幼女と執事が異世界で

天界

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第2章

33,整理

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 部屋に戻るとすぐにベッドに大の字になる。


「はぁ~……ちょっと疲れたかも」

「ワタリ様、外套とベルトをお預かりいたします」


 大の字になる前に言って欲しかったアルの言葉だけど、部屋に入ってすぐにベッドに向かったオレが悪い。


「んしょ~」

「失礼致します」


 のろのろと起き上がり、外套を外そうとしたらアルがすぐに手伝ってくれた。
 まぁ別にこれくらい1人でもできるんだけどね?

 ベルトは自分で外して渡す。


「失礼致します」


 再度一言断ってからベッドに座ったままのオレに浄化をかけていく。
 さっぱりしたところで次は外套に浄化を掛け始める。ベルトからは短剣やポーションを外してから浄化をかけている。
 浄化をかけた外套はクローゼットの中に仕舞い、ベルト等はテーブルの上だ。
 その後はリュックの中に残っている買った品を検分し始めている。

 帰ってきて早々ベッドに寝転んだオレと比べても本当に働き者だ。
 疲れてないのだろうか。今日1日かけて買い物したんだ。疲れてないはずないだろうに。


「アル、疲れてないの?」

「答えは否。疲れてはいません」

「アルって実は結構体力あるんだね」

「ワタリ様の従者ですので、これくらいは当たり前でございます」


 当たり前だそうだ。だがオレは疲れている。
 昨日の強行軍よりはまだましだけど、それなりには疲れている。
 でも目の前でせっせと働いてるアルを見ると自分も何かしなきゃという衝動が沸いてくる。
 何をしたらいいかと思ったが、アルも買ってきた物の検分をしているんだからオレもそうすればいい。

 アイテムボックスに適当に突っ込むだけ突っ込んだけど、中身を把握してないと取り出すのも大変だろう、あの適当な分類では……。

 メニューを出してアイテムをフォーカス。
 もうすでに何の違和感も無くおなじみになっている操作法だ。

 出現したアイテムボックス欄にはそこそこの種類の物が入っている。
 一番個数が入っているのは食器類という名称で80以上入っている。
 こんなに買ったっけ?

 一瞬首を捻るも皿や丼、スプーンやフォークや何やらと大量に食器類に纏められているのを思い出した。
 とりあえず取り出してみようとアイテムボックスを出して手を突っ込んでみる。
 皿を思い浮かべて見ると1枚だけ取り出せた。
 次に皿を3枚と思い浮かべると3枚同時に取り出せた。
 ただし、大きさが違っている。皿という大雑把な指定だと適当に取り出すことになるようだ。
 取り出した皿の形状をしっかり記憶してアイテムボックスに突っ込んでから、さっきの皿を思い浮かべながら取り出すときちんと思い浮かべた皿が取り出せた。
 やはり中身をきちんと把握していないと狙ったものは取り出せないようだ。
 でも大雑把な枠組みでも取り出せるのはありがたい。というか大雑把な枠組みでも取り出せなかったら忘れたらアウトだよな。

 そういえばウィンドウの方からも取り出しは出来るんだよな。

 アイテムウィンドウの食器類をタッチすると木製のコップが1つだけ手の中に出現した。
 特に何も指定しないとランダムなのだろうか。それとも入れた順だろうか。よくわからないが次はフォークを思い浮かべながらタッチする。するとフォークが出現した。
 やはりイメージが大事なようだ。

 そんな調子に確認と実験を繰り返しながらアイテムボックス内の項目順に取り出してはベッドに並べていく。
 1つの項目が終わると、アルに全部見せて確認してもらう。
 問題がなければアイテムボックスに再収納してから次へ。
 ベッドに出しっぱなしだと場所をとりすぎるのだ。

 服も大量にあったが、アルの分も収納しているのでこれは仕方ない。
 でも中身は把握しておくべきなので、1つずつ取り出していく。

 取り出していってわかったのだが……気づかないうちになんか色々詰め込んでいたようだ。
 確かに大量にあったからばかすか突っ込んだのは覚えている。でもどんなものを詰め込んだかまでは覚えていなかった。

 1つずつ確認していくと獣の耳が付いたきぐるみ風のパジャマが2着あった。


「……あ、アル……なにこれ……」

「ワタリ様にお召し頂ければさぞかし素晴らしいことになるかと確信しております」

「……ぇー……」


 深々と頭を下げる従者君。
 だめだ。アルはだめだ。服は自分できちんと選ばないとだめだ。こいつに選ばせてはいけない!


