その「好き」はどこまで本気ですか？

華やかな嘘と本当の涙

逃走の果ての着信

エイミーの元へとたどり着いた私は、ほとんど懇願するように言った。

「ごめん、エイミー。ちょっと飲み過ぎたみたいで、気分が悪い。先に帰るね」
「え、大丈夫！？ 私も一緒に行こうか？」
「ううん、平気だから。タクシー呼ぶし。エイミーは楽しんで」

心配する彼女に無理やり笑顔を向けると、私は足早にパーティー会場を後にした。ホテルのエントランスでタクシーを捕まえ、その身体を後部座席に投げ出す。きらびやかな夜景が、窓の外を猛スピードで流れていった。

アパートに帰り着いた私は、ドレスのまま、ソファへと倒れ込む。感情も、身体も、もう限界だった。そのまま、泥のように深い眠りに落ちていった。

目を覚ましたのは、翌朝の六時。ソファで眠ってしまったせいで、身体の節々が痛む。昨夜の出来事が、悪夢のように蘇ってきた。サイラスの、あの、傷ついたような、困惑した顔。

重い身体を引きずってシャワーを浴び、少しだけ人間らしさを取り戻す。そして、恐る恐る、昨夜から放置していたスマートフォンを手に取った。
画面には、おびただしい数の通知が並んでいた。
エイミーから、一件。『大丈夫？』という短いメッセージ。
そして、残りの全ては、サイラスからのものだった。五件の不在着信と、十数件のメッセージ。

『エイミーから気分が悪いと聞いた。大丈夫？』
『何かあった？ 俺が何かしたなら教えてほしい』
『心配だから連絡をくれ』

彼のメッセージは、心配と、戸惑いと、そして、私に会いたいという切実な願いで溢れていた。その一つ一つが、罪悪感となって私の胸に突き刺さる。
今さら、何と返事をすればいいのかわからない。私は、昨夜ついた嘘を、そのまま続けることにした。

『ごめん、まだ体調が戻らなくて。少し眠れば治ると思う』

そう送信すると、一分も経たないうちに、画面が再び光った。

『わかった。今から見舞いに行く。何か欲しいものはある？』

「えっ」

思わず、声が漏れる。
まずい。距離を置くための嘘だったのに、これでは逆効果だ。私は慌てて彼に電話をかけたが、呼び出し音が鳴るだけで、彼が出る気配はない。もう、こちらに向かっているのかもしれない。

私はパニックのまま、部屋の中を見渡した。飲みっぱなしのマグカップ、脱ぎ散らかした服、そして、テーブルの半分を占領する、大量の研究資料の山。
こんな場所に、彼を入れるわけにはいかない。
絶望的な気持ちで、私は散らかった部屋の片付けを始めた。