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第2章
30,お買い物 Part,5
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他で買った物と同様に路地でアイテムボックスに突っ込んでいく。
ポーションは梱包されているのも構わず突っ込んでみたが入らなかった。ちゃんと紙を取らないとだめらしい。
面倒だったが大量にあるのでアルの隠密移動でももしかしたら割れるかもしれない。結構高かったのに割れてしまっては困るので1枚ずつ剥がして入れていく。
野営セットでも大き目の物や重量のある物を重点的に入れていくことにする。テントの骨組みは割りと大きく重量もある。この大きさなら3人か4人くらいは寝れる大きさになるだろう。こんなに大きいのが必要なんだろうか。まぁ狭いよりはいいか。
骨組みの他にも撥水仕様なのか、妙にテカっている布も結構な大きさなので突っ込んでおく。
救急キットみたいな物もあったがこれはアルに持たせておくべきだろう。小さい箱に色々入っているようだし、このままではアイテムボックスに入りそうにない。これが特殊な収納の類なら結構な値段したことになろうが、3000ラード以下で済んでいるんだしそんなことはないだろう。
その他にもコップやらリューネの雑貨屋でも買った歯ブラシみたいな物、恐らく野営セットの内容物だろう。取り出してる間に混ざってしまってもうわからない。
他にも果物ナイフサイズの小さなナイフ、シャベルや蝋燭なんかもあったが、とりあえず選別も面倒くさくなったので適当に突っ込んでいった。
宿に戻ったら選別しよう、うん。
最後に確認してみたが、ポーションは2枠で済んでいた。
怪我系と状態異常解除系に分かれているのは予想外だったが、1種類ずつではなくてよかった。
他の物はそれぞれ別枠になっている。やはり纏めるには種類が雑多すぎたか。
「アル、収納袋と財布出して」
「こちらにございます」
渡された財布用に買った収納袋小にはすでにお釣りでもらった銀貨が大量に入っている。
財布に使っている巾着袋より少し大きい程度の袋なので仕方ないが、財布の方も銅貨が大量に入っているようで結構ぱんぱんだ。
どちらからも半分くらいの量をアイテムボックスに突っ込んで減らして金貨を10枚ほど収納袋に入れておく。
全部アルに渡しておくよりは分散しておく方が安全だろう。でも買い物はアルに任せるので多めに渡しておくのも忘れない。
リュックの中はまだ半分くらいあるので初心者セットのボロ袋に適当に詰めておくことにした。
ボロ袋に鑑定をかけてみるとやはり収納袋小と同じような説明文だった。名前は収納袋大だったが。
初心者用装備などが入っていた袋だから意外と大きいので大なのだろう。
リュックの中身を片っ端からぶちこみ中身がなくなってもまだ収納袋大には入りそうだ。これは非常に使えるな。
でもやはり人前でやるのは憚られる。収納袋小でも結構な値段だったんだ。これだけの大きさの物となると……。
おまけのはずの初心者セットの袋がまさかのレアアイテムとは思わなかったぜ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
路地を出てリューネの雑貨屋方面に向かって歩いていく。
2つの太陽ももう中天から大分傾いている。人通りも微妙に減っていて歩き易い。
「次は武器屋だっけ?」
「答えは是。武器屋でもございますが、ただしくは武具店となります。
武器も防具も扱っている総合店でございます」
「まぁ武器は予備と投擲用のを買っておくくらいかなぁー。
防具はどうだろう。アル用の盾とオレ用の軽い鎧とかかな?」
「ワタリ様の機動力を損なわない物ですと限られますが恐らく問題ないでしょう。
