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第2章
32,情報
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帰り道は大分赤味が増していた。
もうしばらくすれば篝火が焚かれ始めるのか、門でみた鎧をつけた兵士っぽい人が準備をし始めていた。
篝火をつけるのは彼らの役目なのだろう。
準備を傍目に帰り道を進んでいるとやはり考えることは広場でみた奴隷の獣人のことだ。
買い物中は意識をそっちに向けていたからそれなりに気にすることは無かったけど、今は考えてしまっている。
「ワタリ様、明日にでもギルドへ情報を集めにいきますか?」
「え? ……何の?」
オレはそんなに顔に出易いんだろうか。アルの問いについとぼけてしまったけどあまり意味がないことはわかっている。
「昼頃みた奴隷の情報にございます」
「……正直、気になるよ? 気になるけど……」
「広場では殺人もありましたので、ギルドでそれなりに情報を集めているはずです。
もしかしたらの少ない可能性ではありますが、奴隷についても情報が入っているかもしれません。
大怪我を負っておりましたし、奴隷の情報が入っていれば精査しやすいかと愚考致します」
「……ん。そうだね。今いってもまだ情報は少ないかな?」
「時間もそれほど経過していないこともありますが、この時間帯は昨日の二の舞になる恐れがあると愚考致します」
「あぁ……確かにそうか……ん~……」
情報を収集するにもそれなりに時間はかかるだろう。
事前に冒険者ギルドにも調査の依頼でもあれば別だと思うが、騎士団と冒険者ギルドとの連携や関係がどの程度のものかわからない以上なんともいえない。
今回のことがそれほど大したことでもないのなら急いで情報を集めるとも思えない。
となるとギルドが収集する情報としては事の顛末程度?
今回の1件の関係者がギルドへの依頼を出している場合なんかはそれらを含めてか?
何にせよ、オレ達が欲しい情報は奴隷の子に関することだ。
買い取るとかそういうことじゃない。あの子の怪我のことや今後のことなんかだ。
買い取れないならそんなことを考えるべきじゃないとは思うが、気になってしまうのだから仕方ない。
ここまで気になってしまっているんだ、これも何かの縁なのかもしれない。
「よし、ギルドに行こう。情報は全然集まってないかもしれないけど、もしエリザベートさんがいたらあの子のことの情報集めてもらえるように頼めるかもしれない」
「畏まりました」
真っ赤に染まった街を少し小走りに冒険者ギルドへと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ウェスタンドアを潜ると鈴の軽やかな音が鳴る。
冒険者ギルドの中は昨日来た時と比べると3分の1以下の量だったけど、それなりに賑わいを見せ喧騒はあまり変わらない。
クエスト帰りの人がカウンターに列を作り、並んでいない人はテーブルのあるところで談笑に興じている。
カウンターの向こう側では数多くの職員が忙しなく動き回っている。
エリザベートさんの姿はその中にはなかった。
「アル、どうしよう。エリザベートさんいないし、やっぱりそれなりに混んでるし……」
「このまま待っていたとしても混み具合が酷くなるだけかと存じます」
「そうだよなぁ……並んで聞いて」
「あらやっぱり、ワタリちゃん! こんな時間に来るって事はクエスト帰りなのかしら?」
掲示板の後ろからぴょこんと顔を出したのは昨日お世話になったエルフのお姉さん――エリザベートさんだった。
こっちを見つけるとその綺麗な顔を満面の笑みで彩って小走りに近寄ってくる。
「あ、エリザベートさん、こんにちわ。
クエスト帰りというわけではないんです。ちょっと聞きたいことがあって」
「あらあら、何かしら。
私が知ってることなら何でも教えてあげるわよ。あ、次のお休みは明後日だからねぇ~」
近寄るとすぐに膝を折って目線の高さを合わせてくれる。垂れてきた長い髪を後ろに掻き揚げる仕草なんかはすごく似合っていて見惚れそうになる。
だがそんな綺麗なエルフさんを見に来たわけじゃない。ましてやお休みの日を聞きにきたわけじゃない。
「あの、お仕事中ですか?」
「大丈夫大丈夫。今はまだそんなに混んでないし、私は受付担当じゃないしね。
今やってた仕事も終わってるし、ワタリちゃんみたいな可愛い冒険者さんからお話を聞くのも立派なお仕事です!」
「あ、あははは」
にっこりと微笑んで人差し指を立てて胸を張っていう物だから苦笑せずにはいられない。
でも本人が大丈夫だというのだから大丈夫だろう。
「えっと、お昼頃に料理の露店がいっぱい並んでる広場で事件があったんですけど」
「あぁ、知ってるわ。アディントン家にやっと騎士団が踏み込んだのよね。
それを察知してた当主が逃げたんだけど、広場辺りで捕まったって話ね」
「あ、それです。それでギルドにはどのくらい情報が集まってるんですか?」
「ワタリちゃん、こういうのが気になるの?
