ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

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第2章 

44.愛しき魔族たちに乾杯!

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「――改めて、アルニラム神皇国との調印式、ご苦労さまじゃった。無事に不可侵条約が結ばれたようで、なによりじゃ。実に、めでたい!」

 魔王城の大広間に設けた宴席、リリスはそう言って俺とグラスを合わせた。
 チンッと涼やかな音が響いた。

 帝城にメフィストフェレスと乗り込んでから7日後の今日、俺はアルニラム神皇国を再び訪問し、正式に2国間の不可侵条約を締結した。
 合意文書は政治にも強いリリスが作成。
 アルニラム神皇国側は無条件にこれを受諾し、アレキサンドル皇帝が署名した。
  
 ロキアはケーキバイキングみたいに、様々な種類のケーキを楽しんでいる。

 緋魅狐は油揚げに夢中になっていた。

 海洋都市国家アルデバランと関係ができたことで、“にがり”が手に入るようになった。
 緋魅狐が喜ぶだろうとヤマトの民に渡し、油揚げを作るよう指示したところ、
「なんでしょう、それは……?」 
 と困惑された。
 豆腐、そして豆腐から油揚げを作る方法を教え、緋魅狐に献上させたところ、
「な、なんでありんすか、これは……!」 
 一口かじった緋魅狐は、文字どおり悶絶した。
 現在、ヤマトの民は緋魅狐のために毎日、油揚げを作っている。

 ワイングラスを手にしたアモンは、アルニラム神皇国に帯同した龍人やリザードマンに囲まれていた。

 魔都ルシフェルは祝賀ムードに包まれている。

 魔王城の広場や庭園は市民に開放し、酒や料理を提供。 
 大いに賑わっている。

 城内に入りきれなかった市民たちは、街の様々な通りで酒や料理を持ち寄り、歌ったり踊ったりのストリートパーティーを繰り広げているそうだ。
 後で最上級の酒を樽ごと届けさせよう。

 国境防衛都市マルスも同じような状況らしい。

 最前線で、いつも緊張を強いられているガーディアンたちも、今日くらいはハメを外してほしい。

 気の荒い連中が多いから、酔っぱらって喧嘩とか始めなければいいのだけれど……。

 まあ、バフォメットや大鬼最強の武士もののふカゲトラもいることだし、大丈夫だろう。

「魔王様、本日は我々もこのような席にお招きいただき、恐悦至極に存じます」

 アモンに連れられて龍人の代表・炎龍アルセウスが挨拶に訪れた。

「よく来てくれた! アモン、龍人、リザードマンのおかげで無駄な血を流すことなく目的を達成できた。本当にありがとう!」

 あらかじめ打ち合わせていた通りに、俺が転移魔法を発動させたら間髪を入れず、アルニラム神皇国に来てくれた。
 タイミングが遅ければ、壁をぶち抜いたものの外には誰もいないという間の抜けた光景があったはずで、その後の展開も違っていただろう。

 加えて、人間に対してはそれぞれ思うところがあっただろうに、攻撃は行わず、じっと我慢してくれていた。
 感謝しかない。

「もったいなさすぎるお言葉……私は……私は……」 
 感に堪えないといった感じでフリーズしている。

「さあ、堅苦しいのはここまでにして、酒や料理を存分に楽しんでくれ! みんなにも俺からの感謝の言葉を伝えておくように」

 アルセウスは、
幸甚こうじんの至りです」 
 と、右足を引きながら右手を体に添え、左手を横方向へ差し出すようにして深くお辞儀をした。

「それはそうと、ナアマの姿が見当たりませんね?」
 会場内を見回して、アモンが首をかしげる。

「当分、アルニラム神皇国に留まるそうだ。政治的に不安定だし、状況が急変する可能性もあるから、自ら志願してくれたのは本当、助かる!」

 もっとも、ナアマが残りたがった理由は別にあって……。

 不可侵条約を結んだ結果、碧は勇者の任を解かれた。
 アルニラム神皇国が魔王を討伐する必要がなくなったからだ。
 現在、碧は孤児院で子供たちの面倒を見ており、剣を握っていた時よりもずっと楽しそうにしているという。

 近々、皇国騎士のエディと結婚するかも……とはナアマの予想。
 2人の恋の行方を見届けたいらしい。

(しかし、種族は違えど、女の人ってこういう話が好きだよなぁ~)

「サタンよ、なにが可笑しい?」 
 リリスが不思議そうな顔をする。

「馬ッ鹿だな~、リリスは。サタンくんは、全てが思惑どおりに進んでいることが嬉しくて、ついつい笑みがこぼれちゃったのさ! やっぱり、ボクの方がサタンくんを理解しているよね」

(いや、ロキアさん……全然ちがうんですけど!)

「これまで何人かの魔王様に仕えてきましたが、今が一番幸福しあわせです」 
 アモンが言った。

 ちょっと照れる。

「魔王様は、アチキのために《油揚げ》なる世界一美味なるものを、作っておくんなんした。これはプロポーズと考えてようござんすね? 不束者ふつつかものでありんすが、よろしゅうお願いしんす」

「「「「どうして、そうなる!!!!」」」」

 俺、リリス、ロキア、アモンの声がユニゾンでこだました。

 緋魅狐を囲むようにして、リリスとロキアとアモンが、わいわい騒いでいる。
 4人で、わちゃわちゃしている姿は、魔族というよりコスプレで盛り上がる仲良しのJKグループみたいだ。

 別の笑いが込み上げてきた。

「リリス、ロキア、緋魅狐、アモン――」

 4人がピタリと動きを止める。

「ジャングリラの未来のために、これからもよろしく頼む!」

「「「「魔王様の御心のままに!!!!」」」」

 俺は軽くグラスを掲げた。

「我が愛しき魔族たちに乾杯!」
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