私には安物で十分にございます」
「んー……ギルドとか色々見て分かってたけどさ、オレがつけられるような子供用の防具ってあるのかな?」
「答えは是。ホビットなどの低身長種族もおりますので揃っていると存じます」
「あーそっか。そういう種族いたね。んじゃ大丈夫か。
あ、アルにも安物じゃなくてちゃんとしたのを買うからね? アルが居なくなったら困るんだから」
「ワタリ様……恐悦至極にございます!」
立ち止まって顔を上げてぷるぷるする従者君にまたか、と思いながらも待ってあげる。
手を繋いでいるので彼が止まると当然自分も止まらざるを得ないのだ。
人通りが少なくなったとはいえ、いないわけではないので道行く人が視線を向けてくるがなんだかもう慣れてしまった。これも成長率増加Lv10の恩恵なのか。あまり嬉しくない恩恵だ。
しばらくすると感激で打ち震えていたぷるぷる君も元に戻ってオレに一礼してから歩き始める。心の中で小さく溜め息を吐くがそれほど悪い気がしないのはなぜだろう。
リューネの雑貨屋の店先は来店した時同様綺麗だ。ショーウィンドウから中が少し見えてお姉さん以外にもお姉さんとお揃いのエプロンをつけた数人の店員さんと思しき人が忙しそうに接客している。オレ達が入ったときにはお姉さんしかいなかったし、エプロンもつけていなかった。時間が早かったのかな? と横目に見ながら通りを進んでいく。
少し歩くと馬車が横を通り過ぎていった。馬車なんて実際に見るのは初めてだ。
大きな馬が2頭立ての馬車だ。
迫力がものすごい。馬ってこんなにでかいのか。
幼女の小さな体なので見上げるほどの巨大な馬と馬車が、街中なのでそれなりの速度とはいえすぐ近くを通り過ぎていくのだ。迫力満点なのも頷ける。
機会があったら乗ってみたいとは思うが異世界名物の乗り心地の悪い馬車だと嫌だなぁと適当に考えていると目的の場所がだんだんと近づいてきたようだ。
まだ遠めだったにも関わらず大きな看板にはオーラシア武具店と大きく書かれている。
看板からしてもかなり大きな店なのだろう。
近づくにつれてわかってきたが、この店は相当でかい。3階建ての建物で横幅が異常に長い。普通の店を3軒くらい並べた長さがある。
店の前面はショーウィンドウになっていて、たくさんの煌びやかな武器や防具が飾られている。
銀色の全身鎧をつけたマネキンに光が反射してすごく格好いい。たて掛けられているロングソードや斧のような刃と鉤がついた槍――ハルバートもまるで映画の中に出てくるような感じでワクワクする。
ランカスター魔道具店で見た物は荘厳さと業物のオーラが感じ取れるほどの物だったためワクワクよりはその迫力に圧倒されていたが、ショーウィンドウにある物は業物というには程遠い。
その分だけ楽しむ余裕があるとも言えるが。
中央の両開きの入り口は鳶同様の半分がスモークガラスの扉だったが、こちらは完全に開け放たれている。
中に入ってみても広々とした空間に棚やマネキンが置かれ、たくさんの武器防具が取り揃えてある。
客はそれなりにいるようだが、接客している店員は余っているようですぐ入店してきたオレ達に寄ってきた。
「いらっしゃいませ、オーラシア武具店にようこそ。今日はどのような物をお求めで?」
「我が主の装備と私用の防具をいくつか。この店にある最高の物を見せていただけますか?」
「これはこれは……! ではこちらへ、我がオーラシア武具店では初級の冒険者の方から上級者の方まで数多くのご期待に応えられるように品揃えを万全にしております。
もちろん貴族のご令嬢用の装備なども扱っております。
きっと満足していただけると思います」
「あー、飾りではなく実用性を重視した物を見せてもらえます?」
「なんと……ですが、よろしいのですか、お嬢様?
