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第2章
29,お買い物 Part,4
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必要そうなものは大分買いました、と言いたげな荷物の量のアルを見ながらお姉さんとのポーション談義を一時中断する。
「おかえり。必要な物は揃った?」
【あとお金足りた?】
「答えは是。必要な品は購入できたかと存じます」
【答えは是。ですが、残金が12ラードになってしまいましたので補充をお願いいたします】
「了解。あ、そうそうポーション系って買ってないよね? こっちきてなかったし」
「答えは是。種類が多々ありますのでワタリ様が必要と仰る物のみを厳選するべきかと愚考致しました」
「そっか。んじゃ選ぼっか。
といっても一通り揃えちゃうつもりだけどね」
「お、やっぱり揃えちゃうんだ! まぁあたしもその方がいいと思うよ。でも無理に揃えてお金なくなっちゃったら意味がないからねぇ。必要な物だけっていうのもありだよ?」
「はい、ありがとうございます」
アドバイスをくれるお姉さんに笑顔でお礼を返すと、出口の方からお姉さんを呼ぶ声が聞こえる。
「えへへ……呼ばれちゃった……実はねぇ……あたし今受けてる依頼が終わったらあそこにいる人と結婚しちゃうんだぁ……えへへ~」
「そうなんですか、おめでとうございます」
「えへへ、ありがとう……おっと、もう行かないとまずいや。ごめんね、ほんとは一緒に選んであげたかったんだけど……」
「大丈夫です。ジーナさんに教えてもらったアドバイスを参考に自分で選んでみます」
「そっかそっか。うん、君ならきっと大丈夫だね!
なんかきっとまたどこかで会う気がするよ! そのときまた話そうね!」
「はい、また」
「うん、またねー!」
手を振って去っていくジーナさんに手を振り返す。
ジーナさん……あなたのさっきの台詞は完全に死亡フラグでしたよ……がんばって生きて帰ってきてください。
呼んでいた男性の腕に自分の腕を絡ませながら店を出て行ったジーナさんに祝福と共にフラグブレイカーの念を贈っておいた。
2人を見送ってからアルと一緒にポーションを選定する作業に戻る。
ついでに外套の下でアイテムボックスから金貨を3枚取り出しておいた。
「じゃぁあっちの棚の方から順番に選んでいこうか」
「畏まりました」
アルが差し出した手を掴むと同時に金貨を手渡しておく。もうお金もなくなってるからな補充しておかないといけない。でも大っぴらにやるのはどうしても憚られる。
宿でも金貨を出したら女将さんが慌ててたし、オレみたいな外見が完全に子供なのが、公然と金貨を渡していたら目を付けられるかもしれないからな。
最初の怪我系のポーションの棚に戻ってから手を離すとアルも金貨を何気ない動作で仕舞っている。わかってないとちょっと身じろぎした程度にしか見えない動きだ。さすがすぎる。
「んー怪我系も一応Lv1を1種類ずつ買っておくか。どれもLv1なら50ラードだし」
「さすがは我が主。懸命な判断にございます」
「ん。備えあればなんとやらだからね」
怪我系のポーションLv1で一番小さい容器を1種類ずつ掴む。
ジーナさんの話ではほとんど全部必需品という結果になってしまっていたし、オレには一応初級魔法:体力回復もある。
現状のステータスは相当な部類だろうから大怪我を負うようなことも少ないだろう。黒狼石の短剣によるブーストはかなりの自信をオレに与えている。
危険なところにいくつもりもないし。まずはLv1を使ってみてどの程度の効果かを体験してから高いLvのポーションの購入を考えよう。
次の棚に移ろうと思ったが、怪我系だけでも数種類あるので結構嵩張る。
買い物籠なんて殊勝な物は当然ない。大量に買う場合はカウンターに一時取り置きしてもらう感じだろうか。服屋でもそうしてたし。
瓶の小さいポーションといえども数種類あるのでこれだけ持っただけでもオレの両手は塞がってしまった。
「ワタリ様、カウンターに置いてきますのでお渡し頂けますか?」
「うん、よろしく」
アルに渡すとそそくさとカウンターの方に持っていった。やっぱり買い物籠とか置いておいた方がいいんじゃないだろうか。ポーションなんて結構使うだろうし、大量に買っていく人だって多いんじゃないかなぁ。
