君は優しい見習い魔女様

笹本茜

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魔女見習いルラの『なんでも屋』

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「フィフィ様、見つかりませんね……」
「放課後になっちまったな」

 授業の合間にある休憩時間を利用して、フィオーラの使い魔・フィフィを探していると、いつの間にか放課後だ。
 すぐに見つけ出すと、フィオーラに言ったが未だに見つかっていない。
 今日中には見つけ出したいと探している。
 しかし、使い魔探しは意外と苦戦していた。
 
「あっ、君は『なんでも屋』のルラかい?」
「はい! 『なんでも屋』をやっているルラとその助手のジンくんです!」
「……はい」

 フィフィの居所で頭を悩ませていると、前からやってきた男子生徒に声をかけられる。
 大方、『なんでも屋』への依頼であろう。
 依頼人には愛想よく、元気に挨拶するべきだ。
 しかし、ジンは相変わらず無愛想にペコリとお辞儀をするだけである。
 これはいつもの事なので仕方がない、代わりにルラが倍にして元気よくすればいいだろう。
 
「依頼をしたいんだが、頼めるか?」
「はい、大丈夫ですよ! どのような依頼でしょうか?」
 
 ジンは呆れたような顔でルラを見つめるが、無視する。
 依頼を断るという選択肢はルラには無いのだ。
 それが『なんでも屋』の意地というもの。
 
「それが、先程、川辺で休んでいたときに大事な手紙を無くしてしまったようで、探すのを手伝って頂きたいんだ」
「お手紙探しですね! 私達も手伝います!」
「ありがとう!助かるよ」
「いえ、困っている人を助けるのが、『なんでも屋』の仕事なので」
「ハァ」

 ルラにしか聞こえない程度にため息をつくジン。
 チラッと伺うが、不満を言う事はなかった。
 それを了承と、勝手にとらえたルラは早速、広大な学園の敷地にある川辺へと向かう。



 川辺は意外と広い。
 風に飛ばされたりしていたら、一人で見つけるのは至難の業だ。
 
「昼食休憩のときに、ここら辺で寝ていてね、落としたことに気付いたのはさっきなんだ。探しても探しても無くってね……誰かに手伝ってもらおうと思っていた所に丁度、君らが居てお願いしちゃったんだ。申し訳ないね……」
「いえいえ、お気になさらず! 大事な手紙ですもの、早く見つけちゃいましょう! 手分けして探したほうが早いと思うので、私達は川辺の近くで探しますね」
「ああ、よろしく頼むよ」
「さあ! ジンくん、行きましょう」
「ハイハイ」



 ルラとジンは川の近くへとやってきた。
 川辺の地面に中腰で座り、草を掻き分けながら探している。

「ここにフィフィ様はいらっしゃるかしら?」
「フィフィ様は水が苦手なんじゃないのか? 使い魔だとしても、猫型だからな」
「なるほど~そうかもしれませんね」

 使い魔には色々種類がいて、フィオーラの使い魔フィフィのようなネコ科と動物を「猫型」、イヌ科の動物を「犬型」、羽を持つ動物を「鳥型」などと呼んでいる。
 その他にも「ヘビ型」など色々といるのだ。

「ところで、手紙ってどんなのだ?」
「あっ、聞くの忘れてました!」

 早く見つけてあげたいという思いが先行しすぎていて、大事なことを聞けていなかった。
 
「私、聞いてきま、うっ、わぁっ」

 聞きに行こうと腰を浮かし、立ち上がる。
 すると、ルラの近くに鳥型の使い魔がやってきた。
 使い魔の羽ばたきで風が起こり、結んでいない髪が舞い上がる。

「おい、ルラ。アイツ、手紙を加えてるぞ!」

 鳥型の使い魔の口元をよく見ると、手紙がくわえられていた。

「きっと、あれですよ! 捕まえなきゃ!」
「待って! 危ないぞ」

 ジンの静止を無視して、ルラは使い魔の方へと駆けていった。

「使い魔さん! 手紙を返して下さい! 大事なものなんです。あっ」

 あと数センチで手紙に手が届くというところで、使い魔は口から手紙を離した。

「手紙がっ!」

 使い魔は羽ばたき、空へと飛び上がる。
 その拍子で手紙は川の方へと飛ばされてしまった。
 ルラは少しの躊躇いもなく川へと飛び込んだ。

「ルラっ」

 ルラに手を伸ばしたジンだが、一歩間に合わなかった。
 ルラはそのまま川へとダイブ。
 流された手紙を必死に思いで掴む。
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