」
見えている結果。
南部さんの目の前が、銀世界に変わった。
基礎魔法の応用で、使う人は少なく、難しい魔法である、氷魔法。
それで一気に雑木を凍らせた。
やっぱり……と思っているが、椚先生は、何も話さない。
基本、魔戦は魔力を相殺するための防魔服の電池の役割をしている、魔石の魔力がなくなった方が負けだ。
だから、今回審判である椚先生は、それを確認次第、終わらせなきゃいけないのだが、その声が上がらない。
「え?」
一人のクラスメイトの声。
みんながチラホラと、南部の後ろを見る。
俺もつられてそこに視線を移すと、
「危な」
そこには服を手で払っている雑木の姿があった。
翌日、グラウンドに俺らは集まった。
みんなが来ているのは、体操着……なんだが、その体操着の下に、なにやら不可思議な文様の書かれたアンダーシャツが見える。
中学の頃に何回か校内イベントできたことはあるが、やっぱり"自分の"というのは気持ちがいいもので、気分が舞い上がっている。
それはみんな同じようで、まとっているオーラは、早くやってみたい、という感情そのものだった。
「まぁ待てみんな。
今回実習に映る前に、魔戦に必要な道具の復習をしてから移ろうと思う!」
椚先生も、はしゃぐみんなの気持ちを分かっているのか、宥めてくる。
だが、俺らがそれで静まるわけではなく、ぶーぶーと文句が出始める。
「おいおい……」
椚先生は、大げさなアクションで、額に手を当て、緩慢な動作で俺らの方を向き、
「死ぬぞ?」
ぞわり。
肌を撫でる感触とともに、感じる不快感。
"支配"された。
"支配"
それは魔力の特性の一つ。
魔力はよく水に例えられるので、その例に乗っ取ると、人間は各々が自分だけの水を持っている。
これは姿形が自由自在に変えることが出来、かつ物に染み込ませることが出来る。
染み込ませた物は、水を介して操ることが出来る。
という様に習うのだが、これだけ聞くのならば、支配したらずっとそれは支配されたままだ、と思うだろうが、そうは問屋が卸さない。
咄嗟に展開する支配。
俺より早いヤツがいたっぽいが、そんなことを気にしている余裕はない。
とりあえず、支配の空間……支配領域を広げ、この自分以外が支配された空間という、嫌な状況を何とかしたい。
その瞬間、また支配が展開された。
しかしそれは、後ろから。
「っ?!……。
なかなかやるな」
「負けるのは、癪」
その一言とともに、後ろからの支配領域は広がり、椚先生の支配領域を押し返していく。
この様に、支配に対しては支配が有効なのだ。
一度染み込んでしまったのなら、上書きしてしまえばいい。
そして、支配同士がぶつかると、お互いの魔力が混ざりあい、魔力混同が起こり、使えなくなる。
よく言われるのは、緑色の水と赤色の水を足したら、全く別物に見えて、分からなくなる、とか俺は言われた。
「はぁっ、今はそういうことをしたいのではなくて」
椚先生は、ため息をついたと思ったら、支配領域をいきなり小さくする。
支配に晒されていたほかの生徒達は、腹の底から息を吐き出していた。
さらに張り合いがなくなったのか、後ろからの支配もなくなる。
一気に弛緩した空気だったが、椚先生は一言、
「分かったか?お前らはまだ素人だ。
だからやることは、まずは知る、ということだ」
その言葉と共に、椚先生の来ているスーツに、淡い光の筋が張り巡らされた。
「これが、お前らも体操着の下に着ているだろう、防魔服だ。
ということで、南部!説明してみろ!」
そこで、俺らの後ろから支配領域を広げた張本人……南部は、
「魔法とは本来自然の事象とは異なり、支配されている分、多分に魔力が含まれている。
そのため、魔力をぶつけると、魔法は相殺することができます。
そのことから開発された防魔服は、魔力を魔力線に流すことによって、常時魔法の相殺ができる防具です」
「そうだ!
今言ったように、防魔服はお前らの命を預かる物だ。
軽視してるとさっきみたいに一瞬でやられるぞ!」
椚先生の言葉に、俺らはウンウンと頷いて返す。
やっぱり実践をくぐり抜けた人は凄いんだな、とか感心していると、椚先生はしばらく考え込んで、
「…………うーん、あんまりここに来て座学、というのも芸がない……」
と呟き始めた。
俺らは少し顔を青くして、もしかして先生と模擬戦……?などと考え始めている。
「雑木!南部!」
すると、椚先生は、二人の生徒の名前を呼んだ。
「え?」
「はい」
その二人は、全く違うリアクションを取った。
そして、俺らも全員疑問符を思い浮かべていた。
南部小雪(みなべこゆき)
おそらく一年生にして最強と言われる実力、魔力の持ち主。
雑木研(そうきけん)
一年生での魔力保有が、最下位。
しかし座学が一位の、いわゆる研究職に尽きたそうな人。
そんな二人が、なんで呼ばれたのか……?
「二人で模擬戦できるだろ?」
その言葉に俺らは何を言っているのか分からない、というような状態になった。
基礎魔法実習でも、魔力を使い切りそう、とかぼやいていた人間と、水でグラウンドを多い尽くせるほどの魔力を持った人間が、模擬戦?
「いや、え、俺でき「八ヶ岳……」うっ」
当然のごとく、雑木は反論するが、椚先生が、うちの愛のマッスル保険医こと、八ヶ岳次郎丸(やつがたけじろうまる)さんの名前を出した途端、苦い顔をした。
「南部は……不服そうだが、まぁやれば分かる」
「……はい」
表情は変わってはいないものの、つまらなさそうな顔をしている。
そんな二人は、トコトコとグラウンドの中心に行き、俺らは被害を受けないよう離れる。
椚先生は、俺らに被害が来ないように近くにいてくれている。
「それじゃあ、始めるぞ!」
椚先生は、大声で二人に叫び、カウントダウンを始めた。
「3!」
二人は正反対な行動をとる。
「2!」
南部は魔力を体から漏れ出させ、
「1!」
逆に雑木からは一切の魔力を感じられない。
「始め!」
見えている結果。
南部さんの目の前が、銀世界に変わった。
基礎魔法の応用で、使う人は少なく、難しい魔法である、氷魔法。
それで一気に雑木を凍らせた。
やっぱり……と思っているが、椚先生は、何も話さない。
基本、魔戦は魔力を相殺するための防魔服の電池の役割をしている、魔石の魔力がなくなった方が負けだ。
だから、今回審判である椚先生は、それを確認次第、終わらせなきゃいけないのだが、その声が上がらない。
「え?」
一人のクラスメイトの声。
みんながチラホラと、南部の後ろを見る。
俺もつられてそこに視線を移すと、
「危な」
そこには服を手で払っている雑木の姿があった。
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