アルがカウンターに持っていっている間に状態異常解除系を一通りLv3のポーションで選んでいく。容器の大きさは普通サイズだ。普通サイズの容器に入っている量で大体5回分らしい。ポップに色々書いてあるのは便利だ。
怪我系に比べても倍以上の種類のある状態異常解除系だ。Lv1から揃えていくとアイテムボックスもかなりふさいでしまうのではないだろうか。
いやもしかしたら、例の適当仕様でポーション類として纏めてくれるかもしれないけれど。
Lv3になると値段もLv1の5倍から6倍する。でもこれくらいなら必要経費だ。怪我と違って状態異常というのは馴染みがない。試しに食らってなどと悠長なことは言ってられないからな。
「ワタリ様、そちらのポーションもお預かり致します」
「うん、はい」
戻ってきたアルに棚から取り出していた各種状態異常解除系ポーションLv3を渡していく。
戻ってきたアルは持っていた紙袋がなくなっていた。カウンターにでも預けてきたのだろうか。
両手が空いている分持てる種類も増えたのでどんどん渡していく。
全種類の状態異常解除系を購入する予定だが、万能薬は当然置いてない。そんなものがあったら全種類制覇しようなんて思わないからな。もしあっても超高いだろうし。
全種類のポーションをカウンターに持っていったアルに店員さんはどんな顔するのかな、と付いて行くと割と普通に対応している。オレ達みたいな客も少なくないのだろうか。
まぁアルが回復魔法は使い手が少ないって言ってたような気がする。あ、即効性のある使い手だっけ? まぁポーションのポップにも怪我系はじわじわ効くみたいな注意書きがあったしな。状態異常解除系は即効性らしいが。
それなら状態異常解除系ポーションをたくさん買っていく人が結構いても不思議じゃないな。
お会計はポップに値段もついていたのもあって、ぴったり計算できていた。予め金貨渡しておいてよかったよ。全部で7420ラードもした……。
高すぎだよポーション……。Lv2でもよかったかもしれない……。
アルの交渉術が見れるかと思ったがポーションは値引きが効かない代物なのだろうか、今回は値札通りに支払っている。
まぁ今更だ。気を取り直して次へ行こう。
紙袋はやはりカウンターに預けていた。ポーションはリュックにまだ入る箇所があったようで梱包して詰め込まれている。瓶詰めなので大量にあるため梱包しないと割れてしまうのだろう。アルの隠密移動はすごいとはいえ、店員はそんなことは知らないからな。
「お待たせいたしました」
「おっけーじゃぁ次行こうか」
【んじゃまた路地に入ってアイテムボックスに詰め込んじゃおうか】
「畏まりました」
紙袋を抱えていてもオレと手を繋ぐことは忘れない従者君。
会計カウンターから離れようとしたところでふと小さな袋が売られているのに目が留まった。
小さな袋なのに値段が異様に高い。ポップには同時収納可能と書かれている。
【アル、同時収納可能って書かれてる袋があるんだけど何これ?】
【その袋は初心者セットの入っていた袋同様に中身が入った状態でもアイテムボックスに収納できる特殊な袋にございます】
【え……そんな袋普通に売ってるんだ!】
【答えは是。通常の袋とは違い特殊な物ですが販売されています】
【へぇ~……でも小さいね。しかも高い】
【これが一般的な値段かと存じます】
【……ねぇ、もしかして初心者セットのあの袋って再利用できるの?】
【答えは是。もちろんにございます】
【まじかー……てっきり一回取り出したら普通の袋になってるのかと思ってたー。
そうだよなー誰も普通の袋に戻るなんていってないもんなー……よし、宿に戻ったら分けておきたい物とか入れておこうかな】
袋を眺めながら念話をしているとカウンターにいた太った店員さんが何やら近づいてくる。大量にポーションやら何やら買ったし、上客だと判断してお奨めでもしてくるつもりなのか。
太ってるから近づいてくるのがすぐわかるよ。アルみたいな隠密移動をしなさい、隠密移動を。
「お客様こちらは当店でも一番の収納袋になっております。どうぞお手にとって見てください」
「はぁ」
アルが勧められると思ったらオレに勧めてきた。幼女連れで大量の買い物をする人物、これだけで金持ちがどちらであるのか見抜いたということだろうか。商人恐るべし……いや普通か?
