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第2章
37,エリザベート
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冒険者ギルドに入ると、お昼近くでも数人は居たようで全員がこちらをぎょっとした顔で見ていた。
カウンターにいるお姉さんまで目を丸くしている。
まぁそれも当然だろう。
一昨日来た時だって外套を羽織った状態でもものすごい注目を集めたのだ。
今はワンピース姿で大きなリボンまでつけている。
アルも外套は羽織らず執事然とした格好だ。前と変わらないけど俺の存在を引き立てていたりして驚くのも無理はない。
一通りギルド内を見渡してエリザベートさんを探したが見つからなかった。中に数人いるとはいってもカウンターはがら空きだったので聞いてみることに。
「すみません、エリザベートさんいますか?」
「あ、はい。少々お待ちください」
背伸びしてカウンターぎりぎりに頭を出して言うとお姉さんは、何か納得して奥の方に引っ込んで行った。
冒険者ギルドに用事があるのではなく、エリザベートさんに用事があるということで納得したのだろう。
そりゃこんな可愛い服着た幼女が冒険者ギルドに何のようだと思うのが正しい。
他の人達もオレの言葉を聞いて一様に納得しているようだ。
オレ達が入ってきてからものすごい静かになっていたので筒抜けだった。
しばらく待っているとぱたぱたと足音が聞こえたかと思うと、小走りで長髪を靡かせたエリザベートさんが姿を現した。
暇だったので掲示板を見ていたオレ達を見つけると、その表情は花が咲いたように明るいものになってすごい勢いでこちらまで接近してきた。
「きゃああああぁあん! ワタリちゃんすっごい可愛い! 抱きしめていい? 抱きしめていい?」
「お断り致します。それ以上近づかないで頂きたい」
「何よー! いいじゃない、ちょっとくらい!」
「お断り申し上げております」
すかさずアルが間に入って勢いそのままに抱きつこうとするエリザベートさんを止めてちょっとしたにらみ合いが始まってしまった。
許可を求める割にはアルが止めなければそのまま抱きしめられていたような気がするが、まぁいい。
そんなことより仲良くして欲しいものだ。会って早々睨みあうとかどうしてこの2人は仲良くできないのか……。
昨日はアルが喋ることはなかったから何もなかったけど、喋ったとたんにこれでは気が滅入ってしまうよ。
「……2人共……喧嘩はだめって言いましたよね?」
「は……申し訳ございません、ワタリ様」
「あ、ご、ごめんね、ワタリちゃん。でも喧嘩してたわけじゃないのよ? ほんとだよ?」
「どう見ても喧嘩してましたから……まったく、仲良くしてください。
これから一緒に食事に行くんですよ?」
「あう……ごめんね。なんかつい……」
「まったく……喧嘩するほど仲がよいっていうけど、そうは見えなかったですからね!」
「はい、ごめんなさい……」
「以後このようなことが無きよう気をつけさせていただきます」
しゅんとしてしまったエリザベートさんに比べてアルはいつも通りだ。
いつも通りすぎて諦め気味だけど、ここで諦めたらアルが成長しなくなっちゃうから諦めてはいけない。
「まぁいいです。それよりお昼休みまでもうちょっとかかりますか?」
「あ、もう大丈夫よ。さぁご飯食べに行こう! 今日は朝抜いてきたからお腹空いてるんだー。
ワタリちゃんはどう? いっぱい食べれる?」
「あー……朝食は普通に食べたので軽く摘むくらいでいいです」
「ありゃ……そっかー。ん~じゃぁどこにしようかなぁ」
「エリザベートさんの行きたいところでいいですよ?」
「そう? じゃぁお言葉に甘えさせてもらっちゃおうかなぁ~」
表情がころころ変わる可愛いエルフさん。
見ているだけでも飽きないが今日はお食事の約束だ。例の情報も欲しいし。
「ではワタリ様」
「うん」
いつものように恭しい態度で手を差し出すアルに手を添える。
それを見たエリザベートさんがおもむろに自分の手も差し出す。
何この状況……。
え、つまり何か? 両手を繋いでらんららーんですか?
