ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

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第2章 

22.城塞の完成

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 ソドムの森を、ぐるりと囲む城塞が完成した。

「すげぇな……まるで万里の長城みたいだ……」
 思わず口をついて出た。
 幕壁カーテンウォールの上の歩廊から見渡す限り、延々と堅牢な壁が続いている。

「バンリノチョウジョウ……サタンくん、それって何なの?」
 ロキアが俺の外套の袖を引っ張る。

「転生前に俺がいた世界にあった有名な建造物だよ。敵の侵入を防ぐために作られた、とてつもなく長い城壁」

「なんと……魔王様が転生される前の世界にも、これと同じようなものがありましたか! 人間も中々やりますね……」
 アモンは素直に感心していた。

「あっ、でも、みんなが造ったこの城塞の方が立派だよ! 高さも、幅も、こっちの方が上回ってる!」

「ふっふっふっ……どうじゃサタンよ。魔族の力を見直したか?」
 リリスがドヤ顔をした。

「もちろん! でもこれほど大規模なもの、よく1週間程で落成させたな」

「我らにかかれば、造作もないわ」

 リリスの説明によると、土魔法を使って高さ20メートル、幅10メートルの土壁を作り石化させた後、強化魔法を付与。
 悪魔、魔人、ダークエルフを中心に、魔族が一丸となって建築に当たったそうだ。
 城門は、ルシファー様の神殿から最も遠い南側に。
 東西南北の幕壁カーテンウォールには一定間隔で側防塔が設けられているらしい。

「これで大軍勢が攻めてきても、簡単に領土内へ侵入される憂いは無くなったな。みんな、よくやってくれた。ありがとう!」

 3人は満足そうに微笑み、頷いた。

「さあ、今日は城塞が完成した記念すべき日だ!」
 俺は、パンッと一回大きく手を叩いた。
「さっさと宴を始めようぜ!」

 歩廊の上に、オークニーが現れた。
 転移魔法を使って俺たちを迎えに来たようだ。

「皆様、そろそろ魔王城へお戻りください。宴の準備が整いました。広場には既に大勢の魔族たちが集っており、宴が始まるのを今か今と待ち侘びております」

「オークニー、宴の場には何が用意されておる?」

「はい、リリス様。飲み物にはエール、ワインの他にも、リンゴを原料とする《カルバドス》という蒸留酒、ワインと同じくブドウを原料とした《ブランデー》という蒸留酒がございます。子供用には果実を絞った新鮮なジュースも用意されております。食べ物の方はビーフステーキ、様々な種類の肉を使った串焼き、野菜や肉がたっぷりと入った具沢山のスープ、肉に下味をつけて小麦粉を付けたのち油で揚げた《唐揚げ》なる料理、ジャガイモをスティック形に切って揚げた《ポテトフライ》、ほかには……」

 リリスのお腹が、グゥーッと鳴った。
 オークニーは明後日の方を向いて聞こえないフリをしていたけど、俺は盛大に吹いてしまった。

「……サタン、貴様はデリカシーという言葉を知らんのか!?」

 リリスに、思いっきりグーで殴られた。


  ***


 具沢山のスープというのは、なんと豚汁だった!

「マジか! 嘘だろ?」

 一口飲んで涙が出てきた。
 豚バラ肉、大根、人参、ゴボウ、ジャガイモ、長ネギが入っている。
 味付けにも、ちゃんとした味噌が使われていた。

「ほう、これは初めて食すが、どこかホッとする味じゃの」
 リリスが感想を述べる。
「サタンは、よほどこの料理が好きなようじゃな。涙が出ておるぞ」

 からかうように言われたが、そんなことはどうだっていい。

「故郷の味なんだ。この世界にきて、初めて食べたから感激したんだよ。すごく美味しい! 誰が作ったの?」

「アチキでありんす。不敬ながら、魔王様からはアチキのルーツである東方の国の香りがいたしんしたので、作らせていただきんした。喜んでいただけたようで、感激の極みでありんす」

 城塞の完成披露の場にいなかったのは、これを用意してくれてたからなのか!

「緋魅狐、ありがとう。この世界にも味噌があるんだね。知らなかったよ!」

「味噌は、東方にルーツを持つ民の間でしか使われておりんせん。アチキを祭る人間族――“ヤマト”という部族の者たちが作っておりんす」

「も、もしかして、お米とか醤油なんかも作ってたりする!?」
 
「……ああ、そういえば……アチキを祀る祠に、そういった物も奉納されておりんすね」

「お願いします! 今度お供えがあったら、少しでいいから食べさせてください!」
 テーブルに額をくっつけるようにして頭を下げた。

「そんな悲しいこと言わないで、全部食べておくんなんし。……というより、ヤマトの民に命じて、魔王城に献上させんすが?」

「それはよくない! お供え物にするということは、ヤマトの人たちにとっても貴重品なハズ。それを献上させるなんて、悪徳領主みたいなことはしたくない」

「米やらショウユやら、この地で作ればよかろう」
 ビーフステーキをナイフで切りながらリリスが口を挟んだ。
 一口大に切ったステーキをフォークで突き刺し、口に運ぶ。
 もっもっもっ……と咀嚼して嚥下すると、赤ワインを口に含む。
 小柄なせいもあって、なんだか小動物の食事風景みたいだった、

「リリス、それは素晴らしい提案でありんす。米、醤油、味噌……それから米を原料にした酒などを造れる者を、アチキがヤマトの郷より何名か連れてまいりんしょう!」

「人間が魔族の国で暮すなんて嫌がるだろ?」

「ご心配にはおよびんせん。アチキに忠義を尽くす民でありんすから、魔族に対する偏見などありんせん。気がかりなのは、ジャングリラに住まうみなが人間をどう思うか、でありんすが……」

「妾もロキアもアモンも、『ヤマトの民には指一本触れるな』と配下に言い聞かせておく。安心して連れてくるがよかろう」
 リリスの飲み物が、いつの間にかブランデーに変わっていた。
「米から作る酒……なかなか興味深いではないか」

 酒好きか、リリス。オマエはそんなに酒が好きだったのか!

「それを聞いて安心しんした。では、2~3日中には匠の者を連れて戻ってまいりんす」

 緋魅狐は九尾を持つ妖狐の姿に変化へんげすると、どこかに向かって走り去った。
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