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第1章
10.戦闘訓練
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翌日から、俺は森で戦闘訓練を始めた。
アモンと闘うと決めたわけではない。
向こうから攻撃してきた場合に備えて、自分の能力を把握しておこうと考えたのだ。
<メッセージ>『対ドラゴンを想定した場合、空中戦は避けられません。飛行に慣れておく必要があるでしょう』
(俺、飛べるのか?)
『基本スペックです。【飛翔】のワードで、マスターの躰に翼が出現します』
試してみると、6対12枚の翼が俺の背中に生えて(?)きた。
蝙蝠みたいな羽ではなく、天使のような翼だった。
但し、色は漆黒だったが……。
(こんなにあったんじゃ、翼同士がぶつかって、墜落しそうだな)
『身体が覚えているので心配は無用です!』
天空に向かって羽ばたく。
ファーストフライトだ。
信じ難いスピードと機動力――!
(ひょっとして、これはドラゴンより早いんじゃね?)
『比較するまでもありません。空中戦において、マスターを超える者など皆無でしょう。アモンと戦闘になった場合、機動力を活かして垂直方向の死角に入り、攻撃魔法を放てば、的が大きいので100パーセント当たります。見失った敵を探す場合、まず左右を確認しますから、反応すらできません』
(攻撃魔法には、どんなものがあるの?)
『アモンと闘うことを想定した場合、
【ライトニング・デストロイヤー】
魔力をレーザー化した破壊光線です。光速で敵を貫きます。避けることは不可能です。
【雷霆】
雷で造られた槍が上空から降り注ぐ広範囲魔法です。
【サークル・オブ・ライトニングソード】
360度全方向から放たれる光の剣による連続攻撃です。敵を包囲し、一瞬で無数の攻撃を叩き込むという無慈悲な技!
などを推奨します。
他にも……』
(待ってくれ! 殺すことを前提にしていないか? できれば仲間になってもらいたいんだけど……)
『……了解しました。出力をセーブして対応いたします』
鷲の上半身と翼にライオンの下半身の魔獣、グリフォンに【ライトニング・デストロイヤー】を試した。
死角から放った一撃で、脳天を貫いた。
ライオンの頭と四肢、ドラゴンの胴体と翼、大蛇の尻尾を持つキメラに【サークル・オブ・ライトニングソード】を試した。
一撃で、ミンチのようになってしまった。
広範囲魔法の【雷霆】については、試すのを止めた。
森に無用な被害をもたらすのは不本意だったからだ。
戦闘訓練を始めてから数日後――。
サトウキビ畑が収穫の時を迎えた。
「あ、甘ぁい~! 魔王様、これは素晴らしい作物ですぴょん♡」
皮を剥いて、一口齧ったシャルロットが頬を押さえる。
刈り取り作業をしていた大鬼、人狼、獣人、ゴブリンたちにも味見するように促すと、みんな一様に幸せそうな笑顔になった。
「こいつを絞って砂糖にすれば、この街でもスイーツが食べられるようになるぞ!」
「この作物から砂糖が作れるんだ! それは素晴らしい!!」
ロキアが子供みたいに、はしゃぐ。
嗜好品が気軽に食べられるようになれば、魔族の幸福度もグン⤴と上がるに違いない。
問題はスイーツを作れる人材がいるかどうか、だが……。
「人間の国で暮しておったホワイトエルフもおる。案ずるな」
リリスが言った。
「これをどのようにすれば、砂糖になるんでありんすかえ?」
と、緋魅狐。
「まず、サトウキビから汁を絞る。次に、濾過して不純物を取り除く。出来上がった糖液を煮詰めた後、冷却して固める。これで黒糖の完成! 白い砂糖を作るには、結構な手間がかかるみたいだから、とりあえずは黒糖を量産しよう」
農園の視察を終えて、牧場に移動する。
異世界の動物が珍しいのだろう。
何組か親子がいて、柵に近寄ってきた羊の毛を撫でたり、仔牛にエサをあげたりしていた。
元いた世界の体験型牧場公園みたいな光景で微笑ましかった。
「これはこれは魔王様、緋魅狐様。リリス様にロキア様も! 見回りご苦労様です!!」
大鬼の頭、カゲトラが俺たちを見つけて近寄ってきた。
青い短髪から覗く二本の角、2メートルを超える身長にガッシリとした体躯。
顔つきは人間と変わりない。
紺色の小袖に袴、緋色の羽織を着て腰に大刀を差している。
「上手く行ってるみたいだな」
「順調そのもの。何ぞ心配ござらん。然る事ながら魔王様、牧場というのは素晴らしいですな! 家畜を狙って、森の獣たちが勝手にやって来る。狩りに出掛ける必要もなくなって、我々は大助かりじゃ!」
カゲトラは豪快に笑った。
(そ、そっちの意味で素晴らしいんかい!)
