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第二章:路地裏の邂逅
第二話:未知への渇望
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路地裏での一件の後、私は『清楽亭』に戻った。 頬をかすめたナイフの傷は、回復魔法を使えば跡形もなく消せる。けれど、私はそうしたくなかった。 鏡に映る一本の赤い線。それが、私の未熟さを突きつけているようで、目を逸らすことができなかった。
ミーアさんは私の傷に気づき、すぐに手当てをしてくれたが、何があったのかは深く聞かなかった。 ただ、「あまり無茶はしないでね」と、私の頭を優しく撫でるだけだった。その温もりが、かえって胸を痛めた。
その日から、魔法の訓練をしていても集中できなくなった。小さな火の玉を手のひらに浮かべても、あの時の男の蹴りで水の膜が霧散した光景が蘇る。魔法を発動させるための、ほんの僅かな「間」。その一瞬の隙さえもが、実戦では命取りになる。
(今の私では、ダメだ)
あの子を守れなかったかもしれない。助けが来なければ、私もどうなっていたか分からない。 自分の無力さを噛み締めるほどに、あのクマ族の兵士の、圧倒的な存在感が脳裏に焼き付いて離れなかった。
悩んだ末、私は頼れる師に相談することを決意した。
約束の日、図書館のいつもの席で待っていると、ロンド先生は私の浮かない顔を見てすぐに何かを察したようだった。
「どうかなさいましたか、ソラさん。少し、思い詰めた顔をしていますね」
「先生…」
私は意を決して、先日街で揉め事に巻き込まれたことを打ち明けた。 もちろん、少年が王子であることや、騎士団が関わっていることは伏せて。
「相手は複数で…魔法を発動する、ほんの僅かな隙さえも与えてもらえませんでした。接近戦では、私は何もできなくて…」
話しているうちに、あの時の恐怖と悔しさが蘇り、声が震える。 ロンド先生は黙って私の話を聞き終えると、静かに頷いた。
「なるほど…実戦における近接戦闘の脅威、ですか。あなたがその壁に突き当たるとは、予想より早かったですが、いずれ通る道です」
「どうすれば、私は…?」
「魔法だけが力ではありません。むしろ、強靭な肉体と戦闘技術があってこそ、魔法はその真価を発揮するのです」
先生はそう言うと、ふと、懐かしむような目を細めた。
「私に、身体を鍛えるのが得意な知り合いがおりまして。少々粗野で、頭のてっぺんからつま先まで筋肉でできているような男ですが、その道の腕は確かです」
筋肉でできた男。その言葉に、自然とあのクマ族の兵士の姿が思い浮かんだ。
「その方は、一体…?」
「アルフレッドという、クマ族の男です。もしあなたに覚悟があるのなら、私が紹介して差し上げましょう。ただし…彼の訓練は、私の授業よりも遥かに厳しいですよ?」
先生は悪戯っぽく笑った。
アルフレッド。その名前に聞き覚えはなかったが、今の私に必要なのは、まさにそういう師だった。
私の心は、もう決まっていた。
「望むところです。ぜひ、お願いします」
私の即答に、ロンド先生は満足そうに頷いた。
「分かりました。では明日の午後、訓練場に一緒に行きましょう。彼に話を通しておきますので」
新たな師となるかもしれない人物との出会いに、私の心は緊張と、それ以上の期待で満たされていた。 あの一件で生まれた悔しさは、今、確かな目標へと変わりつつあった。
ミーアさんは私の傷に気づき、すぐに手当てをしてくれたが、何があったのかは深く聞かなかった。 ただ、「あまり無茶はしないでね」と、私の頭を優しく撫でるだけだった。その温もりが、かえって胸を痛めた。
その日から、魔法の訓練をしていても集中できなくなった。小さな火の玉を手のひらに浮かべても、あの時の男の蹴りで水の膜が霧散した光景が蘇る。魔法を発動させるための、ほんの僅かな「間」。その一瞬の隙さえもが、実戦では命取りになる。
(今の私では、ダメだ)
あの子を守れなかったかもしれない。助けが来なければ、私もどうなっていたか分からない。 自分の無力さを噛み締めるほどに、あのクマ族の兵士の、圧倒的な存在感が脳裏に焼き付いて離れなかった。
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約束の日、図書館のいつもの席で待っていると、ロンド先生は私の浮かない顔を見てすぐに何かを察したようだった。
「どうかなさいましたか、ソラさん。少し、思い詰めた顔をしていますね」
「先生…」
私は意を決して、先日街で揉め事に巻き込まれたことを打ち明けた。 もちろん、少年が王子であることや、騎士団が関わっていることは伏せて。
「相手は複数で…魔法を発動する、ほんの僅かな隙さえも与えてもらえませんでした。接近戦では、私は何もできなくて…」
話しているうちに、あの時の恐怖と悔しさが蘇り、声が震える。 ロンド先生は黙って私の話を聞き終えると、静かに頷いた。
「なるほど…実戦における近接戦闘の脅威、ですか。あなたがその壁に突き当たるとは、予想より早かったですが、いずれ通る道です」
「どうすれば、私は…?」
「魔法だけが力ではありません。むしろ、強靭な肉体と戦闘技術があってこそ、魔法はその真価を発揮するのです」
先生はそう言うと、ふと、懐かしむような目を細めた。
「私に、身体を鍛えるのが得意な知り合いがおりまして。少々粗野で、頭のてっぺんからつま先まで筋肉でできているような男ですが、その道の腕は確かです」
筋肉でできた男。その言葉に、自然とあのクマ族の兵士の姿が思い浮かんだ。
「その方は、一体…?」
「アルフレッドという、クマ族の男です。もしあなたに覚悟があるのなら、私が紹介して差し上げましょう。ただし…彼の訓練は、私の授業よりも遥かに厳しいですよ?」
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「望むところです。ぜひ、お願いします」
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「分かりました。では明日の午後、訓練場に一緒に行きましょう。彼に話を通しておきますので」
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