幼女と執事が異世界で

天界

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第5章

97,図書館とエイド君と

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 初心者迷宮――デーイス迷宮を無事攻略した翌日、以前からの要望もあったのでアルと一緒に図書館に訪れている。
 今日はレーネさんも用事で居らず、ネーシャはユユさんのところ。エリザベートさんはギルドでお仕事中なので久しぶりに2人きりだ。


「じゃあ今日は1日ここで情報収集と行きますか」

「承知いたしました」


 図書館に入るには1人ラード金貨1枚――1万ラードが必要になるがすでに大金持ちになってしまっているオレ達にはもう躊躇することのない金額だ。
 入館料を払って中に入り、オレはさっそく司書さんのところへいってレベルアップ関連と迷宮関連の書物がどこにあるか教えてもらう。

 レベルアップ関連はオレのレベルアップが異常に遅いのでこれが転生の弊害なのかそれとも似たような症状の人が居るのか調べたかったのだ。
 願わくば対処法があることを期待していたりする。
 迷宮関連はそのまんま次の迷宮の下調べとかだ。
 いくら迷宮に詳しいレーネさんがいるからといってそういうことを怠るのはどうかと思う。
 レーネさん1人に負担を負わせるのも気が引けるし、仲間なら助け合ってこそだと思うのだ。

 ちなみにアルは1冊を速攻で読み終わってしまうので一緒にだらだら読むということができないから単独行動だ。
 さすがにいつでも一緒というわけではない。
 久しぶりの2人きりだが図書館内にはいるんだから同じようなものだろう。


 レベルアップ関連の本はBaseLvと職業レベルに分かれているのは当然として著者毎に様々な推論でたくさんの本があった。
 どうにもレベルアップ関連は確定情報がないみたいだ。
 ゲームのように経験値を溜めてレベルアップというのが大半の結論ではあったが、中にはたくさんの強い――経験値が多い魔物を倒さなくても希少とされても弱い魔物を倒しただけでレベルが上がるという実例が報告されている。
 これはつまりは○れメタル的な高経験値な魔物が存在するという事だろう。
 その他にも戦闘時間が長引いたり、苦戦したりすると早くレベルアップするだの、魔物を倒さずに様々な仕事をすることによりレベルを上げる方法などが書かれていた。
 特に仕事でレベルを上げる際には苦手な仕事をするとレベルアップが早いという記述もあった。


「ふむ……。取得する経験値のほかにもボーナスのようなものが設定されているのかなぁ」


 ずっと本を読んでいたので凝り固まってしまった首を解しながらわかったことを考える。

 魔物には一定数の経験値的な物が設定されている。
 仕事にも同様に一定数の経験値的な物が設定されているが、魔物よりも遥かに低い。
 魔物との戦闘や仕事にも同様にいくつかのボーナス設定がある。
 魔物の中には高経験値の魔物が存在する。

 いくつかの本を読んでみた結果としてこのような結論に至ったが、オレのようなBaseLvがとにかく上がりにくい症例は一切見つからなかった。
 しかもわかったボーナスは苦戦したり苦手な仕事をこなすなどという、ちょっと困る内容だ。

 戦闘で苦戦なんて特殊進化個体モンスターくらいしかしたことないし、仕事自体この世界でまだしたことがない。
 それに仕事は恐らくエリザベートさんが受けられないように色々と邪魔してくるだろうし、そもそも魔物を倒した方が見入りはいい。

 結局の所強い魔物がいるところで数をこなすか、高経験値の魔物を探すかするしかないようだ。


「……まぁ結論的には迷宮かなぁ」

「こちらが迷宮関連の書物になります。迷宮の難度は中級クラスのものを選別しておきました」

「ありがとう、アル」


 頭の後ろで両手を組んで背筋を伸ばして天井を眺めながら呟くと、いつの間にかアルがいくつかの本を抱えてきていた。
 オレの結論が出たところですかさずその結論に沿った内容の本を持ってくる辺りがさすがアルだ。


「アルの方はどう? 捗ってる?」

「答えは是。必要な知識は得ることができました」

「さすがに早いねぇ。さすがアルだ。他にも読みたいのがあったら読んでてもいいよ?
 まだこっちはかかりそうだし」

「畏まりました。ですがそろそろ昼ですので食事を摂ってからに致しましょう」

「あ、もうそんな時間か。確かにお腹すいたしね」


 朝早くから来ているがもうお昼らしい。
 アルに言われてお腹がすいていることに気づくくらいは集中していたようだ。
 まぁおかげで目的の半分は終わったのだからよしとしよう。
 前回来たときにお昼は専用のスペースで取れることがわかったので今日はマスターに作ってもらったお昼持参だ。
 本当はアルにお昼ご飯を作ってもらって持って来ようと思ったのだが、最近マスターの料理を全然食べていないしなんだか寂しそうにしていたので頼んでみた。
 そのおかげなのか今日のお昼はとても豪華なクラブハウスサンドだった。
 しっかりとトーストされたパンにたっぷりのバターとちょっぴりのマスタードがぴりりと効いていて挟んであるお肉も肉厚でとてもジューシーだ。
 野菜もたくさんの種類が使われていて1口食べるだけでも大きく口を開けないといけないほどボリュームたっぷりで軽く食べるだけの昼食とは思えないほどだ。