ん~……そうねぇ……まだ時間もあまり経ってないから、それほど情報も集まっていないと思うけど……聞いてくる?」
「はい、お願いします。それと……」
「うん? 昨日の飴欲しいの?」
「あ、えと、昨日の飴もよかったですけど、奴隷がどうなったのか知りたいんです」
「はい、飴あげるね。
奴隷か~アディントン家は取り潰しだし、あの家にはたくさんの奴隷が居たはずだから全部は把握するのは難しいけど……たぶん奴隷商行きだと思うな」
「……そうですか」
「……知り合いがいるの?」
笑顔だったエリザベートさんの顔が瞬時に真剣な顔になった。
美人の真剣な顔は結構怖い。でもその中に心配する感情が多分に含まれているのがわかるからおびえる必要はない。まぁランカスターさんの威圧にすら耐えたオレには怯える要素はなかったけど。
「知り合いというほどではないんです。
広場での事件をちょうど見ていて……そのときに居た奴隷の子のことが気になってしまって」
「なるほど……うん、わかった。調べておいてあげるね。
任せておいて! これでも私はこのギルドでは偉い方なんだから!」
オレを安心させようとしてなのか、真剣な顔だったのが先ほどよりも明るい笑顔になっている。
「でも、情報を集めるにも少し時間がかかるから……。
そうねぇ、明日。んー明日のお昼頃かな? それくらいにまたここに来てくれるかな?」
「はい、じゃぁ明日のお昼ですね」
「あ、お昼は食べてこないでね? 一緒に食べましょう?」
「わかりました。すみません、お手数おかけします」
「あはは。ワタリちゃんはほんとにしっかりしてるなぁ。
大丈夫よ。君のお願いなら無理難題でも聞いてあげちゃうから!」
ぺこりと頭を下げたオレに笑ってウインクを投げるエリザベートさん。
この人はほんとウインクが好きだなぁ。
「あ、それといい宿を紹介していただいてありがとうございます」
「うん、あそこはいい所でしょ? 女将さんもマスターもいい人だからねぇ~料理も美味しいし。
私の一押しなのよ~」
「はい、料理すごく美味しかったです」
「でしょでしょ~。私は特にねぇ――」
その後混み始めるまでエリザベートさんとお喋りをしてからギルドを後にした。
ちなみにアルはエリザベートさんが来てから一切喋ることはなかった。なんでだろう。
エリザベートさんに貰った飴を2人で舐める。
今回もイチゴ味で美味しい。
酸味よりも甘味の方が強くてオレの好みにあっている。
この飴、実はエリザベートさんのお手製らしい。飴が美味しくて気に入ったのでどこに売ってるのか聞いたら、照れながら趣味で作っていると教えてくれた。
照れたエリザベートさんは長い耳が赤く染まってすごく可愛らしかった。
その後今度一緒に作る? と誘われたりした。
もちろん断る理由もないし、飴も欲しいので約束を交わした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
篝火にも火が灯り、辺りは昨日同様の人出と篝火に照らされた光景が続いてる。
冒険者ギルドから海鳥亭まではすぐそこだ。
2回目となる、たくさんの種族の人達が篝火に照らされてわいわいと賑やかに談笑しながら歩く姿はやはり幻想的だ。
そんな光景を眺めながら宿に戻る。
ギルドに行くまでの少し沈んだ気持ちは大分和らいでいる。
エリザベートさんが調べてくれると太鼓判を押していたし、大怪我を負っていたという情報なども教えてある。
その事を聞いたエリザベートさんは白銀の騎士――アルバート・セルドリックが連れて行ったのなら命は助かるだろうと教えてくれた。
やはりあの騎士は有名な人らしい。しかも博愛主義者であり、弱者を、しかも大怪我を負った者なら奴隷であっても犯罪者でさえなければ助けるような人物らしい。
安心していい、と言われ本当に心が軽くなったのはやはりエリザベートさんの人柄なのだろうか。
「おや、おかえり! 買い物は無事済んだのかい? 全然荷物がないようだけど」
「ただいまです。大丈夫です、必要な物は揃いましたから」
「そうかいそうかい。夕食はもう食べられるけど、まだ時間があるからゆっくりでも大丈夫だよ。はい、鍵」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
アルが鍵を受け取り一礼すると、にっこり笑った女将さんを後に2階への階段を足取り軽く登った。
もうしばらくすれば篝火が焚かれ始めるのか、門でみた鎧をつけた兵士っぽい人が準備をし始めていた。
篝火をつけるのは彼らの役目なのだろう。
