ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

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第2章 

36.勇者来訪②

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 俺は緋魅狐を連れて、勇者パーティーの後方10メートルくらいの場所に転移した。

「こんにちは。遠路はるばる、ようこそ」
 俺が声をかけると、勇者パーティーはビクリと身体を震わせて振り返った。

「こ、こんにちは……あなた達は一体……?」
 困惑しながら碧が問う。

 護衛の騎士たちの全身からは、ヒリヒリするような緊張が伝わってきた。

『緋魅狐、もしも騎士たちが向かってきても、何もするな。攻撃は防御魔法で全て俺が防ぐ』
 念話で緋魅狐に伝えると、
『心得ておりんす』
 という返事が返ってきた。

「はじめまして。私の名前は佐丹龍之介。当代の魔王です。後ろに控えし者は、私が最も信頼を寄せる部下の一人、緋魅狐と申します。以後、お見知りおきを」

「龍之介!? もしかして、あなたも召喚されて、この世界にやってきたの?」

「その通り。あなたと同じ日本人ですよ。勇者としてではなく、魔王として召喚されましたけどね」
 俺は苦笑した。
「さて、そろそろ馬から降りられてはいかがですか? 長旅でお疲れでしょう。お茶でも飲んで一息いれてください。話はそれからでも遅くはないでしょう」

 俺は魔法陣を展開し、あらかじめ用意しておいた緋色の敷物と野点傘、そして茶道具を転移させた。
 
 正座の習慣がない騎士たちが腰を下ろせるように、緋色の布を掛けた縁台も2つ用意している。

 緋魅狐は敷物の上に置かれた茶道具の前に移動すると、優雅な所作で抹茶を立て始めた。

「うわ~、野点だ~! ドラマや漫画の中では目にしたことがあるけど、本物を見たのは初めてです!」
 碧は手を叩き、はしゃいだ声で言うと、騎士の方を向いた。
「ニック、エディ、カール、マイケル……龍之介さんが別の世界から来たっていうのは本当だよ! これは野点という屋外で催されるお茶会で、私がいた異世界の日本という国の文化なの。私たちを騙そうとして、準備できるものではないって断言できる!」

「縁台に座って楽にしていてください。すぐにお茶と菓子を用意させます」

 再び転移魔法陣を発動させ、ヤマトの民の少女、鞠子を給仕として呼び寄せた。

 当初11名だったヤマトの民は、現在300人以上になっている。 
 ジャングリラでの生活の快適さを知った技術指導者たちが、郷で暮す人々も受け入れて欲しいと願い出て、俺が許可した結果だ。 
 野点の道具はヤマトの民が用意してくれた物である。

「お初にお目にかかります。鞠子と申します。本日の茶菓子は『いちご大福』となっております」

 着物姿の鞠子は勇者パーティーに挨拶すると、いちご大福と緋魅狐が点てた抹茶を運んだ。

「作法とかは気にせず楽しんでください。……実は、私もよく知らないのですよ」 
 俺は笑った。

「初めて飲むお茶だが、美味いな。軽い苦味の後に甘味が広がり、後味はすっきりしている」

「ベリーを丸ごと包み込んだ、このスイーツも絶品です。甘みと酸味が見事に調和しています」

 エディとマイケルが感想を口にする。

「信じられない! いちご大福がもう一度食べられるだなんて……」

 懐かしい味に出会えて感動したのか、碧は涙ぐんでいた。


  ***


「――なるほど。サタン殿が異世界から召喚された理由は、世界を滅ぼすためではなく、魔族の生活を向上させるためだと……」

 俺の話を聞き終えると、ニックは言った。

「では、アルニラム神皇国で起こっている出来については、どう説明されるおつもりですか?」

「堅苦しいのは苦手だから、フランクに話させてもらう。冤罪だ。逆に問うが、我々が貴国で暗躍しなければならない理由とは何だ?」

「土地や資源を獲得するためではないのですか? 『人間の国は肥沃な土地や豊かな資源を有しているのに対して、魔族の領土は痩せていて資源も少ない。故に、魔族は人間の国を奪おうとしている』と教えられてきましたが……」
 マイケルが恐る恐る口にした。

「百聞は一見にしかず、だな。我々の生活を見てもらえれば、人間の国に侵攻する理由がないことを理解してもらえると思う」

 魔王城で待機するリリスに、今から勇者パーティーを連れて城塞の中に移動する旨を伝えた。

『想定内の展開になっておるようじゃの。もしもの時に備えての警備体制に抜かりはない。憂いなく、どこへでも案内せい』

 俺は転移魔法陣を展開し、ルシフェルに皆を連れて移動した。
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