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第3章
64,アルの料理
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翌日は予想通りのエリザベートさんとアルの独壇場にネーシャが加勢してオレの味方は誰もいないという孤立無援の状態で買う予定のなかった服がまた増えた。
今回は安めの装飾品が数点増えたのもだんだん外堀が埋まってきた感じがぷんぷんする。でも脳が拒否しているみたいで目を逸らしたい。
ネーシャも保護者同伴の研修期間は終わりなので本格的に働く為に鞄やら何やら色々買ってみた。
本人は恐縮して遠慮してしまうのでほとんど押し付けるように色々選んだ。
それでも毎日一緒にいるんだからそれなりに好みは把握できてきている。
ネーシャは自分の特殊な3色、金、黒、白をあまり好んではいないのでそれ以外で選ぶ。昔それが原因で苛められたりしたのだろうか。
アルはさすがは色々教えてるだけあってネーシャの事をしっかり把握しているので、さり気無くネーシャについて微妙にわからないところなんかを聞くと的確に返してくれるのだ。
「アル……やっぱりこっちの青かな? でも水色のも捨てがたい」
「答えは否。ネーシャは濃い色をあまり好みませんので、この場合は水色がよろしいかと愚考致します」
「ふむふむ。じゃあタオルも水色で……」
本当は本人が選んだほうがいいのだが仕方ない。
もう少し自己主張というものをしてほしいが、物心ついたときから奴隷なんだからそれは難しいというものだ。
ゆっくりと慣れてくれたらいいと思う。あせる必要はないんだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
買い物の翌日はゆっくりとお休みにしてお昼前にユユさんも合流して美味しい物を食べに行こうとなったのだが、そこで思い出した。
「あ~そういえばなんだかんだで、アルの料理って食べてないや」
「アル君って料理もできちゃうの? 執事さんってすごいんだねぇ」
「アル先輩はなんでもできちゃうんですよ、師匠! すごいんです!」
「本当すごいよねー。お店巡りは今度にしてアルに何か作ってもらおうか」
「畏まりました。必ずやワタリ様にご満足頂ける物をご用意してみせます」
「おぉ~。さすがアル君だねぇ~。この自信! ネーシャちゃんも見習わないとだめだよ~?」
「は、はい! 頑張ります!」
「うんうん、ネーシャも仕事に慣れて色々作れるようになったら自然と自信がつくと思うよー」
「はい、お嬢様! あたし精一杯やります! お嬢様のご期待に沿える様に!」
拳を握って鼻息をちょっと荒くして意気込むネーシャが非常に和む。
うちの癒し担当はいつでも一生懸命で大変よろしい。
「じゃあどうしようか? まずは食材の買出しかな?」
「そうですね。アル、何作るの?」
「あまり手の込んだ物を作る時間もありませんので、手早く作れるものを作ろうかと存じます」
「夕飯はマスターが明日からのネーシャの本格的な仕事開始の為に腕によりを掛けてくれるっていってたしね。ていうか今からだと厨房借りるの無理じゃない?」
「あ、それならうちの台所貸してあげるよ~」
「本当ですか! アル、よかったね」
「はい、ワタリ様。場所だけが懸念材料でしたがこれで解決にございます。
ユユ殿、ありがとうございます」
「いいよいいよ~。その代わり美味しいの期待してるよ~」
「お任せください」
「じゃあ食材集めに行こうか」
「なるべく安く収めたほうがいいよね~。じゃあこっちだね~」
ユユさんの案内でさっそく材料を集め、それほど時間もかからず一通りアルが求める物は集まった。
今まで狩った魔物の素材なんかも一部使うらしいので提供したが、材料から何を作るのかはいまいちわからなかった。
野菜や香辛料は生前の世界とは色違いな物が多かったがそのまんまな物もそれなりにあった。もちろん名前は違っていたが。