持ってみた袋は財布にしている茶巾袋より少し大きい程度。収納袋扱いするにはいささか小さすぎる。
だが飾られている中では1番大きいのも確か。装飾なんかも入っていて見た目も美しい。
初心者セットの袋なんてずた袋以外の言い方がなかったくらいのボロ袋だったしな。
「確かに綺麗な袋ですね」
「そうでございましょう! この袋はかの名高き――」
何やら太い物体が袋のアピールを始めてしまった。
袋の由来や誰が作ったかなんてどうでもいいので興味が沸かないので聞き流して収納袋を鑑定してみる。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
収納袋小
袋の中に収納した状態でアイテムボックスに入れることが出来る袋。
容量が小さいのであまり入らない。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
うん、そのまんまだった。
しかしやっぱり小なのねこれ。他にも小さいのもあるけどそっちのは極小とかになるんだろうか。まぁ別にどうでもいいけど。
財布として使うには便利かもしれない。アイテムボックスを拡張しないでお金を一括管理できるのは魅力だ。
内容物は取り出してみないとわからないっぽいけど、それでも有用だろう。
財布以外にも細々とした物を入れるのにも使えるだろうし。
店員さんは未だにアピールを続けている。最早薀蓄の領域に突入したようだ。ほんとよく回る舌だこと。
【アル、これを財布の代わりにどうかな?】
【それは名案にございます】
【うんうん、ちょっと高いけど、銀貨も残り少ないし両替の代わりにもなるし買っとこうか。
あとちょっと値切っておいて、高いからさ】
【畏まりました】
「店員さん店員さん」
「さる名家の、あ、はい。なんでございましょう」
「これ買います」
「おぉ! ありがとうございます。ではこちらに」
「んじゃ頼んだよ」
「畏まりました」
アルがカウンターに行く前に値切り交渉を始める。
最初は袋を褒め、そこから相手の服やセンスなどを褒め始めている。店員も褒められてかなり上機嫌だ。
次は店員の立場などをさり気無い会話で聞き出している。彼はどうやらここの店主であり責任者。つまり販売価格なんかも彼がどうこうできる地位にあるということだ。これは大きい。責任者以外の雇われとかだった場合は、勝手に値引きすると最悪首になったりもするからな。
あちらさんはこっちを貴族やお金持ちだと思っているはずなので、アルもその辺を意識して交渉に臨んでいる。言葉の端々にそれっぽい何かを匂わせながら喋っているのだ。
そして上機嫌の店主にアルがズバッと切り込んだ。
アルの提示した金額は元値の7割。結構いくね。
さすがに店主もその額は顔が引きつっている。だがアルの攻勢はまだ終わらない。その後自分が何を買ったかを店主に思い出させる工作をさり気無く行っている。
オレ達が買ったのは冒険者にとっての日用雑貨とポーションだ。しかもLv3を1種類ずつとはいえ大量に。
アルの話術により店主もリピーターとしてさらなる売り上げが期待できると思わされている。まぁもしかしたらその通りになるかもしれないけど。
決定打はやはりニコニコ現金払いだった。カード払いなんてあるのか知らんが。
アルが見せたラード金貨。これで決まった……ように見えて、ここからがアルの交渉術の真骨頂だったようだ。
結局のところ、元値の4割5分で購入することに成功。
アル半端ねぇ。他のところでもさり気無い値切り交渉をしてたようだし、この執事君はほんと頼りになるな。
とはいっても元値がかなり高かったので結構な額を支払うことにはなった。
収納袋は高い。交渉はアルに任せた方がいい。2つ勉強になった。
やり遂げた感がある執事君と手を繋いで出口へ向かう。
ドアを潜る時は一旦離したけど、外に出るとすぐに繋ぎなおす。
なんだかアルと手を繋ぐのが当たり前になってしまった。まだ2日目なのに不思議だ。
店を出る時に大きな声でありがとうございました、またのお越しをお待ち申し上げております! といい声で言われた。あれだけ値切られたのに上機嫌の店主だ。
アルの交渉術はほんとに恐ろしいが、頼りになる。