実用性が高い物ですと装飾などが少ない物になってしまいがちになりますが」
「む……そうですね……我が主に相応しい物となるとやはり……」
「いやいやいや、装飾とかいらないから」
「ワタリ様、確かにワタリ様には装飾など必要ない溢れんばかりの美しさがありますが、それとこれとは別物なのです」
「そうですとも、お嬢様の麗しさを引き立てるためにも装飾の少ない物などはあまりお奨めすることは……」
「……いいから、装飾とかいらないから、普通のを見せなさい!」
「は、はいッ!」
2人して息を合わせたかのように言ってくるものだからつい語気を強くして睨んでしまった。なんだかこの2人の言うままにしていたら終いにはドレスとか着せられそうな気がしたのだ。それは全力で回避しなければいけない。
初めが肝心というしな。言うべきことは最初に言っておかなければいけない。
それに……広場でのことをまだ引きずっているようでちょっと煩わしかった。めんどくさいことはなしにしてもらいたい。
一気に顔色が青くなった店員がものすごい量の汗をかき始めている。
そんなに怯える事は無いと思うんだがなぁ。これも増加系スキルの恩恵か? 恫喝力があがってるとか酷い恩恵だな。
それなりにいる客達も何事かとこちらを見ているがオレが視線を向けるとすぐに視線を逸らしている。
がたいのいいマッチョな顔に大きな傷のあるスキンヘッドのおっちゃんまで視線を逸らすのでオレの恫喝力はどこまで上がってしまったのかちょっと不安だ。
「はぁ……大きな声だしてごめんなさい。案内してくれますか?」
「は、はい! こ、こちらです!」
「さすがは我が主。見事な威圧にございます」
「アルぅ~……装飾なんていらないんだからね? 防具っていうのは実用性重視が一番だよ? 死んでからじゃ遅いんだから」
「答えは是。ですが否。
ワタリ様の美しさを損なうような防具は認められません」
「……サイデスカ」
ぶれない執事君に少々げんなりとしながらも汗びっしょりの店員さんに案内されて2階へと移動していく。
外から見ても予想がついていたが、この店は2階も売り場のようだ。3階への階段は『関係者以外立ち入り禁止』と書かれていたので倉庫とかになっているのかもしれない。
1階でちょっと目立ってしまったので2階に移動してくれたのは助かる。
案内されていったのは大柄な老紳士といった感じの人のところだった。
老紳士と店員が何やら少し話すとこちらに向き直る。
「ここから先はこちらの者が案内を務めます。そ、それでは私はこれで失礼します」
「いらっしゃいませ、お客様。こちらのフロアには中級者から上級者向けの装備が取り揃えてあります。お値段も張りますが、その分性能の方も満足頂ける物が揃ってございます」
どうやらフロア担当者と交代ってことらしい。まぁちょっと脅しちゃったしあの人にあのまま案内させるのも酷だろうからちょうどいい。
「ではまずはお嬢様用の防具からでよろしいですか?」
「あ、はい。お願いします」
「では、こちらへ」
案内されて行った場所は子供サイズの鎧や篭手、靴なんかが置かれている場所だった。
棚に並べてある種類はそれなりに多いけれど、ほとんどオレが着れるようなサイズではない。
サイズを測って倉庫から取ってくるような感じなのだろうか。もしくはオーダーメイド?
ここに来るまでにもサイズの種類があんまりないように見られた。
服屋には大量にサイズの違う服も売っていたのにここはそういうこともない。
まぁ防具だから畳んでおくわけにも行かないからスペース確保のためだろうか。防具と服を一緒にしちゃだめだよな。
「こちらの品は希少な魔法金属――ミスリルを使用した品で軽く防御力も優れております。その上防御魔法が付与されおりさらに防御力も上がっている一品にございます。
装着部のずれを防止する為に最新式のアタッチメントを使用しております。
名称は 白狼のミスリルの篭手[物防Lv5] にございます」
老店員が差し出してきた篭手は銀色の篭手で所々に精緻な狼の細工が施されている見目麗しい品だ。名前はそのまんまだけどLv5ってことは結構すごい?
