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ローグパラディズム・イン・ザ・ダークact13
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リアンのうめき声を聞くなど想像もしていなかったヴァイスが叫ぶ。
あのエルフはスキルを使用したハウンド相手に罠を張るほど老獪な戦い方をする。魔術なんざ用いずともこの程度の殺し屋風情に手を焼くはずねえだろうが!
視界不良下の乱戦は事故を招くと自制したヴァイスだったが、エルフを護りつつ迎え討つ選択が逆にアダとなってしまったようだ。
驚愕するヴァイスに追い打ちをかけるように、彼女の指からリアンに伸びていた糸の反応まで消えてしまった。
馬鹿な!誰にも見えなければ触れもしないトラッカーウェブだぞ?
「おい、殺られちまったのか?返事しろアビ公!」
たまらず叫び声を上げるヴァイスを置き去りに、煙の外に飛び出たのはエルフを羽交い絞めにした黒装束の男だった。
「ん?よっしゃ、ええぞニンジャ。ようやった!」
「捕えただと?」
「待てよアバズレ。」
痛恨の事態にあわてふためいたヴァイスの前に立ちはだかったのは覆面姿のホルドだ。何やら他の敵とは異なる様子にヴァイスが警戒する。
「邪魔する奴は殺すっつったろ!」
「はっはっはっ、当たらねえよ」
「コイツ・・・どうなってやがる?」
見えないはずの繰糸を覆面がかわしたことにヴァイスの顔が青ざめる。手応えのないスタッバーウェブを解除したヴァイスは必死に声の主を探す。
煙がテメエの小賢しいスキルを丸わかりにしてんだよ。お前が何か仕掛けるたびに流れてるぜ。わかって見りゃあくだらねえ手品さ
幾度も死線をくぐり抜けたホルドの洞察がヴァイスを捉える。時を置かずして任務を全うする算段を立てるホルドは決しておごることなどない。
「出て来いクソ雑魚!」
進んで身を危険にさらさずともエルフの断末魔が聞こえて来るわずかの間、ヴァイスをこの場に押し留めればいい。これで帝都冒険者ギルドの面子は丸つぶれ。あとは逃亡阻止のため配置した後詰めのニールでヴァイスをぶち殺しゃ終わりだ。
「かかって来ねえってのか!」
騒げば騒ぐだけ良い的ってこった。誰がそんな安い挑発に乗るかよクソガキ
ダイアモンド=コクーンでホルドの投擲を弾いたものの、いつまでも防壁展開し続けるわけにもいかない。アビムリンデが敵の手に落ちた今、一刻も早く奪い返さねば全て水の泡となってしまう。
用心深い敵を前に無防備ではあるが、防御の構えを解いて全周囲攻撃に全力を振り向けたい誘惑に駆られる。
「気にいらねえ・・・雑魚がはしゃぎやがって」
「無様じゃのお。こいで俺らん勝ちが決まったけえ、早うそいつん喉笛かっ切ったれニンジャ!」
緩みきった表情のニールがニンジャに目配せをすると、ニンジャはそれにうなずくように目を伏せた。
「・・・」
「クソがぁ!テメエら誰に盾突いてるかわかってんのか!?」
ヴァイスがいくら怒鳴りつけたところで大勢は決している。だがニンジャはエルフの喉元にナイフを突きつけたまま一向にとどめを刺さないではないか。
「どないしたんなら?」
勝ちが決まったこの段階で一向に仕留めたという声が上がらない。エルフは即座に抹殺と厳命したはずだ。そもそも生け捕りなどという選択肢は否定した。事前の段取りと異なる状況にホルドが訝しむ。
「・・・様子がおかしいぞ?ズールー、ニンジャごとエルフを殺せ!」
「おうおう、何ぞ良からぬことしよるのお?このガンボッタレが!何企みよんな、あぁっ!?」
屋根から飛び降りる体勢に入ったニールの着地点目がけてニンジャが何かを投げつける。
<ズバン!>
「またやりよった!ゴホッゴホッ・・・この屁こき虫野郎があっ!」
