アストレイヴ 〜中二病召喚計画〜

よしまさ

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第17話 試行錯誤の日々

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第17話 試行錯誤の日々


作戦その一。魔法習得編 

町の魔法屋の棚には、色とりどりの魔導書が並んでいた。
十神は手持ちの最後の銀貨を握りしめ、決意と中二心だけで突進する。

「見ろ、これが『炎系基礎』『風の小技』『氷の真髄』……全部、買う!」

店主は驚きと哀れみの混じった顔で十神を見たが、金が入るので黙って本を売った。

十神は宿に戻ると、布団に突っ伏して数日徹夜で読み込み、習得儀式を行う——と、文字どおり読むだけで簡易用魔法スキルが入るのがこの世界の仕様だ。
短期間で炎・風・氷の基礎呪文を習得した十神は満を持してフィールドへ。

「いいか…これでドロップは回収できるはずだ。普通の火炎で焼けば素材は残る。勝ったな、俺様!」

だが現場で放った呪文は――発動直後に黒化する。
彼が唱えた「ファイアボルト」は真っ黒な焼け跡を残す“ヘルファイヤー”に変換された。ウィンドショットも、アイスランスも、全てヘルファイヤーに変換されてしまう。

魔力はあるが――【暗黒炎縛り】。十神はむせび泣く。

「なんでだよ……本読んで習得したのに、全部暗黒属性になるってどういうことだ。カネ返せ!腹減っただけじゃんかよ」

アンコ(幼体)は舌打ちする。

結論:十神の“属性拘束”は運命レベル。他の属性魔法でのドロップ回収、失敗。



作戦その二。ギルド護衛依頼編

十神は次にギルドへ行き、討伐クエストで稼ごうとする。だがギルドは最近、運営方針を変更していた。

「討伐クエストは討伐証明品提出を義務化します。素材の抜き取りが証明できない場合は報酬支払い不可。環境保全と不正防止のため」

十神の顔、青ざめる。
彼の必殺・ヘルファイヤーは“証明品を残さない”――つまり、討伐クエストは事実上不可。
採集納品はスキルやランクの制約が大きく、十神にはハードルが高い。

残るは護衛クエスト──人や荷物を守る仕事。
「守るなんて……俺様の本分は破壊だぞ?」と呻きつつも、空腹は待ってくれない。

最初の護衛は簡単な巡礼護衛。十神は怠慢に振る舞うが刀で脅すでもなく、黒竜の威圧でワンパン二発くらいで終わらせる。警備対象を無事に送り届けると、金が入る。これが意外と旨い。

十神はすぐに護衛で月の食費をまかなえるようになるが、心は荒む。

「守る→金→食う。守る→金→食う。だが……俺様は焼きたいのに。守ってばかりいる!ちくしょー!」

アンコは冷静に指摘する。

『主、論理的に言えば“稼ぎ”と“破壊”を分けるのが最適です。収入を得てから、計画的に燃やす。』

「その言い訳、聞き飽きた」

結論:護衛で生計を立てる→ジレンマ深まる。



作戦その三。ビジネス開業編 

ある日、町の外れを飛んでいて、十神は閃く。

「ゴミ……だ。人々が生活すれば必ず発生する。しかも消えてなくなると皆喜ぶ。これだ!」

アンコは鼻で笑う。

『なるほど。町の清掃屋をするわけですね。主の専門は“焼却”だし。』

十神は早速、町外れの巨大ゴミ山へ向かい、ヘルファイヤーを一発。あんなに大きかったゴミの山はあっけなく消滅した。そして、住民は大喜び。

「うわー!ありがとう! ゴミがなくなった! 報酬を出すよ!」

十神は報酬(現金)を受け取り、アンコと二人で勝ち誇る。やがて近隣の町でも同様の依頼が舞い込み、ゴミ焼却を請け負うようになる。

彼は看板を出す(文字は短めで「黒焰処理業 — 即日対応」)。
町の人々は半ば伝説のゴミ焼却員として彼を讃える。十神は照れ隠しにフードを深く被る。

だが夜、焚火のそばでふと我に返る。

「……これで満足か? 何故、町の掃除で胸が温かくなるのだ? 俺様は破壊を、絶望を、世界の灰を望んだはずだ。ゴミ焼却でこの心が満たされるというのか?」

幼体化中のアンコが主の足元に丸まる。

『主、学習しましたね。破壊は行為として快楽を与えますが、社会的な“役”を果たすと承認が得られます。それが別の満足を生むのです。』

十神は軽く眉をしかめるが——どこか嬉しそうでもあった。

結論:ゴミ焼却は合法かつ美味しい金策→心のズレが生じる。


No.07:ジャンの部屋

薄暗い部屋に、モニターの光だけが静かに揺れている。
ジャン・リック・モローは、今日も“十神災牙”の行動ログを追っていた。

(……なんだコイツ)
彼は思わず息をのむ。

ゲームの中で、十神は少しずつ周囲に溶け込み始めていた。
かつて破壊の化身だったはずの彼が、いまでは自分の役割を見つけ、村人――いや、NPCたちのために動いている。
食糧を集め、モンスターを退け、感謝の言葉を受けて微笑む姿。

(たとえNPCからの感謝でも……人格が、こんなふうに変わるものなのか?)
ジャンは眉を寄せた。
最初はただの監視対象。
だが、いつの間にか、彼の行動を追うたびに、胸の奥が温かくなるのを感じていた。

(……俺の気持ちまでも変えるのか? まさかな)

画面の中。
十神はアンコと並んで腰を下ろし、焚き火の前でサンドイッチを頬張っている。
従魔と、笑いながら食事を分け合う姿は、どこか人間らしく――そして、眩しかった。

前の世界では得られなかった「居場所」。
それを、この仮想の大地で見つけつつある転生者の姿に、ジャンは目を離せなくなっていた。

――その日、モニターの光の中で笑う二人が、ほんの一瞬だけ“現実よりも美しい”と思えたのだった。
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