幼女と執事が異世界で

天界

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第3章

58,魔法使い

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 日課のランニングを終えて朝食も済まし、さぁ今日も1日頑張ろうという段階だが……何を頑張ろう?
 昨日ギルドで見た依頼の感じだとネーシャ連れで行うには少し問題があるものが多い。
 幸いにして昨日の報酬が予定の数倍になったのもあり、懐は暖かい。
 創造神からの支度金もまだまだ残っているし、ぶっちゃけ当分働かなくてもいいくらいは持っている。
 ちなみに岩食いペンギンボスはボスなのに同じ種類としてカウントされる。
 なぜならギルドカードには討伐した記録しか残らないので大きさや強さは考慮されない。解体で手に入る素材なんかは数や種類が変動するものの素材の大きさや質なんかは変化しないのだ。
 そのほかの違いは手に入る経験値などらしいが、討伐対象としてはボスのような大きな個体だろうが小さい固体だろうが1匹としかカウントされない。
 討伐対象としてみるなら小さいのを狩った方が楽だが、手に入る素材や経験値を考えると大きい方がいい。時と場合によりけりというやつだろう。

 まぁそんなことより、とりあえず今のうちにネーシャに色々経験を積ませて1人で留守番くらい出来るようにするべきだろう。


「ねぇ、アル。今日はギルドに行かずにネーシャに色々させてみよう!」

「畏まりました」

「は、はい! 頑張ります!」


 ビシッとした完璧なフォームで一礼するアルとちょっと緊張気味に頭を下げるネーシャ。
 これだけみても力量の差は明白だ。まぁアルに教わっているといってもまだ1週間だ。こんなもんだろう。
 ネーシャも真面目にやっているし、きっとそのうちなんとかなる。


「というわけで……。ネーシャ何かやってみたいこととかある?」

「やってみたいことですか……? え、えーと……」

「まぁいきなり言われてもアレだよねぇ……。アルと少し考えてて~」

「畏まりました」

「はい! やりたいこと……やりたいこと……」


 小首を傾げて人差し指を顎にピトッと貼り付けて視線もどっかにいってしまったネーシャを微笑ましく思いながらオレはステータスを確認する。
 昨日もちょっと確認したんだが、職が1つ増えていた。

 なんと " 魔法使い " だ。
 定番ではあるけど魔法を取得した段階ではゲットできなかった職業だ。
 でも今は取得している。恐らく魔法で魔物を攻撃する、もしくは倒すことが条件なのではないだろうか。
 魔法使いの恩恵はMP小上昇と回復力中上昇。固有スキルでMP回復力向上。
 魔法使いらしくMP関連に特化している。
 でも魔法使いなのに魔力が上がらないのはなぜだろう。

 今オレの職業は治癒師Lv12。
 魔法使いは取得したばかりなので当然Lv1だ。
 一応クラスチェンジさせてみたがMP回復力向上の効果は+1。
 回復力に換算すれば10だから有用といえる。でもこれはMPにしか適応されないから実際は10ほどの価値はない。
 回復力はHPやスタミナの回復力にも影響するからだ。

 MP小上昇の効果はMP+2。
 回復力中上昇の効果は回復力+4だった。
 治癒師Lv12で回復力+5なので中上昇はかなり強い恩恵だとわかる。
 ただ現状だとその数値自体は治癒師の方が上だ。
 でもMPに割り振っているあまったポイントがあるのでその辺も考えると魔法使いにしておいた方がポイント的にもいい。
 なのでこれから魔法使いを上げた方が効率はよさそうである。

 図書館で調べた結果、治癒師の固有スキルである治癒の心得はLv分の基礎回復量を上昇させる効果があるらしい。
 ちなみにLv12だと12%の上昇率。
 回復魔法を使うならかなり有効だと思う。
 でもオレの場合MP量を増やすことにより回復量も格段に上がるのであまり意味がなかったりする。
 MP量を増やす回復力増加法は基礎回復量を向上させる効果とは別物なので、MPを多く使えばその分固有スキルの恩恵が大きくなるというわけではない。基礎回復量*治癒の心得 + MP消費量分の回復量となるのである。
 その他にもMP量を増やすことにより回復中の痛みも軽減されるが、治癒の心得にはその効果はない。

 ステータスの微調整も終了し、一先ずオレのステータス変更は終了。
 新しいスキルなんかもなかったし、いつになったら覚えるのやら。

 アルとネーシャに関しては従者や奴隷であってもステータスを覗くことは出来ない。
 でも奴隷の場合は自分でステータスを振ることができなくなっている。
 ではどうやって振るのかというと主人の許可する項目には振ることが出来る。
 スキルに関しても同じだけど、ウィンドウは見えない。
 つまり口頭でいちいち確認しなければいけない。ちなみに虚偽申告や許可のない項目を取得しようとしても出来ないらしい。
 この辺は奴隷契約のLvに関係なく決まっていることらしい。意外と抜け目がない。

 まず何のスキルを取得できるのがわからないといけないのでこれまためんどくさい。
 ウィンドウ覗ければいいのに。


 ちなみに隷属の首輪も一応買ってあるけど、アレは最初のメニューウィンドウを呼び出すだけしか出来ない。
 そこにロックがあるので十分意味はあるけれど。


「ネーシャ~」

「はい! すみません! まだ決まってません!」

「あー、そうじゃなくて~。ほら、昨日レベルあがったじゃない? だからスキルとかステ振りとかした方がいいかなーと」

「ぁ、そうでした。あたしレベルアップは始めてだったのですっかり忘れてました」

「私はまだレベルあがったことないけどねー」

「えぇ!? で、でもお嬢様すごく強いし、アイテムボックスもすごくいっぱい入るし……」

「あー……。そうだった。まぁ色々あるんだよー」

「そ、そうなんですか……。さすがお嬢様です! すごいです!」

「内緒ね~」

「はい! 口が裂けてもいいません!」


 ネーシャには色々と見せているのでアイテムボックスの事だったり色々なことがばれている。
 というか自分でばらしたんだけど。
 ネーシャはもう家族だから、家族に内緒にしておくには難しいと思ったのだ。

