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3章 リリスと魔族の王子様
99 王子と従者
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「黒髪に赤い瞳を持つ少女を見つけたら気づかれないように尾行して」
「大事な子だから傷つけたらダメだよ」
リオンとレウは配下である魔物たちにそう命令を下した。
ここはオプスキュリテ侯爵家の屋敷から歩いて数日ほどかかる場所だ。
黒い森の中に開けたその場所には村があった。
木材をそのまま使った家々は自然に溶け込むような造りで温かみがある。
人の数もそれなりに多く、旅人や商人なども滞在し賑やかな村だった。
近くに湖もあるようで森の恵みも合わせると豊かなのが手に取るように分かった。
人が多いのなら魔族でも溶け込むことができると判断し、リオンとレウはこの村で少し休むことにした。
この村は森に囲まれているので、何か作業をするものやりやすい。
リオンとレウは、森の中に入り切り株に腰掛けて飼い慣らしていた魔物達を召喚陣から呼び出した。
「行っておいで」
「頼りにしてるからね」
魔物達はそう声をかけると散り散りに去っていった。
今回呼んだ魔物達は、気づかれぬよう風景に紛れる姿を取らせている。
小鳥にうさぎに猫、全部黒い姿をしている。
魔物たちは知能は低く本能のままに行動するが、魔族の王族であるリオンとレウが飼い慣らした彼らは命令には絶対に従ってくれる。
彼らが見たものは全てリオンとレウに伝わるようになっていた。
「うーん、おかしいわね。
私の魔術道具で薔薇姫ちゃんのとこに、連れてってくれるはずなのに、調子悪いのかしら?」
遠くから従者であるダークエルフのレインの困惑する声が耳に入る。
ふわふわと浮遊した赤いマントは羅針盤のような術式の中に納められ方向を定められず、狂ったようにくるくると回っていた。
赤いマントで持ち主の場所を辿ることができる魔術道具のようだが、何故か途中でプツリと反応が途絶え、このような反応を示している。
近くに村があって良かった。
無闇に歩き回ったりせずに、休みながら原因を探ることができるのだから。
この国にはない魔法や魔術を行使するときは、こうやって人目を避けなければならないが、ちょうどよい森もある。
「ねぇ、どうなってるの?」
「同じところでくるくる回っているな…」
「分からないわ…。
これは目的に着いた時の反応なのよ。
でもここに薔薇姫ちゃんの匂いはないし…。
もかして、妨害する何かがあるのかしら?」
珍しく申し訳なさそうな表情でレインは考えを告げた。
レインは魔法や魔術に関して得意な種族であるダークエルフだ。
特にレインはそのなかでも特筆した技量がある。
魔法や魔術に関することならその目で看破し模倣をし新たな魔術や魔法を編出す才能を持っていた。
故に性格が気に食わなくても従者としてリオンとラウは選んでいた。
仕事の時は使える部下であったはずなのだが、レインが作った羅針盤の調子が悪く状況が芳しくないようだ。
いつものふざけた態度がみられないということはそういうことなのだろう。
レウとリオンは顔を見合わせ、お互いにため息を着いた。
「原因を見つければ動く?」
「…推測ですが動くかと」
「それを見つけないとダメなわけか」
「はい」
リオンとレウはお互いに考え込む動作を取った。
鏡のように同じような動きになってしまう。
長い沈黙が続き、先に口を開いたのはリオンだった。
「レイン、確認したいことがある」
「何でしょう?
あたしのスリーサイズとか?」
しおらしくしていたと思えば、この女はまたふざけ始めたようだ。
表情が苦々しいものになる。
「兄さん何か分かったの?」
「まぁな…」
「あらぁ、それは助かるわ!
さすがリオン殿下」
ぱぁっと表情を明るくさせてレインはこちらに近づいてきた。
羅針盤は先程レインのいた方向へとゆらゆらと大きく揺れている。
それを確認してリオンは自分の考えの正しさに自信を持った。
「レイン、先程お前はその羅針盤の反応が、目的地着いた時のだと言っていただろう」
「そう言ったわ」
「羅針盤を見てみるといい。
お前がさっき立っていた方向に大まかだがさしている。
つまり…」
「さっきのとこの真下に何かあるんだね!」
「おい、レウ…」
言おうとしている言葉をレウに取られて、リオンはむっとした表情になった。
しかし弟のやることだと諦めて穏やかに言葉を続けた。
「そういうことだよ。
その地面掘ってくれるかな、レイン」
「…あたしが掘るの?
