幼女と執事が異世界で

天界

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第3章

65,薬草採取

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 天国へ誘うかの料理の余韻をたっぷりと楽しみ、赤く泣きはらした瞳でも幸せそうなネーシャと満足げなアルを連れて、夕方頃に宿に戻った。
 しばらくするとエリザベートさんがいつものようにただいまぁ、と帰って来たがオレとネーシャの緩みきった顔にいち早く気づき何があったのか聞きだすと怪訝な顔でアルを見るエリザベートさんだった。

 いつもの美味しいマスターの夕食も今日はちょっと味気ない物に感じてしまったけど、それでも十分美味しかったと思う。
 エリザベートさんもいつも通りに満足そうにしていた。でもやっぱりオレ達の反応がいまいちだったのでアルを見る目つきがどんどん怪訝さを増していったけど。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 翌日、しっかりと準備をして肩掛け鞄を掛けたネーシャと完全装備のオレといつも通りのアルが通りを歩く。
 時間は朝の賑わいが少し落ち着いた時間帯。


「おはようございまーす」

「おはようございます、師匠!」

「おはようございます、ユユ殿」

「おはよう、みんな~」


 いつものように朝の挨拶を元気いっぱいに飛び跳ねるように返してくれるユユさんが近寄ってくる。
 でも今日はランカスター家の前でお別れだ。
 今日から保護者同伴はしない。オレとアルは冒険者ギルドへ行って依頼を受け、ネーシャはユユさんが修行をつける。
 まだ長時間離れるのは心配だけど、いつまでもというわけにはいかない。


「じゃあ夕方迎えに来るからね。遅くなるようだったらエリザベートさんが来るから一緒に宿に帰るんだよ?」

「はい、お嬢様」

「ではユユ殿、ネーシャのことをよろしくお願い致します」

「ユユさん、よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします、師匠!」

「あはは~。任せてよ!」


 ちょっと不安そうなネーシャと元気いっぱいのユユさんに見送られて冒険者ギルドの通りに戻る。
 冒険者ギルドがある通りとランカスター家の入り口がある通りは反対側になっているので角を曲がれるまでは2人はずっと見送ってくれた。
 ネーシャにいたってはずっと大きく手を振っていたし。


「さて、こっちはこっちでがんばらないとね!」

「今日はどのような依頼を探す予定にございますか?」

「うん~。ネーシャもいないから外へ出て薬草採取でもしてみようかと思うんだ」

「薬草採取でございますか……」

「アル的には気乗りしない?」

「ワタリ様のお力は存じておりますが、やはり危険な場所へは赴いて欲しくありません。
 ネーシャも同じ考えと存じます」

「じゃあ人足仕事する?」

「高貴なるワタリ様にそのような雑事をさせるわけには参りません」

「じゃあ薬草採取ね~」

「私が料理屋を開くのはいかがでしょうか?」

「すごい儲かりそうだけど、アルの手料理は知らない人には食べさせたくないな~」

「ワタリ様……このアル。感激で前が見えません」


 久々にアルの感涙を見た気がする。
 ネーシャと居る時でも構わず手を繋いではいるけど、オレの言葉で感涙することはなかった。我慢していたのだろうか。
 なら人通りも少ないし今は待ってあげようとにこやかに見守ってあげた。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 冒険者ギルドは混雑する時間帯を避けているだけあってあまり人がいない。
 でも前回同様エリザベートさんが飛んでくるのは予想がつくので見つからないように、ささっと掲示板に移動して薬草採取の依頼を確保しておく。


