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再会2
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-海岸近くにいる人は、速やかに避難してください!津波が来ますので、速やかに避難してください-
カーナビに映るニュースで、アナウンサーが緊迫した様子で避難を促していた。
「海だ・・・・」
総司の耳には、避難勧告が届いていなかった。
「え?海?」
さっきの地震があってから、総司は放心状態に陥っていた。
早く逃げなければならないと柚月は焦っていたのだ。
こんな時に、訳の分からないことを言う総司に腹が立っていた。
「そうちゃん!早く逃げようよ!」
声をかけられた総司は柚月を見て言った。
「柚月は車で避難しろ、俺は葉月の元へ行く」
「え?お姉ちゃんの居場所わかったの?」
「わかった、葉月が人生最後に過ごしたい場所を以前話していたんだ。
それがここからちょっと先にある、海岸なんだよ。
葉月が行ってしまうまで、一時間もないんだ。
だから、俺はそこへ行く」
柚月は総司の目を見つめ、力強く言った。
「何言ってるの!?津波が来るんだよ?
行けるわけ無いじゃん!
それに、お姉ちゃんがそこに居たとしても、会えるわけないじゃん!もう、お姉ちゃんは死んだんだよ!?」
最後の方は涙声になっていた。
「葉月は確かに死んだ。
けれど、俺にはわかる、絶対に会える。
夫婦なんだからわかるんだよ。
間違いなく、葉月は俺を待ってるんだ。
そして、夫婦として、やり残した事があるんだ。
それをやらなければ、俺は次に進めない。
時間がないんだ柚月、頼むから柚月は車で逃げろ。
いいな?」
柚月は全力で総司を止めなければと思った。
ここで私が折れて、総司を行かせたらもう帰ってこない。
そう思った。
大切な人を二人も失いたくない。
お願いだから、一人にはしないで欲しい。
意地でも総司を手放してはいけない。
絶対行かせない。
そう、強く思ったのに自分の口から出た言葉は、弱々しく、そして言いたかった言葉とは全く違う台詞が流れ出た。
「絶対、帰ってきてね・・・・。
私は一生そうちゃんを待ってるから」
夫婦の絆には叶わなかった。
けど、諦めた訳ではなかった。柚月の目は真剣だった。
総司は死ぬ覚悟で海岸に向かうつもりだった。
けれど、柚月の総司を信じる目には逆らえなかった。
絶対帰ってこなければいけない。
葉月との夫婦として、やり残した事をやり遂げ、帰ってこなければいけない。
そう思った。
「柚月、ありがとう。
絶対帰るから」
そう言って、総司は車を飛び出した。
柚月は不安だった。
それに総司を止めれなかった自分が悔しかった。
もう、後戻りはできない。
ただ、愛する人が帰ってくるのを待つしかできなかった。
静寂に包まれていた車内には、柚月の鳴き声と不安、悲しみに満たされていた。
-いますぐ山の方へ逃げてください、約90分後には津波が来ます、急いで逃げてください-
街のスピーカーから避難勧告の放送が流れる中、総司は海岸へひたすら走っていた。
総司と同じ方向へ走る人達は一人もいない。
みんな、総司とは逆方向へ走っていく。
途中何人かに、呼び止められた。
そっちは危険だ!
車に乗れ!一緒に逃げるぞ!と。
けれど、総司は声を振り払い、走り続けていた。
急げ!葉月が行ってしまう前に、何とか間に合え!
運動をしていなかった総司の肺は悲鳴を上げ、呼吸が乱れる。
酸素を求めるため水面で呼吸する魚の様に、頭が上を向き、酸素を取り入れようと必死だった。
呼吸する度に血の味がして、不快感が溜まっていく。
足もどんどん重たくなっていくが、総司はスピードを落とさなかった。
ここで、諦めたらもう二度と葉月には会えない。
意識が薄れようと、足が動かなくなろうと、意地でも葉月の元へ行かなければならない。
柚月を妻として、受け入れる為にも、けじめをつけなければならなかった。
葉月、待っててくれ!もう少しだけ、待っててくれ!