隣を歩く頼もしい執事君を思いながら店横の路地に入った。
「おかえり。必要な物は揃った?」
【あとお金足りた?】
「答えは是。必要な品は購入できたかと存じます」
【答えは是。ですが、残金が12ラードになってしまいましたので補充をお願いいたします】
「了解。あ、そうそうポーション系って買ってないよね? こっちきてなかったし」
「答えは是。種類が多々ありますのでワタリ様が必要と仰る物のみを厳選するべきかと愚考致しました」
「そっか。んじゃ選ぼっか。
といっても一通り揃えちゃうつもりだけどね」
「お、やっぱり揃えちゃうんだ! まぁあたしもその方がいいと思うよ。でも無理に揃えてお金なくなっちゃったら意味がないからねぇ。必要な物だけっていうのもありだよ?」
「はい、ありがとうございます」
アドバイスをくれるお姉さんに笑顔でお礼を返すと、出口の方からお姉さんを呼ぶ声が聞こえる。
「えへへ……呼ばれちゃった……実はねぇ……あたし今受けてる依頼が終わったらあそこにいる人と結婚しちゃうんだぁ……えへへ~」
「そうなんですか、おめでとうございます」
「えへへ、ありがとう……おっと、もう行かないとまずいや。ごめんね、ほんとは一緒に選んであげたかったんだけど……」
「大丈夫です。ジーナさんに教えてもらったアドバイスを参考に自分で選んでみます」
「そっかそっか。うん、君ならきっと大丈夫だね!
なんかきっとまたどこかで会う気がするよ! そのときまた話そうね!」
「はい、また」
「うん、またねー!」
手を振って去っていくジーナさんに手を振り返す。
ジーナさん……あなたのさっきの台詞は完全に死亡フラグでしたよ……がんばって生きて帰ってきてください。
呼んでいた男性の腕に自分の腕を絡ませながら店を出て行ったジーナさんに祝福と共にフラグブレイカーの念を贈っておいた。
2人を見送ってからアルと一緒にポーションを選定する作業に戻る。
ついでに外套の下でアイテムボックスから金貨を3枚取り出しておいた。
「じゃぁあっちの棚の方から順番に選んでいこうか」
「畏まりました」
アルが差し出した手を掴むと同時に金貨を手渡しておく。もうお金もなくなってるからな補充しておかないといけない。でも大っぴらにやるのはどうしても憚られる。
宿でも金貨を出したら女将さんが慌ててたし、オレみたいな外見が完全に子供なのが、公然と金貨を渡していたら目を付けられるかもしれないからな。
最初の怪我系のポーションの棚に戻ってから手を離すとアルも金貨を何気ない動作で仕舞っている。わかってないとちょっと身じろぎした程度にしか見えない動きだ。さすがすぎる。
「んー怪我系も一応Lv1を1種類ずつ買っておくか。どれもLv1なら50ラードだし」
「さすがは我が主。懸命な判断にございます」
「ん。備えあればなんとやらだからね」
怪我系のポーションLv1で一番小さい容器を1種類ずつ掴む。
ジーナさんの話ではほとんど全部必需品という結果になってしまっていたし、オレには一応初級魔法:体力回復もある。
現状のステータスは相当な部類だろうから大怪我を負うようなことも少ないだろう。黒狼石の短剣によるブーストはかなりの自信をオレに与えている。
危険なところにいくつもりもないし。まずはLv1を使ってみてどの程度の効果かを体験してから高いLvのポーションの購入を考えよう。
次の棚に移ろうと思ったが、怪我系だけでも数種類あるので結構嵩張る。
買い物籠なんて殊勝な物は当然ない。大量に買う場合はカウンターに一時取り置きしてもらう感じだろうか。服屋でもそうしてたし。
瓶の小さいポーションといえども数種類あるのでこれだけ持っただけでもオレの両手は塞がってしまった。
「ワタリ様、カウンターに置いてきますのでお渡し頂けますか?」
「うん、よろしく」
アルに渡すとそそくさとカウンターの方に持っていった。やっぱり買い物籠とか置いておいた方がいいんじゃないだろうか。ポーションなんて結構使うだろうし、大量に買っていく人だって多いんじゃないかなぁ。
アルがカウンターに持っていっている間に状態異常解除系を一通りLv3のポーションで選んでいく。容器の大きさは普通サイズだ。普通サイズの容器に入っている量で大体5回分らしい。ポップに色々書いてあるのは便利だ。
