箱庭の君

小町そと

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7 あらまし、その6

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――何分くらい経っただろうか。

パチパチパチ、と拍手が聞こえた。

その音にハッとした。僕は普段こんなことをする柄じゃない。内気で人見知りで、部活でも一部のメンバーへの歌詞の提供とギターこそすれボーカルなんてやったことはない。
 

や、やってしまった……!
 

顔が青ざめていくのが分かる。どうしよう、誰も居ない中庭で歌ってたなんてどう考えても痛い。

拍手の主が生徒なら明日にはクラス中に広がるかもしれない。拍手は皮肉っていうのも充分あり得るのだ。恥ずかしい。こうして歌ったことも、その詞を考えていたことも、全て時間の無駄だった。

歌った僕は、僕じゃない。普段なら絶対にこんなことはしない。きっと、きっと魔が差したんだ。今ここで物理的に蒸発したい。

思わずその場に蹲る。何を言われてももう言い訳の余地がない。



ぎゅっと目を瞑る。



――足音が、近付いてくる。



ここは暗いから、痛い行為していた奴が誰なのかを確かめようとしているんだろうか。やめてくれ本当に……。

足はガクガクと震えていて、逃げ出すことも出来ない。僕は観念した。
 
 



「良い歌詞だ」
 
 



落ち着いた低い声音だった。まるで誹謗の類は含まれていない、穏やかな口調。……震えが止まった。ん?今この人は何て言ったんだ?――いいかしだ。いいかし…良い、歌詞……?
 

バッと顔を上げた。月明かりに照らされて、高身長の男が浮かび上がった。細身な割に体格が良い。暗がりでも程よく筋肉のついた躰を備えているのが分かった。
 
「そんなに驚かなくても」
 
男はやや苦笑したように言って、僕に左手を差し伸べた。大きな掌だ。
 
「……本当だよ。少し、きみと話がしたい。良いか?」
 
こんなに唐突に現れたのに、他人に恐怖感を与えない男だ。

僕は気付くと頷いていた。
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