生きるのが下手すぎる僕と電柱

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散歩

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平日昼間の散歩。
道にはおじいちゃんやおばちゃんしかおらず、穏やかで緩やかな空気が漂っている。

なぜ散歩をしているのか、それは圧倒的希死念慮から逃げるため。
部屋の中に閉じこもっていると積もりに積もった鬱が爆発し、いつ自殺してもおかしくない状況まで追い込まれてしまう。

外の世界はそんな僕のことなんかつゆ知らず、淡々と時間だけが過ぎてゆく。

哲学者でもないのに生きる意味などを考えながら歩いていると、ふと老人に話しかけられた。

「お兄さん、靴紐がほどけているよ」

言われるまでもなくほどけていることには気づいていたが、愛想良く礼を言い靴紐を結び直す。

あの老人は気楽でいい、靴紐の事なんかどうでも良くなるくらいに追い込まれてはいないのだろう。

年の功とでも言えばいいのだろうか。
僕からすると、あと数年で死ねる老人が羨ましい。
こんなこと考えるのは失礼か?

綺麗な蝶蝶結びを作り上げ顔を上げると、老人がまだこちらを微笑みながら見ていた。

「お兄さん、なんかえらい考え込んでるけどもやな、この歳まで生きてみぃ、ど~でもよくなるから、とりあえず、生きてみぃ」

そう言って立ち去る老人からは鬱の気配が全くない。

...

散歩の途中にまさか悟りの言葉を言われるとは。

多少気分が楽になった気がしないでもない。

「僕が老人になるまであと何年だ?」

...

考えてみて、また鬱になった。
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