こんな時でも、夕日は変わらず綺麗だった。
きっと今頃葉月は砂浜で夕日を見ているだろう。
もうすぐだ、もうすぐで海岸に着く。
苦しい、もう走るのを辞めたかった。
そんな自分にムチを打ち、走り続けた。
そして、やっと、海岸に着いた。
いきなり立ち止まった総司の呼吸はかなり荒かった。
呼吸を整えながら砂浜を見渡す。
一定のリズムで波打つ波の音が聞こえる。
本当に津波なんて来るのだろうかと思ってしまった。
波打ち際に向かって総司はあるき出した。
呼吸を整えながら辺りを見渡す。
総司は突然足を止めた。
総司の視線の先には、女性が一人、ポツンと座っていた。
それは紛れもなく葉月だった。
カーナビに映るニュースで、アナウンサーが緊迫した様子で避難を促していた。
「海だ・・・・」
総司の耳には、避難勧告が届いていなかった。
「え?海?」
さっきの地震があってから、総司は放心状態に陥っていた。
早く逃げなければならないと柚月は焦っていたのだ。
こんな時に、訳の分からないことを言う総司に腹が立っていた。
「そうちゃん!早く逃げようよ!」
声をかけられた総司は柚月を見て言った。
「柚月は車で避難しろ、俺は葉月の元へ行く」
「え?お姉ちゃんの居場所わかったの?」
「わかった、葉月が人生最後に過ごしたい場所を以前話していたんだ。
それがここからちょっと先にある、海岸なんだよ。
葉月が行ってしまうまで、一時間もないんだ。
だから、俺はそこへ行く」
柚月は総司の目を見つめ、力強く言った。
「何言ってるの!?津波が来るんだよ?
行けるわけ無いじゃん!
それに、お姉ちゃんがそこに居たとしても、会えるわけないじゃん!もう、お姉ちゃんは死んだんだよ!?」
最後の方は涙声になっていた。
「葉月は確かに死んだ。
けれど、俺にはわかる、絶対に会える。
夫婦なんだからわかるんだよ。
間違いなく、葉月は俺を待ってるんだ。
そして、夫婦として、やり残した事があるんだ。
それをやらなければ、俺は次に進めない。
時間がないんだ柚月、頼むから柚月は車で逃げろ。
いいな?」
柚月は全力で総司を止めなければと思った。
ここで私が折れて、総司を行かせたらもう帰ってこない。
そう思った。
大切な人を二人も失いたくない。
お願いだから、一人にはしないで欲しい。
意地でも総司を手放してはいけない。
絶対行かせない。
そう、強く思ったのに自分の口から出た言葉は、弱々しく、そして言いたかった言葉とは全く違う台詞が流れ出た。
「絶対、帰ってきてね・・・・。
私は一生そうちゃんを待ってるから」
夫婦の絆には叶わなかった。
けど、諦めた訳ではなかった。柚月の目は真剣だった。
総司は死ぬ覚悟で海岸に向かうつもりだった。
けれど、柚月の総司を信じる目には逆らえなかった。
絶対帰ってこなければいけない。
葉月との夫婦として、やり残した事をやり遂げ、帰ってこなければいけない。
そう思った。
「柚月、ありがとう。
絶対帰るから」
そう言って、総司は車を飛び出した。
柚月は不安だった。
それに総司を止めれなかった自分が悔しかった。
もう、後戻りはできない。
ただ、愛する人が帰ってくるのを待つしかできなかった。
静寂に包まれていた車内には、柚月の鳴き声と不安、悲しみに満たされていた。
-いますぐ山の方へ逃げてください、約90分後には津波が来ます、急いで逃げてください-
街のスピーカーから避難勧告の放送が流れる中、総司は海岸へひたすら走っていた。
総司と同じ方向へ走る人達は一人もいない。
みんな、総司とは逆方向へ走っていく。
途中何人かに、呼び止められた。
そっちは危険だ!
車に乗れ!一緒に逃げるぞ!と。
けれど、総司は声を振り払い、走り続けていた。
急げ!葉月が行ってしまう前に、何とか間に合え!
運動をしていなかった総司の肺は悲鳴を上げ、呼吸が乱れる。
酸素を求めるため水面で呼吸する魚の様に、頭が上を向き、酸素を取り入れようと必死だった。
呼吸する度に血の味がして、不快感が溜まっていく。
足もどんどん重たくなっていくが、総司はスピードを落とさなかった。
ここで、諦めたらもう二度と葉月には会えない。
意識が薄れようと、足が動かなくなろうと、意地でも葉月の元へ行かなければならない。
柚月を妻として、受け入れる為にも、けじめをつけなければならなかった。
葉月、待っててくれ!もう少しだけ、待っててくれ!
こんな時でも、夕日は変わらず綺麗だった。
きっと今頃葉月は砂浜で夕日を見ているだろう。
もうすぐだ、もうすぐで海岸に着く。
苦しい、もう走るのを辞めたかった。
そんな自分にムチを打ち、走り続けた。
そして、やっと、海岸に着いた。
いきなり立ち止まった総司の呼吸はかなり荒かった。
呼吸を整えながら砂浜を見渡す。
一定のリズムで波打つ波の音が聞こえる。
本当に津波なんて来るのだろうかと思ってしまった。
波打ち際に向かって総司はあるき出した。
呼吸を整えながら辺りを見渡す。
総司は突然足を止めた。
総司の視線の先には、女性が一人、ポツンと座っていた。
それは紛れもなく葉月だった。
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