 それにネーシャなら言いふらしたりしない。それくらいの信頼はしている。
 もちろん奴隷ということもあり、命令すれば拷問されても例え殺される寸前になっても口を割ることはないけれどそんなことはしたくない。
 ネーシャを引き取ってから本気でした命令なんて1度もない。これからもそんなものは使うつもりもないけれど。
 もちろんふざけて使う命令みたいなものはある。でもそれはきちんと拒否できるものだ。まぁネーシャなら絶対拒否しないんだけど。


「というわけで、2人とも何か取りたいスキルある~?」

「え、えっと……」

「私は当初の予定通りにアイテムボックス拡張を取得したいと存じます」

「拡張かー。あれって確か10ポイントだよね?」

「答えは是。その通りにございます。取得にはまだ足りませんので溜めておく許可を頂きたく存じます」

「オッケー、じゃあアルはそのままね~」

「ネーシャはどうする~?」

「は、はい。あ、あの……えっと……す、すみません……。まだ……」

「あ~はいはい。ゆっくり考えていいよ~。別に今日決めなきゃいけないわけじゃないし、大事なポイントだからね」

「はい!」


 待たせたらいけない、と一生懸命考えていたんだろう。顔が真っ赤になってしまっているネーシャ。まるで知恵熱寸前の子供のようだ。
 ネーシャ達にはステータスリセットやスキルリセットは使えないのでゆっくり後悔しないように決めて欲しい。
 まぁアルはアイテムボックス拡張で決まりみたいだけど。確かずっと前にオレが言ったからかなぁ。
 まぁアルだからよしとしよう。アイテムボックスは非常に有用だし、問題ない問題ない。

 自分のウィンドウとにらめっこしているネーシャは置いといてアルを手招きして呼び寄せる。


「ところでアル。ネーシャの加護についてなんだけど」

「鍛冶神の加護でございますか?」

「うん、鍛冶神。アルにはチュートリアルブックの加護があるじゃない?」

「そのような加護があるのですか」

「え……。アル知らないの? あぁそっか、ステータスに載ってないんだっけ。
 えっと……。ネーシャには鍛冶神の加護があるのは前に話したでしょ? それと同じようにアルにもチュートリアルブックの加護があるよ」

「そうでございましたか。私はチュートリアルブックの化身ですので頷ける話でございます」

「うん、それで加護があるのはわかるんだけど、実際の効果が全然わからなかったじゃない? わかった情報は眉唾物な物語な話ばっかりだったし」


 以前調べた時には確定的な情報はまったくなく、伝承とか物語とかそんな程度の情報しかなかった。


「でも加護がついてるのは確か。しかも鍛冶神ってことはやっぱり鍛冶をするのに効果があると思うんだよね」

「可能性は高いかと存じます」

「うんうん、この前行った鍛冶屋さんとこでは話を聞いただけだったし、ネーシャに実際に鍛冶をさせてみるっていうのはどうだろう?」

「ですが、ワタリ様。そのような伝はございませんし、ネーシャも鍛冶の経験はございません。素人に打たせてくれる鍛冶屋はないかと愚考致します」

「あーやっぱりそうなのかなぁ~。名案かと思ったのになぁ~。
 鍛冶屋さんとこで修行できるならネーシャの加護も活かせて、ネーシャを修行ってことで預けられて手に職を持てる可能性もあるし、一石三鳥とか思ったのにな~。まぁ信頼できる人が前提だから難しいとは思ったけどさぁ~」


 だめかぁ~、と溜め息をつきながらベッドに寝転がり月陽の首飾りをいじりつつMPを流す。
 MPが溜まったら流すを繰り返していたらつい癖になってしまった行動だ。


「鍛冶かぁ~。知り合いに鍛冶師なんてなぁ……。
 …………ん?」


 ふと気づいて月陽の首飾りを見てみる。
 そうだ、これはランカスター魔道具店のゴーシュさんの師匠が作ったもので、その師匠さんの弟子のゴーシュさんもすごい鍛冶師。オレは確か気に入られているはず。


「もしかして……。アル!」

「はい、ワタリ様」

「ゴーシュさんなら鍛冶させてくれるかも!」

「あの店にございますか。確かにワタリ様をいたく気に入られておりました。可能性はないとはいえませんが……」

「だ、だめかな?」

「答えは……是。彼の店に置かれていた品はこの街にある店でも突出しております。店主も相当な腕を持っております。それ故に鍛冶師としてプライドが高いと愚考致します」

「そっかぁ……。いい案だと思ったのになぁ」


 勢いにのってベッドから下りてアルに詰め寄る形だったが、すごすごとベッドに戻りポテンと寝転ぶ。
 今度は膝を抱えてごろごろ、うんうん、唸っているとアルが近くまでやってきた。


「アルぅ~何かいい案浮かんだ~?」

「だめもとでゴーシュ殿に伺ってみるのは如何でしょうか?」

「う~ん……」


 オレが名案っぽく出した案だからか、アルも一応押してくれるみたいだけど言葉に力がない。だめもととは言っているが十中八九だめだろうとわかっているのだ。


「まぁ……。ここで唸ってても仕方ない。だめもとでやってみようか」


 こうしてゴーシュさんの所に再び訪れてみることが決まった。



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