「さぁ行きましょう!」
オレの意思はどこにもなく、結局両手を繋いでギルドを後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目の前には小さなサンドイッチが数種類と緑色の飲み物。
サンドイッチの軽い軽食セットだ。
エリザベートさんの目の前にはクリーム色のスープと同じようなサンドイッチ。
こっちは少しボリュームがある。
アルはオレと同じもの。
冒険者ギルドから10分くらいの距離にあるお店に入ったオレ達は今お昼中。
「ここはね~結構安くて美味しいんだよ~。私のお気に入りのお店なの」
「そうなんですかー。うん、美味しい」
「でしょでしょ? ここのサンドイッチは使ってるパンが違うからねぇ。とっても美味しいし、テイクアウトも出来るし結構日持ちもするの。
だからもし、外に依頼をこなしに行くならここでお昼を買ってから行くのもいいよ!」
「そうなんですか。じゃぁ今度依頼を受けたらここでお昼買ってから行こうか、アル」
「畏まりました」
軽く雑談しながら食べていく。
エリザベートさんの話通りにサンドイッチのパンはしっとりふわふわでこれ単体でもかなり美味しいんじゃないかと思えるほどだ。
野菜もシャキシャキしていて瑞々しいし、ハムもその味を主張しすぎないちょうどいい味わい。
数種類のサンドイッチは中身が全部違っていて、量もお昼に食べるには手ごろのサイズ。
他の具も卵だったりツナっぽい何かだったり、その全部が美味しい。
驚くべきことに使っているパンも中身に合わせて変えているようで、しっとりふわふわの物からちょっとぱさぱさしているものまであった。
それでも合わせて食べると絶妙な味わいと食感。
これはいいところを教えてもらった。
というか、エリザベートさんは結構食いしん坊キャラなのだろうか。
海鳥亭も料理が美味しいって特に言ってたし、ここも美味しい。
目の前でスープとサンドイッチをぱくついている表情もすこぶる幸せそうだ。
オレが見ていることに気づいたエリザベートさんはにっこり微笑んでくれる。
何この人……まじ可愛いんですけど!
そんな感じに楽しい昼食はあっという間に終わってしまった。
だが、ここからが本番だ。
食後のコーヒーの味がする紫色の飲み物を一口飲んで気分を落ち着ける。
「エリザベートさん。昨日頼んでいた情報のことなんですけど」
「えぇ、ちゃんと調べてきたわ。はい、これね」
そういって一緒に持ってきていた鞄の中から取り出したのは結構な量の紙束だった。
まさか1日経たない程度の時間でこれほど調べたのか?
「これは全部アディントン家、例の広場で捕縛された男の屋敷にいた奴隷の情報よ。
あの屋敷には相当数の奴隷が居たみたいで、そのうちのほとんどが結構な怪我を負っていたわ。
騎士団が屋敷に突入した時には奴隷を盾にしてかなりの死者も出たみたいで、こっちが奴隷の死者の情報。
こっちが怪我人の情報でこっちがそれ以外の奴隷の情報」
「こんなに……」
「うん、私も調べてみてびっくりしたわ。あの貴族は最低ね……。
ワタリちゃんが言ってた子は騎士団に連れて行かれた後は屋敷にいた怪我人の奴隷と一緒にされてたようで詳しくはわからなかったわ。
だからこっちの情報だけを参考にするのがいいかしら。
もし該当する情報がなかったらと思って全ての奴隷情報を持ってきたの」
「そうだったんですか。ありがとうございます」
「ううん、ワタリちゃんのためだもの。これくらいなんでもないわ。
今度また一緒にお食事したり、どこかに一緒に行ってくれたりするだけで十分」
「あ、あはは……」
苦々しい空気を払拭するかのようにおどけてみせるエリザベートさんに苦笑しながら、渡された怪我人の奴隷の情報を見ていく。
写真のようなものはなかったが、そこには名前や出身、種族や特徴などが書かれていた。
簡単に書かれているにも関わらず1枚の紙に十人。それが30枚以上ある。
怪我人だけでこれだ。
死者の紙束もそれに近いだけあり、それ以外のは3分の1程度。
エリザベートさんが最低というのも頷ける。
広場で見た狐の獣人の子の特徴と合致する物を選んでは抜いていく。
少し精査すると該当するだけで十数人いる。
「やっぱり1人1人の情報が少ないから難しいかしら」
「そうですね……でもおかげで絞れましたし、あとは……」