俺はずっこけた。
「……ま、魔王様! アチキは、バターとかヨーグルトがお気に入りでありんす。焼きたてのパンにバター、果樹園で採れたフルーツを細かく切ってヨーグルトに乗せたデザート……絶品でありんすね!」
そう。この牧場では、牛乳を使った加工食品も製造しているのだ!
緋魅狐が、カゲトラを睨んでいる……。
カゲトラの顔は青ざめ、汗がしたたっている……。
た、助けなければ。
「……ふっふっふっ、緋魅狐さん。そんなんで喜んでちゃ、砂糖が出来た時、大変だぜ。バターを塗ったトーストに砂糖をかけたシュガートースト、砂糖と水を煮詰めたシロップに果物を漬けてヨーグルトに混ぜたデザートは、さらに旨い。卵と牛乳と砂糖があればプリンというお菓子だって作れる!」
「なにそれ! 聞いてるだけでお腹が減ってくるんですけど!」
ロキアの尻尾が踊っている。
「それは、楽しみでありんす♡」
カゲトラが声を出さず、<か・た・じ・け・な・い>と言っているのが見えた。
アモンと闘うと決めたわけではない。
向こうから攻撃してきた場合に備えて、自分の能力を把握しておこうと考えたのだ。
<メッセージ>『対ドラゴンを想定した場合、空中戦は避けられません。飛行に慣れておく必要があるでしょう』
(俺、飛べるのか?)
『基本スペックです。【飛翔】のワードで、マスターの躰に翼が出現します』
試してみると、6対12枚の翼が俺の背中に生えて(?)きた。
蝙蝠みたいな羽ではなく、天使のような翼だった。
但し、色は漆黒だったが……。
(こんなにあったんじゃ、翼同士がぶつかって、墜落しそうだな)
『身体が覚えているので心配は無用です!』
天空に向かって羽ばたく。
ファーストフライトだ。
信じ難いスピードと機動力――!
(ひょっとして、これはドラゴンより早いんじゃね?)
『比較するまでもありません。空中戦において、マスターを超える者など皆無でしょう。アモンと戦闘になった場合、機動力を活かして垂直方向の死角に入り、攻撃魔法を放てば、的が大きいので100パーセント当たります。見失った敵を探す場合、まず左右を確認しますから、反応すらできません』
(攻撃魔法には、どんなものがあるの?)
『アモンと闘うことを想定した場合、
【ライトニング・デストロイヤー】
魔力をレーザー化した破壊光線です。光速で敵を貫きます。避けることは不可能です。
【雷霆】
雷で造られた槍が上空から降り注ぐ広範囲魔法です。
【サークル・オブ・ライトニングソード】
360度全方向から放たれる光の剣による連続攻撃です。敵を包囲し、一瞬で無数の攻撃を叩き込むという無慈悲な技!