「楽しみだねぇ~。アルはなんでも出来ちゃうからきっとすごく美味しいのが来るよ~」
「はい! アル先輩なら王様が食べるような物まで作れちゃいそうです」
「だよね~。アルってほんと出来ない事の方が少ない感じだもん」
「すごいですよねぇ……アル先輩」
「うちはまだアル君のことよく知らないけど、身のこなしから動き方まで常人には出来ない動きなのはわかるよ~。お父ちゃんもワタリちゃんの次に褒めてたよ~」
「やっぱりそうなんだ。あれで戦闘は出来ませんっていうんだから、絶対嘘だよね~」
「いや~あれだけの動きが出来て戦えないってことはないでしょ~」
「あ、でも確かに防御系に関してはすごかったと思う。本人曰く攻撃はだめなんだって」
「そうなんだ~。なんかレイピア辺りを持たせて羽付きの目だけを隠す仮面とかつけたら似合いそうなんだけどね~」
「……うわぁ……似合いそう……」
「……アル先輩、かっこいいです……」
「アル君、美形だからねぇ」
昔見たZ型に切り裂く技をもった怪盗がアルに重なる。正直似合いすぎて困る。
しかしなんだ、端から見たら女の子3人で姦しく男の子について喋っているっていうのはどうなんだろうか。これは明らかにガールズトークというやつではないだろうか。
染まってきたなぁオレ……。嫌ではないのがまたなんともいえない。むしろアルについての話だと楽しいからもっと話していたいくらいだ。
……染まってきてるなぁ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
姦しくアルの話で盛り上がることしばし、次のネーシャの休みにアルの服を見立てに行こうという話まで進んだところで料理が出来上がったようだ。
「お待たせ致しました」
「おぉ~……。す、すごい……」
「うわあぁぁ……」
「……」
オレの口からもユユさんの口からも目の前に出された料理の見た目は感嘆の声しか出てこない。
細かく細工され、美しく盛り付けされた料理はまるで宮廷料理のように品格というか、神々しささえ醸し出している。
さらに見栄えだけでなく鼻腔を擽り食欲を掻き立て、お腹の虫が盛大に働き始めるほどの素晴らしい香り。
ネーシャなんてもう見た瞬間から口をポカーン、と開け涎が零れかかっている。
これがユユさんが連れて行ってくれた一般水準の食卓で食べられている食材から作られているというのは言われなければわからないだろう。
それほど目の前に出てきた料理はレベルが違う。
「冷めないうちにお召し上がりください」
「……ハッ!? う、うん。頂きます!」
「……ッ! 頂きます!」
「……」
「ほ、ほらネーシャ起きて! 食べていいんだよ!」
「……ハッ!? え、ぇ、ぃ、いいんでしゅか!?」
「冷めないうちに食べなさい」
「は、はい! 頂きましゅ!」
涎が盛大に垂れる前になんとか再起動したネーシャが慌てて噛みまくりながらも返事を返し、みんなで競うように最初の一口を口に運ぶ。
見ているだけでも楽しめる美しい細工を崩すのは心苦しいけど、それ以上にもはや我慢の限界に達してしまうほどの香りに食欲が暴走してしまっているので遠慮することはなかった。
最初の一口が口の中に入り、噛み締める。
口の中にあふれ出した洪水のような何かが脳内を駆け巡り、至福以外の全てを取り払う。
言葉にならない悲鳴を3人があげ、あっという間に皿は空になってしまった。
「……あぁ……もうない……」
「うぅ……。なにこれ美味し過ぎてもうない……」
「ぐす……おいひぃれしゅ~……うあぁあぁん」
オレとユユさんはあっという間になくなってしまった皿を今にも泣きそうな表情で見つめ、ネーシャはすでに美味し過ぎて泣いている。
皿は見事なまでにぴかぴかになるくらいに何も残っていない。
行儀が悪いなんて思う暇もなくソースの1滴までも全て嘗め尽くしてしまったのだ。
最早この料理は料理という枠に留まらない狂喜の逸品だ。
その香りに食欲が凄まじいほどに刺激され、食べたら止まらず、理性を破壊して皿をぴかぴかになるまで舐めさせるのだ。
アル……恐ろしい子!
