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婚約の証
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唯一、口だけは動かすことができる。
「そんな、婚約の証、だなんて、オズヴァルド様の許可もなしに……」
「んな訳、ないだろ。父も了承してるし、お前の親なんて、聞くまでもないだろ?」
「でも!」
「いい加減にしろよ」
(それは、こっちのセリフでしょっ!)
そんな、レティセラの心の抗議もむなしく、レンヴラントが首筋をついばむ。
「ひゃぁっ!」
驚いて、レティセラが腕を振り上げると、レンヴラントに簡単に掴まれてしまった。
「暴れるなよ。でも、そうだな。よいしょっ!」
「きゃあっ!」
「うるさいやつだな。すぐ終わるから、我慢しろよ」
(我慢しろよって!)
向かい合っていたのを、後ろ向きにされ、そのまま拘束され、レティセラは、もう、恥ずかしさでパニックになっていた。
「うん、この方がしやすいな」
人の気も知らないレンヴラントが、後ろのボタンをいくつか外し、レティセラの背中に口をつける。
熱い!
「やぁっ……」
拘束する腕をつかむ手に力を入れる。
熱かったのは一瞬だけで、そのあとは、じんわりと温かさが広がっていく。
熱くて……
レティセラは、すでに放心状態だった。
「…………」
「ほら、終わったぞ」
レンヴラントが手を離すと、ドサッ、という音をあげてレティセラが崩れていった。
「帰ろうぜ」
「無理、立てないよ……」
涙をためて、レンヴラントを恨めしく見あげたレティセラは彼に両手をのばした。
『レティセラ』とは、レースのこと。
もう、目隠しをする必要はない。
真っ赤な顔をして、手を伸ばすレティセラは、自分だけが見れるものだと思うとレンヴラントは嬉しかった。
「はははっ」
レンヴラントが、わらい声をあげて彼女を抱えると腕に感じる重さに、幸せだ、と思った。
「話は終わったかね? おやぁ」
階段を降りてきた2人を見て、おかみさんが口を押さえ、ぐったり、としたレティセラの首を見ていた。
「そう言うことだ。世話をかけたな」
「それじゃ、もう、ここにくることなんてないだろうね」
「今度はゆっくり食べにでもくるさ」
そう言って、レンヴラントはレティセラを連れて店を出ていった。
おかみさんの見ていた首には、鳥の証がつけられていた。
それは、ウォード家の紋章『フェニックス』
それから、数日後、レンヴラントがほとんど平民だった女性と婚約したという話は、国に知れわたったのだった。
【エンディング】
白い。
日差しがつよくて、空が、蒼い。
真っ白な、ドレスを着て、レティセラが待っていると、デルマが迎えに来てくれた。
向かうのは礼拝堂。
そこで待っていたレンヴラントは、緊張した表情をしており、なんだか、可笑しかった。
今日のための服を着ている彼は、いつもよりもずっとかっこいいなと思った。
セミの鳴き声をききながら、誓いの言葉をかわす。
参列というには、あまりにも人の少ない、式。
それでも、しあわせ、は変わらないだろう。
そして冬。
空から落ちてくる、白い粉のようなものを、レティセラは、不思議そうにながめていた。
レンヴラントは、背中からわたしを抱きしめて、好きだ、という髪に顔をうずめていた。
『 』
レンヴラントが顔をあげて、目を細める。
「おれも、そう、思う」
レンヴラントの手に、手をかさねる。
目を閉じて、レティセラは、とても幸せそうに、ほほ笑んだ。
「そんな、婚約の証、だなんて、オズヴァルド様の許可もなしに……」
「んな訳、ないだろ。父も了承してるし、お前の親なんて、聞くまでもないだろ?」
「でも!」
「いい加減にしろよ」
(それは、こっちのセリフでしょっ!)
そんな、レティセラの心の抗議もむなしく、レンヴラントが首筋をついばむ。
「ひゃぁっ!」
驚いて、レティセラが腕を振り上げると、レンヴラントに簡単に掴まれてしまった。
「暴れるなよ。でも、そうだな。よいしょっ!」
「きゃあっ!」
「うるさいやつだな。すぐ終わるから、我慢しろよ」
(我慢しろよって!)
向かい合っていたのを、後ろ向きにされ、そのまま拘束され、レティセラは、もう、恥ずかしさでパニックになっていた。
「うん、この方がしやすいな」
人の気も知らないレンヴラントが、後ろのボタンをいくつか外し、レティセラの背中に口をつける。
熱い!
「やぁっ……」
拘束する腕をつかむ手に力を入れる。
熱かったのは一瞬だけで、そのあとは、じんわりと温かさが広がっていく。
熱くて……
レティセラは、すでに放心状態だった。
「…………」
「ほら、終わったぞ」
レンヴラントが手を離すと、ドサッ、という音をあげてレティセラが崩れていった。
「帰ろうぜ」
「無理、立てないよ……」
涙をためて、レンヴラントを恨めしく見あげたレティセラは彼に両手をのばした。
『レティセラ』とは、レースのこと。
もう、目隠しをする必要はない。
真っ赤な顔をして、手を伸ばすレティセラは、自分だけが見れるものだと思うとレンヴラントは嬉しかった。
「はははっ」
レンヴラントが、わらい声をあげて彼女を抱えると腕に感じる重さに、幸せだ、と思った。
「話は終わったかね? おやぁ」
階段を降りてきた2人を見て、おかみさんが口を押さえ、ぐったり、としたレティセラの首を見ていた。
「そう言うことだ。世話をかけたな」
「それじゃ、もう、ここにくることなんてないだろうね」
「今度はゆっくり食べにでもくるさ」
そう言って、レンヴラントはレティセラを連れて店を出ていった。
おかみさんの見ていた首には、鳥の証がつけられていた。
それは、ウォード家の紋章『フェニックス』
それから、数日後、レンヴラントがほとんど平民だった女性と婚約したという話は、国に知れわたったのだった。
【エンディング】
白い。
日差しがつよくて、空が、蒼い。
真っ白な、ドレスを着て、レティセラが待っていると、デルマが迎えに来てくれた。
向かうのは礼拝堂。
そこで待っていたレンヴラントは、緊張した表情をしており、なんだか、可笑しかった。
今日のための服を着ている彼は、いつもよりもずっとかっこいいなと思った。
セミの鳴き声をききながら、誓いの言葉をかわす。
参列というには、あまりにも人の少ない、式。
それでも、しあわせ、は変わらないだろう。
そして冬。
空から落ちてくる、白い粉のようなものを、レティセラは、不思議そうにながめていた。
レンヴラントは、背中からわたしを抱きしめて、好きだ、という髪に顔をうずめていた。
『 』
レンヴラントが顔をあげて、目を細める。
「おれも、そう、思う」
レンヴラントの手に、手をかさねる。
目を閉じて、レティセラは、とても幸せそうに、ほほ笑んだ。
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