箱庭の君

小町そと

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6 あらまし、その5

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本棟と特別棟の真ん中に位置する中庭は、雨の上がった18時57分、まさに水を打ったように静まり返っていた。

雨のせいでいつもなら遅くまで居る運動部が居なかった。

特別棟の音楽室を見上げれば既に電気が消えていて、それは他の教室に関しても同じで。

まっくらな中庭。人はいない。僕は黒いナイロンのケースからアコギを取り出した。気分としてはエレキだったが仕方ない。パワーコードをいくつか鳴らす。
 
ひそかに曲を作っていた。それも、歌詞だけの。メロディーは合っていれば何だって良かった。

気分に合った最初の音を取って、僕はそれを歌い出した。
 
 
 沈んだ気分を
 引き揚げるニュースは無くて
 雨を願う日は
 いつだって晴れ渡る空
 
 ああ、いい加減
 慣れてきたのが恨めしいな
 少し夢見ては罰当たる世界
 世知辛いのはデフォルトですか
 
 なんとなく、って生きてきたよ
 直感で選び取った道が
 脆いっていうのも まあ、
 薄々気付いてはいるから
 地に足が着かないことの
 何が駄目なんだよ
 そう聞かれたあんたこそ
 喉まで出かかっている
 「なんとなく」
 
 悪いのはどっちだ
 白黒つけるのは悪か
 長くない睫毛を
 抜く癖やめたらどう
 
 ああ、仕方ない
 妥協が最善策なのも真理
 多く望むほど報われない世界
 諦めないのは美談になりますか
 
 なんとなく、って生きてきたよ
 直感で選び取った道が
 悪いっていうのも まあ、
 多々あることなんだから
 手に汗を握るような
 行き当たりばったりでも
 そう決めた自分のこと
 誰かに許してほしい
 「それでいい」
 
 
 

雨を吸った中庭に、歌詞の最後が反響した。予想以上に力を込めて歌っていたらしく、無意識に肩で息をついていた。


再び訪れた静寂に、ただ、頭がぼうっとしていた。
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