さよならの代わりに

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再会

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柚月と総司は急いで体育館へと向かった。

体育館に入ると、床に遺体が綺麗に並べられており、側で泣く人達も居た。

身内に連絡がつかないのか、いくつかの遺体がポツンと孤独に佇んでいた。

「お名前を頂戴してもよろしいですか?」

と案内の人に声をかけられ、名前を告げる。
すると案内の人は淡々とある場所へと案内する。

「こちらがそうです、ご確認下さい」

そう言って一人の遺体の元へたどり着いた。

総司は恐る恐る遺体の入っている袋へ手を伸ばした。
ゆっくりとチャックを開き、袋をめくった。

後ろで立っていた柚月が息を呑むのがわかった。
袋の中に居たのは紛れもなく葉月だった。

「なんで・・・・?どうしてお姉ちゃんが・・・・」

柚月はそう呟くのがやっとだった。
総司も何も言えなかった。

話を聞くと、商業施設の地下で生き埋めになってしまったらしい。
そして葉月が持っていた物を確認してほしいと言われ、柚月は確認した。
間違いなく姉の物だった。
ただ、2つだけ見慣れないものがあった。
一つはメモの切れ端、そしてもう一つはブランドショップの紙袋に入っていた。

袋から小さな箱を取り出し、蓋を開ける。
するとそこには指輪が入っていた。

「指輪?一体誰に?」

と総司が疑問を声に出した。
柚月はそれが誰宛への指輪なのかすぐに理解できた。
何も言わずそっと総司に指輪を渡した。


「え?俺の?」

ケースから指輪をとり、指にはめてみる。
するとサイズは総司にぴったりだったのだ。

はめた途端、総司は理解した。
葉月はあの日、夫婦としてやり残した事をしようとしていたのだ。

それはプロポーズだ、葉月はあの日、指輪を取りに行っていたのだろう。

けれど、地震に巻き込まれて命を落としてしまった。
そして急遽、入院していた総司の元と柚月の元へ化けて出たのだ。

信じられない事だがそうとしか説明ができない。
プロポーズは柚月も総司も予想外だったが、葉月が亡くなったという最悪の予想は的中してしまったのだ。

そして、夢でごめんねと言っていたのは、直接プロポーズができなかった事、思いを伝える事ができなかったことを侘びていたのだろう。

詫びる必要は無かった、葉月に落ち度はなかったのだ。
俺がちゃんとプロポーズをしていたなら、葉月は指輪を買う必要もなかった、そして今も生きていたはずだったのだ。

悔やんでも葉月は帰ってこない、その現実を受け入れられなかった総司は思わず泣いてしまった。

そんな総司の後ろを、他の遺族が家族との再会を果たすべく走って通り過ぎていく、その表紙に総司に肩をぶつけてしまい、総司はその場に転倒してしまった。

ぶつかった人はすいませんと気力のない声で謝ると床に眠る家族の元へと去っていった。

転倒する最中、総司は前にも誰かに押された事を思い出していた。

いつだったか、そうだ、あれは地震の当日、記憶を失う直前だ。

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