幼女と執事が異世界で

天界

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第2章

34,装備

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 部屋に戻って腹ごなしも兼ねて無心でアイテムボックスを整理する。
 さすがに服も終わっていたのであとはそれほど多くはない。
 残っている物もポーションと歯ブラシとかだけだ。
 全部一度出してから形や名前を確認しつつ入れなおしていく。

 全部確認が終わったら歯ブラシを2本とコップを2つ、それに大き目の鍋と小さ目の鍋をアイテムボックスから出しておく。
 鍋に魔法で水を入れて歯磨きでもしようと思うのだ。小さい方は口を濯いだ水を吐き出すために用意してみた。歯磨きして飲み込むような習慣はオレにはないのだ。
 でも歯磨き粉がない。
 買い忘れたのかそれとも元々ないのか。
 昔の人は塩で歯磨きしてたようなことをどこかで聞いたような見たような気がする。でも良く覚えていない。塩も買っていないような気がするし。
 今日行ったお店には食材や調味料は売ってなかったからな。


「ねぇ、アル。塩とかない?」

「答えは否。今日周った店には塩は売られていませんでした」

「あーやっぱりそうだよねぇ」


 どうしようかと首を捻っていると、アルが何かを持って近づいてくる。


「ワタリ様、こちらをお使いください」

「何コレ?」


 アルに渡されたのは何やら粉っぽい物が入った小さな袋だ。紙袋ではなく巾着袋タイプで口がしっかりと紐で封をされている。
 紐を開けて中身を確かめてみるとさらに中に紙袋が入っていて、それを開けるとミントのような匂いがする。もしかしてこれって歯磨き粉?

 鑑定を使ってみると思ったとおりに歯磨き粉だった。
 この辺で一般的に使われている歯磨き粉らしい。鑑定文には極々少な目の文章しか書かれていなかったけど歯磨き粉と分かれば問題ない。
 生前使っていた練り歯磨き粉と同じように歯ブラシに振りかけて使うタイプだろう。
 粉系歯磨き粉がそんな感じだった。


 鍋に向かって8分目くらいの量をイメージして初級魔法:水を使用する。
 水を作り出すだけなので消費MPは最低の1で済んだ。
 魔法で作るような水なのですぐに消えてしまうような物だったら失敗だが、どうやら鍋にきちんと残ってくれるようだ。
 確かにこれなら生活にも使えるだろう。
 初級魔法:水、優秀だ。


「はい、アル。歯磨きしようか。浄化だけじゃやっぱりだめだと思うんだ。
 こういうのはきちんとやって綺麗にしよう」

「畏まりました」


 2人で鍋から水を汲み、粉を歯ブラシに振り掛けてシャカシャカシャカシャカ。
 意外と泡立ち、生前の練り歯磨き粉よりも泡立ちが良い気がする。
 隅々まで細かく綺麗に磨いていく。
 水で口をゆすいで小さい方の鍋に吐き出して最後はアルに浄化をかけてもらう。

 綺麗になって気持ちいい口内がさらに綺麗になってさっぱりとする。
 浄化は本当に便利だ。

 残りの鍋の水で綺麗に歯ブラシとコップを洗ってから、鍋2つをアルがトイレに持っていく。
 2階には排水できる場所はトイレにしかない。

 まだ体は拭かなくてもいいだろう、やることもあるし。


 アルが戻ってくる間にテーブルの上に出して検分を済ませてあった――今日買ったオレ用の防具をベッドにまで運んでおく。
 座って眺めてみるがやっぱり装飾がすごく綺麗だ。
 天井からのランタンの灯りに照らされて精緻な彫り物がさらに幻想的に映る。


「うん、いい買い物した」


 一通り眺めている間にアルも戻ってきたので、全部つけてみることにした。
 アルの服ではぶかぶかだったので自分の服に着替えなおしてから、手伝ってもらいながら1つずつ装備していく。

 靴は今履いている革靴とは違って脛の部分まで覆えるタイプだ。
 所謂グリーブだろうか。いやあれは確か脛当てだったような気がする。鑑定文も靴って書いてあったし靴でいいだろう。ロングブーツ的な?
 前後に開いて左右に付いているアタッチメントを締める感じで履く。靴紐で締めるような感じではないのが特徴だな。
 スキー靴に似ているかもしれない。でもスキー靴の場合は足首が完全に固定されるがこちらは足首が結構自由に動かせる。
 アタッチメントを締めるとサイズ調整がされてぴったりと足にフィットする。ぎちぎちになるわけでもなく、若干の余裕を残している。靴の中には柔らかい緩衝材のような物が縫い付けられているようで靴擦れもしないんじゃないだろうか。
 履いたあと軽く部屋を歩いてみたけど問題はなさそうだ。