魔法で防御力もカバーされているようだけど……どうみてもオレの腕のサイズには大きすぎる。
「あの……大きいんですけど?」
「サイズに関しては問題はありません。当店の防具には全てサイズ調整の魔法が刻印されております。
装備して頂ければ自動でサイズが変化致します」
「へぇーそれは便利だな。どれどれ」
「失礼致します」
篭手を腕につけてアルに紐のようなマジックテープのようななんだかよくわからないアタッチメントをつけてもらう。
するとオレの腕より明らかに大きかった篭手が見る見るうちに小さくなってぴったりのサイズになる。
金属がものすごい速さで収縮していくのだ。これはすごい。まさにファンタジーだ。
ぴったりのサイズになった篭手はアタッチメントのおかげで激しく動いてもずれるようなこともなさそうだ。
ちょっと腕を振ってみてもずれることはない。
重さもつけているのがわからないくらいに軽いし、これで防御力も十分だというなら文句は無い品だ。
……割と装飾も綺麗だし。いらないといった装飾だが、やっぱりあると気分がいい。
前提とする実用性がクリアされるなら、綺麗な方がいいのだ。うん、何も間違ってない。
鑑定を使ってみるとやはり高性能な防具らしい説明文が出てきた。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
白狼のミスリルの篭手[物防Lv5]
希少魔法金属ミスリルで作られた篭手。
強力な物理防御の魔法が施されており、軽重量高防御力を実現している。
裏側に施されたサイズ調整の刻印によりある程度のサイズ調整を自動で行う。
表面にシルバーウルフの細工が施されている。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
スロットが空いていないのが気になるところだけど、説明文を読んでも結構な品なのがわかる。
「なかなかいい感じかな」
「そうでございましょう。次はこちらを」
アルにアタッチメントを外してもらって満足げな店員さんに返すと次の物を渡される。これも篭手だ。だが今度のは全体的に青く、いくつもの花の装飾が施されている。
「こちらは水と土の魔法抵抗力を増幅してある一品にございます。材質は先ほどの物同様のミスリルを使用しており、重量防御力共に十分でございますが先ほどの物が防御力を重視した物となり、こちらは魔法抵抗力を重視した物となります。
名称は 水仙のミスリルの篭手[水耐Lv5 土耐Lv5] でございます」
「へぇ~付与されてる魔法によって違うって感じかな?」
「その通りにございます。物によって施されている装飾にも違いがあり、自由度が高いのも特徴の1つにございます」
先ほどの篭手同様、精緻な水仙の花の細工の施された篭手を今度は装備しないで色んな角度から見てみる。
表側にはいくつもの水仙の花が咲き乱れ、裏側には文字が刻印されている。共通語ではないようで読めなかったがこれがサイズ調整の刻印ってやつだろうか。
装備の仕方は先ほどの篭手同様のアタッチメント式。慣れれば1人でもつけられるんだろうか。まぁアルがいるから問題ないか。
鑑定してみたが、魔法抵抗の記述が追加されて防御の記述が消えたくらいであまり変化はなかった。スロットもついていないし、やはりスロットつきは珍しいのだろうか。
その後にも篭手だけでも数種類お勧めされた。
たくさんの付与魔法と精緻な装飾。色取り取りの鮮やかな装飾の物もあれば、シンプルな物もあり見ているだけでも飽きないくらいだった。
ポーションは梱包されているのも構わず突っ込んでみたが入らなかった。ちゃんと紙を取らないとだめらしい。
面倒だったが大量にあるのでアルの隠密移動でももしかしたら割れるかもしれない。結構高かったのに割れてしまっては困るので1枚ずつ剥がして入れていく。
野営セットでも大き目の物や重量のある物を重点的に入れていくことにする。テントの骨組みは割りと大きく重量もある。この大きさなら3人か4人くらいは寝れる大きさになるだろう。こんなに大きいのが必要なんだろうか。まぁ狭いよりはいいか。
骨組みの他にも撥水仕様なのか、妙にテカっている布も結構な大きさなので突っ込んでおく。
救急キットみたいな物もあったがこれはアルに持たせておくべきだろう。小さい箱に色々入っているようだし、このままではアイテムボックスに入りそうにない。これが特殊な収納の類なら結構な値段したことになろうが、3000ラード以下で済んでいるんだしそんなことはないだろう。
その他にもコップやらリューネの雑貨屋でも買った歯ブラシみたいな物、恐らく野営セットの内容物だろう。取り出してる間に混ざってしまってもうわからない。
他にも果物ナイフサイズの小さなナイフ、シャベルや蝋燭なんかもあったが、とりあえず選別も面倒くさくなったので適当に突っ込んでいった。
宿に戻ったら選別しよう、うん。
最後に確認してみたが、ポーションは2枠で済んでいた。
怪我系と状態異常解除系に分かれているのは予想外だったが、1種類ずつではなくてよかった。
他の物はそれぞれ別枠になっている。やはり纏めるには種類が雑多すぎたか。
「アル、収納袋と財布出して」
「こちらにございます」
渡された財布用に買った収納袋小にはすでにお釣りでもらった銀貨が大量に入っている。
