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5話
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「あー、南部……さん?」
魔戦の実演が終わり、防魔服を起動させる練習をするのに、俺は南部さんと一緒になった。
だが、南部さんの機嫌は目に見えて悪い。
恐らくというかもうそれ以外だと意味不明なのだが、雑木さんとの魔戦に負けたことが関係しているのであろう。
まぁ、あんなすぐ負けちゃえば、理不尽に感じる気持ちはわからない訳では無いが、そんなに機嫌を損ねるようなことだったのだろうか、と考える。
「防魔服の起動終わった?」
「今やる」
むすー、っと頬をふくらませた姿は、なんだかハムスターを思い出させるが、そんなことを口に出せるわけはなく、南部さんの防魔服の起動を見届ける。
防魔服の起動を示す、淡い光を確認した俺は、OKサインを南部さんに見せる。
「それで、魔法をぶつけ合うんだっけ?」
そう言いながら水の槍を後ろに構える南部さんに、俺は苦笑いしながら頷く。
「じゃあ、行くよ」
丁度10本。
水の槍がこちらを向く。
俺は距離を取って、どうするかを考える。
暫く考え、今は練習、と自分に言い聞かせ、こっそりと"音"をだす。
呼応するように、少しだけ、防魔服の光が強くなったように感じた。
「はっ!」
気合の入った声とともに放たれた水の槍。
俺はその様子を見て、タイミングを図る。
多分、南部さんはかなり計算して魔法を使っているだろうから、危ないわけがないのは分かっている。
だが、自分がこの先魔戦士になるためには、南部さんすら超えていかなければ話にならない。
だから、今は実験台として南部さんを使わせてもらう。
借りるのは、魔石に宿る魔力の精霊。
魔線の魔力を増幅してもらい、着弾点に対して、魔線の魔力を集中させてもらう。
弾け飛ぶ水しぶき。
その水しぶきが晴れたあと、俺は怪我ひとつなく、そこに立っていた。
「ふぅ……」
数回しかやったことがなかったが、こういう風に実際に魔法を受ける場面で使ったのは初めてで緊張したが、上手くいくもんだな、と俺は安堵の息を吐く。
「…………………」
顔を上げ、南部さんの顔を見ると、目を見開いてこちらを見ている。
ちなみに、周りのみんなもこちらを見て心配していたが、俺の姿を見るなり、南部さんがそういう風にしてくれたのか、という風に納得して、視線を外していった。
「あー、南部さん、どうしたの?」
俺は南部さんの元に走っていき、尋ねると、南部さんは俺を見上げ、
「あなたは、何をしたの?」
「ど、どうしたのって何が……?」
「あなた…………」
咄嗟に聞こえる精霊の音。
しかも、かなり大きめのもの。
危険を感じた俺は、すかさずその場から飛び退く。
魔法が向かってくる、そう思った瞬間、南部さんから精霊の音は聞こえなくなる。
つまり、魔法を使わなかった、ということだ。
「やっぱり…………」
少し思案した顔をする南部さん。
俺はその様子に、唾を飲む。
なんだ、何をしようってんだ?
いきなり魔法を使おうとしたこともそうだけど、南部さんは突拍子がなさすぎて、予測がしづらい。
しばらく考えたあと、南部はゆっくりと口を開き、
「雑木の……仲間?」
はい?
人間、意外に突発的なことには弱いのだな、と思いは知らされた。
「はぁ……。
それで、話を整理すると、まず最初は、間違って強めに放った魔法で、無防備だったのに何事も無かったのが不思議だった。
それで、試しにいきなり魔法を放ったら、雑木がやった"魔法の予測"を俺がやっていて、俺と雑木のあいだに繋がりを見出した、と」
俺のその言葉に、南部さんはこくりと頷く。
「私は家で以前から防魔服の性能については知っていた。
それで、私は体が少し吹っ飛ぶくらいの魔法を放った。
なのに、あなたは平然とその場に立っていた」
「間違ってで強めにはやらないでほしいけどね」
むっとした顔をする南部さん。
「それはほんとに申し訳ないと思っている」
「いや、機嫌悪く言われてもなぁ……」
俺は頬をかくついでに、汗を拭う。
「それで、なんとなく、なんとなくだけど、魔法を使おうとしたら、あなたは魔法を形成する前に気づいた」
「ちょっとした体質なんだけどねぇ……」
俺は南部さんに対して、自分のことをすべては語っていない。
ただ、魔力をぼんやりだけど知覚できる、という風にしか教えていない。
「だからもしかして、と思って聞いてみたけど、違ったみたい」
「そうだねっ?!
