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第2章
23.閑話①
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数日後――。
緋魅狐に連れられて、魔王城の謁見の間に現れたヤマトの民は、名前が示す通り日本人に似た外見をしていた。
「お初にお目にかかります、魔王様。わたくしは、ヤマトの郷で《ショウユ》と《ミソ》の醸造を任されております麹師のヤマシタ・タロウと申す者。此度は、緋魅狐さまの下命を排し、弟子5名と《コメ》の生産を生業としている者5名を連れて、ジャングリラへとまかり越しました。今後とも、よろしくお願いいたします」
総勢11人のヤマトの民は床に両膝をつき、平伏した。
「頭を上げて、楽にしてくれ。今回は無理を言って、すまなかった。故郷とは異なる環境で、何かと大変だとは思うけど、ジャングリラの住民への技術指導を頼みたい。不自由なことがあれば、遠慮なく言ってくれ。可能な限り、サポートさせてもらう」
「もったいないお言葉、ありがとうございます! 必ずや魔王様のご期待に応えてみせます」
ヤマトの民は、再び平伏した。
彼等の郷は、アンジャル王国とアルニラム神皇国に挟まれた小国の山間にある。
大昔、稲を食い荒らす野ネズミが何年にも渡って大量発生し、郷が危機に瀕していた時、神に祈る巫女の前に緋魅狐が現れたのだという。
緋魅狐は野ネズミを駆除すると共に、魔獣を寄せ付けない結界を郷に張った。
以来、ヤマトの民は緋魅狐を『豊穣の神』として崇めているのだそうだ。
緋魅狐の眷属ということで、ヤマトの民には大鬼の集落の近くで生活してもらうことにした。
【リインカネーション】で居住地と醸造所を作るための敷地を確保。
同時に、水田も作り、【ノアの方舟】からコシヒカリの種籾を渡した。
住居や施設の建設は、大鬼とドワーフを中心に行ってもらった。
「どうしてヤマトの民を助けたんだ?」
「昔のことなので、はっきりとしたことは覚えておりんせん。退屈でありんしたので暇つぶしをしたのか、あるいは……」
緋魅狐は一旦言葉を切ると、照れくさそうに言葉を継いだ。
「あの郷から、何やら懐かしい匂いがしたせいかもしれんせんね」
***
ヤマトの民の生活が落ち着いた頃、テルマエの建設が始まった。
「お湯はどうするんでありんすか? 良ければ、アチキの隠し湯から引いてこられたらいかがでありんしょう」
バベルの滝の上流――
水流が流れ落ちる部分より先に、緋魅狐の隠し湯があるという。
湯量豊富な源泉から水路橋で城下までお湯を引っ張ってくることにした。
建築方面の現場責任者、ドワーフのビコによると、火属性の魔石を複数使えば、途中で熱が奪われる心配はないということだった。
「魔王様、城にも温泉を引く必要があるが、どんな施設を造ればいい?」
「ん? 俺や幹部連中の部屋には浴室があるし、1階には大浴場だってある。工事が大変だし、必要ないだろ」
ビコは首を横に振った。
「城には存在しない温泉施設を、城下の者が気兼ねなく利用できるとでも?」
……魔王城に、展望風呂ができた。
忙しい中、余計な仕事をさせてしまったことを申し訳なく思いつつ、ありがたく入らせてもらう。
最高だった!