準備を傍目に帰り道を進んでいるとやはり考えることは広場でみた奴隷の獣人のことだ。
買い物中は意識をそっちに向けていたからそれなりに気にすることは無かったけど、今は考えてしまっている。
「ワタリ様、明日にでもギルドへ情報を集めにいきますか?」
「え? ……何の?」
オレはそんなに顔に出易いんだろうか。アルの問いについとぼけてしまったけどあまり意味がないことはわかっている。
「昼頃みた奴隷の情報にございます」
「……正直、気になるよ? 気になるけど……」
「広場では殺人もありましたので、ギルドでそれなりに情報を集めているはずです。
もしかしたらの少ない可能性ではありますが、奴隷についても情報が入っているかもしれません。
大怪我を負っておりましたし、奴隷の情報が入っていれば精査しやすいかと愚考致します」
「……ん。そうだね。今いってもまだ情報は少ないかな?」
「時間もそれほど経過していないこともありますが、この時間帯は昨日の二の舞になる恐れがあると愚考致します」
「あぁ……確かにそうか……ん~……」
情報を収集するにもそれなりに時間はかかるだろう。
事前に冒険者ギルドにも調査の依頼でもあれば別だと思うが、騎士団と冒険者ギルドとの連携や関係がどの程度のものかわからない以上なんともいえない。
今回のことがそれほど大したことでもないのなら急いで情報を集めるとも思えない。
となるとギルドが収集する情報としては事の顛末程度?
今回の1件の関係者がギルドへの依頼を出している場合なんかはそれらを含めてか?
何にせよ、オレ達が欲しい情報は奴隷の子に関することだ。
買い取るとかそういうことじゃない。あの子の怪我のことや今後のことなんかだ。
買い取れないならそんなことを考えるべきじゃないとは思うが、気になってしまうのだから仕方ない。
ここまで気になってしまっているんだ、これも何かの縁なのかもしれない。
「よし、ギルドに行こう。情報は全然集まってないかもしれないけど、もしエリザベートさんがいたらあの子のことの情報集めてもらえるように頼めるかもしれない」
「畏まりました」
真っ赤に染まった街を少し小走りに冒険者ギルドへと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ウェスタンドアを潜ると鈴の軽やかな音が鳴る。
冒険者ギルドの中は昨日来た時と比べると3分の1以下の量だったけど、それなりに賑わいを見せ喧騒はあまり変わらない。
クエスト帰りの人がカウンターに列を作り、並んでいない人はテーブルのあるところで談笑に興じている。
カウンターの向こう側では数多くの職員が忙しなく動き回っている。
エリザベートさんの姿はその中にはなかった。
「アル、どうしよう。エリザベートさんいないし、やっぱりそれなりに混んでるし……」
「このまま待っていたとしても混み具合が酷くなるだけかと存じます」
「そうだよなぁ……並んで聞いて」
「あらやっぱり、ワタリちゃん! こんな時間に来るって事はクエスト帰りなのかしら?」
掲示板の後ろからぴょこんと顔を出したのは昨日お世話になったエルフのお姉さん――エリザベートさんだった。
こっちを見つけるとその綺麗な顔を満面の笑みで彩って小走りに近寄ってくる。
「あ、エリザベートさん、こんにちわ。
クエスト帰りというわけではないんです。ちょっと聞きたいことがあって」
「あらあら、何かしら。
私が知ってることなら何でも教えてあげるわよ。あ、次のお休みは明後日だからねぇ~」
近寄るとすぐに膝を折って目線の高さを合わせてくれる。垂れてきた長い髪を後ろに掻き揚げる仕草なんかはすごく似合っていて見惚れそうになる。
だがそんな綺麗なエルフさんを見に来たわけじゃない。ましてやお休みの日を聞きにきたわけじゃない。
「あの、お仕事中ですか?」
「大丈夫大丈夫。今はまだそんなに混んでないし、私は受付担当じゃないしね。
今やってた仕事も終わってるし、ワタリちゃんみたいな可愛い冒険者さんからお話を聞くのも立派なお仕事です!」
「あ、あははは」
にっこりと微笑んで人差し指を立てて胸を張っていう物だから苦笑せずにはいられない。
でも本人が大丈夫だというのだから大丈夫だろう。
「えっと、お昼頃に料理の露店がいっぱい並んでる広場で事件があったんですけど」
「あぁ、知ってるわ。アディントン家にやっと騎士団が踏み込んだのよね。
それを察知してた当主が逃げたんだけど、広場辺りで捕まったって話ね」
「あ、それです。それでギルドにはどのくらい情報が集まってるんですか?」
「ワタリちゃん、こういうのが気になるの?