「生き残ってる奴隷は全て奴隷商が引き取っていったはずだから、あとは奴隷商を当たるしかないわね……」
「この街には奴隷商はどのくらいあるんですか?」
「結構あるわ。アディントン家の奴隷はかなりの量だったから1つの奴隷商だけでは引き取りきれなかったはずだから……たぶんかなりの数の奴隷商が引き取っていったはずよ」
「となると……奴隷商を回るだけでも一苦労しそう……」
このラッシュの街はかなり大きい。
そんな大きな街だから同じ商いでもかなりの数が共存できる。奴隷商という特殊な供給ルートが必要な商いでも共存できるほどだ。
数が多くても総当りしか今のところ手がない。情報をもう少し絞れればよかったのだが、これだけの情報をたった1日足らずで調べ上げてくれたエリザベートさんには感謝こそすれ、そんなことを言える訳がない。
「とにかく、1つ1つ当たってみることにします」
「でもかなりの数あるのよ? 1人では大変だわ。何日かかるかわからないし、その間に売れてしまう事だってあるわ。
だから、私も手伝ってあげる」
「え、でも……」
「ワタリちゃん……その子を助けてあげたいんでしょ?」
「……はい」
エリザベートさんの諭すような微笑に何もいえなくなってしまった。
確かにぐずぐずしていたら売れてしまうかもしれない。そうしたら次はどんな目に合わされるかわかったものではない。
もしかしたらいい人に買われるかもしれない。オレに買われるよりは幸せになるかもしれない。
でもそれは……希望的観測に過ぎない。
アディントン家の奴隷の扱いが、エリザベートさんに最低といわせるほどの酷いものだったのだからそういう扱いが一般的だとは思わない。
だが昨日広場で見たあの光景は弱者が甚振られているのを傍観するだけという、周りにたくさん集まった人達の行動から奴隷というものがどういう存在なのかを如実に表している。
まさに物なのだ。
所有物を所有者がどう扱おうとその人の勝手。そこに感情は存在しない。
それがこの世界での常識。
だから決めた以上最善を尽くす。
あの子を探し出して引き取る。その後のことはまだ分からないけど、せめて人並みに生きていけるようにしてあげたい。
異世界にきてまだ3日目。
自分の生き方すら定まっていないこんな状況で他人を救おうなんて傲慢かもしれないが、もう決めてしまったことだ。
あとは最善を尽くすのみ。
カウンターにいるお姉さんまで目を丸くしている。
まぁそれも当然だろう。
一昨日来た時だって外套を羽織った状態でもものすごい注目を集めたのだ。
今はワンピース姿で大きなリボンまでつけている。
アルも外套は羽織らず執事然とした格好だ。前と変わらないけど俺の存在を引き立てていたりして驚くのも無理はない。
一通りギルド内を見渡してエリザベートさんを探したが見つからなかった。中に数人いるとはいってもカウンターはがら空きだったので聞いてみることに。
「すみません、エリザベートさんいますか?」
「あ、はい。少々お待ちください」
背伸びしてカウンターぎりぎりに頭を出して言うとお姉さんは、何か納得して奥の方に引っ込んで行った。
冒険者ギルドに用事があるのではなく、エリザベートさんに用事があるということで納得したのだろう。
そりゃこんな可愛い服着た幼女が冒険者ギルドに何のようだと思うのが正しい。
他の人達もオレの言葉を聞いて一様に納得しているようだ。
オレ達が入ってきてからものすごい静かになっていたので筒抜けだった。
しばらく待っているとぱたぱたと足音が聞こえたかと思うと、小走りで長髪を靡かせたエリザベートさんが姿を現した。
暇だったので掲示板を見ていたオレ達を見つけると、その表情は花が咲いたように明るいものになってすごい勢いでこちらまで接近してきた。
「きゃああああぁあん! ワタリちゃんすっごい可愛い! 抱きしめていい? 抱きしめていい?」
「お断り致します。それ以上近づかないで頂きたい」
「何よー! いいじゃない、ちょっとくらい!」
「お断り申し上げております」
すかさずアルが間に入って勢いそのままに抱きつこうとするエリザベートさんを止めてちょっとしたにらみ合いが始まってしまった。
許可を求める割にはアルが止めなければそのまま抱きしめられていたような気がするが、まぁいい。
そんなことより仲良くして欲しいものだ。会って早々睨みあうとかどうしてこの2人は仲良くできないのか……。
