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「葉月のやるべき事って、もしかして俺の記憶を取り戻すために、メモとこのアルバムを用意してくれてたのかな?」
緑地公園のいつものベンチで総司は柚月に聞いてみた。
「そうかもしれないね、だってメモが私達を導いてるってことはきっとそうなんだろうね。
でも、お姉ちゃんは地震の日に亡くなったのにどうやったんだろ」
「世の中には説明の付かない事が溢れるほどあるからな、きっと今回も考えても無駄だ。
葉月がやったって事がわかってるならそれだけで十分だ。
俺達は葉月の最後の思いを辿って、受け止めなければならない。
だから、今は葉月の跡を追いかけるしかない」
そう言って、総司はアルバムの2ページを開いた。
そこには、葉月と総司が二人、夜の公園のベンチで撮った写真が入っていた。
------------------------------------------------------
「お姉ちゃんごはんだよ」
葉月の部屋の扉から顔をのぞかせて柚月は言った。
「いらない」
ベットで横になり、柚月に背を向けたまま言った。
その声は落ち込んでいる様な暗い声だった。
柚月は少し、姉の様子を伺うように無言で立ちすくんでいた。
「わかった」
夕食を食べ終わり、時刻は21時を回っていた。
お風呂に入ろうと柚月は着替えを取りに席をたった。
すると一本の電話がかかってきた。
母が受話器を取り、対応していた。
盗み聞きするつもりはなかったのだが、聞こえてくる声色を聞く限り、あまりいい話題ではないということが分かる。
母の後ろを通り過ぎ、風呂場へ向かおうとした時、母に呼び止められた。
「柚月、奥村くんがまだ家に帰ってないみたいだけど何か知らない?」
「そうちゃんが?私は知らないけど」
柚月は思い当たりそうな事を考えてみたけど、どれも違う気がしていた。
総司は部活をしているが流石に21時を過ぎることは無いだろう。
友達と夜遊びもしないだろうし。
この時、柚月はある事が引っかかった。
さっきの姉の様子を考えると、もしかして総司と何かあったのではないだろうか?
そうだとしたら総司もきっと暗い気持ちになっていて外で気を紛らわせているのかもしれない。
総司がいつも心を癒やす場所と言ったらあそこしか思い当たらなかった。
柚月は急いで、玄関へ向かった。
「お母さん、多分そうちゃんの場所わかったから言ってくる」
母がちょっと待ちなさいと呼び止める声を背中に受けたが、柚月は迷わず家を飛び出した。
きっと、公園に居るはずだ。
間違いない。
今頃一人で寂しい思いをしてるんじゃないだろうか?
姉と何があったのだろうか?
柚月は心配で早歩きになっていた。
好きな人が、辛い思いをしていると自分も同じように辛い気持ちになる。
柚月は今、総司と姉の事情はわからないが心が辛かった。
それはきっと総司の気持ちも辛いからだろう。
心はどんどん重たく、そしてズキズキと痛くなってくる。
柚月はついに走り出した。
そうちゃん待ってて、今行くから、もう大丈夫だから。
いつものベンチに着くと、そこには総司が一人ポツンと座っていた。
柚月は走ってきた為、息が乱れていた。
呼吸を整えてから、総司の元へと歩いていく。
「そうちゃん?」
総司の肩がビクッと跳ねたのがわかった。
こんな暗い場所で声をかけられたら、誰だって同じように驚くだろう。
総司が腕で顔を擦っていたのがわかった。
総司の隣へと座る。
「お母さんから電話あったよ、心配しているみたいだったし、早く帰ったほうがいいよ」
総司は俯いたまま、何も言わなかった。
虫の鳴き声が暗闇から聞こえてくる。
「お姉ちゃんと何かあった?」
柚月は優しく話しかける。
「柚月には関係ないよ」
総司は冷たくそう言った。
私には関係ない、その言葉は柚月の心を千本の針で刺すような痛みを与えた。
「え?・・・・」
思わず柚月は聞き返してしまった。
聞き返すべきでは無かったと思ったのは言葉を発したあとだった。
「だから、柚月には関係ない」
さっき刺された傷口に、また針が突き刺さる。
傷口に刺さる言葉の針の痛さは、さっきの傷の痛みの分も含めて何倍にも膨れ上がっていた。
柚月は涙を堪えた。
助けに来たのに自分が泣いていては意味がないからだ。
そう言い聞かせ、涙声にならないように必死に言う。
「関係ない事ないよ、だってお姉ちゃんとそうちゃんが辛そうなのは見てられないから」
総司は変わらず冷たい口調で言う。
「これは葉月と俺だけの問題だから、柚月には関係ない。
もう大丈夫だから、帰りな、両親が心配するだろ」
関係ない、その言葉の針は余りにも鋭くて柚月はもう耐えれなかった。
「関係ない事ないよ」
まだ、涙声をなんとか堪えた。
「しつこいぞ柚月」
柚月はもう溢れる感情を抑えることが出来なかった、伝えられない想い、そして堪えることのできない辛い想いを全部吐き出した。
「だったらなんで!私の心はこんなにも苦しいの!