財布に使っている巾着袋より少し大きい程度の袋なので仕方ないが、財布の方も銅貨が大量に入っているようで結構ぱんぱんだ。
どちらからも半分くらいの量をアイテムボックスに突っ込んで減らして金貨を10枚ほど収納袋に入れておく。
全部アルに渡しておくよりは分散しておく方が安全だろう。でも買い物はアルに任せるので多めに渡しておくのも忘れない。
リュックの中はまだ半分くらいあるので初心者セットのボロ袋に適当に詰めておくことにした。
ボロ袋に鑑定をかけてみるとやはり収納袋小と同じような説明文だった。名前は収納袋大だったが。
初心者用装備などが入っていた袋だから意外と大きいので大なのだろう。
リュックの中身を片っ端からぶちこみ中身がなくなってもまだ収納袋大には入りそうだ。これは非常に使えるな。
でもやはり人前でやるのは憚られる。収納袋小でも結構な値段だったんだ。これだけの大きさの物となると……。
おまけのはずの初心者セットの袋がまさかのレアアイテムとは思わなかったぜ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
路地を出てリューネの雑貨屋方面に向かって歩いていく。
2つの太陽ももう中天から大分傾いている。人通りも微妙に減っていて歩き易い。
「次は武器屋だっけ?」
「答えは是。武器屋でもございますが、ただしくは武具店となります。
武器も防具も扱っている総合店でございます」
「まぁ武器は予備と投擲用のを買っておくくらいかなぁー。
防具はどうだろう。アル用の盾とオレ用の軽い鎧とかかな?」
「ワタリ様の機動力を損なわない物ですと限られますが恐らく問題ないでしょう。
私には安物で十分にございます」
「んー……ギルドとか色々見て分かってたけどさ、オレがつけられるような子供用の防具ってあるのかな?」
「答えは是。ホビットなどの低身長種族もおりますので揃っていると存じます」
「あーそっか。そういう種族いたね。んじゃ大丈夫か。
あ、アルにも安物じゃなくてちゃんとしたのを買うからね? アルが居なくなったら困るんだから」
「ワタリ様……恐悦至極にございます!」
立ち止まって顔を上げてぷるぷるする従者君にまたか、と思いながらも待ってあげる。
手を繋いでいるので彼が止まると当然自分も止まらざるを得ないのだ。
人通りが少なくなったとはいえ、いないわけではないので道行く人が視線を向けてくるがなんだかもう慣れてしまった。これも成長率増加Lv10の恩恵なのか。あまり嬉しくない恩恵だ。
しばらくすると感激で打ち震えていたぷるぷる君も元に戻ってオレに一礼してから歩き始める。心の中で小さく溜め息を吐くがそれほど悪い気がしないのはなぜだろう。
リューネの雑貨屋の店先は来店した時同様綺麗だ。ショーウィンドウから中が少し見えてお姉さん以外にもお姉さんとお揃いのエプロンをつけた数人の店員さんと思しき人が忙しそうに接客している。オレ達が入ったときにはお姉さんしかいなかったし、エプロンもつけていなかった。時間が早かったのかな? と横目に見ながら通りを進んでいく。
少し歩くと馬車が横を通り過ぎていった。馬車なんて実際に見るのは初めてだ。
大きな馬が2頭立ての馬車だ。
迫力がものすごい。馬ってこんなにでかいのか。
幼女の小さな体なので見上げるほどの巨大な馬と馬車が、街中なのでそれなりの速度とはいえすぐ近くを通り過ぎていくのだ。迫力満点なのも頷ける。
機会があったら乗ってみたいとは思うが異世界名物の乗り心地の悪い馬車だと嫌だなぁと適当に考えていると目的の場所がだんだんと近づいてきたようだ。
まだ遠めだったにも関わらず大きな看板にはオーラシア武具店と大きく書かれている。
看板からしてもかなり大きな店なのだろう。
近づくにつれてわかってきたが、この店は相当でかい。3階建ての建物で横幅が異常に長い。普通の店を3軒くらい並べた長さがある。
店の前面はショーウィンドウになっていて、たくさんの煌びやかな武器や防具が飾られている。
銀色の全身鎧をつけたマネキンに光が反射してすごく格好いい。たて掛けられているロングソードや斧のような刃と鉤がついた槍――ハルバートもまるで映画の中に出てくるような感じでワクワクする。
ランカスター魔道具店で見た物は荘厳さと業物のオーラが感じ取れるほどの物だったためワクワクよりはその迫力に圧倒されていたが、ショーウィンドウにある物は業物というには程遠い。
その分だけ楽しむ余裕があるとも言えるが。
中央の両開きの入り口は鳶同様の半分がスモークガラスの扉だったが、こちらは完全に開け放たれている。
中に入ってみても広々とした空間に棚やマネキンが置かれ、たくさんの武器防具が取り揃えてある。
客はそれなりにいるようだが、接客している店員は余っているようですぐ入店してきたオレ達に寄ってきた。
「いらっしゃいませ、オーラシア武具店にようこそ。今日はどのような物をお求めで?」
「我が主の装備と私用の防具をいくつか。この店にある最高の物を見せていただけますか?」
「これはこれは……! ではこちらへ、我がオーラシア武具店では初級の冒険者の方から上級者の方まで数多くのご期待に応えられるように品揃えを万全にしております。
もちろん貴族のご令嬢用の装備なども扱っております。
きっと満足していただけると思います」
「あー、飾りではなく実用性を重視した物を見せてもらえます?」
「なんと……ですが、よろしいのですか、お嬢様?