昨日はアルが喋ることはなかったから何もなかったけど、喋ったとたんにこれでは気が滅入ってしまうよ。
「……2人共……喧嘩はだめって言いましたよね?」
「は……申し訳ございません、ワタリ様」
「あ、ご、ごめんね、ワタリちゃん。でも喧嘩してたわけじゃないのよ? ほんとだよ?」
「どう見ても喧嘩してましたから……まったく、仲良くしてください。
これから一緒に食事に行くんですよ?」
「あう……ごめんね。なんかつい……」
「まったく……喧嘩するほど仲がよいっていうけど、そうは見えなかったですからね!」
「はい、ごめんなさい……」
「以後このようなことが無きよう気をつけさせていただきます」
しゅんとしてしまったエリザベートさんに比べてアルはいつも通りだ。
いつも通りすぎて諦め気味だけど、ここで諦めたらアルが成長しなくなっちゃうから諦めてはいけない。
「まぁいいです。それよりお昼休みまでもうちょっとかかりますか?」
「あ、もう大丈夫よ。さぁご飯食べに行こう! 今日は朝抜いてきたからお腹空いてるんだー。
ワタリちゃんはどう? いっぱい食べれる?」
「あー……朝食は普通に食べたので軽く摘むくらいでいいです」
「ありゃ……そっかー。ん~じゃぁどこにしようかなぁ」
「エリザベートさんの行きたいところでいいですよ?」
「そう? じゃぁお言葉に甘えさせてもらっちゃおうかなぁ~」
表情がころころ変わる可愛いエルフさん。
見ているだけでも飽きないが今日はお食事の約束だ。例の情報も欲しいし。
「ではワタリ様」
「うん」
いつものように恭しい態度で手を差し出すアルに手を添える。
それを見たエリザベートさんがおもむろに自分の手も差し出す。
何この状況……。
え、つまり何か? 両手を繋いでらんららーんですか?
「さぁ行きましょう!」
オレの意思はどこにもなく、結局両手を繋いでギルドを後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目の前には小さなサンドイッチが数種類と緑色の飲み物。
サンドイッチの軽い軽食セットだ。
エリザベートさんの目の前にはクリーム色のスープと同じようなサンドイッチ。
こっちは少しボリュームがある。
アルはオレと同じもの。
冒険者ギルドから10分くらいの距離にあるお店に入ったオレ達は今お昼中。
「ここはね~結構安くて美味しいんだよ~。私のお気に入りのお店なの」
「そうなんですかー。うん、美味しい」
「でしょでしょ? ここのサンドイッチは使ってるパンが違うからねぇ。とっても美味しいし、テイクアウトも出来るし結構日持ちもするの。
だからもし、外に依頼をこなしに行くならここでお昼を買ってから行くのもいいよ!」
「そうなんですか。じゃぁ今度依頼を受けたらここでお昼買ってから行こうか、アル」
「畏まりました」
軽く雑談しながら食べていく。
エリザベートさんの話通りにサンドイッチのパンはしっとりふわふわでこれ単体でもかなり美味しいんじゃないかと思えるほどだ。
野菜もシャキシャキしていて瑞々しいし、ハムもその味を主張しすぎないちょうどいい味わい。
数種類のサンドイッチは中身が全部違っていて、量もお昼に食べるには手ごろのサイズ。
他の具も卵だったりツナっぽい何かだったり、その全部が美味しい。
驚くべきことに使っているパンも中身に合わせて変えているようで、しっとりふわふわの物からちょっとぱさぱさしているものまであった。
それでも合わせて食べると絶妙な味わいと食感。
これはいいところを教えてもらった。
というか、エリザベートさんは結構食いしん坊キャラなのだろうか。
海鳥亭も料理が美味しいって特に言ってたし、ここも美味しい。
目の前でスープとサンドイッチをぱくついている表情もすこぶる幸せそうだ。
オレが見ていることに気づいたエリザベートさんはにっこり微笑んでくれる。
何この人……まじ可愛いんですけど!
そんな感じに楽しい昼食はあっという間に終わってしまった。
だが、ここからが本番だ。
食後のコーヒーの味がする紫色の飲み物を一口飲んで気分を落ち着ける。
「エリザベートさん。昨日頼んでいた情報のことなんですけど」
「えぇ、ちゃんと調べてきたわ。はい、これね」
そういって一緒に持ってきていた鞄の中から取り出したのは結構な量の紙束だった。
まさか1日経たない程度の時間でこれほど調べたのか?
