呪いの指輪が外れないので、とりあえずこれで戦ってみた。

犬尾猫目

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仁義なき遊戯

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「どうした?もう終わりか。」

「くっ!まぁ待てよ。どうだろう、王者の風格というか余裕というか?そのぉ」

「待ったはナシじゃ。さっき待ってやっとろうが。」

「ま・・・参りました。」

「はーっはっはっは!ワシの21連勝じゃなぁ。ここまで勝ちつづけておるとたまには負けてみたいもんじゃのう。勝たんでエエのにまた勝った。」

「くっ、くそぉ~。」

京阪ニャンニャンズファンみてぇなこと言いくさってからに・・・。毎朝リトルラビッツファンの俺に対する挑発のようで二重に許せん!

「それでは検討するかのぅ。」

「何で勝てねぇんだろう?」

俺はここ毎日チェスや将棋のような「ソルダ」というゲームでアンリと勝負しているんだが、どうしてもアンリには勝てないんだ。

「ワシはソルダでは王国十傑に入る猛者よ。ソーマごときに遅れは取らんぞ!」

「何ぃ!このタヌキ親父、そういう事は最初に言っとけやぁ!勝てるわきゃあね~わ。通りで自らの大駒を犠牲にしてこちらの首を獲るのが上手いわけだ。」

この性悪親父めぇ。俺が追い詰められる様子を見るたび嬉しそうな顔しやがって~、ぐぬぬぬ。

「はーっはっはっは。一騎当千の大駒を惜しんで自らの首を締めるのは愚か者のすることよ。達人は雑兵を精兵とする術を磨くものなのだぞ。」

たしかにアンリは小駒の使い方が上手い。違う手筋を本命だと思わせといて、気にも止めなかった筋でいつもやられる。それとも相手に合わせて変幻自在に手を変えて来ているのか?

「くぅ~、アンリに勝ちたい・・・。絶対に次こそは負かして見せるからなぁ!」

「おぅおぅ、明日も来るか?慈悲のかたまりである国王はいつでも相手になってやるぞ。わーっはっはっは!」

「明日も来るからなぁ!勝つまで引かねーぞ!チクショー。」

***

「俺はどうしたら勝てるかなぁ、ハヤテ?」

「ん?何だ、我はこの鶏肉を食べるのに忙しいのだ。もっと注文してくれユーキぃ。」

食事中に話しかけても冷たくあしらうんだよなぁハヤテ。ああわかってたさ、でもちょっとは相談に乗ってくれよ。

「んもぅ、たしかに何でもおごるって言ったけど本当に王都中の屋台を全部食べ回るのかよ。こんなに相棒が頭を悩ましているのに冷たいなぁハヤテちゃんは。」

「ソルダというので勝てないのならばソルダ以外で勝負すれば良いではないか。」

「それだっ!なんだぁ、そう言われればそうだなぁ。やっぱハヤテは頼りになるよ~。」

「早く注文するのだユーキぃ!」

「ああ、おっちゃんコレもう一つちょうだい!よぅし、たんとお食べ。ふっふっふ。アンリめ、今に見ていろ。」

俺が注文してもハヤテは目の前の料理に夢中だ。ってか、どんだけ食うんだよ?

「となれば、何で討ち取るべきか?ボードゲームだと・・・。すごろくじゃ違うよなぁ。」

「あ!あれにするか。この世界にムーブメントを起こしてやるぜ。」

ハヤテを満足させると俺たちは王都を出てアーレンに転移した。アーレンといえばあのお店。

「こんちわー。」

「あ、ユーキ!」

「旦那ぁ、久しぶり。」

「あ、マデル市参事会終身顧問がいる。」

ハンスさんに会ったのってあの日以来だったからなぁ。役者だよねぇ。

「ぶへっ、やだなぁ。旦那がやらせたんでしょうが。あれに扮装するために俺がどれだけエドガーさんにぶたれたと思ってるんです?」

「あぁ、俺もエドガーにはいろいろ叩き込まれたからその過酷さはよーく知ってるよ。でもハンスさんのおかげで空前絶後の大勝利だった。」

「あんな三文芝居でとんでもない礼金もらっちまって。俺としちゃあ感謝しかありませんがね。」

ありゃ、そういやジョセフさんはどこだぁ?二階なのかなぁ。

「どうしたの?今日は父さんいないわよ。」

「え、そうなの?まぁいいや。ハンスさんでもソフィアでもいいんだけど時間あるかな?」

「別に良いわよ。なぁに?」

「実はこれなんだ。応接室貸してよ。」

「何ですかい?白と黒のコインみたいなのは。」

ふふふ、見たこと無いよねぇ。そうそう、見たかったのはその反応よ。

「まぁ見ててよ。」

「?」

俺はルールを教えながら、ソフィアと対局を始めた。最初だからぜひ興味を持ってもらいたい。接戦を演出して見たらソフィアも勝負にのめり込んだ。

「くやしぃ~、単純なのに勝てないわ。もう一度よ!」

「ふっふっふ。ようやく自信を取り戻したよ。最近ソルダで負けつづけだったからな。」

「ソルダで負けたからこのゲームをやりに来た、って一体どういう話ですかい?」

「国王相手に21連敗してるから、今度は他のゲームで土つけてやりたいんだ。」

「負けず嫌いね。ユーキらしいわ。」

「はっはっは。そりゃいいや。国王は昨年度全国ソルダトーナメント8位でしたからね。ちょっとやそっとじゃ勝てねえから。」

ありゃ、あの腹黒大魔王の腕前はアーレンまで轟いているのか。許すまじ。

「それはもう手筋が人間性に似てえげつないんだ。正直もう勝てる気がしない。」

「アンタとんでも無いこと言うわね。そんな冗談飛ばしてるとそのうち首もいっしょに飛ばすことになるわよ。そんで、本当の用事は何なの?」

「あ、そうだった。実はさぁ、これをソフィアん家で取り扱ってもらえんかと思ってさ。商談に来たんだ。」

「何?面白いじゃない。絶対に流行るわよコレ。」

「ソルダよりもルールが単純だし、駒を何種類も作る必要が無いとなりゃあ行けますねぇ。すげーなぁ、旦那が考えたんですかぃ?」

「この世界にはまだ無いモノだと思うんだ。」

「たしかに見たこと無いわ。」

よかった。この世界で考案されてたらアンリを不意打ちできないからな。ついに俺にも王国制覇の夢が見えて来たぞ!そのためにも流行らせないといかん。

「これ見てくれよ。」

「こりゃぁ何です?」

「まぁ!これでどこにでも持っていけるのね。折りたたみ出来るってことでしょ?」

「はぁ、こんな設計図まで描いて来たんですね。こりゃ本格的だ。」

そうさ、持ち運びが手軽なら庶民の娯楽としてあっという間に広まるぞ。

「頼むよソフィア~、ジョセフさんによろしく言ってよ~。また来るからさぁ。」

「んー、それは良いけど。ユーキも私のお願い聞いてくれる?」

「え、いいよ。俺にできることなら何なりと言ってくれよ。」

まぁそんな大した頼みじゃないだろうさ、バッチ来~い!
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