生きるのが下手すぎる僕と電柱

ROOM

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床に叩きつけ粉々になったグラス。
それを更に踏みつけ流れる血を拭う、痛みは無い。
自暴自棄に陥ることには慣れていた。

今回の自暴自棄はバイトを辞めたことで発症した。
バイト先は責めれない、勤務態度の悪さやミスを頻発した自分のせいだからだ。

せめて勤務態度でも良くしろと、何度言われたことか。
笑顔を作ろうにも自分の不甲斐なさや周りの仕事ができる奴らとの劣等感で上手く笑えない。

嫌がらせを受けた上で辞めるなら、自分を責めることは無いが、今回も今までのトラウマも全ては自分が悪い。

気づけば謝っても許されない所までいってしまっている。

礼儀正しく、愛想良く。
出来ない自分にイライラしてこんなことすら出来ない。
迷惑かけた事が起因となりさらに迷惑をかけてしまう。

「いっそ死んでしまおうか」

迷惑をかけるのはこれで最後、ズルズルと迷惑をかけながら生きたくはなかった。


手頃なネクタイを手に家を出る。

「うわ~、めっちゃ天気いいじゃん...」

季節は春へと移り変わろうとしており、ちらほら咲き始めた桜や心地のいいそよ風が肌を撫でる。

が、心が落ち着くことはなくむしろ死ぬ事で自分から逃げるなと言われているような気がした。

「死ぬなら人がいない所がいいな、誰にも見つからずに骨になれるところ...」

車に乗りこみ目についた山へ向かうことにする、自然と一体化して死ぬ。
何だかとってもロマンチックではないか。

そう思い車を走らせているとなんだか気持ちが楽になってきた。
これでやっと他人に迷惑をかけてばかりの人生を終わらせることができる。

山に着くともう夕方、夜になる前に死んでしまいたかった僕は急いで山の中へと入っていく。

山の中は足場が悪く、草や枝で足や手ヅダヅダにしながら進んでいった。

「よし、ここなら誰も来ないだろう」

かぁ~かぁ~。

「なんだあのカラス、僕が死ぬのを待っているのかな?」

鳥葬という言葉を思い出した。

「僕の死体を食べて生き延びてね」

ぎしっと軋む音を立てて首を吊る。
目の前が真っ暗になり宙に揺られる。

ああ、やっと...、開放される...



「きぁあああああああああ!!!!あなた!!人が!!」
聞きたくない人の声が耳に入る。

まさか、こんな所に人が!?

「君!!大丈夫か!!」

結局僕は登山客に助けられた。

「よかった...生きてるぞ...」

見ず知らずの男に抱き抱えられながら僕はわんわん泣いた。

「よ~しよし、もう大丈夫だ、もう死ぬなんて思うなよ、よ~しよし」

僕の人生の何を知っているだ、この人は。

「うわああああああんうわあああああん」

「よ~しよし、よ~しよし」

僕は、また迷惑をかけてしまっていることに泣いているのだ。

「ごめんなさいいい、ごめんなさいいい」

僕がこんなことをしなければ、この人達は楽しい登山をできていたはずだ。

「うわああああああんうわああああん」

包容力のある腕の中、僕は山の中夜通し泣き続けた。
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