実用性が高い物ですと装飾などが少ない物になってしまいがちになりますが」
「む……そうですね……我が主に相応しい物となるとやはり……」
「いやいやいや、装飾とかいらないから」
「ワタリ様、確かにワタリ様には装飾など必要ない溢れんばかりの美しさがありますが、それとこれとは別物なのです」
「そうですとも、お嬢様の麗しさを引き立てるためにも装飾の少ない物などはあまりお奨めすることは……」
「……いいから、装飾とかいらないから、普通のを見せなさい!」
「は、はいッ!」
2人して息を合わせたかのように言ってくるものだからつい語気を強くして睨んでしまった。なんだかこの2人の言うままにしていたら終いにはドレスとか着せられそうな気がしたのだ。それは全力で回避しなければいけない。
初めが肝心というしな。言うべきことは最初に言っておかなければいけない。
それに……広場でのことをまだ引きずっているようでちょっと煩わしかった。めんどくさいことはなしにしてもらいたい。
一気に顔色が青くなった店員がものすごい量の汗をかき始めている。
そんなに怯える事は無いと思うんだがなぁ。これも増加系スキルの恩恵か? 恫喝力があがってるとか酷い恩恵だな。
それなりにいる客達も何事かとこちらを見ているがオレが視線を向けるとすぐに視線を逸らしている。
がたいのいいマッチョな顔に大きな傷のあるスキンヘッドのおっちゃんまで視線を逸らすのでオレの恫喝力はどこまで上がってしまったのかちょっと不安だ。
「はぁ……大きな声だしてごめんなさい。案内してくれますか?」
「は、はい! こ、こちらです!」
「さすがは我が主。見事な威圧にございます」
「アルぅ~……装飾なんていらないんだからね? 防具っていうのは実用性重視が一番だよ? 死んでからじゃ遅いんだから」
「答えは是。ですが否。
ワタリ様の美しさを損なうような防具は認められません」
「……サイデスカ」
ぶれない執事君に少々げんなりとしながらも汗びっしょりの店員さんに案内されて2階へと移動していく。
外から見ても予想がついていたが、この店は2階も売り場のようだ。3階への階段は『関係者以外立ち入り禁止』と書かれていたので倉庫とかになっているのかもしれない。
1階でちょっと目立ってしまったので2階に移動してくれたのは助かる。
案内されていったのは大柄な老紳士といった感じの人のところだった。
老紳士と店員が何やら少し話すとこちらに向き直る。
「ここから先はこちらの者が案内を務めます。そ、それでは私はこれで失礼します」
「いらっしゃいませ、お客様。こちらのフロアには中級者から上級者向けの装備が取り揃えてあります。お値段も張りますが、その分性能の方も満足頂ける物が揃ってございます」
どうやらフロア担当者と交代ってことらしい。まぁちょっと脅しちゃったしあの人にあのまま案内させるのも酷だろうからちょうどいい。
「ではまずはお嬢様用の防具からでよろしいですか?」
「あ、はい。お願いします」
「では、こちらへ」
案内されて行った場所は子供サイズの鎧や篭手、靴なんかが置かれている場所だった。
棚に並べてある種類はそれなりに多いけれど、ほとんどオレが着れるようなサイズではない。
サイズを測って倉庫から取ってくるような感じなのだろうか。もしくはオーダーメイド?
