幼女と執事が異世界で

天界

文字の大きさ
49 / 183
第3章

48,ファッションショー

しおりを挟む
 数店周り無理しないで辛かったら言うように、と何度か言ったのだがネーシャは終始笑顔で元気よく大丈夫です、と答えるのみだった。
 新品の服を買ってもらえたのがよほど嬉しかったのだろう。

 宿に戻ってくるまでにふらつくこともなく、気分が悪くなることもなく最後まで元気に笑顔だったネーシャに獣人の回復力のすごさを垣間見た気がする。
 とはいってもやはりそこは傷を完璧に治療したおかげらしい。
 エリザベートさんの推測によると傷の治療と同時に体力の方も回復していたのではないだろうか、ということだった。
 通常ではありえないことだったが、MPを大量に消費することにより可能だとは知識としては知っていたと教えてくれた。

 実際にネーシャの元気っぷりを見なければ信じられないことだったとも言っていた。
 改めてすごい治療師だと太鼓判を押されたりもした。

 おそらく回復力強化Lv3をかけていたのも効いていたのだろうと思ったがこれ以上話をややこしくしないためにも黙っておいた。強化系Lv3の取得に必要なポイントを考えるととてもじゃないが言わない方がいい。


「さてさて、帰って来たらやることは1つね!」

「え、なんですか? あぁ買ってきたものの検分ですね」

「えぇ~、違うわよ。ワタリちゃん!」

「え、じゃぁ何するんですか?」

「お店でも思ったんだけど……。ワタリちゃんってあんまりオシャレとか興味ないの……?」

「え、えぇと……」

「女の子がオシャレを楽しまないなんて……だめよ?」


 ずずい、と真顔で近づくエリザベートさん。
 美人の真顔は正直怖い。勢いに押されてちょっと後退ってしまったほどだ。
 でもオレは女の子になってまだ数日なんでオシャレとか楽しめといわれても……正直困る。


「いや、あの……。でもほら私は今冒険者だから!」

「関係ありません。冒険者でも女は女。オシャレを楽しまない理由にはなりません」

「うっ」


 ぴしゃり、と言い切られなんとも反論できない迫力にドンドン押されていく。


「というわけで今からお着替えしましょう」

「えっ」

「今日だって正直その格好で外出るのはどうかと思ったんだよ?
 それどうみても男物でしょ?」

「え、そうですけど……」

「……はぁ。ワタリちゃん……。あなたすごく可愛いのよ?」

「え、えと……。ありがとうございます?」

「じゃぁまずは買ってきた服でファッションショーね!」

「えぇ!?」

「はいはい、アル君は一先ず外ね~」

「いいえ、私はワタリ様のお召し替えを手伝わねばなりません」

「それは私がやるからっ。ほら、出て」

「私はワタリ様の従者ですので、ワタリ様の」

「ネーシャちゃんも着替えるんだけど」

「……いいでしょう。この場は引きます。ですが」

「えぇ……。わかったわ」

「では、ワタリ様。何か御用がありましたらすぐにおよび下さいませ」

「……え、あ、アル……?」


 アルなら着替えの手伝いを絶対譲るはずないだろうからそこから切り崩そうと思っていたら、謎のやり取りの後一礼して出て行ってしまった。
 当てが外れて呆然としているとワキワキと手を動かして黒い微笑を浮かべるエルフさんがそこに居た。


「ちょ、ちょっとま」

「さぁまずは脱ぎ脱ぎしましょうねー!」

「た、たすけ! あ、アルー!」


 オレの悲痛な叫びは聞こえていたはずなのにアルが助けに来ることは結局なかった。
 ちなみにネーシャはあわあわとあたふたしていただけで結局助けてくれなかった。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「素敵よ! 素敵過ぎるわ、ワタリちゃん!」

「さすが我が主。このアル、感激で言葉もございません」

「お、お嬢様素敵です!」


 オレが今着ている服は例の店のショーウィンドウに飾ってあった天使の羽付きのゴスロリの同種というかなんというか、かなり近い物だ。
 胸元についているリボンが大きくなり、背中についている羽が少し小さくなっていたり、腰のリボンが大きくなっていたりしている。
 全体的に白く、フリルいっぱいでふわふわ率が非常に高い。