「お待たせ致しました。こちらが次の品になります」
「「「ッ!?」」」
3人が3人共天井を見上げ、先ほどの天上の逸品を思い出しているとアルが次の料理という爆弾を投下する。
あれで終わりじゃないのか!?
確かに少し物足りないとは感じた。我を忘れてかぶりついてしまうほどの物だったので、お腹がはちきれんばかりに食べてもきっと同じ事を思っただろうけど。
でもコース料理のような前菜から始まるタイプの料理じゃなかったからてっきりアレで終わりかと思っていた。
材料もアルを含めた4人分しか買っていなかったはずだ。
一般的な食材であれほどの物を作るんだから全部使い切ってしまったのかと思ったがそうではなかった。
出された次の料理も見た目は美しく、着飾るように施されたソースが美しい。
皿に描かれたシュプールはまるで精霊の足跡。
木の皿がまるで超高級品に見えてしまうほどの芸術的な色彩が目に眩しいくらいに鮮やかだ。
先ほどの料理に負けない濃厚でいて爽やかな、それでいて食欲を直撃して絨毯爆撃をしていく凶暴なほどの香りなのに目を奪われる美しさに3人共衝撃を受けたように呆けてしまう。
「冷めないうちにお召し上がりください」
アルの静かな声が耳朶を打った瞬間、覚醒した脳が反射のように腕を動かし一口目を運ぶ。
幸福が形を成してそこにあった。
先ほどの料理も素晴らしい物だったがそれを超えた、いや先ほどの料理があったからこそこの料理が引き立ち、相乗効果を持って至福の一時を提供していた。
やはり言葉など無粋。
無我夢中で食べ切り、膨れたお腹に手を当てて天井を見上げる。
口からは満足感溢れる吐息しか出てこない。
「幸せ……」
「天国ってこういうことだったねぇ~……」
「うあああぁぁぁあん」
オレもユユさんも幸せすぎて感激に止まらない涙を流し続けるネーシャに構ってあげる余裕がまったくない。
3人中2人が緩みまくってだらしない表情で天井を見上げ、1人は号泣しているというある種異様な空間がしばらく存在し続けるだった。
今回は安めの装飾品が数点増えたのもだんだん外堀が埋まってきた感じがぷんぷんする。でも脳が拒否しているみたいで目を逸らしたい。
ネーシャも保護者同伴の研修期間は終わりなので本格的に働く為に鞄やら何やら色々買ってみた。
本人は恐縮して遠慮してしまうのでほとんど押し付けるように色々選んだ。
それでも毎日一緒にいるんだからそれなりに好みは把握できてきている。
ネーシャは自分の特殊な3色、金、黒、白をあまり好んではいないのでそれ以外で選ぶ。昔それが原因で苛められたりしたのだろうか。
アルはさすがは色々教えてるだけあってネーシャの事をしっかり把握しているので、さり気無くネーシャについて微妙にわからないところなんかを聞くと的確に返してくれるのだ。
「アル……やっぱりこっちの青かな? でも水色のも捨てがたい」
「答えは否。ネーシャは濃い色をあまり好みませんので、この場合は水色がよろしいかと愚考致します」
「ふむふむ。じゃあタオルも水色で……」
本当は本人が選んだほうがいいのだが仕方ない。
もう少し自己主張というものをしてほしいが、物心ついたときから奴隷なんだからそれは難しいというものだ。
ゆっくりと慣れてくれたらいいと思う。あせる必要はないんだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
買い物の翌日はゆっくりとお休みにしてお昼前にユユさんも合流して美味しい物を食べに行こうとなったのだが、そこで思い出した。
「あ~そういえばなんだかんだで、アルの料理って食べてないや」
「アル君って料理もできちゃうの? 執事さんってすごいんだねぇ」
「アル先輩はなんでもできちゃうんですよ、師匠! すごいんです!」
「本当すごいよねー。お店巡りは今度にしてアルに何か作ってもらおうか」
「畏まりました。必ずやワタリ様にご満足頂ける物をご用意してみせます」