などを推奨します。
他にも……』
(待ってくれ! 殺すことを前提にしていないか? できれば仲間になってもらいたいんだけど……)
『……了解しました。出力をセーブして対応いたします』
鷲の上半身と翼にライオンの下半身の魔獣、グリフォンに【ライトニング・デストロイヤー】を試した。
死角から放った一撃で、脳天を貫いた。
ライオンの頭と四肢、ドラゴンの胴体と翼、大蛇の尻尾を持つキメラに【サークル・オブ・ライトニングソード】を試した。
一撃で、ミンチのようになってしまった。
広範囲魔法の【雷霆】については、試すのを止めた。
森に無用な被害をもたらすのは不本意だったからだ。
戦闘訓練を始めてから数日後――。
サトウキビ畑が収穫の時を迎えた。
「あ、甘ぁい~! 魔王様、これは素晴らしい作物ですぴょん♡」
皮を剥いて、一口齧ったシャルロットが頬を押さえる。
刈り取り作業をしていた大鬼、人狼、獣人、ゴブリンたちにも味見するように促すと、みんな一様に幸せそうな笑顔になった。
「こいつを絞って砂糖にすれば、この街でもスイーツが食べられるようになるぞ!」
「この作物から砂糖が作れるんだ! それは素晴らしい!!」
ロキアが子供みたいに、はしゃぐ。
嗜好品が気軽に食べられるようになれば、魔族の幸福度もグン⤴と上がるに違いない。
問題はスイーツを作れる人材がいるかどうか、だが……。
「人間の国で暮しておったホワイトエルフもおる。案ずるな」
リリスが言った。
「これをどのようにすれば、砂糖になるんでありんすかえ?」
と、緋魅狐。
「まず、サトウキビから汁を絞る。次に、濾過して不純物を取り除く。出来上がった糖液を煮詰めた後、冷却して固める。これで黒糖の完成! 白い砂糖を作るには、結構な手間がかかるみたいだから、とりあえずは黒糖を量産しよう」
農園の視察を終えて、牧場に移動する。
異世界の動物が珍しいのだろう。
何組か親子がいて、柵に近寄ってきた羊の毛を撫でたり、仔牛にエサをあげたりしていた。
元いた世界の体験型牧場公園みたいな光景で微笑ましかった。
「これはこれは魔王様、緋魅狐様。リリス様にロキア様も! 見回りご苦労様です!!」
大鬼の頭、カゲトラが俺たちを見つけて近寄ってきた。
青い短髪から覗く二本の角、2メートルを超える身長にガッシリとした体躯。
顔つきは人間と変わりない。
紺色の小袖に袴、緋色の羽織を着て腰に大刀を差している。
「上手く行ってるみたいだな」
「順調そのもの。何ぞ心配ござらん。然る事ながら魔王様、牧場というのは素晴らしいですな! 家畜を狙って、森の獣たちが勝手にやって来る。狩りに出掛ける必要もなくなって、我々は大助かりじゃ!」
カゲトラは豪快に笑った。
(そ、そっちの意味で素晴らしいんかい!)
俺はずっこけた。
「……ま、魔王様! アチキは、バターとかヨーグルトがお気に入りでありんす。焼きたてのパンにバター、果樹園で採れたフルーツを細かく切ってヨーグルトに乗せたデザート……絶品でありんすね!」
そう。この牧場では、牛乳を使った加工食品も製造しているのだ!
緋魅狐が、カゲトラを睨んでいる……。
カゲトラの顔は青ざめ、汗がしたたっている……。
た、助けなければ。
「……ふっふっふっ、緋魅狐さん。そんなんで喜んでちゃ、砂糖が出来た時、大変だぜ。バターを塗ったトーストに砂糖をかけたシュガートースト、砂糖と水を煮詰めたシロップに果物を漬けてヨーグルトに混ぜたデザートは、さらに旨い。卵と牛乳と砂糖があればプリンというお菓子だって作れる!」
「なにそれ! 聞いてるだけでお腹が減ってくるんですけど!」
ロキアの尻尾が踊っている。
「それは、楽しみでありんす♡」
カゲトラが声を出さず、<か・た・じ・け・な・い>と言っているのが見えた。
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