俺は雑木とは関係は全然ないよっ?!」
というところで、俺は限界になって叫ぶ。
「ところでなんで俺こんな曲芸してるの?!」
「対事前予測できる人用に、と」
そう、俺は絶賛魔法の雨あられを避けまくっているのである。
自分の体質について話したあと、南部さんは椚先生のところに行き、なにか話したあと、みんなから離れた位置に移動してから、ずっとこの調子だ。
始まりの時は驚いて、ギリギリで避けていたが、今となっては、南部さんの音の特徴がわかったので、余裕を持って避けることが出来る。
「…………さっきとくらべて、余裕があるように見える」
「そんな事ないから早くやめない?!」
俺は水、炎、氷、風と轟音の鳴り響く場の中から、大声で返す。
ちょいちょい体力を魔力で増幅させて、疲れることはないが、そろそろ集中力が切れそうになる。
「じゃあ、最後に」
耳鳴りに聞こえるくらいの大音量。
精霊には、声の特徴がある。
水の精霊はプクプク聞こえて、
炎の精霊はゴウゴウと聞こえたりと、色々聞こえてくるが、今回のはあんまりそういう特徴がない……というか、全部が聞こえる。
そして、南部さんの頭上に魔法が形取ろうとしたその瞬間。
「やめなさい」
南部さんの背後に現れた人影が、南部さんの肩に手を置いた。
その瞬間、音は聞こえなくなり、魔法の発動をやめたのか、と言うことがわかる。
そこで完全に音が聞こえなくなったことから、もう終わったのかな?と思うが、未だに身構える。
すると、
「ふふふ、もう終わったからね」
いつの間にか肩に置かれていた手。
……身構えていたのに?
さっきから自分を中心に支配を広げていたのに?
高速で?
いや、それだったら魔法の音が聞こえているはず……。
そんな疑問が頭の中を埋め尽くす中、ゆっくりと振り返ると、
「こんにちは、妹が迷惑をかけたようね」
「…………南部…………みゆき…………」
そこには、現、世界最強がいた。
魔戦の実演が終わり、防魔服を起動させる練習をするのに、俺は南部さんと一緒になった。
だが、南部さんの機嫌は目に見えて悪い。
恐らくというかもうそれ以外だと意味不明なのだが、雑木さんとの魔戦に負けたことが関係しているのであろう。
まぁ、あんなすぐ負けちゃえば、理不尽に感じる気持ちはわからない訳では無いが、そんなに機嫌を損ねるようなことだったのだろうか、と考える。
「防魔服の起動終わった?」
「今やる」
むすー、っと頬をふくらませた姿は、なんだかハムスターを思い出させるが、そんなことを口に出せるわけはなく、南部さんの防魔服の起動を見届ける。
防魔服の起動を示す、淡い光を確認した俺は、OKサインを南部さんに見せる。
「それで、魔法をぶつけ合うんだっけ?」
そう言いながら水の槍を後ろに構える南部さんに、俺は苦笑いしながら頷く。
「じゃあ、行くよ」
丁度10本。
水の槍がこちらを向く。
俺は距離を取って、どうするかを考える。
暫く考え、今は練習、と自分に言い聞かせ、こっそりと"音"をだす。
呼応するように、少しだけ、防魔服の光が強くなったように感じた。
「はっ!」
気合の入った声とともに放たれた水の槍。
俺はその様子を見て、タイミングを図る。
多分、南部さんはかなり計算して魔法を使っているだろうから、危ないわけがないのは分かっている。
だが、自分がこの先魔戦士になるためには、南部さんすら超えていかなければ話にならない。
だから、今は実験台として南部さんを使わせてもらう。
借りるのは、魔石に宿る魔力の精霊。
魔線の魔力を増幅してもらい、着弾点に対して、魔線の魔力を集中させてもらう。
弾け飛ぶ水しぶき。
その水しぶきが晴れたあと、俺は怪我ひとつなく、そこに立っていた。
「ふぅ……」
数回しかやったことがなかったが、こういう風に実際に魔法を受ける場面で使ったのは初めてで緊張したが、上手くいくもんだな、と俺は安堵の息を吐く。
「…………………」
顔を上げ、南部さんの顔を見ると、目を見開いてこちらを見ている。
ちなみに、周りのみんなもこちらを見て心配していたが、俺の姿を見るなり、南部さんがそういう風にしてくれたのか、という風に納得して、視線を外していった。
「あー、南部さん、どうしたの?」
俺は南部さんの元に走っていき、尋ねると、南部さんは俺を見上げ、
「あなたは、何をしたの?」
「ど、どうしたのって何が……?」
「あなた…………」
咄嗟に聞こえる精霊の音。
しかも、かなり大きめのもの。
危険を感じた俺は、すかさずその場から飛び退く。
魔法が向かってくる、そう思った瞬間、南部さんから精霊の音は聞こえなくなる。
つまり、魔法を使わなかった、ということだ。
「やっぱり…………」
少し思案した顔をする南部さん。
俺はその様子に、唾を飲む。
なんだ、何をしようってんだ?