「おぉ~。さすがアル君だねぇ~。この自信! ネーシャちゃんも見習わないとだめだよ~?」
「は、はい! 頑張ります!」
「うんうん、ネーシャも仕事に慣れて色々作れるようになったら自然と自信がつくと思うよー」
「はい、お嬢様! あたし精一杯やります! お嬢様のご期待に沿える様に!」
拳を握って鼻息をちょっと荒くして意気込むネーシャが非常に和む。
うちの癒し担当はいつでも一生懸命で大変よろしい。
「じゃあどうしようか? まずは食材の買出しかな?」
「そうですね。アル、何作るの?」
「あまり手の込んだ物を作る時間もありませんので、手早く作れるものを作ろうかと存じます」
「夕飯はマスターが明日からのネーシャの本格的な仕事開始の為に腕によりを掛けてくれるっていってたしね。ていうか今からだと厨房借りるの無理じゃない?」
「あ、それならうちの台所貸してあげるよ~」
「本当ですか! アル、よかったね」
「はい、ワタリ様。場所だけが懸念材料でしたがこれで解決にございます。
ユユ殿、ありがとうございます」
「いいよいいよ~。その代わり美味しいの期待してるよ~」
「お任せください」
「じゃあ食材集めに行こうか」
「なるべく安く収めたほうがいいよね~。じゃあこっちだね~」
ユユさんの案内でさっそく材料を集め、それほど時間もかからず一通りアルが求める物は集まった。
今まで狩った魔物の素材なんかも一部使うらしいので提供したが、材料から何を作るのかはいまいちわからなかった。
野菜や香辛料は生前の世界とは色違いな物が多かったがそのまんまな物もそれなりにあった。もちろん名前は違っていたが。
「楽しみだねぇ~。アルはなんでも出来ちゃうからきっとすごく美味しいのが来るよ~」
「はい! アル先輩なら王様が食べるような物まで作れちゃいそうです」
「だよね~。アルってほんと出来ない事の方が少ない感じだもん」
「すごいですよねぇ……アル先輩」
「うちはまだアル君のことよく知らないけど、身のこなしから動き方まで常人には出来ない動きなのはわかるよ~。お父ちゃんもワタリちゃんの次に褒めてたよ~」
「やっぱりそうなんだ。あれで戦闘は出来ませんっていうんだから、絶対嘘だよね~」
「いや~あれだけの動きが出来て戦えないってことはないでしょ~」
「あ、でも確かに防御系に関してはすごかったと思う。本人曰く攻撃はだめなんだって」
「そうなんだ~。なんかレイピア辺りを持たせて羽付きの目だけを隠す仮面とかつけたら似合いそうなんだけどね~」
「……うわぁ……似合いそう……」
「……アル先輩、かっこいいです……」
「アル君、美形だからねぇ」
昔見たZ型に切り裂く技をもった怪盗がアルに重なる。正直似合いすぎて困る。
しかしなんだ、端から見たら女の子3人で姦しく男の子について喋っているっていうのはどうなんだろうか。これは明らかにガールズトークというやつではないだろうか。
染まってきたなぁオレ……。嫌ではないのがまたなんともいえない。むしろアルについての話だと楽しいからもっと話していたいくらいだ。
……染まってきてるなぁ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
姦しくアルの話で盛り上がることしばし、次のネーシャの休みにアルの服を見立てに行こうという話まで進んだところで料理が出来上がったようだ。
「お待たせ致しました」
「おぉ~……。す、すごい……」
「うわあぁぁ……」
「……」
オレの口からもユユさんの口からも目の前に出された料理の見た目は感嘆の声しか出てこない。
細かく細工され、美しく盛り付けされた料理はまるで宮廷料理のように品格というか、神々しささえ醸し出している。
さらに見栄えだけでなく鼻腔を擽り食欲を掻き立て、お腹の虫が盛大に働き始めるほどの素晴らしい香り。
ネーシャなんてもう見た瞬間から口をポカーン、と開け涎が零れかかっている。