ん~……そうねぇ……まだ時間もあまり経ってないから、それほど情報も集まっていないと思うけど……聞いてくる?」
「はい、お願いします。それと……」
「うん? 昨日の飴欲しいの?」
「あ、えと、昨日の飴もよかったですけど、奴隷がどうなったのか知りたいんです」
「はい、飴あげるね。
奴隷か~アディントン家は取り潰しだし、あの家にはたくさんの奴隷が居たはずだから全部は把握するのは難しいけど……たぶん奴隷商行きだと思うな」
「……そうですか」
「……知り合いがいるの?」
笑顔だったエリザベートさんの顔が瞬時に真剣な顔になった。
美人の真剣な顔は結構怖い。でもその中に心配する感情が多分に含まれているのがわかるからおびえる必要はない。まぁランカスターさんの威圧にすら耐えたオレには怯える要素はなかったけど。
「知り合いというほどではないんです。
広場での事件をちょうど見ていて……そのときに居た奴隷の子のことが気になってしまって」
「なるほど……うん、わかった。調べておいてあげるね。
任せておいて! これでも私はこのギルドでは偉い方なんだから!」
オレを安心させようとしてなのか、真剣な顔だったのが先ほどよりも明るい笑顔になっている。
「でも、情報を集めるにも少し時間がかかるから……。
そうねぇ、明日。んー明日のお昼頃かな? それくらいにまたここに来てくれるかな?」
「はい、じゃぁ明日のお昼ですね」
「あ、お昼は食べてこないでね? 一緒に食べましょう?」
「わかりました。すみません、お手数おかけします」
「あはは。ワタリちゃんはほんとにしっかりしてるなぁ。
大丈夫よ。君のお願いなら無理難題でも聞いてあげちゃうから!」
ぺこりと頭を下げたオレに笑ってウインクを投げるエリザベートさん。
この人はほんとウインクが好きだなぁ。
「あ、それといい宿を紹介していただいてありがとうございます」
「うん、あそこはいい所でしょ? 女将さんもマスターもいい人だからねぇ~料理も美味しいし。
私の一押しなのよ~」
「はい、料理すごく美味しかったです」
「でしょでしょ~。私は特にねぇ――」
その後混み始めるまでエリザベートさんとお喋りをしてからギルドを後にした。
ちなみにアルはエリザベートさんが来てから一切喋ることはなかった。なんでだろう。
エリザベートさんに貰った飴を2人で舐める。
今回もイチゴ味で美味しい。
酸味よりも甘味の方が強くてオレの好みにあっている。
この飴、実はエリザベートさんのお手製らしい。飴が美味しくて気に入ったのでどこに売ってるのか聞いたら、照れながら趣味で作っていると教えてくれた。
照れたエリザベートさんは長い耳が赤く染まってすごく可愛らしかった。
その後今度一緒に作る? と誘われたりした。
もちろん断る理由もないし、飴も欲しいので約束を交わした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
篝火にも火が灯り、辺りは昨日同様の人出と篝火に照らされた光景が続いてる。
冒険者ギルドから海鳥亭まではすぐそこだ。
2回目となる、たくさんの種族の人達が篝火に照らされてわいわいと賑やかに談笑しながら歩く姿はやはり幻想的だ。
そんな光景を眺めながら宿に戻る。
ギルドに行くまでの少し沈んだ気持ちは大分和らいでいる。
エリザベートさんが調べてくれると太鼓判を押していたし、大怪我を負っていたという情報なども教えてある。
その事を聞いたエリザベートさんは白銀の騎士――アルバート・セルドリックが連れて行ったのなら命は助かるだろうと教えてくれた。
やはりあの騎士は有名な人らしい。しかも博愛主義者であり、弱者を、しかも大怪我を負った者なら奴隷であっても犯罪者でさえなければ助けるような人物らしい。
安心していい、と言われ本当に心が軽くなったのはやはりエリザベートさんの人柄なのだろうか。
「おや、おかえり! 買い物は無事済んだのかい? 全然荷物がないようだけど」
「ただいまです。大丈夫です、必要な物は揃いましたから」
「そうかいそうかい。夕食はもう食べられるけど、まだ時間があるからゆっくりでも大丈夫だよ。はい、鍵」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
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