最近、婚約者の様子がおかしい〜「運命の相手はヒロインなの」と別の娘をすすめてくるのですが?〜

笹本茜

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本編

1話

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 僕はアベール公爵家の次男フランツだ。
 僕には悩みがある。
 
 それは……
 最近、婚約者の様子がおかしいこと。

「僕の知らない娘と会っているようだし」
「いや、怖えよ。何でそこまで把握してんだよ」
「当たり前だろ! クラーラのことなら知らない事はない」
「当たり前じゃないんだけどな……」
「お前は相変わらずだな、フランツ」
「ただただ怖え」

 幼少期からの友人である3人が頭のおかしい奴を見るような目で僕を見る。
 
 僕は己の婚約者であるバルテル伯爵ご令嬢クラーラを愛している。
 やりすぎだと思われても、知らないと不安で仕方ないのだ。

 現在、クラーラは友人達とお茶会をしている。
 そこに偶然を装い、彼女が見える廊下を通っている最中だ。
 彼女からも見える位置を歩く。
 出来るだけゆっくりと歩き、横目でクラーラを堪能する。

「お茶に誘っても、10回に1回は断られるんだ」
「いや、それくらいなら普通だろ」
「今日みたいに友人との交流もあるだろうし?」
「それは配慮している。誘う日はきちんと考えているぞ」
「そこも把握しているんだね」
「当たり前だ! だからこそ、断られる理由がない」

 断られるようになったのは丁度、僕の知らない令嬢と会うようになった頃だ。
 最初は気になる程度だった。
 が、日に日に頻度が増して行き、今では毎日のようにその令嬢の話を聞く始末。
 
 その度に心臓が締め付けられるように痛む。
 これは嫉妬だと理解しているが、どうしようもない。
 だからと言って、問い詰めるわけにもいかない。
 そんなことをすれば嫌われてしまうかもしれないからだ。
 そんなことは絶対に嫌だ。
 だがしかし……。

 僕はクラーラを愛おしく思いながら、友人とお茶会をしている彼女を見つめた。
 すると、彼女はこちらに気付き微笑んでくれる。
 ああ、好きだ。好きで好きで堪らない。
 この気持ちを余すことなく伝えることができればどれほど楽か……。

「クラーラ、なんて愛おしい……」
「ああ、自分の世界に入ってしまったね」
「こんな奴の婚約者なんてバルテル嬢も大変だな」
「廊下のど真ん中で立ち止まってはいけないよ、フランツ」

 3人の声を聞きながらも彼女の笑顔に見惚れていた。
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