女に力仕事させるなんて正気?」
レインは体をくねらせながら女である事を強調してくる。
これは相手にするのが面倒だ。
「…冗談だ」
「兄さん。
僕は、掘らせてよかったと思うよ。
レイン、なんか道具貸して!
みんなで地面掘ろう」
レインはカバンから小さいシャベルを取り出した。
レインの鞄の中は見た目よりも色んなものが入っている。
あの鞄すらも手製の魔術道具となっていて空間が広くなっているのだろう。
レインからシャベルを受け取り三人で、羅針盤がクルクル回る場所を掘り始めた。
「本当にここに何か埋まってるのかしらね?」
レインが疑わしげに地面を掘り進める。
しばらく掘ったところでカツンと何か固いものにシャベルが当たった。
「これは…」
「箱だ」
「本当になにかでたわね…。
ん?」
すんすんとレインが犬のように鼻を鳴らす。
その様子をリオンとレウは呆れた表情で見つめた。
「これから、薔薇姫ちゃんの匂いがするわ!」
「ほぅ…」
「中身なんだろうね」
出てきた箱を取り出して、レインが土を丁寧に取り除いた。
飾り気のないシンプルな赤い箱が現れる。
「開けるわよ」
レインがそっと簡易的な金具をはずし蓋を開ける。
そこには、赤い薔薇の花びらに埋もれた仮面が入っていた。
白地に赤い薔薇の模様と羽の飾りが着いた舞踏会用の仮面だ。
「「…これは」」
リオンとレウの声がシンクロした。
心がぎゅっと掴まれるような切なさが体を電流のように巡った。
二人の目には昨日のことのようにその時の光景が浮かんでくる。
意識は遠い思い出へと駆けていった。
「大事な子だから傷つけたらダメだよ」
リオンとレウは配下である魔物たちにそう命令を下した。
ここはオプスキュリテ侯爵家の屋敷から歩いて数日ほどかかる場所だ。
黒い森の中に開けたその場所には村があった。
木材をそのまま使った家々は自然に溶け込むような造りで温かみがある。
人の数もそれなりに多く、旅人や商人なども滞在し賑やかな村だった。
近くに湖もあるようで森の恵みも合わせると豊かなのが手に取るように分かった。
人が多いのなら魔族でも溶け込むことができると判断し、リオンとレウはこの村で少し休むことにした。
この村は森に囲まれているので、何か作業をするものやりやすい。
リオンとレウは、森の中に入り切り株に腰掛けて飼い慣らしていた魔物達を召喚陣から呼び出した。
「行っておいで」
「頼りにしてるからね」
魔物達はそう声をかけると散り散りに去っていった。
今回呼んだ魔物達は、気づかれぬよう風景に紛れる姿を取らせている。
小鳥にうさぎに猫、全部黒い姿をしている。
魔物たちは知能は低く本能のままに行動するが、魔族の王族であるリオンとレウが飼い慣らした彼らは命令には絶対に従ってくれる。
彼らが見たものは全てリオンとレウに伝わるようになっていた。
「うーん、おかしいわね。
私の魔術道具で薔薇姫ちゃんのとこに、連れてってくれるはずなのに、調子悪いのかしら?」
遠くから従者であるダークエルフのレインの困惑する声が耳に入る。
ふわふわと浮遊した赤いマントは羅針盤のような術式の中に納められ方向を定められず、狂ったようにくるくると回っていた。
赤いマントで持ち主の場所を辿ることができる魔術道具のようだが、何故か途中でプツリと反応が途絶え、このような反応を示している。
近くに村があって良かった。
無闇に歩き回ったりせずに、休みながら原因を探ることができるのだから。
この国にはない魔法や魔術を行使するときは、こうやって人目を避けなければならないが、ちょうどよい森もある。
「ねぇ、どうなってるの?」
「同じところでくるくる回っているな…」
「分からないわ…。
これは目的に着いた時の反応なのよ。
でもここに薔薇姫ちゃんの匂いはないし…。