そうちゃんが辛いと、私の心もすごく辛いんだよ。
そうちゃんが楽しそうな時は私の心も楽しいと感じてる。
私はそうちゃんの事が好きだから、そうちゃんの気持ちが伝わってくる。
だから、ほっておけないの。
私が今辛いのは、そうちゃんが辛そうだからだよ。
家を出る時からそうちゃんが辛いってことが伝わって来てたの。
そうちゃんには幸せになってもらはないと私も辛いから、関係ないなんて言わないで・・・・。
関係ないなら、こんなにも気持ちは伝わって来ないし、辛い思いなんてしないよ・・・・」
柚月が自分の気持ちをぶつけるのは初めてだった。
葉月と違って、内気な柚月はいつも自分の気持ちを心の奥にしまい込んでいた。
だから総司は驚いていた。
柚月の本心をぶつけられた事。
そして、柚月に自分の事が好きだったという事をぶつけられて、言葉が出なかったのだ。
柚月の気持ちには気づかずに今まで葉月と柚月の前で、手を繋いだりもした。
柚月はどんな気持ちだったのだろう。
辛かったんじゃないだろうか?
「私はね、そうちゃんとお姉ちゃんが幸せにしてたら幸せだから、気を使わないでね」
総司の考えを見透かしたように、柚月言った。
「何があったのかわからないけど、ちゃんとお姉ちゃんと向き合って、お互いの感情をぶつけて、お互いの理解を深めて、幸せになってね。
じゃあ、お父さんとお母さん心配するから私は帰るね」
そう言って立ち上がり、去ろうとした柚月の腕を総司は掴んだ。
少しの沈黙があった。
柚月は何が起ころうとしているのかわからず、身構える。
「ありがとう・・・」
と総司は言って、柚月の腕を離した。
柚月は突然腕を握られ、ドキドキしていた。
総司への気持ちがまた一層強くなってしまった事が辛かった。
「じゃあね、総司さん」
このままもっと好きになってしまうと、自分が辛いと思って、この日から総司さんと呼ぶことにした。
それで距離を置こうとしたのだ。
公園の出口まで来た時、姉が立っていた。
「柚月、お父さんとお母さん心配してるから帰ろう?」
葉月は柚月を迎えに来てくれていた。
「お姉ちゃん、今すぐ総司さんに会いに行って。
総司さん、いつものベンチで待ってるから。
私は先に帰るね」
そう言って柚月は帰った。
葉月は走って総司の元へと向かっていった。
この日、二人は和解し、仲直りの印に写真を一枚目撮ったのだ。
それが今ニページ目に入っている。
------------------------------------------------------
総司は鼻でフッと笑った。
「いつも柚月に気を使わせてたんだな、申し訳ない」
「本当に、世話の焼けるカップルだったよね」
と言って柚月は微笑んだ。
「葉月はもう、居ないんだよな・・・・
まだ、信じられない」
そう言った総司の顔は妻を想う旦那の表情だった。
「本当だね」
「なぁ柚月、葉月が時間がないって言ってたのはどう言う事だと思う?
命の時間って訳ではないよな?亡くなった後に言ってただろ?」
総司に言われて柚月も思い出した。
姉の言う時間とは何なのか、柚月もわからなかった。
「どういう事だろうね。
記憶を辿ればわかるんじゃないかな?
