君は優しい見習い魔女様

笹本茜

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魔女見習いルラの『なんでも屋』

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 川へとダイブしてからルラは我に返り、慌てる。
ルラは泳げないのだ。
 
「うわあん、ジンくん助けて下さいぃ~」

 ルラは水の中に沈みながら助けを求めた。

「はあ……だから、考えなしの行動をするなとっ……!」

 ジンはその様子に呆れながら、引き上げようと川へと入る。

「いつも言ってるだろう。まずは落ち着くんだよ」

 出来るだけ優しい口調でジンは言ってくれる。
 パニックを起こさないように注意してくれているのだろう。

「ごめんなさい」

 浅瀬へと引き上げてもらう。
 足がつき、安心する。
 まだ少し水の流れで不安定だが、先程までの怖さはない。
 
「ふう、助かりましたジンくん」
「言わんこっちゃない」
「いや、いつも迷惑かけてしまい申し訳ありません!本当にありがとうございます!」
「はあ、今更だ。別に構わねぇよ」

 ルラは水から上がりベチャベチャと全身から水滴を流している。
 濡れていることも気にせず、呑気に謝った。
 ジンは全身水浸しで謝る呑気さに呆れた様な顔をする。
 溜息を吐き出しながらもルラの全身に風魔法を使い、水浸しな身体を乾かしてくれる。

「ありがとうございます!ジンくん」

 笑顔でお礼を言うと、ジンは眩しそうに目を細めて微笑んだ。
 その顔に少しドキリとする。

「手紙は見つかったものの、水浸しになってインクが滲んでいるな」

 風魔法を使ったおかげで手紙は乾いた。
 が、その中身は内容がほとんど分からない程にインクが滲んでしまっている。


「こちらの手紙が探しものでしょうか……」
「ああ、それだよ!」
「す、すみません。ジンくんが乾かしてくれたんですが、川に落ちてしまって、内容が分かんなくなってしまったんです」
「ああ、それなら大丈夫さ! その手紙の内容は一語一句、覚えているから」
 
 依頼してくれた男子生徒はニコニコとアンバーの瞳を細めて笑う。
 何故か背筋が寒くなったように気がした。

「そ、そうなんですね。でも、それなら何故お探しに?」
「手紙を貰った、という事実が欲しいんだ」
「なるほど……」
「改めて、手紙を探し出してくれてありがとう」

 ルラとジン、それぞれにお礼を言うと男子生徒はそそくさと校舎の方へと帰っていった。
 誰かと待ち合わせをしているらしい。

「魔法科の校舎には居なかったから、騎士科に行こう」

 2人はフィフィ探しを再開させる。
 学園には魔法科の他に官吏科や教養科、騎士科があり、それぞれ別の校舎が設けられている。
 コールド"魔法"学園とあるが、魔法以外も学べるのだ。
 
「騎士科ですか」

 ルラは騎士科が苦手だ。会いたくない者がそこにいるから。
 あまり気乗りしないがフィフィを探すため、と騎士科へと向かうジンの後ろを付いていく。
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