いきなり魔法を使おうとしたこともそうだけど、南部さんは突拍子がなさすぎて、予測がしづらい。
しばらく考えたあと、南部はゆっくりと口を開き、
「雑木の……仲間?」
はい?
人間、意外に突発的なことには弱いのだな、と思いは知らされた。
「はぁ……。
それで、話を整理すると、まず最初は、間違って強めに放った魔法で、無防備だったのに何事も無かったのが不思議だった。
それで、試しにいきなり魔法を放ったら、雑木がやった"魔法の予測"を俺がやっていて、俺と雑木のあいだに繋がりを見出した、と」
俺のその言葉に、南部さんはこくりと頷く。
「私は家で以前から防魔服の性能については知っていた。
それで、私は体が少し吹っ飛ぶくらいの魔法を放った。
なのに、あなたは平然とその場に立っていた」
「間違ってで強めにはやらないでほしいけどね」
むっとした顔をする南部さん。
「それはほんとに申し訳ないと思っている」
「いや、機嫌悪く言われてもなぁ……」
俺は頬をかくついでに、汗を拭う。
「それで、なんとなく、なんとなくだけど、魔法を使おうとしたら、あなたは魔法を形成する前に気づいた」
「ちょっとした体質なんだけどねぇ……」
俺は南部さんに対して、自分のことをすべては語っていない。
ただ、魔力をぼんやりだけど知覚できる、という風にしか教えていない。
「だからもしかして、と思って聞いてみたけど、違ったみたい」
「そうだねっ?!
俺は雑木とは関係は全然ないよっ?!」
というところで、俺は限界になって叫ぶ。
「ところでなんで俺こんな曲芸してるの?!」
「対事前予測できる人用に、と」
そう、俺は絶賛魔法の雨あられを避けまくっているのである。
自分の体質について話したあと、南部さんは椚先生のところに行き、なにか話したあと、みんなから離れた位置に移動してから、ずっとこの調子だ。
始まりの時は驚いて、ギリギリで避けていたが、今となっては、南部さんの音の特徴がわかったので、余裕を持って避けることが出来る。
「…………さっきとくらべて、余裕があるように見える」
「そんな事ないから早くやめない?!」
俺は水、炎、氷、風と轟音の鳴り響く場の中から、大声で返す。
ちょいちょい体力を魔力で増幅させて、疲れることはないが、そろそろ集中力が切れそうになる。
「じゃあ、最後に」
耳鳴りに聞こえるくらいの大音量。
精霊には、声の特徴がある。
水の精霊はプクプク聞こえて、
炎の精霊はゴウゴウと聞こえたりと、色々聞こえてくるが、今回のはあんまりそういう特徴がない……というか、全部が聞こえる。
そして、南部さんの頭上に魔法が形取ろうとしたその瞬間。
「やめなさい」
南部さんの背後に現れた人影が、南部さんの肩に手を置いた。
その瞬間、音は聞こえなくなり、魔法の発動をやめたのか、と言うことがわかる。
そこで完全に音が聞こえなくなったことから、もう終わったのかな?と思うが、未だに身構える。
すると、
「ふふふ、もう終わったからね」
いつの間にか肩に置かれていた手。
……身構えていたのに?
さっきから自分を中心に支配を広げていたのに?
高速で?
いや、それだったら魔法の音が聞こえているはず……。
そんな疑問が頭の中を埋め尽くす中、ゆっくりと振り返ると、
「こんにちは、妹が迷惑をかけたようね」
「…………南部…………みゆき…………」
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