今はそれしかできないよ」
総司は頷いてそうだなと言った。
ベンチに座る二人をそよ風が撫でる。
風に乗ってきた一枚の紙が、総司の元へと飛んできた。
その紙は、葉月からのメモだった。
-次で最後、
書かれていたのはこれだけだった。
「え?これじゃあどこに行けばいいのかわからないな」
と総司が言う。
柚月はアルバムの3ページ目を開いたが何も入っていなかった。
緑地公園のいつものベンチで総司は柚月に聞いてみた。
「そうかもしれないね、だってメモが私達を導いてるってことはきっとそうなんだろうね。
でも、お姉ちゃんは地震の日に亡くなったのにどうやったんだろ」
「世の中には説明の付かない事が溢れるほどあるからな、きっと今回も考えても無駄だ。
葉月がやったって事がわかってるならそれだけで十分だ。
俺達は葉月の最後の思いを辿って、受け止めなければならない。
だから、今は葉月の跡を追いかけるしかない」
そう言って、総司はアルバムの2ページを開いた。
そこには、葉月と総司が二人、夜の公園のベンチで撮った写真が入っていた。
------------------------------------------------------
「お姉ちゃんごはんだよ」
葉月の部屋の扉から顔をのぞかせて柚月は言った。
「いらない」
ベットで横になり、柚月に背を向けたまま言った。
その声は落ち込んでいる様な暗い声だった。
柚月は少し、姉の様子を伺うように無言で立ちすくんでいた。
「わかった」
夕食を食べ終わり、時刻は21時を回っていた。
お風呂に入ろうと柚月は着替えを取りに席をたった。
すると一本の電話がかかってきた。
母が受話器を取り、対応していた。
盗み聞きするつもりはなかったのだが、聞こえてくる声色を聞く限り、あまりいい話題ではないということが分かる。
母の後ろを通り過ぎ、風呂場へ向かおうとした時、母に呼び止められた。
「柚月、奥村くんがまだ家に帰ってないみたいだけど何か知らない?」
「そうちゃんが?私は知らないけど」
柚月は思い当たりそうな事を考えてみたけど、どれも違う気がしていた。
総司は部活をしているが流石に21時を過ぎることは無いだろう。
友達と夜遊びもしないだろうし。
この時、柚月はある事が引っかかった。
さっきの姉の様子を考えると、もしかして総司と何かあったのではないだろうか?
そうだとしたら総司もきっと暗い気持ちになっていて外で気を紛らわせているのかもしれない。
総司がいつも心を癒やす場所と言ったらあそこしか思い当たらなかった。
柚月は急いで、玄関へ向かった。
「お母さん、多分そうちゃんの場所わかったから言ってくる」
母がちょっと待ちなさいと呼び止める声を背中に受けたが、柚月は迷わず家を飛び出した。
きっと、公園に居るはずだ。
間違いない。
今頃一人で寂しい思いをしてるんじゃないだろうか?
姉と何があったのだろうか?
柚月は心配で早歩きになっていた。
好きな人が、辛い思いをしていると自分も同じように辛い気持ちになる。
柚月は今、総司と姉の事情はわからないが心が辛かった。
それはきっと総司の気持ちも辛いからだろう。
心はどんどん重たく、そしてズキズキと痛くなってくる。
柚月はついに走り出した。
そうちゃん待ってて、今行くから、もう大丈夫だから。
いつものベンチに着くと、そこには総司が一人ポツンと座っていた。
柚月は走ってきた為、息が乱れていた。
呼吸を整えてから、総司の元へと歩いていく。
「そうちゃん?」
総司の肩がビクッと跳ねたのがわかった。
こんな暗い場所で声をかけられたら、誰だって同じように驚くだろう。
総司が腕で顔を擦っていたのがわかった。
総司の隣へと座る。
「お母さんから電話あったよ、心配しているみたいだったし、早く帰ったほうがいいよ」
総司は俯いたまま、何も言わなかった。
虫の鳴き声が暗闇から聞こえてくる。
「お姉ちゃんと何かあった?」
柚月は優しく話しかける。
「柚月には関係ないよ」
総司は冷たくそう言った。
私には関係ない、その言葉は柚月の心を千本の針で刺すような痛みを与えた。
「え?・・・・」
思わず柚月は聞き返してしまった。
聞き返すべきでは無かったと思ったのは言葉を発したあとだった。
「だから、柚月には関係ない」
さっき刺された傷口に、また針が突き刺さる。
傷口に刺さる言葉の針の痛さは、さっきの傷の痛みの分も含めて何倍にも膨れ上がっていた。
柚月は涙を堪えた。
助けに来たのに自分が泣いていては意味がないからだ。
そう言い聞かせ、涙声にならないように必死に言う。
「関係ない事ないよ、だってお姉ちゃんとそうちゃんが辛そうなのは見てられないから」
総司は変わらず冷たい口調で言う。
「これは葉月と俺だけの問題だから、柚月には関係ない。
もう大丈夫だから、帰りな、両親が心配するだろ」
関係ない、その言葉の針は余りにも鋭くて柚月はもう耐えれなかった。
「関係ない事ないよ」
まだ、涙声をなんとか堪えた。
「しつこいぞ柚月」
柚月はもう溢れる感情を抑えることが出来なかった、伝えられない想い、そして堪えることのできない辛い想いを全部吐き出した。
「だったらなんで!私の心はこんなにも苦しいの!