煙幕から逃走を試みた場合、頭上から致命打を見舞うべく手ぐすねを引くニールだったが、裏切者ニンジャの煙玉に巻かれる。ニンジャを自らの手下と見なして殺意が鈍ったのだろうか。怒りに震えるニールが手近な街頭を蹴りつけてへし折った。
「優しうしとりゃあダマこきゃあがって。許しゃせんぞこんガキャア!」
「もういい、ズールー。お前はそこのあばずれを殺れ。俺が裏切り者の後を追う」
「金もろうとるんじゃ・・・指図するんはこらえようが、きっちりバラせよ?手ぶらで戻りよったらなんぼお前でも許さんど、ヴィクトリー!」
目の前の自分を無視して進む話に怒り心頭のヴァイスは声の方角へ攻撃を向ける。
「勝手なこと抜かしてんじゃねえぞ!」
「ふぎゃべっ!」
ホルドがかわしたスタッバーウェブが後方の覆面を八つ裂きにした。そのスキにホルドは煙の奥深くへと消えてしまう。
「ちっ、逃さねえぞ!」
「おっとー、どこ行きよんじゃ?」
「取ったぜ。テメエもくたばりな!」
ヴァイスはホルドと入れ替わりで現れたニールにスタッバーウェブを投げかけるも、ニールの覆面を引き裂くにとどまった。その光景にヴァイスは言葉を失う。
「は?なんぞ撫でよったかのぉ」
「そのツラ・・・思い出したぞ。」
「何じゃ?お前みてえなはすっぱなんぞ・・・ん?よぉ見りゃ見覚えあるのぉ」
しげしげとこちらを眺める覆面ズールーことニール=ハイダーに、今にも嚙みつかんほどの形相でヴァイスがにらみつける。
「ニールゥゥゥッ!」
「ほぉじゃ~、バルナロキスのクソ野郎が飼うとった猿ガキじゃねーの?一丁前に色気づきよって」
「ぶち殺してやんよど腐れ」
「いつぞやは殺し損ねたけえ、今宵はきっちり詰めたるでの」
「ほざけ!」
ヴァイスは周囲の建造物の壁を引き裂きながらマスエーカー=ストリングスをニール目がけて投げつける。もはや防御などお構いなしに破壊力に全ての能力を注ぎ込む。
「きかん言うたじゃろう?鈍くさいのおボンクラ~」
だがヴァイスのマスエーカー=ストリングスは目のない蛇のような無数の怪物に食いちぎられた。目の前にいるニールはどこからともなく薄気味悪い化け物を顕現させる。
「うるぁぁぁぁっ!殺すっ」
あのエルフはスキルを使用したハウンド相手に罠を張るほど老獪な戦い方をする。魔術なんざ用いずともこの程度の殺し屋風情に手を焼くはずねえだろうが!
視界不良下の乱戦は事故を招くと自制したヴァイスだったが、エルフを護りつつ迎え討つ選択が逆にアダとなってしまったようだ。
驚愕するヴァイスに追い打ちをかけるように、彼女の指からリアンに伸びていた糸の反応まで消えてしまった。
馬鹿な!誰にも見えなければ触れもしないトラッカーウェブだぞ?
「おい、殺られちまったのか?返事しろアビ公!」
たまらず叫び声を上げるヴァイスを置き去りに、煙の外に飛び出たのはエルフを羽交い絞めにした黒装束の男だった。
「ん?よっしゃ、ええぞニンジャ。ようやった!」
「捕えただと?」
「待てよアバズレ。」
痛恨の事態にあわてふためいたヴァイスの前に立ちはだかったのは覆面姿のホルドだ。何やら他の敵とは異なる様子にヴァイスが警戒する。
「邪魔する奴は殺すっつったろ!」
「はっはっはっ、当たらねえよ」
「コイツ・・・どうなってやがる?」
見えないはずの繰糸を覆面がかわしたことにヴァイスの顔が青ざめる。手応えのないスタッバーウェブを解除したヴァイスは必死に声の主を探す。
煙がテメエの小賢しいスキルを丸わかりにしてんだよ。お前が何か仕掛けるたびに流れてるぜ。わかって見りゃあくだらねえ手品さ
幾度も死線をくぐり抜けたホルドの洞察がヴァイスを捉える。時を置かずして任務を全うする算段を立てるホルドは決しておごることなどない。
「出て来いクソ雑魚!」
進んで身を危険にさらさずともエルフの断末魔が聞こえて来るわずかの間、ヴァイスをこの場に押し留めればいい。これで帝都冒険者ギルドの面子は丸つぶれ。あとは逃亡阻止のため配置した後詰めのニールでヴァイスをぶち殺しゃ終わりだ。