もかして、妨害する何かがあるのかしら?」
珍しく申し訳なさそうな表情でレインは考えを告げた。
レインは魔法や魔術に関して得意な種族であるダークエルフだ。
特にレインはそのなかでも特筆した技量がある。
魔法や魔術に関することならその目で看破し模倣をし新たな魔術や魔法を編出す才能を持っていた。
故に性格が気に食わなくても従者としてリオンとラウは選んでいた。
仕事の時は使える部下であったはずなのだが、レインが作った羅針盤の調子が悪く状況が芳しくないようだ。
いつものふざけた態度がみられないということはそういうことなのだろう。
レウとリオンは顔を見合わせ、お互いにため息を着いた。
「原因を見つければ動く?」
「…推測ですが動くかと」
「それを見つけないとダメなわけか」
「はい」
リオンとレウはお互いに考え込む動作を取った。
鏡のように同じような動きになってしまう。
長い沈黙が続き、先に口を開いたのはリオンだった。
「レイン、確認したいことがある」
「何でしょう?
あたしのスリーサイズとか?」
しおらしくしていたと思えば、この女はまたふざけ始めたようだ。
表情が苦々しいものになる。
「兄さん何か分かったの?」
「まぁな…」
「あらぁ、それは助かるわ!
さすがリオン殿下」
ぱぁっと表情を明るくさせてレインはこちらに近づいてきた。
羅針盤は先程レインのいた方向へとゆらゆらと大きく揺れている。
それを確認してリオンは自分の考えの正しさに自信を持った。
「レイン、先程お前はその羅針盤の反応が、目的地着いた時のだと言っていただろう」
「そう言ったわ」
「羅針盤を見てみるといい。
お前がさっき立っていた方向に大まかだがさしている。
つまり…」
「さっきのとこの真下に何かあるんだね!」
「おい、レウ…」
言おうとしている言葉をレウに取られて、リオンはむっとした表情になった。
しかし弟のやることだと諦めて穏やかに言葉を続けた。
「そういうことだよ。
その地面掘ってくれるかな、レイン」
「…あたしが掘るの?
女に力仕事させるなんて正気?」
レインは体をくねらせながら女である事を強調してくる。
これは相手にするのが面倒だ。
「…冗談だ」
「兄さん。
僕は、掘らせてよかったと思うよ。
レイン、なんか道具貸して!
みんなで地面掘ろう」
レインはカバンから小さいシャベルを取り出した。
レインの鞄の中は見た目よりも色んなものが入っている。
あの鞄すらも手製の魔術道具となっていて空間が広くなっているのだろう。
レインからシャベルを受け取り三人で、羅針盤がクルクル回る場所を掘り始めた。
「本当にここに何か埋まってるのかしらね?」
レインが疑わしげに地面を掘り進める。
しばらく掘ったところでカツンと何か固いものにシャベルが当たった。
「これは…」
「箱だ」
「本当になにかでたわね…。
ん?」
すんすんとレインが犬のように鼻を鳴らす。
その様子をリオンとレウは呆れた表情で見つめた。
「これから、薔薇姫ちゃんの匂いがするわ!」
「ほぅ…」
「中身なんだろうね」
出てきた箱を取り出して、レインが土を丁寧に取り除いた。
飾り気のないシンプルな赤い箱が現れる。
「開けるわよ」
レインがそっと簡易的な金具をはずし蓋を開ける。
そこには、赤い薔薇の花びらに埋もれた仮面が入っていた。
白地に赤い薔薇の模様と羽の飾りが着いた舞踏会用の仮面だ。
「「…これは」」
リオンとレウの声がシンクロした。
心がぎゅっと掴まれるような切なさが体を電流のように巡った。
二人の目には昨日のことのようにその時の光景が浮かんでくる。
意識は遠い思い出へと駆けていった。
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