これがユユさんが連れて行ってくれた一般水準の食卓で食べられている食材から作られているというのは言われなければわからないだろう。
それほど目の前に出てきた料理はレベルが違う。
「冷めないうちにお召し上がりください」
「……ハッ!? う、うん。頂きます!」
「……ッ! 頂きます!」
「……」
「ほ、ほらネーシャ起きて! 食べていいんだよ!」
「……ハッ!? え、ぇ、ぃ、いいんでしゅか!?」
「冷めないうちに食べなさい」
「は、はい! 頂きましゅ!」
涎が盛大に垂れる前になんとか再起動したネーシャが慌てて噛みまくりながらも返事を返し、みんなで競うように最初の一口を口に運ぶ。
見ているだけでも楽しめる美しい細工を崩すのは心苦しいけど、それ以上にもはや我慢の限界に達してしまうほどの香りに食欲が暴走してしまっているので遠慮することはなかった。
最初の一口が口の中に入り、噛み締める。
口の中にあふれ出した洪水のような何かが脳内を駆け巡り、至福以外の全てを取り払う。
言葉にならない悲鳴を3人があげ、あっという間に皿は空になってしまった。
「……あぁ……もうない……」
「うぅ……。なにこれ美味し過ぎてもうない……」
「ぐす……おいひぃれしゅ~……うあぁあぁん」
オレとユユさんはあっという間になくなってしまった皿を今にも泣きそうな表情で見つめ、ネーシャはすでに美味し過ぎて泣いている。
皿は見事なまでにぴかぴかになるくらいに何も残っていない。
行儀が悪いなんて思う暇もなくソースの1滴までも全て嘗め尽くしてしまったのだ。
最早この料理は料理という枠に留まらない狂喜の逸品だ。
その香りに食欲が凄まじいほどに刺激され、食べたら止まらず、理性を破壊して皿をぴかぴかになるまで舐めさせるのだ。
アル……恐ろしい子!
「お待たせ致しました。こちらが次の品になります」
「「「ッ!?」」」
3人が3人共天井を見上げ、先ほどの天上の逸品を思い出しているとアルが次の料理という爆弾を投下する。
あれで終わりじゃないのか!?
確かに少し物足りないとは感じた。我を忘れてかぶりついてしまうほどの物だったので、お腹がはちきれんばかりに食べてもきっと同じ事を思っただろうけど。
でもコース料理のような前菜から始まるタイプの料理じゃなかったからてっきりアレで終わりかと思っていた。
材料もアルを含めた4人分しか買っていなかったはずだ。
一般的な食材であれほどの物を作るんだから全部使い切ってしまったのかと思ったがそうではなかった。
出された次の料理も見た目は美しく、着飾るように施されたソースが美しい。
皿に描かれたシュプールはまるで精霊の足跡。
木の皿がまるで超高級品に見えてしまうほどの芸術的な色彩が目に眩しいくらいに鮮やかだ。
先ほどの料理に負けない濃厚でいて爽やかな、それでいて食欲を直撃して絨毯爆撃をしていく凶暴なほどの香りなのに目を奪われる美しさに3人共衝撃を受けたように呆けてしまう。
「冷めないうちにお召し上がりください」
アルの静かな声が耳朶を打った瞬間、覚醒した脳が反射のように腕を動かし一口目を運ぶ。
幸福が形を成してそこにあった。
先ほどの料理も素晴らしい物だったがそれを超えた、いや先ほどの料理があったからこそこの料理が引き立ち、相乗効果を持って至福の一時を提供していた。
やはり言葉など無粋。
無我夢中で食べ切り、膨れたお腹に手を当てて天井を見上げる。
口からは満足感溢れる吐息しか出てこない。
「幸せ……」
「天国ってこういうことだったねぇ~……」
「うあああぁぁぁあん」
オレもユユさんも幸せすぎて感激に止まらない涙を流し続けるネーシャに構ってあげる余裕がまったくない。
3人中2人が緩みまくってだらしない表情で天井を見上げ、1人は号泣しているというある種異様な空間がしばらく存在し続けるだった。
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