ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

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第2章 

24.勇者・星野碧②

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【アルニラム神皇国・カポネ公爵の荘園】

 全身を紫色の粘液に包んだ巨大なワームが、家畜を丸呑みにした。

「アオイ殿、あの粘液には注意してください。触れただけで、全身が麻痺して動けなくなります。口からも同じ毒を吐きます!」
 討伐隊のリーダー、ニックは大声で言うと剣を抜き、碧いの前に立った。
「我等が奴の注意をひきます。アオイ殿は、隙を見て攻撃を!」

 ニックに続き、2人の騎士もポイズンワームに向かって駆け出した。

 碧に注意が向かないよう、3人は巧みに立ち回る。

「うわぁああああああああ!」

 一番若い騎士が、ポイズンワームの吐いた毒を浴びて倒れた。

「マイケルさん!」

 倒れた騎士の元へ行こうとする碧を、後方に控えていた年嵩としかさの騎士が制した。

「いまマイケルの所へ向かうのは危険です! あの毒ならポーションで解毒できる」

「でも、マイケルさんが……」

「大丈夫! ニックとエディを信じてください!」

 マイケルを捕食しようとするポイズンワームの背後から、ニックとエディが斬りかかる。

「グゥワアアアァァァ!!」

 巨体をうねらせ、ポイズンワームはヤツメウナギのような口をニックとエディに向けた。

「今です、アオイ殿!」

 カールの言葉を聞く前に、碧は動いていた。
 瞬間移動したのかと思えるほどの速さでモンスターに近づくと、聖剣を真一文字に払った。

「グゥッギャギャギャギャアアアアア!!!」

 真っ二つに胴体を切断されたポイズンワームは断末魔の咆哮をあげて、のたうち回り、やがて静かに動きを止めた。


  ***


「魔獣の討伐っていうのは、冒険者さんのお仕事だと思っていました」

 荘園の管理人の屋敷で、豪華な食事に舌鼓を打ちながら碧は言った。

「もちろん冒険者も行います。ですが国の脅威になりうる存在の排除、緊急を要する案件などには騎士団が動きます。冒険者ギルドを通していては、手遅れになることもありますから」
 と、ニック。

「あと、アストレア教団からの依頼もね。あのクソ教団、貴族からの依頼を次から次へと騎士団に押し付けやがる。いい加減、うんざりだ!」
 ワインを鯨飲しているエディの顔は、すでに真っ赤だ。

 碧は聞こえないふりをした。

「やめろ、エディ。アオイ殿が困っておられる」
 美しい所作で料理を口に運んでいたカールが手を止め、諭すように言った。

「へいへい……。だけどアンタも大変だよな。突然、自分のいた世界とは別の世界に連れてこられちまって」

「まあ私は一度死んで、新しい生を与えてもらったわけですから、それだけでもありがたく思ってます」

「……ったく、どこまでお人好しなんだよ、アンタは! いいか? アンタはアストレア教団に利用されようとしてるかもしれないんだぞ」

「どういう意味でしょう?」

「……そもそも新魔王ってヤツは本当に誕生したのか?」

「エディ、もうそのへんにしておけ!」
 ニックが険しい表情で釘を刺す。

「いいや、やめないね。考えてもみろよ。魔王が誕生して、しばらく経つが、魔族の動きは活発化していない。今日のポイズンワームにしたって、よくいる魔物だ。特別な個体でもなけりゃ、大群が発生したってわけでもない。一部では、『魔王の誕生は、教団が自分たちの悪評を有耶無耶にするために流したデマじゃないか』という噂さえある」

「……そういえば、新魔王の誕生が発表されて以来、アストレア教団についての陰口が耳に入らなくなりましたね。街をパトロールしていても、聞こえてくるのは、『魔族がいつ攻めてくるのか?』という話ばかりです」

 ポーションが効いたのだろう。
 マイケルは、すっかり元気になっていた。

「いい加減にしろ! それ以上、妄言を重ねるなら上に報告せざるを得なくなるぞ!」
 ニックが声を荒げて、テーブルを両手で叩いた。

「な、なにか不都合がございましたでしょうか?」
 メイドが数人、大慌てて部屋に入ってきた。
 可哀そうになるくらい、青い顔をしている。

「なんでもない、騒いだりして悪かった。ちょっと仕事の話で盛り上がってしまってね」

 ニックが穏やかな声で言うと、メイドたちはホッとしたように息を吐いた。

 何事もなかったように食事は再開されたが、碧いの胸には黒い霧のような、モヤモヤとした思いが残った。
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