ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

文字の大きさ
23 / 44
第2章 

23.閑話①

しおりを挟む
 数日後――。

 緋魅狐に連れられて、魔王城の謁見の間に現れたヤマトの民は、名前が示す通り日本人に似た外見をしていた。

「お初にお目にかかります、魔王様。わたくしは、ヤマトの郷で《ショウユ》と《ミソ》の醸造を任されております麹師こうじしのヤマシタ・タロウと申す者。此度は、緋魅狐さまの下命を排し、弟子5名と《コメ》の生産を生業としている者5名を連れて、ジャングリラへとまかり越しました。今後とも、よろしくお願いいたします」

 総勢11人のヤマトの民は床に両膝をつき、平伏した。

「頭を上げて、楽にしてくれ。今回は無理を言って、すまなかった。故郷とは異なる環境で、何かと大変だとは思うけど、ジャングリラの住民への技術指導を頼みたい。不自由なことがあれば、遠慮なく言ってくれ。可能な限り、サポートさせてもらう」

「もったいないお言葉、ありがとうございます! 必ずや魔王様のご期待に応えてみせます」
 ヤマトの民は、再び平伏した。

 彼等の郷は、アンジャル王国とアルニラム神皇国に挟まれた小国の山間にある。
 大昔、稲を食い荒らす野ネズミが何年にも渡って大量発生し、郷が危機に瀕していた時、神に祈る巫女シャーマンの前に緋魅狐が現れたのだという。
 緋魅狐は野ネズミを駆除すると共に、魔獣を寄せ付けない結界を郷に張った。
 以来、ヤマトの民は緋魅狐を『豊穣の神』として崇めているのだそうだ。

 緋魅狐の眷属ということで、ヤマトの民には大鬼の集落の近くで生活してもらうことにした。
 【リインカネーション】で居住地と醸造所を作るための敷地を確保。
 同時に、水田も作り、【ノアの方舟】からコシヒカリの種籾たねもみを渡した。
 住居や施設の建設は、大鬼とドワーフを中心に行ってもらった。

「どうしてヤマトの民を助けたんだ?」

「昔のことなので、はっきりとしたことは覚えておりんせん。退屈でありんしたので暇つぶしをしたのか、あるいは……」
 緋魅狐は一旦言葉を切ると、照れくさそうに言葉を継いだ。
「あの郷から、何やら懐かしい匂いがしたせいかもしれんせんね」


  ***


 ヤマトの民の生活が落ち着いた頃、テルマエの建設が始まった。

「お湯はどうするんでありんすか? 良ければ、アチキの隠し湯から引いてこられたらいかがでありんしょう」

 バベルの滝の上流――
 水流が流れ落ちる部分より先に、緋魅狐の隠し湯があるという。

 湯量豊富な源泉から水路橋で城下までお湯を引っ張ってくることにした。
 建築方面の現場責任者、ドワーフのビコによると、火属性の魔石を複数使えば、途中で熱が奪われる心配はないということだった。

「魔王様、城にも温泉を引く必要があるが、どんな施設を造ればいい?」

「ん? 俺や幹部連中の部屋には浴室があるし、1階には大浴場だってある。工事が大変だし、必要ないだろ」

 ビコは首を横に振った。
「城には存在しない温泉施設を、城下の者が気兼ねなく利用できるとでも?」
 
 ……魔王城に、展望風呂ができた。

 忙しい中、余計な仕事をさせてしまったことを申し訳なく思いつつ、ありがたく入らせてもらう。

 最高だった!

「やっぱり、温泉は落ち着くなぁ~」

「うむ。悪くないのぉ~」
「景色を眺めながら湯浴みするというのは初めてですが、癒されますわぁ~」
「緋魅狐、なぜボクたちに温泉の存在を教えてくれなかったのさ? ズルイ!」
「皆が温泉を好きだなんて知らのうござりんしたよ。悪うござりんしたね~」

「うわぁああああああああ! ここは男湯だぞ。なんでオマエたちがいるんだ? ……ってか、いつ入ってきた!?」

「堅苦しいことは言いっこなしじゃ~」
「魔王様が湯浴み中に襲われでもしたら大変ですわぁ~。わたくしたちは警護のため、ここにいるのですぅ~」
「サタンくん、ボクが背中を流してあげようか?」
「アチキは前の方を担当させてもらいんしょう」

「「「このビッチが!!!」」」

 リリス、アモン、ロキアが緋魅狐に詰め寄った。

「俺は先に上がるわ。出来たばかりの展望風呂、壊すなよ」

 俺は逃げるように展望風呂を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...