 久しぶりのマスターの料理に舌鼓を打ち、お腹いっぱいでかなり眠くなってしまったのを押してアルが持ってきてくれた迷宮関連の書物を先に読む。
 オレが司書さんに聞いて持ってきたのは初心者迷宮の次に行くような迷宮の本ばかりだったので後回しにすることにした。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「――リ様、ワタリ様。そろそろネーシャの迎えの時間にございます」

「……ぁれ……アル?」

「お眠りになられているところ申し訳ありません。
 そろそろネーシャの迎えに行く時間でございます」

「ぇ……あれ? 寝てた?」

「答えは是。大変気持ちよさそうにお眠りになられておられました」

「あちゃー……ごめん……アルが選んでくれた本全然読めてない……」


 どうやらお腹いっぱいの眠気に抗えなかったようだ。
 せっかくアルが選んでくれた本を全然読めていない。
 これはもう一回こないとだめかもしれない。


「ご安心ください、ワタリ様。そちらの本でしたら私が読んでおきました」

「おーさすがアルだ。
 じゃああとで教えてもらえばいいかー」

「畏まりました」


 さすがのアルだが、もしかしてアルはこの迷宮の本を持ってきた時点ですでに読み終わっていたのではないだろうか。
 なんせアルの速読のスピードは常軌を逸しているレベルなのだ。
 1冊読むのに数分程度しかかからないくらいなんだからありえる話だ。

 だがアルが読んだものは読まなくてもいいというわけではない。
 確かにアルに聞けば分かる話だが、ある程度は自分も理解しておかなければ咄嗟の反応が出来ないからだ。
 特に迷宮に関しては知っておくべきことが多い。
 デーイス迷宮のような完全攻略本が売っているような親切な迷宮ばかりではないのだ。
 罠の位置や種類、出てくる魔物。
 迷宮自体の構成や特徴など、事前にわかっていれば難易度に多く差が出るところは多い。
 特にオレ達には迷宮探索に主眼を置いていた顎の財産があるので対迷宮用アイテムが腐るほどある。
 これらのアイテムを事前に選別し持ち込めばグッと楽になることは言うまでもない。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 図書館を出るとそこには見覚えのある人影が階段脇で黄昏ていた。


「エイド君何してるんですか?」

「あ、ワタリちゃん! やっとでてきたよ~」

「うん? 私を待ってたんですか?」


 夕暮れに暮れる町並みをボーっと見ていた騎士見習いのエイド君に声をかけると彼は安堵の息を吐きながらも笑顔を向けてくれる。
 いつものエイド君はたまに冒険者ギルドで会ったときに情報をちょっと売ってくれる程度なのだが今日はどうやら違うようだ。


「実はワタリちゃんにお願いがあって来たんだ」

「お願い、ですか?」

「うん。ワタリちゃんって白狼とPT組んでるでしょ?」

「あ、はい。レーネさんとは最近よく一緒に依頼を受けてますよ」

「白狼とワタリちゃんとアル君の3人だけでしょ? どうかな、前衛を増やすっていうのは?」

「エイド君、私達のPTに入りたいんですか?」


 前衛を増やす。
 エイド君は騎士を志す騎士見習いだ。
 騎士とは言っても扱う武器に応じてそれぞれ得意とする間合いは違う。
 エイド君は標準型の騎士で片手剣に盾というタイプだ。なのでこの場合エイド君もその前衛に当てはまる。


「うん、実はそうなんだ。どう、かな?」


 実は、というほどでもないとは思うけど本当に売り込み対象はエイド君のようだ。
 最初に白狼――レーネさんのことを聞いてきたという所を見るとレーネさんに色々と教わりたいのだろう。
 実際レーネさんは上級職のホワイトナイトだし、騎士の称号も当然持っている。
 しかもエイド君の使用武器の片手剣とレーネさんの使う長剣はスキル的には同一の項目だ。
 十分師匠として成り立つ。

 でも正直レーネさんの人見知り具合では師事することなど夢のまた夢だろう。
 でもそんな所に知り合いのオレとPTを組んだという情報が彼の耳にも入ったのだろう。
 最近は依頼を受ける時はずっとレーネさんと一緒だからいつかは知られるとは思っていた。
 というか情報屋まがいのことをしているエイド君ならもっと早くに知っていただろう。
 でもレーネさんが人見知りだということはかなり有名だ。
 だから師事できるかどうか色々調べていたのだろう。


「うーん……。正直レーネさんに聞いてみないことには……」

「そういうだろうと思ってたから大丈夫だよ。すぐに返事が貰えるとは思ってないから気にしないで。
 返事はギルドの受付嬢の誰かに伝言を頼んでくれればいいから。
 それじゃ色よい返事を待ってるよー!」


 エイド君はそのまま燃えるように真っ赤な髪を夕陽で更に赤くしながら走っていってしまった。
 弟みたいな可愛い感じの少年だが、正直なところオレ達のPTに入れるのはどうなんだろうか。
 オレの戦闘能力自体はそう時間もかからずバレるだろうから隠す意味はない。
 せいぜいがエイド君の目的であるレーネさんへの師事くらいなものだろうか。たぶん絶望的だろうけど。


「まぁいいか。
 さぁ遅くなる前にネーシャの迎えにいこっか」

「畏まりました」


 差し出されるアルの手を握って真っ赤に染まる町並みへと歩き出した。


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