君は優しい見習い魔女様

笹本茜

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魔女見習いルラの『なんでも屋』

1-6

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 騎士科には大きな訓練場があり、放課後でも残って練習している生徒がチラホラと見える。

「ここにフィフィ様は居るんでしょうか?」
「探してみなきゃ分かんないだろ」
「そ、そうですけど……」
「大丈夫だ。アイツは騎士科の先生が連れているから放課後には居ないよ」
「本当ですか……?」
「ああ、騎士科の先生は殆ど現役騎士だからな。授業が終わったら、仕事に戻っているし」
「それなら、大丈夫ですね!」

 やっと元気を取り戻したルラは、しがみ付くようにピッタリと張り付いていたジンの背中から離れる。
 いつもどおり元気よく歩き出す。

「さあ、行きましょう!ジンくん」
「ワンッ」
「ひえぇっ」

 ルラの言葉に対して代わりに返事したのは、犬型の使い魔であり、この騎士科で可愛がられているドゥルだった。
 使い魔の主である騎士が今日に限って放課後まで残っているのだろう。
 騎士科の生徒たちの鍛練をみているに違いない。

「じ、ジンくんの嘘つき~!」

 ルラは恐怖のあまり、全速力で駆け出す。
 その後ろを遊んで欲しくてたまらないというように尻尾を大きく振る犬型使い魔のドゥルが追いかける。
 使い魔が好きなルラだが、犬型だけはどうしても苦手なのだ。

「うわああん、助けてください! ジンくん~」
「待て! お前がそんなに走るから、追いかけられるんだぞ」
「ワンッ」

 止まれ! というジンの声をもはや聞こえず、ルラは無我夢中で走り続ける。
 すると、目の前からやってきた男性に声をかけられる。

「うああん~」
「丁度良いところに! ルラさーん!」
「し、司書様ぁ!!」

 ルラは男性のところまで駆けていくと、背中の方へと回り込んだ。
 ドゥルの盾にするため、ガッシリと背中にかかるローブを掴む。

「助けてください!」
「いいよ、その代わり……お願いを聞いてくれるかい?」
「はい! ききます! お願いします!」

 向こうからはルラを追いかけているドゥルの姿と、さらに後ろからジンが追いかけている姿が見える。
 男性はジンに手をふると、ドゥルの方へと歩いていき、その大きな体を持ち上げた。

「怖がる女の子を追いかけちゃダメだよ! 今度は主と一緒に来てね」

 そして、お得意の転移魔法を使う。
 司書はこの学園の出身であり、大魔法使いになると期待されていたお方だ。
 しかし、当の本人は本が好きだから、という理由で司書になっている。
 大魔法使いになると期待されていただけあって、普通ならポンポン使えない転移魔法も気軽に使っている。

「約束通りお願い、聞いてくれるね?」
「は、はい」

 なんだか、悪い取り引きをしてしまった様な気分になるルラ。
 追いついたジンは苦虫を噛み潰したよう顔になっている。
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