 パジャマは見なかったことにして次へと進む。
 他にも色々と突っ込みを入れたくなるような物があったが、それはすでに確認済みの物が多い。
 だがまだあった。ありやがった。ありやがりましたよ。

 広げてみるとわかる。
 小さな布だと思っていたものは、ワンポイントのリボンのついた所謂おぱんてぃ様だ。
 広げてみた瞬間に体が固まったのがわかる。ついでに思考も完全停止だ。


「必要な物でございます、ワタリ様」


 従者君がなんか言っていた。
 アァソウデスネ。ヒツヨウナンデスネ。ソウデシタ、ボクオンナノコデシタ。


 これを着用しなければいけないのかと元男という精神を繋ぎとめている何かがミシミシと音を立てているのがわかる。


「か、カボチャ」

「却下にございます」


 言い切る前に遮られた。アルがオレの言葉を遮るなんて今までなかった。でも遮られた。
 つまり、アルにとってそれほどまでに重要なことなんだろう。
 やばい、まじやばい。オレはアルを止められる気がしない。
 オレの精神の何かが引き千切られる。やばい、やばいよ。


 心の平穏のためにもこれも見なかったことにしようと次へと進む。
 だが次々と出てくる小さな布。
 こ、こんなに入れたっけ? あれ? あれれ?
 きっと小さなタオルとか布巾とかそういうのだよ、と自分に言い聞かせてから広げる。
 だがオレの目に入ってくる物はやはりオレの心をぐらぐらと揺らすものだった。
 にゃーん、と猫が手招きしている刺繍の入ったおぱんてぃ様。
 ピンクと白のしましまのボーダー柄の所謂しまぱん様。
 多種多様な花が刺繍されているお花柄様。

 全てプリントされているような大量生産品ではなく、1つ1つ刺繍された一品達だ。
 完全に停止しているオレの心がぐらぐら揺れるがまだ……まだ大丈夫だ。

 だが、次に出てきた物はオレのそんな平穏を完全に崩壊させる物だった。


 所謂、スポーツブラジャー。
 まだ小さなお胸のお人や激しく運動する人なんか向けに作られているサポート用ブラジャーだ。
 扇情的なデザインではないが、これもブラジャーの一種。もちろん興奮する男は多数だ。
 だがそれは女性がつけるという前提があってこそだと思うんだ。もちろん男がつけるようなブラがあるのも知っている。だがそんな物は焼却炉にでもくべてしまえ。

 あ、でも自分今女でした。


 でもでも、まだこんなものつけるようなおむねはないわけですし……とアルを見れば……。


 ヤツは首を振っていた。


 観念してください、そんな声が聞こえた気がした。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 思考を放棄したオレは黙々とアイテムボックスの中身を確認しては戻す作業をこなしていく。
 考えてはいけない。考えたら負けだ。オレの心のHPはもう0よ!

 淡々と作業を繰り返していると、自分の作業をすでに終えているアルが恭しい態度で一礼して声をかけてきた。


「ワタリ様、そろそろ切り上げなければ、夕食の時間が少なくなってしまうかと存じます」

「……ぇ。あれ……もうそんな時間?」

「答えは是。ワタリ様の集中力を持ってすればたやすいことです」

「意味わかんないよ、アル……」


 アルが意味不明なのはもう慣れたので、溜め息を1つ吐くと夕食を食べに行くことにした。
 ベッドの上に散乱していた物を全部仕舞うのはあまり時間もかからない。ただ突っ込んでいくだけだから。
 ただ短剣を持っていくのは忘れない。食事に行くのに外套を羽織るもどうかと思うので服の裾で隠すためには今着ている服ではだめだったので違う服に着替えることにした。
 屋外用に買ったいくつかの男物では隠せなかったので、アル用に買った物の中から適当な物を選んで浄化をかけてもらってから着る。
 うん、これなら十分隠せる。ちょっと大きくてお尻の方まで隠れてしまっているけど、まぁいいだろう。長袖なので捲っておかないとどこぞの日常生活を描いた漫画のハカセになってしまう。
 まぁぶかぶかなのは仕方ない。アルに合わせて買ったんだ。
 
 黒狼石の短剣は鞘から柄まで全てが真っ黒だ。
 吸い込まれるような宝石のような漆黒。これは目立つかもしれない。
 いや見る人が見ればすぐにわかってしまうだろう。防具なんかもそうなのだが防具を付けていく時は外套を羽織るのでまだマシだ。
 なので食事の時はぶかぶかだけどアルの服を着ていくことにしよう。もしくはまた買い物に行こう。
 真っ白な頭で考えたにしては十分思考が回ったのではないだろうか。ちょっと自分に感心した。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 今日の夕食もカウンターで取ることにした。
 メニューは大きな野菜がごろごろ入ったシチューと昨日と同じクロワッサンと大きなお肉の入ったスープだった。
 シチューなのにスープ付き。
 最初はどうかと思ったけど、どちらも美味しいしパンはシチューにつけて食べるのでスープとの相性が悪いということはなかった。
 汁物2つでも全然オッケーなメニューなのだ。

 お昼に軽く食べたとはいえ、成長期の体には結構入る。
 パンも3つ食べてシチューもスープも完食だ。

 味も露店とは比べ物にならないほどに美味だし、言うことなしとはこのことだ。露店も見習って欲しいものだ。
 崩れかけていたオレの心の平穏も満腹になったことにより大分回復してくれた。



「満足したかい、お嬢ちゃん」

「はい、今日もすっごく美味しかったです」

「そうかいそうかい。明日の夕食も期待してておくれ。腕によりをかけておくよ」

「はい、楽しみにしています」


 マスターと軽く雑談をして食堂を後にする。
 騒がしいほどの喧騒も宿屋の方に来れば大分小さくなる。ここの扉は割と分厚くて防音もしっかりしている。
 そういえば2階にあがってしまえば下の騒ぎはまったく聞こえない。
 安宿だとこうはいかないんだろうなぁと思いながら部屋へと戻った。


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