「ワタリちゃんみっけ!」

「うわぁ!」

「エリザベート、ワタリ様を驚かすのはやめていただきたい」

「へへ~、驚いた? 驚いた?」

「もう……エリザベートさん子供じゃないんだから……」

「ごめんね~」


 子供のようなエリザベートさんの可愛い悪戯を苦笑しながら咎めると、てへぺろっと舌を出すエルフさん。
 本当に可愛らしくて困る。


「今日からネーシャちゃんをユユさんのところに預けて冒険者家業再開だよね。
 さてどれにしようか」

「あ、コレを受けますので大丈夫です」

「えぇー!? こ、これは薬草採取だよ!? 外に行かないと行けないし魔物が出るところなんだから危ないよ!」

「だめです。こういうのも受けて慣れていかなきゃいけないんですから。いずれは通る道です」

「うぅ……そうだけどぉ……。あ、アル君もだめだよね、こんな危ない依頼」

「いえ、ワタリ様の実力を持ってすれば容易い依頼です。
 足手まといもいませんので尚のことです」

「あ、足手まといって……。アルそれは酷いよ……」

「事実にございます。ネーシャには今後の成長に期待ということになりますので」

「う、うーん……。確かにそうだけどぅ」

「そ、そんなアル君までこんな危ない依頼を承諾するなんて……!」

「はいはい、エリザベート先輩。私達は冒険者の方にアドバイスはしても押し付けはしてはだめなんですよ?」

「うっ……。で、でも!」

「あ、これお願いします」

「はい、ちょっとまっててねー」

「あぁ! こ、こら! だめだってば! そんな危ない依頼!」

「はい、受付終了! エリザベート先輩もそろそろ観念したらどうですか?
 そもそも岩食いペンギンを殲滅できるような実力のある子達なんですよ、ワタリちゃん達は」

「そ、それはアル君が……」

「この採取場所はせいぜいでまだら蜘蛛が1番強い程度じゃないですか。問題にもならないですよ」

「まだら蜘蛛ってどんな魔物ですか?」

「はい、大型の蜘蛛のような魔物で、強靭な糸と牙に注意すればそれほど強い魔物ではないですよ。
 Fランクの依頼の場所ですからね。そんなに強いやつはいないですし、ただ木の上から狙ってくるのでそこだけを注意すれば問題ないですよ」

「わかりました~。あと他にはどんな魔物が――」


 薬草採取の場所で他にどんな魔物が出るのか情報収集をする。
 隣でエリザベートさんが依頼を受けてしまったのにまだ食い下がろうとしてくるけど、アルが適当にあしらっているようだ。

 受付のお姉さんが言うように岩食いペンギンを殲滅するだけの実力は見せたけど、多分アルがほとんど殲滅したんだと思っているのだろう。
 でもそのアルも一緒に行くし、あの怪獣より遥かに弱いという魔物達しかいないところでの薬草採取の依頼を渋るのはどういうことなんだろうか。
 そんなに頼りなく見えるのかねぇ。いやまぁ実際アルはまだ生前では中学生くらいの年齢にしか見えないし、オレに至っては6歳の幼女にしか見えないんだから仕方ないのか……?


 薬草の大体の群生地や出没する魔物の情報も大体仕入れ終わり、アルに適当にあしらわれていたエリザベートさんは受付のお姉さんに抑えてもらっている間にギルドを後にする。
 ギルドからは涙声のエルフさんの声が聞こえていたけど、苦笑するしかなかった。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 今回受けた依頼は薬草採取。
 近隣の魔物がいない――騎士団の魔物討伐の練習台などにされて殲滅されてしまった――場所ではすでに取り尽されて採取できないので、南門から出て南東東に徒歩で3時間ほど行くと見えてくる林の少し入ったところまで行かないといけない。
 この林は魔物が結構棲み付いている。
 虫型の魔物が多く特に問題となるのがまだら蜘蛛と呼ばれる魔物だ。
 だが岩食いペンギンなどと比べるとずっと低ランクの魔物でそれほど脅威ではない。集団で奇襲でもされなければまず問題にはならないし、まだら蜘蛛は群で行動することはないのでその心配もない。

 せいぜい薬草の群生地を探すのに手間取る程度というのが受付のお姉さんの予想だ。
 採取予定の薬草はポーションを作る際に使う物で数としては20株程が必要だ。
 それ以上は当然別料金で買い取ってくれるのでたくさん取ってくれば取ってくるほど儲けが出る。
 でも取り尽してしまうと群生地を潰してしまうので、なるべく取り尽くさないで欲しいと呼びかけてはいるのだが魔物が居るところに命をかけていくのであり、なかなか難しかった。

 なのでオレ達は取りつくさないようにいくつか群生地を回って見ようと思っている。
 それでも時間は有限なのでネーシャの仕事が終わる夕方までがリミットだ。
 転移があるオレ達は行きと帰りは大した時間がかからないのが救いだろうか。


 南門を抜ける時にラッシュの街に初めて着いた時に出会った兵士さん達はいなかったが、近場の草原に犬系の魔物であるハウンドドッグが出没しているなど、結構多くの情報を教えてくれた。
 オレに向けてにこやかにしていたかと思うと、アルに向けて真剣な表情でたくさんの近場の危険情報を教えている辺りいい人なのだろう。
 街を出る時にギルドカードのチェックがあったがそれほど時間もかからない簡単なチェックだった。
 オレ達が門から大分離れるまで手を振っていてくれていたりしていたし。

 ……エリザベートさんと同類でないことを祈るのみだ。


「さて南門からもう見えないし、とっとと行きますかね」

「いつでも大丈夫にございます」


 PTはアルとオレだけになっているので複数転移してもネーシャは巻き込むことはない。
 限界地点を見つめると視界は一瞬でそこへ移動し、それを機に次の地点へと連続で転移していく。
 MPが半分を切ったらすぐに月陽の首飾りで補充し、MPには余裕を持たせておく。
 連続で転移しながらもたまに休憩を挟むように歩き、また転移していく。

 1時間もかからずにすぐに目的地の林は見えてきた。

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