幼女と執事が異世界で

天界

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第3章

63,ペンダント

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 ネーシャが弟子入りしてから4日。
 これまで特に問題もなく、ネーシャ自身もやりがいがあるのかとても楽しそうだ。
 やはり鍛冶神の加護があるから相性がいいのだろうか。
 ユユさんの人柄もあるのかもしれない。

 ちなみに3日目にちょっとだけ彫り物をしたそうだが、ユユさんにすごく褒められて一際上機嫌だった。
 今まであまり褒められたことがなかったそうなので部屋に帰っても思い出して表情筋が崩壊してしまっているくらい嬉しかったようだ。

 昨日から直接店に行くのではなく、ランカスター家となる反対側の石造りの家から出入りするように言われた。
 ランカスター家は普通の一軒家ではなく大きなお店に近いくらいの大きさの家だ。
 工房も中にあるのでこのくらいの大きさにはなってしまうらしい。魔法の空間とかそんなご大層なものではないそうだ。残念。
 家の前で待っていたのかユユさんがオレ達を見つけると元気に手を振った後、待ちきれないのか駆け足で向かってくる。


「おっはよ~」

「おはようございま-す」

「おはようございます、師匠」

「おはようございます。今日もネーシャのことをよろしくお願いします」

「もちろんだよ! ネーシャちゃんはすごいよ~。昨日なんてね~」


 朝からテンションが高いユユさんが昨日帰りには忙しそうにしていたので聞けなかった話をし始める。
 でもその辺はネーシャ自身からすでに聞いていたりするからすでに知っていたりする。
 要するにネーシャはすごく才能があって教え甲斐があって素直で良い子でうちに頂戴ということだった。
 もちろんあげないけど素直で良い子なのは同意だ。才能については鍛冶師じゃないからよくわからない。

 今日も彫り物の続きらしく、やる気満々のネーシャは工房へ。オレ達はいつも通りに店番だ。
 だが昨日までの3日は来客率0%という素晴らしい数字をたたき出している。本当に大丈夫なんだろうか、この店。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 この3日でマフラーは進んだと思われるだろう。だがしかし、そこはオレというべきか……。編み物との相性が本当に悪い。
 マフラーが悪いのだろうと次はシュシュを作ってみたのだが、輪状に結んだ紐に沿って編みこんでいくのだがマフラーよりはマシだったが、やはりクオリティ的には同等。
 とてもシュシュには見えない。何か歪な輪が出来た。

 初めての完成品だったから出来たのは嬉しかったのだが、一頻り感激したあと冷静になってみると出来の酷さに落胆した。

 だが出来が悪くても器用のトレーニングには差して問題があるわけではない。
 ただやる気の問題である。

 そう、やる気の問題だからこそ問題があるというかなんというか。
 それでも箸で豆を皿から皿へ移すといったなんともストレスが溜まるトレーニングよりはマシだったので頑張っている。

 器用のトレーニングはほとんど縫い物編み物で統一されていて、あまりそれ以外の物がないらしい。オレみたいな苦手な人には本当にきつい。
 でもまぁ、店番しながらトレーニングできるということで編み物をしているだけなので今日で付き添いも終わりだから大丈夫だろう。

 部屋でなら魔法のトレーニングも筋トレも出来るし、オレの場合ステータスが上昇したらリセットして別の物に使えるのだから。

 付き添い最終日といってもやることは変わらず、ネーシャ達の休憩時間もお昼の時のちょっとだけ。
 マスターにお弁当を作ってもらっているので、ゴーシュさんとユユさんとトトさんと一緒にお昼を食べて雑談する。
 話はやはりネーシャの素人と思えない腕の良さだ。
 鍛冶神の加護というのは素人であっても効果を発揮してしまうようで、昨日から始めた彫り物で3人を驚かせ続けているそうだ。
 恥ずかしそうにはにかむネーシャが非常に可愛らしかった。

 いずれは鍛造の方もやらせてみたいとゴーシュさんが言っていたけど、あなたの場合は無意識に怒鳴りそうでちょっと心配だ。
 教えるならユユさん同様親を反面教師に育ったのか、優しいトトさんが教えたほうがいいんじゃないかと思ったのでユユさんにそれとなく小声でお願いしておいた。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 結局4日店番して客は1人も来店せず、付き添いの4日間は無事終了した。
 昨日からやっていた彫り物をネーシャが1つだけ完成させた。

 木を削って鎖をかけただけの簡易のペンダントだけど、鑑定すると魔力を増加させる付与効果がついていた。


        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 狐の木彫りのペンダント [空] [空]
 ニトの木を加工して作った狐を象ったペンダント。
 主人を想う純粋な心により、魔力増加の付与を受けた珍しい品。 

