幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

文字の大きさ
160 / 167

ローグパラディズム・イン・ザ・ダークact13

しおりを挟む
リアンのうめき声を聞くなど想像もしていなかったヴァイスが叫ぶ。

あのエルフはスキルを使用したハウンド相手に罠を張るほど老獪な戦い方をする。魔術なんざ用いずともこの程度の殺し屋風情に手を焼くはずねえだろうが!

視界不良下の乱戦は事故を招くと自制したヴァイスだったが、エルフを護りつつ迎え討つ選択が逆にアダとなってしまったようだ。

驚愕するヴァイスに追い打ちをかけるように、彼女の指からリアンに伸びていた糸の反応まで消えてしまった。

馬鹿な!誰にも見えなければ触れもしないトラッカーウェブだぞ?

「おい、殺られちまったのか?返事しろアビ公!」

たまらず叫び声を上げるヴァイスを置き去りに、煙の外に飛び出たのはエルフを羽交い絞めにした黒装束の男だった。

「ん?よっしゃ、ええぞニンジャ。ようやった!」

「捕えただと?」

「待てよアバズレ。」

痛恨の事態にあわてふためいたヴァイスの前に立ちはだかったのは覆面姿のホルドだ。何やら他の敵とは異なる様子にヴァイスが警戒する。

「邪魔する奴は殺すっつったろ!」

「はっはっはっ、当たらねえよ」

「コイツ・・・どうなってやがる?」

見えないはずの繰糸を覆面がかわしたことにヴァイスの顔が青ざめる。手応えのないスタッバーウェブを解除したヴァイスは必死に声の主を探す。

煙がテメエの小賢しいスキルを丸わかりにしてんだよ。お前が何か仕掛けるたびに流れてるぜ。わかって見りゃあくだらねえ手品さ

幾度も死線をくぐり抜けたホルドの洞察がヴァイスを捉える。時を置かずして任務を全うする算段を立てるホルドは決しておごることなどない。

「出て来いクソ雑魚!」

進んで身を危険にさらさずともエルフの断末魔が聞こえて来るわずかの間、ヴァイスをこの場に押し留めればいい。これで帝都冒険者ギルドの面子は丸つぶれ。あとは逃亡阻止のため配置した後詰めのニールでヴァイスをぶち殺しゃ終わりだ。

「かかって来ねえってのか!」

騒げば騒ぐだけ良い的ってこった。誰がそんな安い挑発に乗るかよクソガキ

ダイアモンド=コクーンでホルドの投擲を弾いたものの、いつまでも防壁展開し続けるわけにもいかない。アビムリンデが敵の手に落ちた今、一刻も早く奪い返さねば全て水の泡となってしまう。

用心深い敵を前に無防備ではあるが、防御の構えを解いて全周囲攻撃に全力を振り向けたい誘惑に駆られる。

「気にいらねえ・・・雑魚がはしゃぎやがって」

「無様じゃのお。こいで俺らん勝ちが決まったけえ、早うそいつん喉笛かっ切ったれニンジャ!」

緩みきった表情のニールがニンジャに目配せをすると、ニンジャはそれにうなずくように目を伏せた。

「・・・」

「クソがぁ!テメエら誰に盾突いてるかわかってんのか!?」

ヴァイスがいくら怒鳴りつけたところで大勢は決している。だがニンジャはエルフの喉元にナイフを突きつけたまま一向にとどめを刺さないではないか。

「どないしたんなら?」

勝ちが決まったこの段階で一向に仕留めたという声が上がらない。エルフは即座に抹殺と厳命したはずだ。そもそも生け捕りなどという選択肢は否定した。事前の段取りと異なる状況にホルドが訝しむ。

「・・・様子がおかしいぞ?ズールー、ニンジャごとエルフを殺せ!」

「おうおう、何ぞ良からぬことしよるのお?このガンボッタレが!何企みよんな、あぁっ!?」

屋根から飛び降りる体勢に入ったニールの着地点目がけてニンジャが何かを投げつける。

<ズバン!>

「またやりよった!ゴホッゴホッ・・・この屁こき虫野郎があっ!」

煙幕から逃走を試みた場合、頭上から致命打を見舞うべく手ぐすねを引くニールだったが、裏切者ニンジャの煙玉に巻かれる。ニンジャを自らの手下と見なして殺意が鈍ったのだろうか。怒りに震えるニールが手近な街頭を蹴りつけてへし折った。

「優しうしとりゃあダマこきゃあがって。許しゃせんぞこんガキャア!」

「もういい、ズールー。お前はそこのあばずれを殺れ。俺が裏切り者の後を追う」

「金もろうとるんじゃ・・・指図するんはこらえようが、きっちりバラせよ?手ぶらで戻りよったらなんぼお前でも許さんど、ヴィクトリー!」

目の前の自分を無視して進む話に怒り心頭のヴァイスは声の方角へ攻撃を向ける。

「勝手なこと抜かしてんじゃねえぞ!」

「ふぎゃべっ!」

ホルドがかわしたスタッバーウェブが後方の覆面を八つ裂きにした。そのスキにホルドは煙の奥深くへと消えてしまう。

「ちっ、逃さねえぞ!」

「おっとー、どこ行きよんじゃ?」

「取ったぜ。テメエもくたばりな!」

ヴァイスはホルドと入れ替わりで現れたニールにスタッバーウェブを投げかけるも、ニールの覆面を引き裂くにとどまった。その光景にヴァイスは言葉を失う。

「は?なんぞ撫でよったかのぉ」

「そのツラ・・・思い出したぞ。」

「何じゃ?お前みてえなはすっぱなんぞ・・・ん?よぉ見りゃ見覚えあるのぉ」

しげしげとこちらを眺める覆面ズールーことニール=ハイダーに、今にも嚙みつかんほどの形相でヴァイスがにらみつける。

「ニールゥゥゥッ!」

「ほぉじゃ~、バルナロキスのクソ野郎が飼うとった猿ガキじゃねーの?一丁前に色気づきよって」

「ぶち殺してやんよど腐れ」

「いつぞやは殺し損ねたけえ、今宵はきっちり詰めたるでの」

「ほざけ!」

ヴァイスは周囲の建造物の壁を引き裂きながらマスエーカー=ストリングスをニール目がけて投げつける。もはや防御などお構いなしに破壊力に全ての能力を注ぎ込む。

「きかん言うたじゃろう?鈍くさいのおボンクラ~」

だがヴァイスのマスエーカー=ストリングスは目のない蛇のような無数の怪物に食いちぎられた。目の前にいるニールはどこからともなく薄気味悪い化け物を顕現させる。

「うるぁぁぁぁっ!殺すっ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...