「これは全部アディントン家、例の広場で捕縛された男の屋敷にいた奴隷の情報よ。
あの屋敷には相当数の奴隷が居たみたいで、そのうちのほとんどが結構な怪我を負っていたわ。
騎士団が屋敷に突入した時には奴隷を盾にしてかなりの死者も出たみたいで、こっちが奴隷の死者の情報。
こっちが怪我人の情報でこっちがそれ以外の奴隷の情報」
「こんなに……」
「うん、私も調べてみてびっくりしたわ。あの貴族は最低ね……。
ワタリちゃんが言ってた子は騎士団に連れて行かれた後は屋敷にいた怪我人の奴隷と一緒にされてたようで詳しくはわからなかったわ。
だからこっちの情報だけを参考にするのがいいかしら。
もし該当する情報がなかったらと思って全ての奴隷情報を持ってきたの」
「そうだったんですか。ありがとうございます」
「ううん、ワタリちゃんのためだもの。これくらいなんでもないわ。
今度また一緒にお食事したり、どこかに一緒に行ってくれたりするだけで十分」
「あ、あはは……」
苦々しい空気を払拭するかのようにおどけてみせるエリザベートさんに苦笑しながら、渡された怪我人の奴隷の情報を見ていく。
写真のようなものはなかったが、そこには名前や出身、種族や特徴などが書かれていた。
簡単に書かれているにも関わらず1枚の紙に十人。それが30枚以上ある。
怪我人だけでこれだ。
死者の紙束もそれに近いだけあり、それ以外のは3分の1程度。
エリザベートさんが最低というのも頷ける。
広場で見た狐の獣人の子の特徴と合致する物を選んでは抜いていく。
少し精査すると該当するだけで十数人いる。
「やっぱり1人1人の情報が少ないから難しいかしら」
「そうですね……でもおかげで絞れましたし、あとは……」
「生き残ってる奴隷は全て奴隷商が引き取っていったはずだから、あとは奴隷商を当たるしかないわね……」
「この街には奴隷商はどのくらいあるんですか?」
「結構あるわ。アディントン家の奴隷はかなりの量だったから1つの奴隷商だけでは引き取りきれなかったはずだから……たぶんかなりの数の奴隷商が引き取っていったはずよ」
「となると……奴隷商を回るだけでも一苦労しそう……」
このラッシュの街はかなり大きい。
そんな大きな街だから同じ商いでもかなりの数が共存できる。奴隷商という特殊な供給ルートが必要な商いでも共存できるほどだ。
数が多くても総当りしか今のところ手がない。情報をもう少し絞れればよかったのだが、これだけの情報をたった1日足らずで調べ上げてくれたエリザベートさんには感謝こそすれ、そんなことを言える訳がない。
「とにかく、1つ1つ当たってみることにします」
「でもかなりの数あるのよ? 1人では大変だわ。何日かかるかわからないし、その間に売れてしまう事だってあるわ。
だから、私も手伝ってあげる」
「え、でも……」
「ワタリちゃん……その子を助けてあげたいんでしょ?」
「……はい」
エリザベートさんの諭すような微笑に何もいえなくなってしまった。
確かにぐずぐずしていたら売れてしまうかもしれない。そうしたら次はどんな目に合わされるかわかったものではない。
もしかしたらいい人に買われるかもしれない。オレに買われるよりは幸せになるかもしれない。
でもそれは……希望的観測に過ぎない。
アディントン家の奴隷の扱いが、エリザベートさんに最低といわせるほどの酷いものだったのだからそういう扱いが一般的だとは思わない。
だが昨日広場で見たあの光景は弱者が甚振られているのを傍観するだけという、周りにたくさん集まった人達の行動から奴隷というものがどういう存在なのかを如実に表している。
まさに物なのだ。
所有物を所有者がどう扱おうとその人の勝手。そこに感情は存在しない。
それがこの世界での常識。
だから決めた以上最善を尽くす。
あの子を探し出して引き取る。その後のことはまだ分からないけど、せめて人並みに生きていけるようにしてあげたい。
異世界にきてまだ3日目。
自分の生き方すら定まっていないこんな状況で他人を救おうなんて傲慢かもしれないが、もう決めてしまったことだ。
あとは最善を尽くすのみ。
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