アストレイヴ 〜中二病召喚計画〜

よしまさ

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第54話 御前試合

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第54話 御前試合

時は無情にも流れ、魔王候補者による御前試合の日が訪れた。
くじ引きによるトーナメント。
ヴァルクとリシュオン、その勝者と十神が戦い、最後に立っていた者が次期魔王となる。

荒野には、黒い波のように魔族が集結していた。
歓声、嘲笑、期待、欲望――すべてが入り混じった視線が、戦場に注がれている。

「ヴァルクの圧勝だ」
「いや、リシュオンだ。呪剣がやばいらしい」

そんな声ばかりが飛び交う。
十神の名を口にする者は、誰一人いなかった。
そもそも、その存在すら知られていない。

そして――
第一戦、ヴァルク対リシュオン。

開始の合図と同時に、両者は一切の躊躇なくバフを重ねがけする。
空気が歪み、魔力が荒野を震わせた。

ヴァルクが腕を振る。
瞬間、巨大な氷塊が生成され、岩ごと大地を凍結させながらリシュオンへ迫る。

「――っ!」

リシュオンは即座に対魔法障壁を三枚展開。
一枚、砕ける。
二枚、粉砕される。

残る一枚も持たないと判断した刹那、リシュオンは上空へと跳んだ。
だが、それすら――読まれていた。

「遅い」

ヴァルクが、空中のリシュオンへ突進する。
逃げ道は、最初から誘導されていた。

魔法で具現化された氷の剣が、リシュオンを切り裂こうと振り下ろされる――
その瞬間。

キィン、と不吉な金属音。
呪剣クリムゾルドが、氷剣を弾き砕いた。

「……クリティカルか」

砕け散る氷。
紫に光る呪剣。

第二撃。
ヴァルクは剣の再形成が間に合わず、咄嗟に左手で受けた。

肉体にダメージはない。
だが――魔力が、一気に削ぎ落とされる感覚。

「……魔力ダメージ」

ヴァルクは即座に距離を取った。魔力ダメージの反動で魔法が打てない。

リシュオンは逃さない。
爆発魔法を連続で叩き込み、戦場を煙と衝撃で覆い尽くす。

対魔法障壁が張れず、うずくまり顔を前腕でガードし耐えるヴァルク。
だが、爆炎と煙で視界は奪われリシュオンを見失う。

魔力ダメージの反動が徐々に回復、次の攻撃に備え、全方向へ対魔法障壁を展開――

しかし、煙の中から現れたのは、呪剣による純粋な物理の一撃。
対魔法障壁は意味をなさず、再びクリティカル。

「グォ……!」

右肩から、魔族特有の青い血が滴る。

――戦況は、一気にリシュオンへ傾いた。

だが。

ヴァルクの口元に、不自然な笑みが浮かぶ。

「……いいだろう」

次の瞬間。
彼の身体から、冷気の波動が放たれた。

ドーム状の結界が形成され、戦場そのものが閉ざされる。
空気が凍り、音が鈍る。

結界という名の牢獄。
ヴァルクは、自らの領域へと戦場を書き換えた。

リシュオンの吐く息が、白く凍る。

(まずい……このままじゃ凍え死ぬ。長期戦は不利だ)

距離を詰め、接近戦へ。
呪剣クリムゾルドが唸りを上げ、連撃を叩き込む。

だが今度は、ヴァルク対物理障壁で迎え撃つ。

強烈なな冷気でリシュオンの動きが鈍った瞬間、無数の氷の槍が生成され、突き刺さる。
避けきれない。
血が舞う。

それでも、リシュオンは止まらない。
攻撃を続ける。

HPは削られ、意識は遠のく。
だが――

物理障壁に、ヒビが入った。

「……まさか」

呪剣クリムゾルドの効果
――《流血の絆》。

装備者のHPが削られるほど、攻撃力が上昇する。

リシュオンの血を啜った剣が、強く主人の意思と共鳴する。
絆効果とクリティカルを合わせた強力な一撃が、障壁を貫いた。

「そんな……貴様…頭脳派のくせにゴリ押しか……!」

ヴァルクの左前腕が、切り落とされる。
肩口まで深々と刃が食い込む。

だが――
リシュオンは、追撃できなかった。

彼自身のHPも、風前の灯火だったからだ。

血まみれの二人が、立ったまま睨み合う。

「ヴァルクさん……その傷じゃ、もう動けませんね」
「……それは、お互い様だろう」

短い沈黙。

「ですが……最後の切り札は、残しておくものです」
「……貴様、まだ何か……!」
「魔王様の目の前でもありますし、見せてあげますよ、新しい魔族の世界の幕開けを…」
リシュオンが詠唱を始める。

空気が、変わる。
観戦していた魔族たちの喧騒が、凍りついた。

「――この世の秩序を守る、終焉の化身。破壊神ハーデよ」

巨大な魔法陣が、ヴァルクの頭上に展開される。

「異界の門が開きし時――その右腕で、我が目の前の敵を――」

地鳴り。
空が裂ける。

「――圧壊したまえ」

山のような巨大な右腕が、召喚陣から現れた。

ヴァルクは、もう避けられない。
五枚重ねの対物理障壁で迎え撃つ。

だが――

星を潰すかのような一撃が、振り下ろされる。

何重もの障壁も、まるで意味をなさず、薄いガラスのように砕け散り、
巨大な拳が大地を叩き潰した。

轟音。
粉塵。
戦場に残るのは巨大なクレーター。

右腕は、何事もなかったかのように異界へと戻っていく。

静寂。

「どうです? 魔王様」

血に濡れたリシュオンが、笑う。

「破壊神ハーデの“片腕”だけで、この威力。
この力をすべて取り戻せば――
魔族の未来は、明るいでしょう?」

魔王ザガルは、言葉を失っていた。

(……違う)

胸に走るのは、恐怖。

(これは……俺の望んだ未来じゃない。まだ、ヴァルクの野望の方がマシだった…)

クレーターの中心から、瀕死のヴァルクが救出されていく。
勝敗は、決した。

次戦は、三日後。
同じ場所で。

次に立つのは――十神。

荒野に残った冷気と沈黙が、
その事実だけを、無言で突きつけていた。
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