「かかって来ねえってのか!」
騒げば騒ぐだけ良い的ってこった。誰がそんな安い挑発に乗るかよクソガキ
ダイアモンド=コクーンでホルドの投擲を弾いたものの、いつまでも防壁展開し続けるわけにもいかない。アビムリンデが敵の手に落ちた今、一刻も早く奪い返さねば全て水の泡となってしまう。
用心深い敵を前に無防備ではあるが、防御の構えを解いて全周囲攻撃に全力を振り向けたい誘惑に駆られる。
「気にいらねえ・・・雑魚がはしゃぎやがって」
「無様じゃのお。こいで俺らん勝ちが決まったけえ、早うそいつん喉笛かっ切ったれニンジャ!」
緩みきった表情のニールがニンジャに目配せをすると、ニンジャはそれにうなずくように目を伏せた。
「・・・」
「クソがぁ!テメエら誰に盾突いてるかわかってんのか!?」
ヴァイスがいくら怒鳴りつけたところで大勢は決している。だがニンジャはエルフの喉元にナイフを突きつけたまま一向にとどめを刺さないではないか。
「どないしたんなら?」
勝ちが決まったこの段階で一向に仕留めたという声が上がらない。エルフは即座に抹殺と厳命したはずだ。そもそも生け捕りなどという選択肢は否定した。事前の段取りと異なる状況にホルドが訝しむ。
「・・・様子がおかしいぞ?ズールー、ニンジャごとエルフを殺せ!」
「おうおう、何ぞ良からぬことしよるのお?このガンボッタレが!何企みよんな、あぁっ!?」
屋根から飛び降りる体勢に入ったニールの着地点目がけてニンジャが何かを投げつける。
<ズバン!>
「またやりよった!ゴホッゴホッ・・・この屁こき虫野郎があっ!」
煙幕から逃走を試みた場合、頭上から致命打を見舞うべく手ぐすねを引くニールだったが、裏切者ニンジャの煙玉に巻かれる。ニンジャを自らの手下と見なして殺意が鈍ったのだろうか。怒りに震えるニールが手近な街頭を蹴りつけてへし折った。
「優しうしとりゃあダマこきゃあがって。許しゃせんぞこんガキャア!」
「もういい、ズールー。お前はそこのあばずれを殺れ。俺が裏切り者の後を追う」
「金もろうとるんじゃ・・・指図するんはこらえようが、きっちりバラせよ?手ぶらで戻りよったらなんぼお前でも許さんど、ヴィクトリー!」
目の前の自分を無視して進む話に怒り心頭のヴァイスは声の方角へ攻撃を向ける。
「勝手なこと抜かしてんじゃねえぞ!」
「ふぎゃべっ!」
ホルドがかわしたスタッバーウェブが後方の覆面を八つ裂きにした。そのスキにホルドは煙の奥深くへと消えてしまう。
「ちっ、逃さねえぞ!」
「おっとー、どこ行きよんじゃ?」
「取ったぜ。テメエもくたばりな!」
ヴァイスはホルドと入れ替わりで現れたニールにスタッバーウェブを投げかけるも、ニールの覆面を引き裂くにとどまった。その光景にヴァイスは言葉を失う。
「は?なんぞ撫でよったかのぉ」
「そのツラ・・・思い出したぞ。」
「何じゃ?お前みてえなはすっぱなんぞ・・・ん?よぉ見りゃ見覚えあるのぉ」
しげしげとこちらを眺める覆面ズールーことニール=ハイダーに、今にも嚙みつかんほどの形相でヴァイスがにらみつける。
「ニールゥゥゥッ!」
「ほぉじゃ~、バルナロキスのクソ野郎が飼うとった猿ガキじゃねーの?一丁前に色気づきよって」
「ぶち殺してやんよど腐れ」
「いつぞやは殺し損ねたけえ、今宵はきっちり詰めたるでの」
「ほざけ!」
ヴァイスは周囲の建造物の壁を引き裂きながらマスエーカー=ストリングスをニール目がけて投げつける。もはや防御などお構いなしに破壊力に全ての能力を注ぎ込む。
「きかん言うたじゃろう?鈍くさいのおボンクラ~」
だがヴァイスのマスエーカー=ストリングスは目のない蛇のような無数の怪物に食いちぎられた。目の前にいるニールはどこからともなく薄気味悪い化け物を顕現させる。
「うるぁぁぁぁっ!殺すっ」
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