        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 スロットが2つついている上に魔力も1上昇する。
 月陽の首飾りをしていても効果がある。ユユさんの話ではMPタンクは装備枠には入らないらしい。
 その代わり違う首飾りをつけると最初につけている方が優先されるらしいので注意してほしいそうだ。
 久々にゲームチックだ。


「ネーシャ、ありがとう。どうかな、似合う?」

「はい、お嬢様! 素敵です! 私が初めて作った拙い作品ですが、お嬢様がつけるだけで100倍くらい素敵です!」

「ネーシャ、ワタリ様がつければ100倍ではすみません」

「あ、そうですね! すみません!」

「いやいやいや、でもさすがネーシャだね。初めて作った物なのにステータス増加効果があるなんて」

「本当だよねぇ~。鍛冶神の加護ってこんなにすごいんだねぇ~。あ、でもネーシャちゃんのセンスのおかげもあると思うよ。
 ほらここの曲線とか細かいところとかセンスが表れてるでしょ~」

「そ、そうなんですか……」

「えへへ~」


 師匠であるユユさんに褒められてネーシャは嬉しそうだ。
 でも確かに狐の顔の耳の部分や輪郭は非常に滑らかで美しくさえある。髭や目も細かく彫ってあるしとても可愛い狐に仕上がっている。
 狐の獣人であるネーシャにとって狐という動物は非常に神聖なものらしく、今までとは考えられないくらいよくしてくれるオレに対して感謝の印として贈ってくれたのだ。

 まだ始めたばかりなので鍛冶神の加護の効果も弱いのか魔力の上昇数も少なかったが、それはこれからのネーシャの頑張り次第なのだろう。是非とも頑張って欲しい。


「では明日と明後日はお休みで、また4日来るという事で」

「おう。次からはユユかトトに宿まで迎えに行かせるし、お帰りも送らせる。だから心配はいらんぞ」

「はい、すみませんがよろしくお願いします」


 ちょっと過保護だとは思うがお願いすると案外簡単に了承してくれたので送り迎えを頼むことにした。
 彼らはラッシュの街に住んでいるのだからこの街の危険な面もよく知っているのだろう。
 誘拐とか誘拐とか誘拐とか。
 ネーシャが加護持ちだって言うのはここにいる面子しか知らないがどこから漏れるとも知れない。
 ランカスター魔道具店に入る為の民家から海鳥亭までもそんなに距離があるわけでもないけど念には念を、だ。

 ただやっぱりゴーシュさんからもユユさんからも過保護だなぁ、と言われてしまった。
 トトさんだけは苦笑するだけだったけど。


「お嬢様、あたし頑張ります! こんなに彫り物が楽しいなんて初めて知りました!
 自分の作るものが完成してそれを大事な人がつけてくれるんです。もう感激で胸がすごく暖かかったです!」

「そっかー。ネーシャも楽しんで出来てるみたいでよかったよ。
 これからも無理しないで頑張ってね」

「はい!」

 宿に戻ると今日もエリザベートさんがただいまぁ~、と自分ちのように帰ってくると目ざとくオレの首にかかっているペンダントを見つけてくる。


「ワタリちゃん、今日も可愛いけどそのペンダントもすごく似合ってるねぇ。
 木彫りですごく可愛いねぇ。わぁ細部まですごく細かく作ってあるんだね。
 どこで買ったの?」

「これはネーシャが作ったんですよ」

「すっごーい。ネーシャちゃんまだ弟子入りして4日でしょ?
 すごい才能だよ! これならネーシャちゃんが1流の鍛冶師になるのもすぐだね~」

「そ、そんなことないです……」


 褒められて恐縮し、顔を赤くしてどんどん尻すぼみになっていくネーシャを微笑ましく眺める。
 今日もエリザベートさんが来るとそれだけで部屋が明かりを増したかのように賑やかになる。

 明日はエリザベートさんもお休みなのでみんなで買い物したり、美味しいお店を回ったりする予定だ。
 ネーシャも順調だし、たまの贅沢は心の休養には必須とエリザベートさんが強く主張するので出かけることにした。

 ただその回る予定のルートに服屋が3件もあることに関してはすでに諦めた。
 どうやら明日もオレは着せ替え人形をやらなければいけないらしい。お金もあるにはあるけど節約していくつもりなのであまり買わないつもりだし、それを切り口になんとか逃げられないだろうかと盛り上がる3人を遠くに眺めながら夜は更けていった。
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