 首にはリボンがチョーカー代わりに巻かれ、髪はシンプルに小さくサイドテールにしてちょっと大きめの赤いリボンで纏められている。
 靴も真っ白の厚めのウェッジソール。つま先が丸くなりシークレットブーツの全然隠してない感じというのが第一印象だった。小さな赤いリボンがその存在を主張するようについている。

 全体的に白い中に強調されるように赤がちりばめられている。

 エリザベートさん曰く、『コンセプトは純真さと力強さ』らしい。よくわからない。

 だが着替え終わり入ってきたアルがそれを聞くと大きく頷き握手を交わしていた辺り彼らには通じるものだったらしい。よくわからない。

 仲がよくなったのは喜ばしいが……。よくわからない。わかりたくない。

 当然買ってきた服はそれだけではなかったので何度も着替え、何度もよくわからないコンセプトを聞かされ、そして何度もエリザベートさんとアルの握手は続いた。


「……そろそろ勘弁してください……」

「ワタリちゃん次はこれ! これよ!」

「次はこちらでしょう。ワタリ様、こちらです!」

「アル様! こっちはどうですか!」

「悪くないですね。ネーシャ次を持ってきなさい!」

「はい!」


 オレの小さな呟きは燃え上がった2人といつの間にかアルのお手伝いを始めたもう1人が追加され、小さな火種が風に吹かれるかのように消えてしまう。

 誰か……助けて……。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 解放されたのは日が沈み、とっかえひっかえ何度も何度も服を着て髪をセットされエリザベートさんにポーズを決めさせられ、惜しみない拍手と喝采を浴びせられたあとだった。


「お疲れ様でございます、ワタリ様」

「堪能したよ~、ワタリちゃん~」

「お、お嬢様、お疲れ様です!」

「ぐへー」


 ベッドに大の字で口から魂的な何かを放出していると、2つあるテーブルを占領するかのように置かれていた色々なヘアセット用品と俺がへばっている以外の3つのベッドの上に置かれている大量の服を片付けながら3人が労ってくれる。
 だが正直ネーシャを治療していたとき並に疲れきってしまったオレにはそんな言葉はあまり意味がない。

 もう寝たい……。
 でもよく考えれば今日ランニングしてないし、筋トレもしてない。
 3日坊主どころか1日坊主とかどういうことだ。
 でもまずはご飯を食べてなんとか元気をつけなければ……。


「うぅ……。まずは夕飯食べる……。夕飯食べるぅ……」

「そうだねー。もうおなかぺこぺこだねー」


 疲れきってどんよりしたまま4人で食堂に降りていき、今日はテーブルで食事を取ることにした。


「大丈夫かい、ワタリちゃん?」

「マスタ~……聞いてくださいよ~。みんなが私を着せ替え人形にするんですよ~」

「すっごい可愛かったですよ! もうお持ち帰りしたいくらい!」

「ワタリ様の美しさは例えることが不可能な素晴らしきものです」

「お嬢様すごく綺麗でした!」

「はは、でも無理強いはいけないよ?」

「無理強いなんてしてないですよー」

「ワタリ様は常に美しいですので」

「お、お嬢様綺麗でした!」


 アルだけじゃなくてネーシャも意味不明だ。もしかしてこの2人似たもの同士なのか……。
 着せ替え人形状態の時も助けるどころかアル達を手伝ってたし……。
 そういえばネーシャも着替えるといってアルを追い出したのに一度も着替えてなかったし……。
 
 ……おかしい、確か主人はオレのはずなのに……。どうしてこうなった。


 余談だが、最初食堂でネーシャは椅子に座るのではなく床に座ろうとした。というか床に座った。
 普通奴隷は同じテーブルで食事をすることはないそうだ。典型的な奴隷といった知識そのままなのかと、疲れた頭で思ったりもした。
 すぐに食事はオレ達と一緒に同じように食べるように言ったら目を大きく見開き驚いていた。
 少しずつでも慣れていってもらわないとな。

 夕飯のメニューにも驚き、凝視してお腹が鳴るという一幕もあったりしたが概ね平和に終わった。

 食べ終わっての雑談の中でネーシャはこんなに美味しい食事を2回も食べられるなんてすごく幸せです、と何度も笑顔で言っていた。
 2回だけじゃなくてこれから毎日だ、と言ったら泣き出してしまったけれど嬉し泣きだと考えなくてもわかっていたので泣きやむまで微笑ましく見守ってあげた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

処理中です...