怪我系に比べても倍以上の種類のある状態異常解除系だ。Lv1から揃えていくとアイテムボックスもかなりふさいでしまうのではないだろうか。
いやもしかしたら、例の適当仕様でポーション類として纏めてくれるかもしれないけれど。
Lv3になると値段もLv1の5倍から6倍する。でもこれくらいなら必要経費だ。怪我と違って状態異常というのは馴染みがない。試しに食らってなどと悠長なことは言ってられないからな。
「ワタリ様、そちらのポーションもお預かり致します」
「うん、はい」
戻ってきたアルに棚から取り出していた各種状態異常解除系ポーションLv3を渡していく。
戻ってきたアルは持っていた紙袋がなくなっていた。カウンターにでも預けてきたのだろうか。
両手が空いている分持てる種類も増えたのでどんどん渡していく。
全種類の状態異常解除系を購入する予定だが、万能薬は当然置いてない。そんなものがあったら全種類制覇しようなんて思わないからな。もしあっても超高いだろうし。
全種類のポーションをカウンターに持っていったアルに店員さんはどんな顔するのかな、と付いて行くと割と普通に対応している。オレ達みたいな客も少なくないのだろうか。
まぁアルが回復魔法は使い手が少ないって言ってたような気がする。あ、即効性のある使い手だっけ? まぁポーションのポップにも怪我系はじわじわ効くみたいな注意書きがあったしな。状態異常解除系は即効性らしいが。
それなら状態異常解除系ポーションをたくさん買っていく人が結構いても不思議じゃないな。
お会計はポップに値段もついていたのもあって、ぴったり計算できていた。予め金貨渡しておいてよかったよ。全部で7420ラードもした……。
高すぎだよポーション……。Lv2でもよかったかもしれない……。
アルの交渉術が見れるかと思ったがポーションは値引きが効かない代物なのだろうか、今回は値札通りに支払っている。
まぁ今更だ。気を取り直して次へ行こう。
紙袋はやはりカウンターに預けていた。ポーションはリュックにまだ入る箇所があったようで梱包して詰め込まれている。瓶詰めなので大量にあるため梱包しないと割れてしまうのだろう。アルの隠密移動はすごいとはいえ、店員はそんなことは知らないからな。
「お待たせいたしました」
「おっけーじゃぁ次行こうか」
【んじゃまた路地に入ってアイテムボックスに詰め込んじゃおうか】
「畏まりました」
紙袋を抱えていてもオレと手を繋ぐことは忘れない従者君。
会計カウンターから離れようとしたところでふと小さな袋が売られているのに目が留まった。
小さな袋なのに値段が異様に高い。ポップには同時収納可能と書かれている。
【アル、同時収納可能って書かれてる袋があるんだけど何これ?】
【その袋は初心者セットの入っていた袋同様に中身が入った状態でもアイテムボックスに収納できる特殊な袋にございます】
【え……そんな袋普通に売ってるんだ!】
【答えは是。通常の袋とは違い特殊な物ですが販売されています】
【へぇ~……でも小さいね。しかも高い】
【これが一般的な値段かと存じます】
【……ねぇ、もしかして初心者セットのあの袋って再利用できるの?】
【答えは是。もちろんにございます】
【まじかー……てっきり一回取り出したら普通の袋になってるのかと思ってたー。
そうだよなー誰も普通の袋に戻るなんていってないもんなー……よし、宿に戻ったら分けておきたい物とか入れておこうかな】
袋を眺めながら念話をしているとカウンターにいた太った店員さんが何やら近づいてくる。大量にポーションやら何やら買ったし、上客だと判断してお奨めでもしてくるつもりなのか。
太ってるから近づいてくるのがすぐわかるよ。アルみたいな隠密移動をしなさい、隠密移動を。
「お客様こちらは当店でも一番の収納袋になっております。どうぞお手にとって見てください」
「はぁ」
アルが勧められると思ったらオレに勧めてきた。幼女連れで大量の買い物をする人物、これだけで金持ちがどちらであるのか見抜いたということだろうか。商人恐るべし……いや普通か?