そうちゃんが辛いと、私の心もすごく辛いんだよ。
そうちゃんが楽しそうな時は私の心も楽しいと感じてる。
私はそうちゃんの事が好きだから、そうちゃんの気持ちが伝わってくる。
だから、ほっておけないの。
私が今辛いのは、そうちゃんが辛そうだからだよ。
家を出る時からそうちゃんが辛いってことが伝わって来てたの。
そうちゃんには幸せになってもらはないと私も辛いから、関係ないなんて言わないで・・・・。
関係ないなら、こんなにも気持ちは伝わって来ないし、辛い思いなんてしないよ・・・・」
柚月が自分の気持ちをぶつけるのは初めてだった。
葉月と違って、内気な柚月はいつも自分の気持ちを心の奥にしまい込んでいた。
だから総司は驚いていた。
柚月の本心をぶつけられた事。
そして、柚月に自分の事が好きだったという事をぶつけられて、言葉が出なかったのだ。
柚月の気持ちには気づかずに今まで葉月と柚月の前で、手を繋いだりもした。
柚月はどんな気持ちだったのだろう。
辛かったんじゃないだろうか?
「私はね、そうちゃんとお姉ちゃんが幸せにしてたら幸せだから、気を使わないでね」
総司の考えを見透かしたように、柚月言った。
「何があったのかわからないけど、ちゃんとお姉ちゃんと向き合って、お互いの感情をぶつけて、お互いの理解を深めて、幸せになってね。
じゃあ、お父さんとお母さん心配するから私は帰るね」
そう言って立ち上がり、去ろうとした柚月の腕を総司は掴んだ。
少しの沈黙があった。
柚月は何が起ころうとしているのかわからず、身構える。
「ありがとう・・・」
と総司は言って、柚月の腕を離した。
柚月は突然腕を握られ、ドキドキしていた。
総司への気持ちがまた一層強くなってしまった事が辛かった。
「じゃあね、総司さん」
このままもっと好きになってしまうと、自分が辛いと思って、この日から総司さんと呼ぶことにした。
それで距離を置こうとしたのだ。
公園の出口まで来た時、姉が立っていた。
「柚月、お父さんとお母さん心配してるから帰ろう?」
葉月は柚月を迎えに来てくれていた。
「お姉ちゃん、今すぐ総司さんに会いに行って。
総司さん、いつものベンチで待ってるから。
私は先に帰るね」
そう言って柚月は帰った。
葉月は走って総司の元へと向かっていった。
この日、二人は和解し、仲直りの印に写真を一枚目撮ったのだ。
それが今ニページ目に入っている。
------------------------------------------------------
総司は鼻でフッと笑った。
「いつも柚月に気を使わせてたんだな、申し訳ない」
「本当に、世話の焼けるカップルだったよね」
と言って柚月は微笑んだ。
「葉月はもう、居ないんだよな・・・・
まだ、信じられない」
そう言った総司の顔は妻を想う旦那の表情だった。
「本当だね」
「なぁ柚月、葉月が時間がないって言ってたのはどう言う事だと思う?
命の時間って訳ではないよな?亡くなった後に言ってただろ?」
総司に言われて柚月も思い出した。
姉の言う時間とは何なのか、柚月もわからなかった。
「どういう事だろうね。
記憶を辿ればわかるんじゃないかな?
今はそれしかできないよ」
総司は頷いてそうだなと言った。
ベンチに座る二人をそよ風が撫でる。
風に乗ってきた一枚の紙が、総司の元へと飛んできた。
その紙は、葉月からのメモだった。
-次で最後、
書かれていたのはこれだけだった。
「え?これじゃあどこに行けばいいのかわからないな」
と総司が言う。
柚月はアルバムの3ページ目を開いたが何も入っていなかった。
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