 篭手はアタッチメントを締めるだけ。
 肘から手首近くまで覆うような篭手なので、手自体を守ることはできない。手袋のようなものを買っておけばよかっただろうか。どうしても必要なら買おう。
 こちらもアタッチメントを締めるとサイズ調整が作動する。
 ぴったりのサイズになると靴と違って完全に固定される。関節部の邪魔にはならないので動きを妨げることもない。
 激しい動きにもずれることはないのは店で確かめている。

 ベルトはつけていたのと同じタイプだがバックルが少し大きめだ。
 ポーションサックが増えて片方5本ずつついている。
 剣なんかを提げるための専用のパーツもついている。ベルト自体がミスリル製でこれだけでもかなり硬い。
 サイズ調整でぴったりのサイズになるのでそれなりの重さの武器を括り付けてもずれなさそうだ。
 まぁグレートコーンのような超重量な物だと無理だけど。

 黒狼石の短剣を専用パーツにつけて、抜き易く普段歩くのに邪魔にならない位置を探して固定する。ポーションは前の革ベルトに刺していた初心者ポーションを刺しておいた。
 出かける場所なんかにあわせて臨機応変に変えよう。
 前のベルトには小ポーチがついていたけどこっちのベルトにはついていない。
 でも取り外しが可能なようなのであとでアルにこっちにつけられないか頼んでみよう。

 胸当ては背中側の面積も前面の面積も急所を大きくカバーしているだけの比較的面積の少ないタイプだ。
 左胸を重点的に守るように設計されていて右側が大きく開いている。オレは右利きなのでこれがちょうどよかった。
 普通の前面部を全て覆うタイプのやつだと動きづらいのだ。

 これも靴のように前面と背面がぱっくりと開き、腕を通してからアタッチメントで締めるタイプ。
 サイズ調整のおかげで服の上から着てもぴったりでいい感じだ。

 全部装備しても重量はほとんどないような物だ。
 さすが軽重量を重視して選んだだけはある。
 まぁグレートコーンを持ったら全部帳消しどころか超重量でマイナスになっちゃうけどね。

 フル装備した状態で部屋を動き回ってみる。
 もちろん階下に響くような音を立てるつもりはない。

 完璧な制御の下に部屋の中を素早く移動する。
 敏捷値60オーバーは伊達じゃないぜ!
 ほとんど音を立てずに部屋の中を高速移動して、装備が邪魔にならないか十分に確認することができた。


「さてじゃぁ脱ごうっと」

「失礼致します」

「あー待ってアル。自分1人でも脱げないとだめだと思うんだよ」

「しかし、私は」

「待って待って! アルが常に居るっていうわけではないんだから」

「いいえ、ワタリ様。私はワタリ様の従者ですので常に傍におります」

「いやいやいや、ずっと傍には居られないと思うよ? そんな時にオレ1人で装備とか脱げなかったら大変じゃん?」

「しかしワタリ様……」

「まぁまぁ、練習ってことで。普段はアルにやらせてあげるからさ」

「……承知いたしました」


 ものすごく不承不承といった感じで引き下がるアル。
 本当にものすごい不服そうだ。顔には出てないけど目がものすごくそういってる。

 まぁオレの世話が使命の彼だから仕方ない。主に対してそんな態度はどうなのっていうのはこの際だからおいておこう。顔に出てないし。
 主従の関係だからって全部我慢させるのはよろしくない。

 アタッチメントを1つずつ外して脱いでいく。
 案外外すだけなら簡単だ。アタッチメント方式なのが単純さを増している。
 もちろん簡単には外れないようにつけられているが、そこは外そうと思ってやれば簡単という意味だ。

 3分かからずに全装備を解除できた。
 ふむ、やっぱり脱ぐより着る方がめんどくさいか。まぁアタッチメント締めるだけだから問題はない……はず。


「お見事にございます、ワタリ様」

「あーうん、ソウダネ」


 やはり褒めてくる従者君。予想通りだったので棒読みで返してやったぜ。
 だがそんなことは気にしないアルが解除した装備を回収していく。


「あ、そうだ。そっちのベルトのポーチってさ、こっちのベルトにつけられない?」

「…………。
 答えは是。可能でございます」


 回収した装備を自分のベッドの方に一度置いてからベルト2つを見比べて答える。
 ぱっと見ただけでは即答は難しかったようだ。
 だがやはりアルならできると思っていたのは正解だったようだ。自信満々で頷いている。


「じゃぁそれお願いしていい?」

「畏まりました」


 恭しく一礼すると一度ベルトを置いてベッドの上の装備に浄化を一通りかけてからクローゼットに仕舞う。
 ベルトは仕舞わずにテーブルに置くと、リュックの中から小さな箱を取り出して中から針と糸と鋏を取り出した。


「あ、裁縫セットも買ったんだ」

「答えは是。もちろんにございます」


 小さな箱は糸や針、鋏なんかが入った所謂裁縫セットだ。
 アルの方のリュックは確認してなかったけど、色んな物が入っていたのは覚えている。
 きっと他にもアルが必要だと思ったものが入っているんだろう。