「やっぱり、温泉は落ち着くなぁ~」
「うむ。悪くないのぉ~」
「景色を眺めながら湯浴みするというのは初めてですが、癒されますわぁ~」
「緋魅狐、なぜボクたちに温泉の存在を教えてくれなかったのさ? ズルイ!」
「皆が温泉を好きだなんて知らのうござりんしたよ。悪うござりんしたね~」
「うわぁああああああああ! ここは男湯だぞ。なんでオマエたちがいるんだ? ……ってか、いつ入ってきた!?」
「堅苦しいことは言いっこなしじゃ~」
「魔王様が湯浴み中に襲われでもしたら大変ですわぁ~。わたくしたちは警護のため、ここにいるのですぅ~」
「サタンくん、ボクが背中を流してあげようか?」
「アチキは前の方を担当させてもらいんしょう」
「「「このビッチが!!!」」」
リリス、アモン、ロキアが緋魅狐に詰め寄った。
「俺は先に上がるわ。出来たばかりの展望風呂、壊すなよ」
俺は逃げるように展望風呂を後にした。
緋魅狐に連れられて、魔王城の謁見の間に現れたヤマトの民は、名前が示す通り日本人に似た外見をしていた。
「お初にお目にかかります、魔王様。わたくしは、ヤマトの郷で《ショウユ》と《ミソ》の醸造を任されております麹師のヤマシタ・タロウと申す者。此度は、緋魅狐さまの下命を排し、弟子5名と《コメ》の生産を生業としている者5名を連れて、ジャングリラへとまかり越しました。今後とも、よろしくお願いいたします」
総勢11人のヤマトの民は床に両膝をつき、平伏した。
「頭を上げて、楽にしてくれ。今回は無理を言って、すまなかった。故郷とは異なる環境で、何かと大変だとは思うけど、ジャングリラの住民への技術指導を頼みたい。不自由なことがあれば、遠慮なく言ってくれ。可能な限り、サポートさせてもらう」
「もったいないお言葉、ありがとうございます! 必ずや魔王様のご期待に応えてみせます」
ヤマトの民は、再び平伏した。
彼等の郷は、アンジャル王国とアルニラム神皇国に挟まれた小国の山間にある。
大昔、稲を食い荒らす野ネズミが何年にも渡って大量発生し、郷が危機に瀕していた時、神に祈る巫女の前に緋魅狐が現れたのだという。
緋魅狐は野ネズミを駆除すると共に、魔獣を寄せ付けない結界を郷に張った。
以来、ヤマトの民は緋魅狐を『豊穣の神』として崇めているのだそうだ。
緋魅狐の眷属ということで、ヤマトの民には大鬼の集落の近くで生活してもらうことにした。
【リインカネーション】で居住地と醸造所を作るための敷地を確保。
同時に、水田も作り、【ノアの方舟】からコシヒカリの種籾を渡した。
住居や施設の建設は、大鬼とドワーフを中心に行ってもらった。
「どうしてヤマトの民を助けたんだ?」
「昔のことなので、はっきりとしたことは覚えておりんせん。退屈でありんしたので暇つぶしをしたのか、あるいは……」
緋魅狐は一旦言葉を切ると、照れくさそうに言葉を継いだ。
「あの郷から、何やら懐かしい匂いがしたせいかもしれんせんね」
***
ヤマトの民の生活が落ち着いた頃、テルマエの建設が始まった。
「お湯はどうするんでありんすか? 良ければ、アチキの隠し湯から引いてこられたらいかがでありんしょう」
バベルの滝の上流――
水流が流れ落ちる部分より先に、緋魅狐の隠し湯があるという。
湯量豊富な源泉から水路橋で城下までお湯を引っ張ってくることにした。
建築方面の現場責任者、ドワーフのビコによると、火属性の魔石を複数使えば、途中で熱が奪われる心配はないということだった。
「魔王様、城にも温泉を引く必要があるが、どんな施設を造ればいい?」
「ん? 俺や幹部連中の部屋には浴室があるし、1階には大浴場だってある。工事が大変だし、必要ないだろ」
ビコは首を横に振った。
「城には存在しない温泉施設を、城下の者が気兼ねなく利用できるとでも?」
……魔王城に、展望風呂ができた。
忙しい中、余計な仕事をさせてしまったことを申し訳なく思いつつ、ありがたく入らせてもらう。
最高だった!
「やっぱり、温泉は落ち着くなぁ~」
「うむ。悪くないのぉ~」
「景色を眺めながら湯浴みするというのは初めてですが、癒されますわぁ~」
「緋魅狐、なぜボクたちに温泉の存在を教えてくれなかったのさ? ズルイ!」
「皆が温泉を好きだなんて知らのうござりんしたよ。悪うござりんしたね~」
「うわぁああああああああ! ここは男湯だぞ。なんでオマエたちがいるんだ? ……ってか、いつ入ってきた!?」
「堅苦しいことは言いっこなしじゃ~」
「魔王様が湯浴み中に襲われでもしたら大変ですわぁ~。わたくしたちは警護のため、ここにいるのですぅ~」
「サタンくん、ボクが背中を流してあげようか?」
「アチキは前の方を担当させてもらいんしょう」
「「「このビッチが!!!」」」
リリス、アモン、ロキアが緋魅狐に詰め寄った。
「俺は先に上がるわ。出来たばかりの展望風呂、壊すなよ」
俺は逃げるように展望風呂を後にした。
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