持ってみた袋は財布にしている茶巾袋より少し大きい程度。収納袋扱いするにはいささか小さすぎる。
だが飾られている中では1番大きいのも確か。装飾なんかも入っていて見た目も美しい。
初心者セットの袋なんてずた袋以外の言い方がなかったくらいのボロ袋だったしな。
「確かに綺麗な袋ですね」
「そうでございましょう! この袋はかの名高き――」
何やら太い物体が袋のアピールを始めてしまった。
袋の由来や誰が作ったかなんてどうでもいいので興味が沸かないので聞き流して収納袋を鑑定してみる。
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収納袋小
袋の中に収納した状態でアイテムボックスに入れることが出来る袋。
容量が小さいのであまり入らない。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
うん、そのまんまだった。
しかしやっぱり小なのねこれ。他にも小さいのもあるけどそっちのは極小とかになるんだろうか。まぁ別にどうでもいいけど。
財布として使うには便利かもしれない。アイテムボックスを拡張しないでお金を一括管理できるのは魅力だ。
内容物は取り出してみないとわからないっぽいけど、それでも有用だろう。
財布以外にも細々とした物を入れるのにも使えるだろうし。
店員さんは未だにアピールを続けている。最早薀蓄の領域に突入したようだ。ほんとよく回る舌だこと。
【アル、これを財布の代わりにどうかな?】
【それは名案にございます】
【うんうん、ちょっと高いけど、銀貨も残り少ないし両替の代わりにもなるし買っとこうか。
あとちょっと値切っておいて、高いからさ】
【畏まりました】
「店員さん店員さん」
「さる名家の、あ、はい。なんでございましょう」
「これ買います」
「おぉ! ありがとうございます。ではこちらに」
「んじゃ頼んだよ」
「畏まりました」
アルがカウンターに行く前に値切り交渉を始める。
最初は袋を褒め、そこから相手の服やセンスなどを褒め始めている。店員も褒められてかなり上機嫌だ。
次は店員の立場などをさり気無い会話で聞き出している。彼はどうやらここの店主であり責任者。つまり販売価格なんかも彼がどうこうできる地位にあるということだ。これは大きい。責任者以外の雇われとかだった場合は、勝手に値引きすると最悪首になったりもするからな。
あちらさんはこっちを貴族やお金持ちだと思っているはずなので、アルもその辺を意識して交渉に臨んでいる。言葉の端々にそれっぽい何かを匂わせながら喋っているのだ。
そして上機嫌の店主にアルがズバッと切り込んだ。
アルの提示した金額は元値の7割。結構いくね。
さすがに店主もその額は顔が引きつっている。だがアルの攻勢はまだ終わらない。その後自分が何を買ったかを店主に思い出させる工作をさり気無く行っている。
オレ達が買ったのは冒険者にとっての日用雑貨とポーションだ。しかもLv3を1種類ずつとはいえ大量に。
アルの話術により店主もリピーターとしてさらなる売り上げが期待できると思わされている。まぁもしかしたらその通りになるかもしれないけど。
決定打はやはりニコニコ現金払いだった。カード払いなんてあるのか知らんが。
アルが見せたラード金貨。これで決まった……ように見えて、ここからがアルの交渉術の真骨頂だったようだ。
結局のところ、元値の4割5分で購入することに成功。
アル半端ねぇ。他のところでもさり気無い値切り交渉をしてたようだし、この執事君はほんと頼りになるな。
とはいっても元値がかなり高かったので結構な額を支払うことにはなった。
収納袋は高い。交渉はアルに任せた方がいい。2つ勉強になった。
やり遂げた感がある執事君と手を繋いで出口へ向かう。
ドアを潜る時は一旦離したけど、外に出るとすぐに繋ぎなおす。
なんだかアルと手を繋ぐのが当たり前になってしまった。まだ2日目なのに不思議だ。
店を出る時に大きな声でありがとうございました、またのお越しをお待ち申し上げております! といい声で言われた。あれだけ値切られたのに上機嫌の店主だ。
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