 ベルトに付いたポーチの解体を始めたアルを眺めながら、することもなくなったオレは足をぶらぶらさせる。
 足をぶらぶらさせながら新しい装備を買ったのだから旧装備はどうしようかと思案する。
 ゲームなら武具店に売り払うんだけど、ここはいやなところで世知辛い。もしかしたらあのしょぼい防具では引き取ってもらえないかもしれない。それに新しい装備を買ったとはいっても予備はない。アイテムボックスの容量も余ってるし予備として詰め込んでおくか。

 クローゼットの中に収納してある篭手と脛当てをアイテムボックスに突っ込んで終わりだ。
 外套は初心者セットに入っていた皮のマントの他にもいつの間にか――アルが紛れ込ませていたのだろう――買っていたようだ。オレが着るくらいのサイズの黒い外套を無心でアイテムボックスを整理していた時に見つけている。
 結局やることもすぐなくなってしまって、ベッドで足をぶらぶらさせる作業に戻ることになってしまった。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 しばらくアルを眺めていたけど、結構時間がかかりそうだったのでグレートコーンを検分してなかったのを思い出したので取り出してみる。

 取り出した瞬間床がミシミシいい始めたが、なんとか大丈夫なようだ。

 グレートコーンは破城槌に分類されるタイプの武器だ。
 鑑定文の武器種は鈍器だけど、まぁ鈍器の中のカテゴリーだ。
 中央に埋め込まれている宝玉が半分青く、半分灰色に光っている。
 これが魔法を付与されている核らしい。大きく損傷することがなければ問題ないらしいけど傷をそのままにしておくと効果を存分に発揮することが難しくなるとかなんとか。
 その場合は速やかに鍛冶が可能な店などに持ち込んで修復しなければいけない。
 ちなみにオーラシア武具店には併設された鍛冶場があるらしく、店内で頼めば修復が可能だそうだ。
 他にも鍛冶が可能な店はたくさんあるそうだが、信頼などを考えると大きいお店の方がいいだろう。値段はほとんど変わらないそうだし。

 このグレートコーンだが、スロットが2つ空いている。
 オーラシア武具店でも聞いてはみたのだが、スロットに魔結晶を嵌め込むには専用の設備がいるということでオーラシア武具店ではできないそうだ。
 一応出来そうな店でお奨めの所は聞いてある。
 でも職人街というちょっと離れたところにあるらしく、今日行くのは無理だった。

 それに魔結晶は嵌め込みに際して成功率がかなり低いらしい。
 スロットという概念はわかっていなかったようなので、スロットがない装備に嵌め込もうとして失敗してるんじゃないかと思う。
 スロットが確認できるオレはそういう点でものすごい有利だ。

 まぁスロットが空いてても失敗するならどうしようもないけど。
 魔結晶自体もまだ1個しか持っていないし、敏捷+1のヤツだからつけるとしたら防具につけたいけど……残念ながら今日買った防具にはスロットが空いていない。
 一応数多くあった防具を全部鑑定してスロット付きのを探したんだけど1つもなかった。
 やはりスロット付きというのは珍しいようだ。

 黒狼石の短剣のスロット5つというのはめちゃくちゃレアなのだ。
 加護の効果も絶大だし、スロットも5つ。やはりすごい武器だ。
 月陽の首飾りにもスロットが4つ空いている。これも防具でいつも身に着けているようなものだろうからありかもしれないが、レアアイテムだしもっといいのをつけたいと思うのはゲーマーとしては当然だろう。
 嵌め込んだ魔結晶が外せるのかもわからないし。
 ともかくランカスターさんには感謝だぜ!

 次に投げナイフを全部出して確認してみる。
 そういえば投げナイフはどこに仕舞っておいたらいいんだろうか。こういうのって咄嗟の時に使えるようにしたほうがいいだろうし。
 でもベルトにあったサックはポーションは入っても投げナイフは収まらない。というか柄の部分がかなり小さいので刃の部分を収納でないといけないのではないだろうか。
 漫画や映画なんかでは肩から掛けるタイプのヤツに弾丸よろしく収納していたような気がする。
 あんな感じのやつが売ってるのだろうか。
 今のところはとりあえずアイテムボックスから直接出して投げる感じだろうか。今日小石を投げた際もかなりスムーズにやれていたし。

 そんな考察をしているとポーチの入れ替えも終わったらしい。


「ワタリ様、こちらでよろしいでしょうか?」


 黄百合のミスリルベルト[土耐Lv5 水耐Lv5]にポーチが見事にくっついている。
 位置もある程度調整可能なように細工されているのが何気に素晴らしい。
 激しく動いても大きくずれるということもなさそうだ。


「さすがアルだね。いい感じだと思うよ。えらいえらい」

「恐悦至極にございます!」


 胸に手を当ててぷるぷるしている従者君に微笑みながらベルトの出来に満足した。

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