ここに来るまでにもサイズの種類があんまりないように見られた。
服屋には大量にサイズの違う服も売っていたのにここはそういうこともない。
まぁ防具だから畳んでおくわけにも行かないからスペース確保のためだろうか。防具と服を一緒にしちゃだめだよな。
「こちらの品は希少な魔法金属――ミスリルを使用した品で軽く防御力も優れております。その上防御魔法が付与されおりさらに防御力も上がっている一品にございます。
装着部のずれを防止する為に最新式のアタッチメントを使用しております。
名称は 白狼のミスリルの篭手[物防Lv5] にございます」
老店員が差し出してきた篭手は銀色の篭手で所々に精緻な狼の細工が施されている見目麗しい品だ。名前はそのまんまだけどLv5ってことは結構すごい?
魔法で防御力もカバーされているようだけど……どうみてもオレの腕のサイズには大きすぎる。
「あの……大きいんですけど?」
「サイズに関しては問題はありません。当店の防具には全てサイズ調整の魔法が刻印されております。
装備して頂ければ自動でサイズが変化致します」
「へぇーそれは便利だな。どれどれ」
「失礼致します」
篭手を腕につけてアルに紐のようなマジックテープのようななんだかよくわからないアタッチメントをつけてもらう。
するとオレの腕より明らかに大きかった篭手が見る見るうちに小さくなってぴったりのサイズになる。
金属がものすごい速さで収縮していくのだ。これはすごい。まさにファンタジーだ。
ぴったりのサイズになった篭手はアタッチメントのおかげで激しく動いてもずれるようなこともなさそうだ。
ちょっと腕を振ってみてもずれることはない。
重さもつけているのがわからないくらいに軽いし、これで防御力も十分だというなら文句は無い品だ。
……割と装飾も綺麗だし。いらないといった装飾だが、やっぱりあると気分がいい。
前提とする実用性がクリアされるなら、綺麗な方がいいのだ。うん、何も間違ってない。
鑑定を使ってみるとやはり高性能な防具らしい説明文が出てきた。
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白狼のミスリルの篭手[物防Lv5]
希少魔法金属ミスリルで作られた篭手。
強力な物理防御の魔法が施されており、軽重量高防御力を実現している。
裏側に施されたサイズ調整の刻印によりある程度のサイズ調整を自動で行う。
表面にシルバーウルフの細工が施されている。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
スロットが空いていないのが気になるところだけど、説明文を読んでも結構な品なのがわかる。
「なかなかいい感じかな」
「そうでございましょう。次はこちらを」
アルにアタッチメントを外してもらって満足げな店員さんに返すと次の物を渡される。これも篭手だ。だが今度のは全体的に青く、いくつもの花の装飾が施されている。
「こちらは水と土の魔法抵抗力を増幅してある一品にございます。材質は先ほどの物同様のミスリルを使用しており、重量防御力共に十分でございますが先ほどの物が防御力を重視した物となり、こちらは魔法抵抗力を重視した物となります。
名称は 水仙のミスリルの篭手[水耐Lv5 土耐Lv5] でございます」
「へぇ~付与されてる魔法によって違うって感じかな?」
「その通りにございます。物によって施されている装飾にも違いがあり、自由度が高いのも特徴の1つにございます」
先ほどの篭手同様、精緻な水仙の花の細工の施された篭手を今度は装備しないで色んな角度から見てみる。
表側にはいくつもの水仙の花が咲き乱れ、裏側には文字が刻印されている。共通語ではないようで読めなかったがこれがサイズ調整の刻印ってやつだろうか。
装備の仕方は先ほどの篭手同様のアタッチメント式。慣れれば1人でもつけられるんだろうか。まぁアルがいるから問題ないか。
鑑定してみたが、魔法抵抗の記述が追加されて防御の記述が消えたくらいであまり変化はなかった。スロットもついていないし、やはりスロットつきは珍しいのだろうか。
その後にも篭手だけでも数種類お勧めされた。
たくさんの付与魔法と精緻な装飾。色取り取りの鮮やかな装飾の物もあれば、シンプルな物もあり見ているだけでも飽きないくらいだった。
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「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
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